生成AIを使うと、実在の俳優によく似た顔の動画や、声優・歌手によく似た声の音声を作ることができます。法務省は、令和8年8月、こうした肖像や声の無断利用についての考え方をまとめた「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」(以下「解釈指針」といいます)を公表しました。同年10月には、その後の裁判例を追記した第1.1版が公表されています。
解釈指針は、人の声も、氏名や肖像と同じく、パブリシティ権と、肖像等をみだりに利用されない権利(肖像権や、声をみだりに利用されない権利など、肖像や声の精神的価値を保護する権利の総称。以下「肖像権等」といいます)の保護の対象になることを明記しています。もっとも、他人に似た声や肖像を使えば直ちに違法になるわけではなく、権利侵害になるかどうかは、最高裁判決が示した基準に沿って、具体的な事情を踏まえて判断されます。生成AIで人の声や肖像を扱う企業や、俳優・声優などが所属する事務所にとっては、自社の使い方がどの権利の問題になるのかを、まず整理しておくことが大切です。
本コラムでは、連載の1回目として、解釈指針がどのような資料で、なぜ作られたのか、どのような権利を扱っているのかを、報告書の本文と検討会の議事要旨、最高裁判決の調査官解説に沿って解説いたします。
この記事でわかること
- 解釈指針の位置付けと、作られた経緯
- パブリシティ権と肖像権等の違いと、声が保護の対象になる理由
- パブリシティ権が人格権に由来するとされた意味と、最高裁判決の基準がこの形になった理由(調査官解説による説明)
- 第1.1版で追記された裁判例と、解釈指針を読むときの注意点
解釈指針は、どのような資料ですか
解釈指針は、法務省民事局が事務局を務めた「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」の取りまとめ報告書です。検討会は、研究者6名と弁護士2名で構成され(座長は田村善之東京大学大学院法学政治学研究科教授)、令和8年4月24日から7月27日までに5回開かれました(140頁)。報告書は同年8月7日に公表され、10月22日に補訂された第1.1版が公表されています(報告書末尾の記載、法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」)。
報告書は、第1章で、パブリシティ権、肖像権等、不正競争防止法について、裁判例や学説を踏まえた一般論を整理し、第2章で、生成AIによる肖像・声の無断利用についての7つの想定事例を検討しています(7頁、79頁)。各項目の末尾には、法律の専門家以外の読者に向けて要点をまとめた「Point」の枠が設けられています(5頁)。なお、本コラムで示す頁は、第1.1版の印字頁です(第1.1版では追記に伴い、初版と頁がずれている箇所があります)。
報告書は、その内容を「解釈指針として示すもの」とし、肖像、声等のビジネスに関わる方、法曹関係者のほか、生成AIを開発・提供・利用する方々に活用され、民事責任についての予測可能性が高まることを期待するとしています(136頁)。
なぜ、解釈指針が作られたのですか
報告書は、検討の出発点として、生成AIによる肖像、声等の無断利用が深刻化しているとの指摘があること、パブリシティ権や肖像権等は法律上明文の規定がなく、判例上形成されてきた権利であること、特に生成AIによる無断利用の事案については(報告書の公表時点では)裁判例もなく、権利侵害となる範囲が不明確であるとの指摘もあったことを挙げています(7頁)。
第1回の検討会で事務局が示した趣旨は、生成AIによる無断利用の想定事例を題材に、現行法や判例法理を前提として、民事責任が生ずるかどうか、損害賠償の範囲などの不法行為法の解釈適用について、必要な整理を行うというものでした(第1回議事要旨1頁)。
第2回の検討会では、俳優・声優の団体、声優事務所、声優の有志からのヒアリングが行われました(第2回議事要旨の表紙)。俳優・声優の団体の出席者からは、声が無断で使われた事案に対応した際、「法律的には声には権利がないのだから全く問題はないはずだ」と書き込む利用者が何人もいたことから、声の保護を周知する必要性を強く感じた、との発言がありました(第2回議事要旨2頁)。
解釈指針は、法律上明文の規定がなく、生成AIによる無断利用については(報告書の公表時点では)裁判例もなかったため、どこからが権利侵害になるのかが不明確であるとの指摘もあった肖像や声の無断利用について、現行法と判例法理を前提に、声も保護の対象となることを明記した上で、想定事例に即して民事責任の考え方を示すために作られたものです(7頁、136頁、第1回議事要旨1頁)。
解釈指針は、どのような権利を扱っていますか
解釈指針が主に扱うのは、パブリシティ権と肖像権等の二つの権利です。どちらも、人の氏名、肖像等は「個人の人格の象徴」であるとした最高裁判決(最判平成24年2月2日〔ピンク・レディー事件〕)を基礎にしており、肖像権等の侵害の判断は、法廷内写真撮影事件の最高裁判決(最判平成17年11月10日)の枠組みによっています。二つの権利は、守るものと、侵害かどうかの判断の仕方が異なります。
表1 パブリシティ権と肖像権等の違い
| パブリシティ権 | 肖像権等(肖像等をみだりに利用されない権利) | |
|---|---|---|
| 守るもの | 肖像等の商業的価値(商品の販売等を促進する顧客吸引力)から生ずる財産的利益 | 肖像等の精神的価値から生ずる人格的利益 |
| 侵害かどうかの判断 | 専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえるか(典型は次の3類型) | 利用の目的・態様・必要性などを総合考慮して、社会生活上受忍の限度を超えるか |
| 損害賠償 | 財産的損害(逸失利益など)が中心 | 原則として慰謝料 |
出典:法務省「解釈指針」8〜11頁、36頁、50〜52頁、55頁、57頁をもとに当事務所が要約したもの。
パブリシティ権の侵害の判断基準について、最高裁判決は、肖像等を無断で使用する行為が、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するとしています。報告書は、①〜③は典型的な類型(以下「3類型」といい、それぞれを「第1類型」などといいます)であり、これに当たらなくても「など」に当たるものとして侵害となる場合があると整理しています(8頁、11頁)。
二つの権利は、保護の対象や要件が異なるため、一つの無断利用について、両方の侵害が成立する場合もあると考えられています(57頁)。このほか、報告書は、肖像や声の無断利用に不正競争防止法(2条1項1号・2号・20号・21号)が適用される場合についても、必要な範囲で検討しています(68頁)。不正競争防止法では、本人だけでなく、芸能事務所などが請求の主体となる場合がある点に違いがあります(78頁)。
パブリシティ権は、何を守る権利なのですか
パブリシティ権は、肖像等(氏名や肖像、声など)が持つ、商品の販売等を促進する力(顧客吸引力)を排他的に利用する権利で、肖像等の商業的価値から生ずる財産的利益を守るものです。最高裁判決は、これを人格権に由来する権利の一内容と位置付けています(8〜10頁)。
解釈指針は、ピンク・レディー事件の最高裁判決について、最高裁判所の担当調査官による判例解説(中島基至「判解」最高裁判所判例解説民事篇平成24年度(上)18頁以下。以下「調査官解説」といいます)を、第1章の各所で引用しています。解釈指針は、調査官解説は飽くまで担当調査官の個人的見解であるものの、判決の理解の参考となることも多いと考えられると説明しています(5〜6頁)。以下では、調査官解説を踏まえて、パブリシティ権の性質と判断基準を解説します。
01肖像等の「人格財」と「経済財」という二つの側面
肖像等には、精神的価値を構成する「人格財」としての側面と、商業的価値を構成する「経済財」としての側面があり、判決は両者を相互に独立したものとして捉えた上で、「経済財」を保護する権利としてパブリシティ権を構成したと説明されています(調査官解説29頁)。前者を肖像権が、後者をパブリシティ権が保護する関係は、著作物の人格的な側面を著作者人格権が、経済的な側面を著作権が保護する著作権法の構造と類似しているとされています(調査官解説55頁)。
02なぜ「人格権に由来する」権利とされたのか
判決の前は、人格権説が通説とされながらも、物権に類似した財産権とする財産権説も主張されており、これには、法令の根拠なく判例で財産権を作ることは物権法定主義(物権の種類や内容は法律で定めるという原則。民法175条)の趣旨に反するとの指摘がされていました(調査官解説25〜26頁)。判決は、肖像等は「個人の人格の象徴」であるとして、パブリシティ権を人格権に由来する権利の一内容と位置付けました(8頁)。調査官解説によれば、判決が氏名権・肖像権とともにパブリシティ権を「人格権としての権利」ではなく「人格権に由来する権利」としたのは、表現の自由等との関係で、生命・身体・名誉を保護する権利より一段階低い権利と位置付けたことによるものであり、そのため、パブリシティ権の侵害は、請求する側が3類型に当たる事由を主張立証して初めて違法となるとされています(調査官解説29〜30頁)。
この位置付けからは、権利の主体は本人に限られ、本人の死亡と同時に消滅すると解されるとされています(調査官解説28頁)。一方、権利の中身は財産的利益の保護であって、パブリシティ権は、おおもとの権利である人格権と「へその緒」でつながりつつ、知的財産権として位置付けられたと説明されています(調査官解説28頁)。譲渡や相続については、人格権説によれば譲渡も相続もできないと解され、おおむね異論がないとしつつ、将来、肖像権と同様の枠にとどまるか、母なる権利から「へその緒」が外れて財産権として独り立ちするかは、今後の議論に委ねられているとされています(調査官解説59頁)。これに対し、解釈指針は、譲渡性や相続性について、現時点で一致した見解を導き出すことは困難としています(49頁)。検討会でも見解は一致しませんでした(126頁、128頁)。
03なぜ「専ら」と3類型という基準になったのか
判決は、顧客吸引力を有する者は、肖像等を「時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もある」と述べた上で、前記の基準を示しました(8頁)。
肖像権やプライバシーについて判例が基本的にとる総合考慮の考え方を判決がとらなかった理由としては、パブリシティ権は財産的利益を保護する点でそれらと本質を異にすること、取引の対象として予測可能性の高さが求められること、権利の範囲の境目では表現の自由や創作の自由とぶつかることが常に問題となり得ることが挙げられ、侵害となる場面をできるだけ限定して明確に示したものと思われる、と説明されています(調査官解説37〜38頁)。第1類型・第2類型は肖像等を「商品化」する行為、第3類型は「広告化」する行為であり、判決の基準は、実質的には「最も限定的な判断基準の一つ」である「商品化又は広告」基準を採用した上で、これと違法性において等価な場合を含むものと評価されています(調査官解説37頁)。また、判決は人格権に由来するとしつつ、米国のパブリシティ権と同様に利用態様に着目して権利の範囲を3類型に限ったと説明され(調査官解説39頁)、「など」は、3類型と違法性において実質的に同一といえる例外的な場合に限るとされています(調査官解説50頁)。もっとも、解釈指針によれば、調査官解説自身も、ファンサイト等に関連性の低い肖像写真を極めて多数掲載し、本人の営業上の利益を現に害するような場合を、「など」に当たり得る一応の例として挙げています(24頁)。報告書は、想定事例で「など」に当たり得る場合を示しており(97頁、99頁、119頁)、「商品等」に当たらない場合に「など」に当たると解するのは困難であるとの意見も注で紹介されています(24頁注51、119頁注217)。
人の声も、保護の対象になるのですか
なります。解釈指針は、人の声も、パブリシティ権と肖像権等の両方の保護の対象になるとしています(9頁、51頁)。
最高裁判決は、パブリシティ権の保護の対象を「氏名、肖像等」としており、氏名と肖像以外に何が含まれるかは、判決文には示されていません。調査官解説は、「肖像等」とは本人の人物識別情報(ある人物を他の人物と見分ける情報。10頁)をいい、例えば「サイン、署名、声、ペンネーム、芸名等」を含むと説明しています(調査官解説41頁、解釈指針9頁)。
解釈指針は、「肖像等」に含まれるのは「個人の人格の象徴」といえるものである必要があるとの見解が有力であるとし、検討会でも、声は人物識別情報であり、かつ個人の人格の象徴であることから、パブリシティ権の保護の対象に含まれることについて異論がなかったとしています(9頁)。
第1回の検討会では、委員から、声自体を保護する制定法が今のところないため声優業界を中心に問題になっており要保護性が高いこと、声は人物識別情報として捉えられていること、肖像と同じく人格との結び付きが強いことを理由に、声を「肖像等」に含めてよいとの意見が出ています。また、声は肖像に比べて誰の声かを特定しにくい面があるものの、その点は顧客吸引力の有無や利用目的の判断で調整すればよく、入口で保護の対象から外すものではない、との意見もありました(第1回議事要旨2頁)。
報告書は、同じ理由から、声は肖像権等の保護の対象にもなるとしています(51頁)。声をみだりに利用されない権利の侵害の判断基準は、肖像権と異ならないとされています(55頁)。なお、声を再現する行為は肖像の利用に比べて目的や必要性が乏しく、声を無断で合成されることの受忍限度は肖像を作成される場合より小さくなるとする学説もありますが、検討会では、肖像と声とで受忍限度の範囲を異にするほどに利用の目的や必要性が異なるものではないとの意見が多く出されたとされています(55頁注128)。
第1.1版では、何が追記されたのですか
第1.1版では、報告書の公表後に言い渡された東京地方裁判所令和8年9月30日判決(令和7年(ワ)第70635号。以下「声優ナレーション事件」といいます)が追記されました(9〜10頁)。声優が、動画投稿サイトに投稿された動画のナレーションの声が自分の声に類似しているなどとして、不正競争防止法3条またはパブリシティ権に基づき、サイトの運営会社に投稿の削除を求めた事案です(判決文)。投稿者は、声真似が上手い友人の声をAIに学習させたものだと説明しており、運営会社も、第三者の声をAIで加工したものであるから原告(注:声優)の声の使用とはいえないと主張していました(判決文3頁、6頁)。
判決は、当裁判所の判断の中で、次のように述べています(判決文7頁)。
人の声は、人の肖像と同様に個人の人格の象徴であるということができるところ、例えば実演家の声等を無断で使用する行為は、その声が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有するといえる場合であって、その声を使用する行為が専らその声の有する顧客吸引力の利用を目的とするものといえるときは、パブリシティ権の侵害に当たると解するのが相当であるといえる。
報告書は、この判示を、傍論ではあるものの、人の声がパブリシティ権による保護の対象となることを認めたものとしています(9〜10頁)。もっとも、判決の結論は請求の棄却で、動画が既に削除されていたことから、その余の争点については判断していません(判決文8頁)。この判決は、AIで作られたとされる声の使用が権利侵害に当たるかどうかを判断したものではない点には、注意が必要です。
想定事例では、どのような場面が検討されていますか
解釈指針の第2章では、生成AIで俳優・歌手・声優によく似た顔や声のコンテンツを作って公開する場面を中心に、性的な合成画像・音源、収益目的がない場合、芸能事務所による請求、故人の場合を加えた7つの想定事例が検討されています(80〜81頁)。想定事例には、企業が生成AIで作った人物や声を広告に使う事例はありません。
表2 解釈指針の想定事例
| 想定事例の内容 | 主に検討されている権利 | |
|---|---|---|
| 事例1 | 俳優によく似た顔の者が演じる動画を生成AIで作り、SNSで公開して収益を得た | パブリシティ権、不正競争防止法 |
| 事例2 | 歌手によく似た歌声の音源や、声優が演じるキャラクターによく似た歌声の音源を作り、SNSで公開して収益を得た | パブリシティ権、不正競争防止法 |
| 事例3 | 俳優の顔と他人の裸を合成した画像や、声優の声でわいせつな文章を読み上げる音源を作り、公開して収益を得た(本人が一般人の場合も検討) | 肖像権等、パブリシティ権 |
| 事例4 | 事例1・事例2のうち歌手の事例から、収益目的を外した場合 | パブリシティ権、肖像権等 |
| 事例5 | 本人が芸能事務所に、パブリシティ権の独占的な利用を許諾していた場合、または譲渡する約束をしていた場合に、事務所が自ら損害賠償・差止めを請求できるか | パブリシティ権、不正競争防止法 |
| 事例6 | 故人である俳優によく似た顔の者が演じる動画を作り、公開して収益を得た | パブリシティ権、不正競争防止法 |
| 事例7 | 故人である俳優の顔を使った性的な画像を作り、公開して収益を得た(一般人の場合も検討) | 肖像権等、遺族の敬愛追慕の情 |
出典:法務省「解釈指針」80〜81頁の想定事例一覧を当事務所が要約したもの。事例6・7は俳優の肖像の例ですが、歌手・声優などの声にも同様の考え方が当てはまるとされています(79頁)。
解釈指針を読むときに、注意すべき点はありますか
あります。報告書自身が、検討の前提や範囲について、次のように断っています。
- 想定事例は事実関係を相当簡略化しており、それだけで権利侵害の有無の結論を出すことは困難であること。検討は、どのような事情をどのように考慮して判断すべきかという観点から行われていること(79頁)
- 検討の中心は権利侵害の有無などであり、故意・過失の要件は直接の対象としていないこと(79頁)
- 本人以外の者(所属事務所など)による損害賠償請求や差止請求の可否など、見解が一致しなかった論点があり、今後も検討が望まれること(136頁)
第5回の検討会では、知的財産推進計画2026の記載を引用した事務局の案に対し、座長から、本検討会は不正競争防止法の解釈は議論したが立法は議論していないとして、その段落を削るか表現を弱める提案があり、委員からも、意見がまとまらなかった論点の検討を書き込む方がよいとの意見が出ています(第5回議事要旨11頁)。最終的な報告書は、同計画の記載を注で紹介するにとどめています(136頁、136頁注232)。このような経緯を踏まえると、解釈指針は、立法の方向を示すものではなく、現時点での解釈の整理として読むのが適切と考えられます。
企業として、確認しておきたいことは何ですか
01声も、肖像と同じように扱われる前提で考える
社内で生成AIの利用ルールを定めている場合は、他人の肖像の扱いだけでなく、声についても同じように扱われているかを確認しておくとよいでしょう。
02パブリシティ権と肖像権等の両面から検討する
収益を得る目的の利用はパブリシティ権の問題になりやすいものの、パブリシティ権の侵害は収益目的の有無だけで決まるわけではありません。また、収益目的がない場合や、本人が著名人でない場合でも、肖像権等の侵害が問題になることがあります(79頁)。二つの権利は判断の基準が異なるため、両面から検討する必要があります。
03個別の事情に即して判断する
生成AIで実在の人に似た声や肖像を使う企画や、所属するタレントの声や肖像が無断で使われている場合の対応は、具体的な事情を踏まえて検討する必要があります。
よくある質問
解釈指針に沿わない使い方をすると、違法になりますか。
解釈指針に沿うかどうかで違法かどうかが決まるわけではなく、実際の紛争で権利侵害になるかどうかは、具体的な事実関係を踏まえて判断されます(79頁)。もっとも、最高裁判決の基準に沿って整理されたものであるため、自社の使い方を検討する際の手掛かりになります。
有名人ではない人の声や顔も、保護されますか。
有名人ではない人の声や顔も、肖像権等によって保護されます。解釈指針は、一般人の肖像や声も肖像権等によって保護されることに変わりはないとし、肖像権等の侵害の判断では、権利者が一般人かどうかは決定的な要素ではないとしています(79頁、107頁、114頁)。一方、パブリシティ権は、肖像等が顧客吸引力を有することが前提となります。
他人の声に似た声を使っただけで、権利侵害になりますか。
声が似ているだけで、直ちに権利侵害になるわけではありません。解釈指針は、声の類似性の程度に加え、使用に当たって付けられた本人の声を想起させる情報などを総合的に考慮して、本人の声と識別できるかどうかで、本人の声を使用したといえるかを判断するとしています。また、パブリシティ権については、物まねや声まねは、本人を示すものとして誤解されるような場合でない限り、侵害するものとは解されないとしています(30頁)。
声や肖像を保護する法律の改正は、予定されていますか。
改正に向けた検討は始まっていますが、具体的な内容や時期は、まだ決まっていません(令和8年11月時点)。知的財産推進計画2026(令和8年6月12日知的財産戦略本部決定)が、ハードロー整備(不正競争防止法改正を含む)の必要性も含め議論を継続するとしたのを受けて(136頁注232)、経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会が、同年8月から肖像や声の保護を検討しています。10月の会合では、事務局から、①不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」の例示に肖像と音声を明記する方向と、②肖像や声の無断使用を不正競争とする新たな類型を設ける方向が、検討の方向性(案)として示されました(第31回不正競争防止小委員会資料3、19頁)。なお、法務省の検討会自体は、立法については議論していません(第5回議事要旨11頁)。
生成AIと声・肖像の問題についてのご相談
当事務所では、解釈指針や裁判例を踏まえて、生成AIで人の声や肖像を扱う企画や利用規約の確認から、所属するタレント・声優の声や肖像が無断で使われた場合の削除請求・損害賠償請求まで、お引き受けしております。
- 生成AIで作った声や画像を広告・動画に使う前に、権利侵害のおそれがないか確認したい
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本コラムは2026年11月時点の法令・判例に基づいています(更新)。本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません(その他、免責事項についてもご参照ください)。具体的な事案については、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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