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英文契約書の署名欄・日付・印紙税・電子署名Q&A
(中小企業のための英文契約入門)

英文契約書を締結するときの手続の疑問にQ&Aで答えます。署名欄(By・Name・Title)の書き方、押印の要否、日付の書き方と効力発生日、印紙税が「最後に署名した場所」で決まる仕組み、DocuSignなどの電子署名やPDFの交換で締結するときの注意点を解説します。

英文契約書の中身の確認が終わっても、いざ締結する段階になると、「署名欄には何を書けばよいのか」「日付はどう書くのか」「印紙は貼るのか」「DocuSignで締結してよいのか」といった、手続の疑問が次々に出てきます。

結論から言えば、英文契約書の締結に押印は必要ありません。印紙税は、契約書が日本国内で作成されたかどうかで決まり、最後の署名が国外で行われれば、日本の印紙税はかかりません。電子署名による締結も、日本法のもとで有効です。ただし、日付の書き方や、署名者の権限、作成場所の記録など、後で争いにならないための注意点がいくつかあります。

本コラムでは、英文契約書の締結の手続でよくある疑問に、Q&Aの形でお答えします。

この記事でわかること

  • 署名欄の書き方と、押印・各ページのイニシャルの要否
  • 契約日(日付)の書き方と、署名日と効力発生日の違い
  • 英文契約書に印紙税がかかる場合と、かからない場合
  • 電子署名やPDFの交換で締結するときの注意点

署名欄の書き方

署名欄には何を書けばよいですか

英文契約書の末尾には、通常、次のような締結文言と署名欄があります。

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have caused this Agreement to be executed by their duly authorized representatives as of the Effective Date.

ABC Co., Ltd.

By: ____________________

Name: Taro Yamada

Title: President and Representative Director

Date: ____________________

(和訳)以上の証として、両当事者は、正当な権限を有する代表者により、効力発生日付で本契約を締結させた。

ABC株式会社

署名:____________________

氏名:山田太郎

役職:代表取締役社長

日付:____________________

「By」の欄に署名し、「Name」に署名者の氏名、「Title」に役職を書きます。署名欄の会社名の下に署名することで、個人としてではなく、会社を代表して署名したことが明らかになります。「By: ______, its President」のように書かれている場合の「its」は「その会社の」という意味です。

役職の英語表記は、代表取締役であれば「Representative Director」、社長を兼ねる場合は「President and Representative Director」とするのが一般的です。会社の英文の名称や役職の表記は、名刺やウェブサイトの英語表記とそろえておくと、確認の手間が省けます。

押印は必要ですか

必要ありません。日本法のもとでは、契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成などの方式を備えなくても成立します(民法522条2項)。英文契約では署名(サイン)で締結するのが通常です。社内の決まりとして、署名に加えて会社の印を押すことは差し支えありません。

全ページにサイン(イニシャル)が必要ですか

法律上の要件ではありませんが、英文契約では、各ページの余白に双方がイニシャル(頭文字)を書き入れる慣行があります。署名ページ以外の差し替えを防ぐためで、日本の契約書の割印や契印に近い役割です。特に、手書きで修正を加えた箇所には、双方がイニシャルを書き入れておきます。

相手の署名者に権限があるか、確認は必要ですか

重要な契約では確認しておくことが必要です。権限のない担当者が署名した場合、後になって相手の会社から、契約の効力を争われるおそれがあります。署名者の役職を確認し、代表者以外の者が署名する場合には、権限があることを示す書面(委任状など)や、相手からの確認を求めることが考えられます。自社の側でも、代表者以外の者が署名する場合は、社内の権限の定めを確認しておきます。

日付の書き方

契約日はどう書けばよいですか

英文契約書の冒頭には、通常、次のように契約日が書かれます。

This Agreement is made and entered into as of May 4, 2023 (the “Effective Date”) by and between ABC Co., Ltd., a Japanese corporation, and XYZ Inc., a Delaware corporation.

(和訳)本契約は、日本法人であるABC株式会社と、デラウェア州法人であるXYZ社との間で、2023年5月4日(以下「効力発生日」という)付で締結される。

日付は、「May 4, 2023」(米国式)または「4 May 2023」(英国式)のように、月を英単語で書くのが安全です。「05/04/2023」のように数字だけで書くと、米国では5月4日、英国や欧州では4月5日と読まれ、契約の開始日や期限について認識が食い違うおそれがあります。「this 4th day of May, 2023」という古風な書き方も、意味は同じです。

署名日と効力発生日が違ってもよいですか

かまいません。「as of(…付で)」は、実際に署名した日とは別に、契約の効力が生じる日を定める言葉です。双方の署名日がずれる英文契約では、冒頭に効力発生日を定め、署名欄の「Date」にはそれぞれが実際に署名した日を書く、という形がよく使われます。

すでに取引が始まっている場合に、効力発生日を過去の日にさかのぼらせることもあります。その場合は、効力発生日から署名までの取引にも契約が適用されることを明記しておきます。他方、署名した日そのものを実際と異なる日付にすることは、後で争いや疑いの原因になりますので避けてください。

印紙税

英文契約書にも印紙は必要ですか

印紙税は、文書の言語ではなく、内容と作成場所で決まります。英文の契約書でも、日本国内で作成され、印紙税法の課税文書に当たれば、印紙税がかかります。英文契約でよくある契約について、国内で作成した場合の扱いの目安は次のとおりです。

契約の種類国内で作成した場合の印紙税
秘密保持契約(NDA)かかりません
物品の継続的な売買の基本契約、販売代理店契約など継続的な取引の基本となる契約書(第7号文書)に当たる場合は4,000円
請負契約(製品の製作、ソフトウェアの開発など)契約金額に応じて(第2号文書)
特許権・商標権・著作権などの譲渡契約金額に応じて(第1号文書)

実際にどの文書に当たるかは、契約の名称ではなく、書かれている内容で判断されます。判断に迷う場合は、税務署や税理士にご確認ください。

「最後に署名した場所」で決まるとは、どういうことですか

印紙税法は日本の国内法であるため、国外で作成された文書には適用されません。国税庁は、その文書に基づく権利の行使や文書の保存が国内で行われるとしても、作成が国外で行われれば印紙税は課税されない、としています(国税庁 質疑応答事例「外国で作成される契約書」)。

双方が署名する契約書は、最後の当事者が署名し、意思の合致が証明された時に「作成」されたことになります。そのため、次のように、署名の順番によって扱いが変わります。

  • 日本の会社が先に署名して送り、海外の相手が国外で最後に署名した場合:国外で作成された文書となり、日本の印紙税はかかりません
  • 海外の相手が先に署名して送り、日本の会社が国内で最後に署名した場合:国内で作成された文書となり、日本の会社が保存する原本だけでなく、相手に返送する原本にも印紙税がかかります

印紙税がかかる種類の契約書であれば、自社が先に署名して相手に送り、相手が最後に署名する、という順番にすることで、日本の印紙税の負担をなくすことができます。

作成場所の記録は必要ですか

国税庁は、国外で作成された契約書を日本で保存する場合、後日のトラブルを避けるため、契約書上に作成場所を記載するか、記載がなければその事実を付記しておくなどの措置が必要としています。署名欄の近くに相手が署名した場所(都市名と国名)を書いてもらう、相手から原本が届いた際の送付状や封筒、メールを保存しておく、といった方法が考えられます。

電子署名での締結

DocuSignなどの電子署名で締結しても有効ですか

有効です。日本法のもとでは、契約は書面がなくても成立するのが原則であり(民法522条2項)、電子署名による締結も認められます。電子署名法は、本人による一定の電子署名がある電子文書について、本人の意思で作成されたものと推定する規定を置いています(電子署名法3条)。サービス事業者が利用者の指示に基づいて署名する形式の電子契約サービスについても、一定の要件のもとで同条の推定が及びうるとする政府の見解が示されています。

米国には電子署名の効力を認める連邦法(ESIGN法)や州法があり、欧州連合にも電子署名に関する規則(eIDAS規則)があります。後で争いになったときに備えて、締結の記録(監査証跡や証明書)を保存しておきましょう。

署名ページをPDFで交換して締結してもよいですか

実務ではよく行われています。その場合は、署名をPDFや電子署名で交換したものも原本として扱う旨の条項(Counterparts)を契約書に入れておきます。

This Agreement may be executed in counterparts, each of which shall be deemed an original and all of which together shall constitute one and the same instrument. Signatures delivered by electronic means, including PDF and electronic signature services, shall be deemed original signatures for all purposes.

(和訳)本契約は、複数の副本により締結することができ、各副本はそれぞれ原本とみなされ、全体で一つの同じ証書を構成する。PDFおよび電子署名サービスを含む電子的な方法により交付された署名は、あらゆる目的において原本の署名とみなされる。

署名ページだけを交換する場合は、どの版の契約書に署名したのかが後で分からなくならないよう、最終版の全文と署名ページを一つのPDFにまとめて交換するのが安全です。

電子契約なら印紙は不要ですか

電子署名などで締結し、紙の契約書を作成しない場合は、印紙税はかかりません。印紙税は紙の文書を対象とする税であり、電子データ(電磁的記録)は課税文書に当たらないとされているためです。ただし、電子で締結した後に、紙に印刷した契約書に改めて双方が署名した場合などは、その紙の文書が課税の対象になることがあります。

よくある失敗の例

例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 相手が先に署名した契約書に、日本で最後に署名したため、印紙税のかかる文書となっていたが、印紙を貼っておらず、後から指摘を受けた
  • 署名欄の日付を「05/04/2023」と書いたため、相手は4月5日と読み、契約の開始日をめぐって認識が食い違った
  • 相手の署名者が契約を結ぶ権限のない担当者で、後から相手の会社が契約の効力を争った
  • 署名ページだけをPDFで交換したため、どの版の契約書に署名したのかが分からなくなった

このような失敗をしないように、締結の手続も含めて、よく確認してから署名する必要があります。

確認のチェックリスト

確認すること望ましい形
署名欄会社名の下に署名し、Name(ローマ字の氏名)と Title(役職)を記載
署名者の権限双方の署名者に契約を結ぶ権限があることを確認
日付の表記月を英単語で書く(May 4, 2023 / 4 May 2023)
効力発生日冒頭に効力発生日を定め、さかのぼる場合はその旨を明記
印紙税課税文書に当たるかを確認。当たる場合は、自社が先に署名し、相手が国外で最後に署名する
作成場所の記録相手の署名場所を記載してもらう、送付の記録を保存する
電子署名・PDFCounterparts 条項を入れ、最終版の全文と署名ページを一つにまとめる。締結の記録を保存

よくある質問

Q

収入印紙を貼り忘れた場合、契約は無効になりますか。

A

契約の効力には影響しません。ただし、印紙税がかかる文書に印紙を貼らなかった場合は、本来の印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計、つまり3倍の過怠税が課されることがあります。税務調査を受ける前に自主的に申し出た場合は、1.1倍に軽減されます。

Q

契約書を製本し、割印をする必要はありますか。

A

法律上の必要はありません。英文契約では、各ページにイニシャルを書き入れるか、ホチキスで留めて製本する方法が用いられることがあります。電子署名で締結する場合は、電子署名サービスが文書の改変を検知できる仕組みを備えていることが多く、製本や割印に代わる役割を果たします。

Q

英語版と日本語版の両方に署名する必要がありますか。

A

両方を正式な契約書とするのであれば、両方に署名し、内容が食い違った場合にどちらが優先するか(Language 条項)を定めておきます。日本語版が社内の参考のための訳であれば、署名は英語版だけで足ります。その場合は、訳文が参考にすぎないことを明確にしておきましょう。

Q

署名した原本は、何通作ればよいですか。

A

紙で締結する場合は、当事者の数だけ原本を作り(2社間の契約なら2通)、それぞれが1通ずつ保管するのが一般的です。契約書の末尾に「in duplicate(2通)」と書かれていることもあります。原本を何通作るかは、印紙税の負担にも関わります。

英文契約書の締結は、当事務所にご相談ください

当事務所では、外資系企業(保険会社など)や専門商社の顧問として、英文契約に日常的に対応しています。米国はもちろん、中国や欧州の企業を相手とするライセンス契約や販売代理店契約などの経験を踏まえ、条項のリスクの説明だけでなく、相手に送る修正案や伝え方まで、ご一緒に検討します。

  • 相手から届いた英文契約書に、そのまま署名してよいか判断できない
  • 電子署名やPDFの交換で締結するための条項を整えたい
  • 締結の手続とあわせて、契約の内容も確認してほしい

英文契約書の確認・修正の費用は、打ち合わせ、確認および修正案の作成を含めて、110,000円(消費税込み)からお引き受けしております(工数によって変わります)。ご相談はオンライン(Google Meet等)でも承っており、東京以外の地域の中小企業のお客様からも多数ご依頼を頂いております。ご関心のある方は、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

本シリーズでは、これまでに「英文修正契約書を作成する際の注意点」「海外企業から英文NDAが届いたときに確認したい7つの条項」「法務部がない会社のための英文契約書チェックリスト」「英文契約の準拠法と紛争解決条項の選び方」を取り上げています。よろしければ、併せてご参照ください。

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本コラムは2024年2月時点の法令・判例に基づいています(更新)。本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

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