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女性活躍推進法の改正と企業に求められる対応(男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務など)

はじめに

2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行されました。今回の改正は、特に常時雇用する労働者が101人以上の企業にとって影響が大きく、新たに「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が必要となります。

今回のコラムでは、改正法の内容を整理した上で、企業の人事・法務担当者の方向けに、ポイントとなる点を中心に解説いたします。

1. 改正の背景と全体像

女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、平成27年法律第64号)は、企業に対して一般事業主行動計画の策定・届出や女性の活躍に関する情報公表を義務付ける法律です。従来は2026年3月31日までの時限立法でしたが、今回の改正により有効期限が2036年3月31日まで10年間延長されました。これは、女性活躍推進の取組みがいまだ道半ばであるとの認識に基づくものです。

今回の改正の柱は、大きく分けて次の3点です。

No.改正の柱施行日企業への影響
1情報公表義務の拡大・強化2026年4月1日従業員数101人以上の企業で対応が必須
2えるぼし認定・プラチナえるぼし認定制度の見直し一部2026年10月1日認定企業は認定維持のために対応が必要
3職場における女性の健康支援に関する規定の明確化2026年4月1日法律上の直接の義務ではないが、対応が望ましい

以下、企業実務への影響が特に大きい情報公表義務の強化を中心に、それぞれのポイントを解説します。

2. 情報公表義務の拡大――何が変わったのか

改正前後の比較

今回の改正により、情報公表の「必須項目」と「対象企業の範囲」の双方が拡大されました。改正前後の変化を整理すると、次のとおりです。

企業規模(常時雇用する労働者数)改正前改正後
301人以上男女間賃金差異(必須)+選択項目2項目以上男女間賃金差異(必須)+女性管理職比率(必須)+選択項目2項目以上
101人~300人選択項目1項目以上男女間賃金差異(必須)女性管理職比率(必須)+選択項目1項目以上
100人以下努力義務努力義務(変更なし)

特に注目すべきは、従業員数101人~300人の企業です。改正前は選択項目を1つ公表すれば足りましたが、改正後は「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の2項目が必須となった上で、さらに選択項目を1つ以上公表する必要があります。合計3項目以上の公表が求められることになり、対応の負担は相当に増加します。

選択項目の一覧

必須項目に加えて公表が求められる選択項目は、以下の2つの区分から選びます(改正女性活躍推進法20条、一般事業主行動計画等に関する省令※119条・20条)。301人以上の企業は区分A・Bからそれぞれ1項目以上(合計2項目以上)、101人~300人の企業は区分A又はBから1項目以上を選択します。

【区分A】職業生活に関する機会の提供【区分B】職業生活と家庭生活の両立支援
採用した労働者に占める女性労働者の割合男女の平均継続勤務年数の差異
男女別の採用における競争倍率10事業年度前及びその前後に採用された労働者の男女別継続雇用割合
労働者に占める女性労働者の割合男女別の育児休業取得率
係長級にある者に占める女性労働者の割合労働者の一月当たりの平均残業時間
役員に占める女性の割合雇用管理区分ごとの一月当たりの平均残業時間
男女別の職種又は雇用形態の転換実績有給休暇取得率
男女別の再雇用又は中途採用の実績雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

3. 公表のスケジュールと方法

いつまでに公表すべきか

関連通達※2, ※3によれば、改正法の施行日(2026年4月1日)以後に最初に終了する事業年度の実績について、次の事業年度の開始後「速やかに」公表する必要があります。この「速やかに」とは、おおむね3か月以内を指すとされています。

決算期による初回公表のタイミングの違いは、以下のとおりです。

具体例:4月決算の企業の場合

  • 2025年5月1日から2026年4月30日までの事業年度が、施行日以後に最初に終了する事業年度
  • 2026年7月末頃までに初回の情報公表を行う

具体例:6月決算の企業の場合

  • 2025年7月1日から2026年6月30日までの事業年度が、施行日以後に最初に終了する事業年度
  • 2026年9月末頃までに初回の情報公表を行う

具体例:9月決算の企業の場合

  • 2025年10月1日から2026年9月30日までの事業年度が、施行日以後に最初に終了する事業年度
  • 2026年12月末頃までに初回の情報公表を行う

具体例:12月決算の企業の場合

  • 2026年1月1日から2026年12月31日までの事業年度が、施行日以後に最初に終了する事業年度
  • 2027年3月末頃までに初回の情報公表を行う

具体例:3月決算の企業の場合

  • 2025年4月1日から2026年3月31日までの事業年度は、その終了日が施行日以後ではないため対象外
  • 次の事業年度(2026年4月1日~2027年3月31日)が、施行日以後に最初に終了する事業年度
  • 2027年6月末頃までに初回の情報公表を行う

上記のとおり、施行日以後に最初に終了する事業年度の終了日が2026年4月から2027年2月までの間に到来する決算期の企業(4月決算から翌年2月決算まで)ほど、対応期限が早く到来します。特に4月決算・5月決算の企業は、施行日からわずか1~2か月で事業年度が終了するため、データ整備や社内体制の構築に残された時間が極めて限られている点に注意が必要です。実際、男女間賃金差異の公表に関する通達※2第5(3)も、4月末決算の事業主を具体例の一つとして明示しています。

3月決算の企業は2027年6月末頃までと、対応期限が最も遅く到来するスケジュールとなります。もっとも、海外親会社を持つ日本法人等で12月決算を採用しているケースでは、対応期限が2027年3月末頃と前倒しになるほか、グループ全体のスケジュール調整が必要となる点にも留意が必要です。

その後は、おおむね年1回以上、公表日を明らかにした上で最新の数値に更新する必要があります。

どこに公表するか

公表先としては、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が推奨されています。同データベースには、入力後1年を経過して更新がない場合に通知メールが送信される機能があり、更新漏れの防止にも役立ちます。自社のウェブサイトに掲載することも認められています。

4. 「女性管理職比率」に関する実務上の注意点

今回新たに必須項目となった「女性管理職比率」について、実務上最も問題となるのは「管理職」の範囲をどう画定するかです。

「管理職」の定義

関連通達※3によれば、ここでいう「管理職」とは、「課長級」及びそれより上位の役職にある労働者(役員を除く)の合計です。「課長級」の判断基準は次のとおりです。

判断基準判断の順序内容
形式基準まずこちらで判断事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が2係以上からなるか、又はその構成員が10人以上(課長を含む)であるものの長
実質基準形式基準に該当しない場合に判断同一事業所において、課長のほかに、呼称や構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと)

実質基準は、形式的に「課長」と呼ばれていない役職者であっても、実態として課長級の職責を担っている者を算入の対象とする趣旨です。「○○マネージャー」「○○リーダー」等の呼称が用いられている場合や、組織構成上の係数・人数要件を満たさない部署の長等であっても、実態に即して該当性を判断する必要があります。

なお、「課長代理」や「課長補佐」は、一般的には「課長級」に該当しないとされています。

公表にあたって付記すべき事項

数値の公表に際しては、以下の対応が望ましいとされています。

No.望ましい対応
1上記の「管理職」の定義に沿って算出した数値である旨を明記する
2実際に「管理職」として計上した役職名を記載する
3数値の背景にある要因や課題の分析結果を説明欄に記載する
4男女別の管理職登用比率(各性別の労働者数を分母、管理職数を分子としたもの)を参考値として併記する
5単年度の数値だけでなく、複数年度にわたる推移を示す

女性管理職比率の数値は業種や企業の採用方針によって大きく異なります。数値の大小だけで評価されるものではなく、背景事情の説明や改善に向けた取組みの内容を併せて公表することが、企業の姿勢を正確に伝える上で重要です。

役職名の記載方法――簡略化の許容

通達※3第6(1)は、「女性管理職比率については指標の大小それ自体ではなく要因・課題の分析と改善に向けた取組が重要である」との基本的な考え方を示した上で、説明欄における役職名の記載方法について、事業主の実務負担に配慮した簡略化ルールを明らかにしています。具体的には、類似の役職名が複数ある場合は「課長」とのみ記載すれば足り、役職が数十を超える場合は事業主が適切と認める範囲で代表的な役職名を記載すれば足りるとされています。また、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」には「本項目に記載の内容は定義と同一である」旨のチェック欄が設けられており、これを活用すれば定義に沿うものである旨を簡潔に明示できます。

算出に用いるデータの時点

通達※3第4・第5(3)は、「公表する情報は、特段の事情のない限り、公表時点で得ることができる最新のものとする必要がある」との原則を示した上で、具体的な基準日の考え方を明らかにしています。具体的には、古くとも公表を行う事業年度の「前事業年度」時点の情報で足り、最新のものであれば公表を行う事業年度又はその前事業年度のいずれの時点の情報であっても差し支えないとされています。賃金データや管理職数の確定時期との関係で、前事業年度時点のデータを用いることが実務上の現実的な選択肢となります。なお、同通達第4では、女性管理職比率の数値は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までとすること、男女で算出方法を異ならせてはならないことも併せて示されています。

グループ企業における公表実務

通達※3第2(3)は、「法に基づく情報公表」について、各事業主に実施を求めることを原則としつつ、グループ内で雇用管理が一体的になされている場合など一定の場合には、グループ全体としての実施を各事業主の実施と解することができる旨を明らかにしています。文言上は「法に基づく情報公表」全般を対象とする規定として置かれており、持株会社傘下で人事制度が一体運用されている企業グループ等では、グループ単位での情報公表により個社ごとの重複対応を回避できる余地があります。

もっとも、この一体公表の規定が置かれているのは女性管理職比率に関する通達であり、男女間賃金差異については、後述のセクション5のとおり、男女間賃金差異に関する通達※2第2(4)が事業主ごとの単体公表を明示し、連結ベースでの公表を明示的に否定しています。両通達は同日付(令和8年2月18日)で発出されたものであり、男女間賃金差異については後者の通達が単体公表を特則として明示したものと整理するのが自然です。したがって、一体公表の余地が実質的に残るのは女性管理職比率に関する情報公表のみと理解するのが実務上安全です。

グループ単位での公表実務を設計する際には、項目ごとに取扱いが異なる点を十分に踏まえ、両通達の内容を慎重に確認する必要があります。該当性の判断はケースバイケースとなるため、実務上は顧問弁護士等に相談の上で対応方針を決定することが望まれます。

5. 「男女間賃金差異」に関する実務上の注意点

男女間賃金差異は、女性管理職比率と並ぶ必須公表項目ですが、算出方法・公表形式について通達※2により詳細なルールが定められています。以下、実務担当者が特に注意すべき点を整理します。

3区分での公表が必須

通達※2第2(3)は、「全労働者における男女間賃金差異に加え、正規雇用・非正規雇用内でも男女間賃金差異があること」及び「全労働者における男女間賃金差異は、正規雇用・非正規雇用それぞれの男女労働者の割合の差異の影響を大きく受けること」を踏まえ、男女間賃金差異については以下の3区分それぞれで公表することを義務付けています。

区分内容
全ての労働者正規雇用労働者と非正規雇用労働者の合計
正規雇用労働者直接雇用かつ期間の定めなくフルタイム勤務する労働者及び短時間正社員
非正規雇用労働者短時間労働者・有期雇用労働者(派遣労働者は派遣元で算出するため除外)

これは他の情報公表項目における「雇用管理区分」とは異なる、男女間賃金差異に特有のルールです。「3項目以上の公表義務」と聞いて項目数のみに注目していると、1つの必須項目(男女間賃金差異)の中にさらに3区分の公表が必要であることを見落とすおそれがあります。

なお、公表に際して「非正規雇用労働者」という呼称を用いる必要はなく、「パート・有期社員」等と記載することも認められています。また、該当者が存在しない区分については「-」と記載することとされています。

「賃金」の定義と除外可能な手当

通達※2第3(2)は、男女間賃金差異の算出における「賃金」を、労働基準法11条に規定する「賃金」(労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのもの)と定義した上で、事業主の判断で除外できる項目を明らかにしています。

項目取扱い理由
退職手当除外可年度を超える労務の対価という性格を有するため
通勤手当等除外可経費の実費弁償という性格を有するため
基本給・賞与・その他の手当原則として賃金に含める労働の対償として支払われるものに該当

ただし、除外の取扱いは、男女の労働者で共通のものとしなければならない点に注意が必要です。また、所得税法28条に規定する「給与所得」は、上述の賃金の取扱いに合致するものとされており、実務上は給与所得の範囲を基準として整理することも考えられます。

なお、賃金から除外した手当がある場合には、公表時にその具体的な名称を注記することが望ましいとされています(通達※2第5(1))。

事業主ごと・単体ベースでの公表が原則

通達※2第2(4)は、男女間賃金差異に関する情報公表について、事業主ごとに行うことを原則とし、持株会社であっても法の定める一般事業主に該当する限り単体としての情報公表を行うものであって、連結ベースでの情報公表は認められない旨を明らかにしています。

また、情報公表は事業主の雇用する労働者について、主たる事業所(本社・本店等)と従たる事業所(支社・支店等)を通じて行うものであり、本社のみの数値で足りるものではない点にも注意が必要です。

前述のとおり、女性管理職比率に関する通達は、一体的雇用管理のグループについてグループ全体での実施を各事業主の実施と解する余地を認めています。これとは対照的に、男女間賃金差異については事業主ごとの単体公表が徹底されており、項目ごとに取扱いが異なる点を理解した上で公表実務を設計する必要があります。

6. 職場における女性の健康支援

改正法では、女性の職業生活における活躍の推進は「女性の健康上の特性に留意して行われるべき」旨が明文化されました(改正女性活躍推進法2条)。これは法律上の直接的な義務を課すものではありませんが、一般事業主行動計画の策定にあたって考慮すべき事項として位置づけられています。

改正された事業主行動計画策定指針※4では、取組みの例として以下のような施策が示されています。

分野取組みの例
ヘルスリテラシーの向上女性の健康上の特性に関する研修会の開催、婦人科検診等の受診の重要性を含めた健康課題に関する啓発冊子の配布や動画の配信
休暇制度・柔軟な働き方生理休暇を取得しやすい環境の整備、不調時の休養・治療・通院・検診等の多様な目的で利用できる休暇制度の整備、所定外労働の制限・時差出勤・フレックスタイム制・短時間勤務・テレワーク等の柔軟な働き方の導入
相談体制の構築産業医やカウンセラーの配置、外部相談先の紹介、オンラインによる健康相談の実施
その他婦人科検診の受診に対する支援、妊婦等が利用できる休憩スペースの設置

なお、関連通達※5によれば、ここでいう「女性の健康上の特性」としては月経、妊娠・出産(不妊治療を含む。)、更年期症状などが想定されていますが、これらは限定列挙ではないとされています。

実務上のポイントとして、健康に関する取組みではプライバシーへの配慮が不可欠です。また、「生理休暇」のような名称の特別休暇よりも、性別を問わず使いやすい名称・制度設計とした方が、利用率が高まり、実効性が上がるという指摘もあります。

7. えるぼし認定制度の見直し

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定は、女性活躍推進の取組みが優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。認定企業は認定マークの使用や公共調達での加点評価等のメリットを享受できます。

今回の改正では、プラチナえるぼし認定の要件として、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「就活セクハラ」)防止に係る措置の内容を公表していることが新たに追加されました(2026年10月1日施行)。既に認定を受けている企業も、認定を維持するためにはこの要件を満たす必要がありますので、早急な対応が求められます。

8. 対応を怠った場合のリスク

改正法への対応を怠ること自体に罰則は設けられていません。しかし、公表義務を果たさない企業に対しては、厚生労働大臣による報告徴収や助言・指導・勧告が行われる可能性があります。報告を求められたにもかかわらず報告をしない場合や虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料が科される可能性があります(女性活躍推進法38条)。さらに、勧告に従わない場合には企業名が公表される可能性があり(同法30条)、企業の社会的評価や採用活動に対する影響は無視できません。

おわりに

今回の改正は、情報公表義務の対象企業が大幅に拡大した点で、多くの企業に実務的な対応を迫るものです。特に、従業員数101人~300人の企業にとっては、これまで選択項目を1つ公表するだけで足りていたところ、必須項目2つを含む合計3項目以上の公表が必要となり、データ整備や社内体制の構築に相応の準備が求められます。

一方で、こうした情報の公表は、自社の女性活躍推進の取組みを社内外に発信する機会でもあります。単なる法令遵守にとどまらず、採用市場における企業の魅力向上や、従業員のエンゲージメント強化につなげるという視点を持って対応を進めることが重要です。


参考資料

※1 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令(平成27年厚生労働省令第162号)

※2 「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日雇均発0218第2号)

※3 「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日雇均発0218第3号)

※4 事業主行動計画策定指針(平成27年11月20日内閣官房、内閣府、総務省、厚生労働省告示第1号。令和7年改正後)

※5 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行について」(令和8年2月18日雇均発0218第1号)

本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。