自社のキャラクター、デザイン、ブランド、ソフトウェア、技術を海外の企業に使わせたい。反対に、海外のブランドや技術を日本で使わせてもらいたい。このような場面では、英文のライセンス契約(License Agreement)を結ぶことになります。海外の相手から契約書の案が届き、ロイヤリティの料率や最低保証の金額をどう考えればよいのか、源泉徴収の税金はどうなるのか、と迷われることもあると思います。
結論から言えば、特に確認しておきたい点として、次のようなものが挙げられます。何を許諾するのか、その権利が相手の国でも保護されているか。許諾の範囲(地域、期間、用途、独占か非独占か、再許諾の可否)が明確か。ロイヤリティの計算の基礎、最低保証、報告と監査の仕組みが決まっているか。支払に源泉徴収の税金がかかる場合に、どちらが負担するか。改変や改良、品質の管理をどう扱うか。そして、契約が終わった後の在庫や素材の扱いが決まっているか。ロイヤリティの料率には法律で決まった相場はなく、これらの条件とあわせて交渉で決めることになります。
本コラムでは、海外企業とのライセンス契約で確認したい条項を、英文の条項例・和訳とともに解説します。
この記事でわかること
- ライセンス契約で決めること(許諾の対象・範囲・独占か非独占か・再許諾)
- ロイヤリティの決め方(計算の基礎、最低保証、報告と監査)
- ロイヤリティの支払にかかる源泉徴収と、租税条約の届出
- 改変・改良・品質の管理と、契約終了後の扱い、準拠法や国による違い
ライセンス契約とは、どのような契約ですか
ライセンス契約は、著作権、商標権、特許権などの権利者(ライセンサー、Licensor)が、相手(ライセンシー、Licensee)に、その権利の対象を使うことを許す契約です。権利そのものを移す譲渡(Assignment)とは異なり、権利はライセンサーに残ったままで、ライセンシーは契約で決めた範囲でだけ使うことができます。日本の著作権法も、著作権者は他人に著作物の利用を許諾することができ、許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において利用することができると定めています(著作権法63条1項・2項)。
そのため、ライセンス契約では、「何を」「どこで」「いつまで」「どのように」使ってよいのかを、契約書の中で具体的に書いておくことが大切です。書かれていない使い方は許諾されていないと扱われるおそれがあり、反対に、範囲を広く書きすぎると、想定していなかった使い方まで認めてしまうことになります。
許諾の対象と範囲で確認すること
01許諾の対象と、相手の国での権利の確認
最初に、許諾の対象となる権利を特定します。商標であれば登録番号と指定商品、特許であれば特許番号、キャラクターやデザインであれば、対象となる作品や画像を別紙で特定する方法が考えられます。
あわせて、その権利が、ライセンシーが使う国で保護されているかを確認します。特許権や商標権は国ごとに登録して効力が生じる権利で、その効力は、それぞれの国の法律によって決まると考えられています(属地主義)。日本で商標を登録していても、相手の国で登録していなければ、その国では商標権による保護を受けられないことがあります。商標を相手の国で第三者に先に登録されるおそれについては、「独占販売契約・販売代理店契約の英文条項と注意点」で解説しています。一方、著作権は、ベルヌ条約の締約国では、登録などの方式を必要とせずに保護されます(ベルヌ条約5条(2))。
02地域・期間・用途
許諾の範囲は、たとえば次のように書かれます。
Subject to the terms and conditions of this Agreement, Licensor hereby grants to Licensee a non-exclusive, non-transferable license, without the right to sublicense, to use the Licensed Characters solely on the Licensed Products and solely for the manufacture and sale of the Licensed Products in the Territory during the Term.
(和訳)本契約の条件に従い、ライセンサーは、ライセンシーに対し、本契約の期間中、本地域において、本許諾製品の製造および販売のためにのみ、本許諾製品にのみ本許諾キャラクターを使用する、非独占的かつ譲渡不能な、再許諾権のない権利を許諾する。
確認したいのは、次の点です。
- 地域(Territory):国名で特定されているか。「Asia」のように範囲がはっきりしない書き方になっていないか。インターネットでの販売や配信のように、地域で区切りにくい使い方をどう扱うか
- 期間(Term):始期と終期、自動更新の有無、更新しない場合の通知の期限
- 用途(Field of Use):対象の商品やサービス、媒体(商品化、出版、映像、ゲーム、広告など)が特定されているか。「any and all products」のような広い書き方になっていないか
03独占か、非独占か
独占(exclusive)とすると、ライセンサーは、同じ地域・用途で他の会社に許諾できなくなります。自社がライセンサーであれば、独占とする見返りとして、最低保証のロイヤリティ(後で説明します)を求めることが考えられます。英文契約では、ライセンサー自身による使用も禁じる場合を「exclusive」、ライセンサー自身の使用は認める場合を「sole」などと呼び分けることがあります。言葉に頼らず、ライセンサー自身が使えるかを明記しておきます。
なお、日本の法律では、特許の専用実施権や商標の専用使用権のように、独占的な権利を設定する制度があり、これらは登録しなければ効力を生じません(特許法98条1項2号、商標法30条4項)。契約で「exclusive」と書いただけでは、こうした登録された権利にはならず、契約上の独占の約束として扱われることになります。
04再許諾(サブライセンス)と譲渡
ライセンシーが、さらに別の会社に使わせること(再許諾、Sublicense)を認めるかを決めます。現地の製造委託先や販売子会社に使わせる必要がある場合は、その範囲に限って認め、再許諾先にも同じ義務を負わせることを条件とする方法が考えられます。日本の著作権法では、許諾を受けて著作物を利用する権利は、著作権者の承諾を得ない限り、譲渡することができないとされています(著作権法63条3項)。
ライセンシーが無断で第三者に利用を許諾した事案で、契約の解除や差止め、損害賠償を認めた裁判例は、「ライセンス先が無断で第三者に利用許諾した場合の契約解除の可否(大阪地裁平成28年2月8日判決)」で紹介しています。
ロイヤリティは、どう決めますか
05支払の形と計算の基礎
ロイヤリティ(Royalty)の支払の形には、次のようなものがあります。組み合わせて使うこともあります。
| 支払の形(英語での表記の例) | 内容 |
|---|---|
| 一時金 (Lump-sum Payment、Initial Fee、Upfront Payment) | 契約時などに、一定の金額を支払う |
| ランニングロイヤリティ (Running Royalty) | 売上高に料率を掛けた金額や、1個あたりの金額を、販売の実績に応じて支払う |
| 最低保証 (Minimum Guarantee、Minimum Royalty) | 実績にかかわらず、一定の期間ごとに最低限支払う金額を決める |
| 前払金 (Advance) | 前もって支払い、後で発生するロイヤリティに充てる |
売上高に料率を掛ける場合は、何を「売上高」とするかが重要です。条項は、たとえば次のように書かれます。
Licensee shall pay to Licensor a royalty of [●] percent of the Net Sales of all Licensed Products sold by Licensee or its permitted sublicensees. “Net Sales” means the gross amount invoiced for the Licensed Products, less (a) returns actually credited, (b) trade discounts actually allowed, and (c) sales, value added and similar taxes included in the invoiced amount.
(和訳)ライセンシーは、ライセンサーに対し、ライセンシーまたはその許可を受けた再許諾先が販売したすべての本許諾製品の純売上高の[●]パーセントのロイヤリティを支払う。「純売上高」とは、本許諾製品について請求した総額から、(a)実際に返金処理をした返品、(b)実際に認めた取引上の値引き、および(c)請求額に含まれる売上税、付加価値税その他これに類する税を控除した金額をいう。
控除できる項目、グループ会社への販売の扱い(グループ会社に安く売ってから転売すると、ロイヤリティが小さくなります)、通貨と換算の時点、支払の時期と遅延の利息も、あわせて確認します。
06最低保証
独占的なライセンスでは、ライセンサーにとって、ライセンシーが十分に販売しなければ、その地域での収入が途絶えてしまいます。そこで、ロイヤリティの最低保証を定め、実績のロイヤリティがそれに満たない場合は差額を支払う、達成できなければ非独占に変えたり解除したりできる、といった定めを置くことがあります。
自社がライセンシーであれば、最低保証は、販売の実績にかかわらず支払わなければならない固定の費用になります。初年度は低く設定する、市場の状況が大きく変わった場合は見直しを協議する、未達の効果を独占権の喪失にとどめる、といった交渉が考えられます。年間の最低使用料の性質や、契約が途中で解除された場合の精算が争われた裁判例は、「ライセンス契約における使用権料の性質と「不安の抗弁」、契約解除後の精算(大阪地裁平成28年11月28日判決)」で紹介しています。
07ロイヤリティの料率に、相場はありますか
ロイヤリティの料率に、法律で決まった基準や相場はありません。特許などの技術については、特許庁の委託調査でロイヤルティ料率の実態が調べられていますが(「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書」2010年3月)、キャラクター、デザイン、ブランドのライセンスでは、個別の事情によって料率が大きく変わりえます。料率を考えるときは、次のような事情をあわせて考えます。
- 権利の強さや知名度、代わりになるものがあるか
- ライセンシーの商品の価格と利益率(料率を掛ける売上高の定義も含めて)
- 独占か非独占か、地域や用途の広さ
- 一時金や最低保証の有無と金額
- 素材の提供、技術指導、監修など、ライセンサーが提供するもの
- 源泉徴収の税金をどちらが負担するか(次の節で説明します)
料率だけを比べるのではなく、計算の基礎、最低保証、税金の負担を含めて、実際に支払う(受け取る)金額で比べることが大切です。
08報告と監査(Audit)
ランニングロイヤリティは、ライセンシーの販売の実績に基づいて計算されます。ライセンサーは、ライセンシーの報告が正しいかを、自分では確かめにくい立場にあります。そこで、定期的な報告と、帳簿を確認する監査の権利を定めます。
Licensee shall keep complete and accurate records of all sales of the Licensed Products for at least three (3) years after the relevant payment. Licensor may, upon thirty (30) days’ prior written notice and not more than once in any calendar year, have an independent certified public accountant inspect such records during normal business hours. If any inspection reveals an underpayment exceeding five percent (5%) for any period, Licensee shall promptly pay the underpaid amount and bear the reasonable costs of the inspection.
(和訳)ライセンシーは、本許諾製品のすべての販売について、完全かつ正確な記録を、該当する支払の後少なくとも3年間保管する。ライセンサーは、30日前に書面で通知することにより、各暦年に1回を限度として、独立した公認会計士に、通常の営業時間内に当該記録を検査させることができる。検査により、いずれかの期間について5パーセントを超える支払不足が判明した場合は、ライセンシーは、直ちに不足額を支払い、検査の合理的な費用を負担する。
自社がライセンシーであれば、監査の頻度、事前の通知、監査人を独立した会計士に限ること、秘密の保持、費用の負担の条件を確認します。自社がライセンサーであれば、報告の時期と内容(製品ごと、国ごとの販売数量と金額など)を具体的に定めておくと、監査をしなくても、おかしな点に気付きやすくなります。
ロイヤリティにかかる税金は、どうなりますか
海外のライセンサーに支払う場合(源泉徴収)
日本の会社が、海外の会社に、著作権や工業所有権などの使用料を支払う場合、その使用料は、日本の国内源泉所得として、原則として源泉徴収の対象になります(所得税法161条1項11号、212条1項)。国税庁の案内では、工業所有権、著作権等の使用料等の源泉徴収の税率は20.42パーセント(復興特別所得税を含みます)とされています(国税庁 タックスアンサーNo.2884)。
ただし、日本と相手の国との間に租税条約がある場合は、その条約によって、税率が軽減され、または免除されることがあります。たとえば、日米租税条約では、一定の要件のもとで、使用料は支払う側の国では課税されないこととされています(同条約12条)。条約の軽減や免除を受けるには、ライセンサーが、最初に支払を受ける日の前日までに、支払をする会社を経由して、「租税条約に関する届出書」を税務署長に提出する必要があり、提出がない場合は、支払をする会社は国内法の税率で源泉徴収を行うことになります(国税庁 タックスアンサーNo.2888)。契約を結んだら、最初の支払の前に、ライセンサーに届出書の準備を依頼しておきます。
契約書の税金の条項
海外のライセンサーから、次のような条項が示されることがあります。
All payments under this Agreement shall be made free and clear of any withholding or deduction for taxes. If Licensee is required by law to withhold any taxes, Licensee shall pay such additional amounts as are necessary so that Licensor receives the full amount it would have received had no such withholding been made.
(和訳)本契約に基づくすべての支払は、税金の源泉徴収または控除を一切行わずに行う。ライセンシーが法令により税金の源泉徴収を求められる場合は、ライセンシーは、源泉徴収がなかったならばライセンサーが受け取ったであろう全額をライセンサーが受け取るために必要な追加の金額を支払う。
この条項は、税金の分をライセンシーが上乗せして支払う(グロスアップ、Gross-up)という意味です。源泉徴収の税金を実質的にライセンシーが負担することになり、ロイヤリティの料率を実質的に引き上げるのと同じ効果があります。ライセンシーの立場では、次のような修正が考えられます。
(修正案)If Licensee is required by applicable law to withhold any taxes from any payment under this Agreement, Licensee may deduct such taxes from the payment, shall pay such taxes to the appropriate tax authority, and shall furnish Licensor with evidence of such payment. Licensee shall reasonably cooperate with Licensor to obtain any reduction of or exemption from such taxes available under an applicable tax treaty.
(和訳)(修正案)ライセンシーが、適用される法令により、本契約に基づく支払から税金の源泉徴収を求められる場合は、ライセンシーは、当該税金を支払から控除することができ、これを所轄の税務当局に納付し、その納付の証明をライセンサーに交付する。ライセンシーは、適用される租税条約に基づく当該税金の軽減または免除を受けるため、ライセンサーに合理的に協力する。
海外のライセンシーから受け取る場合
反対に、日本の会社がライセンサーとして海外からロイヤリティを受け取る場合は、相手の国の法律によって源泉徴収が行われ、受け取る金額が減ることがあります。相手の国の税率、租税条約による軽減の手続、相手の国で納めた税金について日本の法人税から外国税額控除(法人税法69条)を受けるための書類(納付の証明など)を、契約の段階で確認しておきます。税務の詳細は、税理士にもご確認ください。
改変・改良と品質の管理で確認すること
09キャラクターやデザインの改変と、監修
キャラクターやデザインのライセンスでは、商品化の際に、ポーズや色を変えたり、新しい絵柄を描き起こしたりすることがあります。日本の著作権法では、著作者は、その意に反して著作物の変更、切除その他の改変を受けない権利(同一性保持権)を持ち(著作権法20条1項)、こうした著作者人格権は譲渡することができません(同法59条)。改変の可否と、事前の確認(監修)の手続を、契約で決めておきます。
Licensee shall submit to Licensor, for Licensor’s prior written approval, samples of each Licensed Product, including its packaging and advertising materials, before any manufacture or sale thereof.
(和訳)ライセンシーは、本許諾製品の製造または販売の前に、その包装および広告物を含む各本許諾製品の見本を、ライセンサーの事前の書面による承認を得るために提出する。
自社がライセンシーであれば、承認の返事が遅れて発売が遅れることを防ぐため、「Licensor shall not unreasonably withhold or delay its approval.(ライセンサーは、承認を不合理に拒絶し、または遅延させない。)」や、「If Licensor does not respond within fifteen (15) business days after receipt of a submission, the submission shall be deemed approved.(ライセンサーが提出物の受領後15営業日以内に回答しない場合は、当該提出物は承認されたものとみなす。)」といった定めを求めることが考えられます。新たに描き起こした絵柄の著作権を誰が持つかも、あわせて決めておきます。
10技術の改良(グラントバック)
技術のライセンスでは、ライセンシーが改良した技術の扱いが問題になります。ライセンサーから、改良技術をライセンサーに譲渡させる条項が示されることがあります。
Licensee shall promptly disclose to Licensor any improvement to the Licensed Technology made by Licensee, and Licensee hereby assigns to Licensor all right, title and interest in and to such improvement.
(和訳)ライセンシーは、ライセンシーが行った本許諾技術の改良を、直ちにライセンサーに開示し、当該改良に関するすべての権利、権原および利益をライセンサーに譲渡する。
日本の公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」は、ライセンシーが開発した改良技術について、ライセンサーやその指定する事業者に権利を帰属させる義務や、ライセンサーに独占的ライセンスをする義務を課すことは、原則として不公正な取引方法に当たるとしています(第4-5-(8))。一方、改良技術をライセンサーに非独占的にライセンスする義務を課すことは、原則として不公正な取引方法に当たらないとしています(第4-5-(9))。そこで、ライセンシーの立場では、たとえば次のような修正が考えられます。
(修正案)Licensee shall grant to Licensor a non-exclusive license under any improvement to the Licensed Technology made by Licensee, on terms to be agreed upon in good faith by the parties.
(和訳)(修正案)ライセンシーは、ライセンシーが行った本許諾技術の改良について、当事者が誠実に協議して合意する条件で、ライセンサーに非独占的なライセンスを許諾する。
この指針は、日本の市場に影響する取引についての考え方です。相手の国の市場に影響する取引では、その国の競争法が問題になりますので、必要に応じて現地の弁護士に確認してください。
11商標のライセンスと品質の管理
商標のライセンスでは、ライセンシーの商品やサービスの品質を管理する定め(Quality Control)を置くことが大切です。日本の商標法では、使用権者が、商品の品質の誤認や他人の業務に係る商品との混同を生ずる使用をしたときは、商標権者がその事実を知らず、相当の注意をしていた場合を除き、誰でも、その商標登録の取消しの審判を請求することができるとされています(商標法53条1項)。
米国の連邦商標法も、商標権者の作為や不作為によって商標がその意味を失った場合を、商標の放棄に当たるものとしています(15 U.S.C. §1127)。米国では、商標の使用を許諾しながら品質を管理していなかったことを理由に、商標権を放棄したものとされた裁判例があります。品質の基準、見本の提出、検査の権利を契約で定め、実際に管理を行っておくことが大切です。
契約が終わるときに確認すること
12在庫の販売期間と、素材の使用の停止
契約が終わったときに、ライセンシーの手元に残った在庫をどうするかを決めておきます。一定の期間に限って販売を認める(Sell-off Period)場合は、その期間の販売にもロイヤリティがかかることを明記します。
Upon expiration of this Agreement, Licensee may sell its remaining inventory of Licensed Products manufactured prior to such expiration for a period of ninety (90) days thereafter, subject to the payment of royalties thereon in accordance with this Agreement. This right shall not apply if this Agreement is terminated due to Licensee’s breach.
(和訳)本契約の期間が満了したときは、ライセンシーは、満了前に製造した本許諾製品の残りの在庫を、満了後90日間販売することができる。ただし、当該販売についても、本契約に従ってロイヤリティを支払う。本契約がライセンシーの違反により解除された場合は、この権利は適用されない。
在庫のほか、ライセンサーから提供を受けた画像や広告写真、ウェブサイトやSNSでの表示をいつまでに取りやめるかも決めておきます。契約終了後も広告写真などを使い続けたことが争われた裁判例は、「ライセンス契約終了後の広告写真の利用と著作権・パブリシティ権侵害(知財高裁令和2年2月20日判決)」で紹介しています。
13契約終了後の競業禁止
技術やノウハウのライセンスでは、契約が終わった後の一定の期間、ライセンシーが競合する製品を製造・販売することを禁止する定め(Non-competition)が置かれることがあります。ライセンサーにとっては、提供したノウハウが、契約終了後に競合品に流用されることを防ぐ意味があります。
For a period of one (1) year after the expiration or termination of this Agreement, Licensee shall not manufacture or sell in the Territory any product that competes with the Licensed Products.
(和訳)ライセンシーは、本契約の期間満了または解除の後1年間、本地域において、本許諾製品と競合する製品を製造または販売しない。
自社がライセンシーの立場であれば、契約終了後の事業が大きく制限されるため、対象となる製品、地域、期間が必要な範囲に限られているかを確認します。契約の前から自社で持っていた技術や、自社で独自に開発した技術を使う製品まで禁止される書き方になっていないかにも注意が必要です。
この定めは、競争法の制限を受けることがあります。公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」は、ライセンサーがライセンシーに競争品の製造・販売などを制限することは、公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)がある場合には、不公正な取引方法に当たるとしています。ただし、ノウハウのライセンスで、その制限のほかにノウハウの漏洩や流用を防ぐ手段がない場合に、秘密性を保持するために必要な範囲で制限することは、公正競争阻害性がないと認められることが多いとし、契約終了後の制限であっても短期間であれば同様であるとしています(第4-4-(4))。相手の国の法律でも、契約終了後の競業禁止は、期間や範囲などについて制限されることがあります。販売店・代理店の契約終了後の競業禁止については、「独占販売契約・販売代理店契約の英文条項と注意点」で解説しています。
準拠法や国によって、結論が変わる点
ライセンス契約では、契約の準拠法と、権利が保護される国の法律の両方が問題になります。契約の準拠法を日本法としても、相手の国での権利の効力や登録の要否は、その国の法律によって決まることがあります。たとえば、次のような違いがあります。
- 独占的なライセンス:日本法では、特許の専用実施権や商標の専用使用権は、登録しなければ効力を生じません(特許法98条1項2号、商標法30条4項)。米国の著作権法では、著作権の独占的ライセンスは「著作権の移転」に含まれ、権利者などが署名した書面がなければ効力を生じないとされています(17 U.S.C. §101、§204(a))
- 権利が第三者に譲渡された場合:日本法では、ライセンサーが権利を第三者に譲渡しても、特許の通常実施権や著作物の利用権は、登録などをしなくても新しい権利者に対抗できますが(特許法99条、著作権法63条の2)、商標の通常使用権は、登録をしなければ対抗できません(商標法31条4項)
- 商標の品質の管理:日本法では、使用権者の不適切な使用によって、商標登録が取り消されることがあります(商標法53条)。米国では、品質を管理しないライセンスによって、商標の放棄とされるおそれがあります(15 U.S.C. §1127)
外国の権利や外国法の解釈が問題になる場合は、必要に応じて現地の弁護士に確認してください。準拠法の考え方は「英文契約の準拠法と紛争解決条項の選び方」で解説しています。
よくある失敗の例
例えば、次のようなケースが挙げられます。
- 許諾の地域を「Asia」とだけ書いたため、どの国まで含まれるのかで、相手と認識が食い違った
- グロスアップの条項に気付かずに署名し、源泉徴収の税金の分を上乗せして支払うことになった
- ライセンサーが租税条約の届出書を出していなかったため、国内法の税率で源泉徴収をすることになり、受け取る金額をめぐって相手と行き違いが生じた
- 最低保証の金額を、販売の見込みを確かめずに受け入れたため、売上が伸びない年にも高額の支払が続いた
- 契約終了後の在庫の扱いを決めていなかったため、残った在庫を販売してよいかで争いになった
このような失敗をしないように、内容をよく確認してから締結する必要があります。
確認のチェックリスト
| 確認すること | 確認のポイント |
|---|---|
| 許諾の対象 | 権利が特定されているか。相手の国で権利が保護されているか(商標・特許の登録) |
| 地域・期間・用途 | 国名で特定されているか。更新の条件。対象の商品・媒体が広すぎないか |
| 独占か非独占か | ライセンサー自身が使えるか(exclusive・sole)。独占の見返りの条件 |
| 再許諾・譲渡 | 再許諾の可否と範囲。再許諾先にも同じ義務を負わせるか |
| ロイヤリティ | 一時金・ランニングロイヤリティ・最低保証の組み合わせ。純売上高の定義、通貨と換算、支払の時期 |
| 報告と監査 | 報告の時期と内容。監査の頻度・通知・費用の負担 |
| 税金 | 源泉徴収の有無と税率、租税条約の届出、グロスアップの条項の有無 |
| 改変・監修 | 改変の可否、承認の手続と期限、新しい絵柄の権利の帰属 |
| 改良技術 | 改良技術の扱い(譲渡か、非独占的なライセンスか)。競争法上問題とならないか |
| 品質の管理 | 品質の基準、見本の提出、検査の権利 |
| 契約の終了 | 在庫の販売期間とロイヤリティ、素材や表示の使用の停止、終了後の競業禁止の範囲と期間 |
| 準拠法・紛争解決 | 準拠法と紛争解決の方法。権利が保護される国の法律による違い |
よくある質問
ロイヤリティの料率は、何パーセントが相場ですか。
ロイヤリティの料率に、法律で決まった相場はありません。権利の強さ、商品の価格と利益率、独占か非独占か、地域や用途の広さ、一時金や最低保証の有無などによって変わります。料率だけでなく、計算の基礎となる売上高の定義や源泉徴収の税金の負担を含めて、実際に支払う(受け取る)金額で考えることが大切です。
海外の会社にロイヤリティを支払うとき、源泉徴収は必要ですか。
日本の会社が海外の会社に著作権や工業所有権などの使用料を支払う場合は、原則として20.42パーセント(復興特別所得税を含みます)の源泉徴収が必要です。租税条約によって税率が軽減され、または免除される場合がありますが、そのためには、最初の支払の前日までに、租税条約に関する届出書を提出する必要があります。
独占的ライセンスを受けたのに、ライセンサーが自分で同じ商品を売り始めました。契約違反になりますか。
契約の定め方によります。ライセンサー自身の販売も禁じる定めになっていれば契約違反を問える場合がありますが、ライセンサー自身の販売は認める定め(sole)と読める場合もあります。契約を結ぶ段階で、ライセンサー自身が使えるかを明記しておくことが大切です。
契約期間が終わった後も、手元の在庫を販売できますか。
契約で在庫の販売期間(Sell-off Period)を定めていれば、その範囲で販売できます。定めがない場合は、契約終了後の販売が許諾の範囲外として権利の侵害に当たるおそれがあります。在庫の扱いは、契約を結ぶ段階で決めておくことをお勧めします。
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- 自社のキャラクター、デザイン、ブランド、技術を、海外の企業にライセンスしたい
- 海外の企業から届いたライセンス契約書のロイヤリティや最低保証、税金の条項を確認したい
- ライセンス契約の終了や更新、ロイヤリティの未払いをめぐって、海外の相手と行き違いが生じている
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本コラムは2024年10月時点の法令・判例に基づいています(更新)。本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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