はじめに
自社商品の販売促進のため、ウェブサイトにランキング表示や他社商品との比較広告を掲載している企業は少なくありません。もっとも、客観的な調査等の裏付けのないランキング表示や、他社商品に関する虚偽の情報を含む比較広告を行った場合、不正競争防止法(以下「不競法」といいます)に基づく損害賠償責任や、一般の不法行為責任を問われる可能性があります。
今回のコラムで紹介する札幌地裁令和6年2月27日判決は、アイクリームの通信販売事業者が、自社ウェブサイトにおけるランキング表示や、競合他社商品との比較広告について、不競法に基づき損害賠償請求を受けた事案です。
上記札幌地裁判決は、①客観的根拠を欠くランキング表示が「品質誤認表示」(不競法2条1項20号)に該当すること、②虚偽の事実を含む比較広告が不法行為(民法709条)として違法性を有し得ること、③広告代行業者も「競争関係」にある者として不競法上の責任を負い得ること、④広告内容を代行業者に一任したとの主張は通常信用されないこと、などを示した事例です。
ウェブ広告・マーケティングを担当する企業の方、広告制作・運用を受託する代理店の方にとって、参考となる裁判例です。
事案の概要
本件の当事者は、以下のとおりです。
| 当事者 | 概要 |
|---|---|
| 原告 | インターネットやテレビ等を利用した通信販売事業を営む株式会社。平成27年11月から自社のウェブサイトにおいてアイクリーム(以下「原告商品」といいます)を販売 |
| 被告キーリー株式会社 (以下「被告キーリー」といいます) | インターネット広告業務・通信販売業等を営む株式会社。平成29年12月18日から、自社のウェブサイトにおいて、原告商品と競合するアイクリーム(以下「被告商品」といいます)を販売 |
| 被告株式会社リトルギア (以下「被告リトルギア」といいます) | ウェブサイト制作及びコンサルティング等を業とする株式会社。被告キーリーとの間で業務委託契約を締結し、被告キーリーのウェブ広告制作等を受託 |
なお、被告キーリーと被告リトルギアは、代表取締役2名が共通していました。
被告キーリーは、被告商品の販売サイトにおいて、「モニターが選んだアイクリームランキング 1位」「目元の悩みに使ってよかったアイクリームランキング 1位」「目元に優しい化粧品アイクリームランキング 1位」とする表示(以下「本件ランキング表示」といいます)を掲載しました。また、被告リトルギアは、自らが開設するウェブサイトにおいて、「○○と△△を比較してみた」「価格は△△の方が高コスパで良心的」などの標題の下、原告商品と被告商品の価格や契約条件を比較する広告(以下「本件比較広告」といいます)を掲載しました。
原告は、本件ランキング表示が不競法2条1項20号所定の品質誤認表示に、本件比較広告が同項21号所定の信用毀損行為に該当するなどと主張し、被告らに対し、損害賠償金1億円及び遅延損害金の連帯支払を求めて訴えを提起しました。
本件の争点
本件の争点は、以下のとおりです。
| 争点 | 内容 |
|---|---|
| 争点① | 本件ランキング表示の品質誤認表示該当性 |
| 争点② | 本件比較広告の信用毀損行為該当性(原告と被告リトルギアの競争関係の有無、「虚偽の事実」該当性、「営業上の信用を害する」該当性) |
| 争点③ | 被告らによる共同の不正競争及び共同不法行為の成否 |
| 争点④ | 原告の損害の有無及び額 |
裁判所の判断
争点① 本件ランキング表示の品質誤認表示該当性について
裁判所は、本件ランキング表示の根拠とされるウェブサイトが被告ら主張の時期にインターネット上で公開されていたことを認めるに足りる証拠はなく、仮に作成されていたとしても、何ら調査等がなされることなく作成されたものと推認されるとしました。
判決は、以下のとおり判示しています。
上記各証拠は、いずれもウェブページを印字したものであるところ、これらが被告ら主張の時期にインターネット上で公開されていたことを認めるに足りる証拠はない。また、これらのランキングが一定の調査等を経て作成されたものであれば、作成を担当した従業員が退職したとしても、その資料等が何も残されていないことは通常考え難い。そうすると、これらのランキング(乙2の1~3)が被告ら主張の時期に作成されていたと認めることは困難であり、仮に作成されていたとしても、何ら調査等がなされることなく作成されたものと推認されるというべきである。
そのうえで、本件ランキング表示は客観的根拠を欠き、正確性が何ら担保されていないにもかかわらず、被告商品が多くの消費者から高く評価されていることを表示し、需要者において被告商品がそのような評価をされる品質を有する商品であると誤認させる可能性があるものと判断しました。
判決は、以下のとおり判示しています。
本件ランキング表示は、客観的根拠を欠くものであって、正確性が何ら担保されていないにもかかわらず、△△が多くの消費者から高く評価されていることを表示し、需要者において△△がそのような評価をされる品質を有する商品であると誤認させる可能性があるものといえるから、「品質」について「誤認させるような表示」がされていると認められる。
争点②-1 原告と被告リトルギアの競争関係の有無について
裁判所は、不競法2条1項21号所定の営業誹謗行為を行う者は、自らが被害者と同種の営業を営む者でなくても、行為の外形上、被害者と競争関係にある営業者のためにすると認められるような関係を有する者については、競争関係にあるものと解されるとしました。そのうえで、被告リトルギアは、被告キーリーと本件業務委託契約を締結し、被告キーリーのために被告商品の広告・宣伝活動を行っていたものであり、被告らが代表取締役2名を共通にすることも併せ考慮すると、被告リトルギアについても、原告と競争関係にある被告キーリーのために本件比較広告を制作・公開したものとして、原告との競争関係が認められると判断しました。
判決は、以下のとおり判示しています。
不競法2条1項21号所定の営業誹謗行為を行う者は、自らが被害者と同種の営業を営む者でなくても、行為の外形上、被害者と競争関係にある営業者のためにすると認められるような関係を有する者については、競争関係にあるものと解される。
これを本件についてみると、原告と被告キーリーは、いずれもアイクリームの通信販売を行う者であり、需要者を共通にする関係にあるから、上記競争関係が認められるところ、被告リトルギアは、被告キーリーと本件業務委託契約を締結し、被告キーリーのために△△の広告や宣伝活動を行っていたものであり、被告らが代表取締役2名が共通していることも併せ考慮すると、被告リトルギアについても、原告と競争関係にある被告キーリーのために本件比較広告を制作・公開したものとして、上記競争関係があるというべきである。
争点②-2 本件比較広告の内容が「虚偽の事実」に該当するかについて
裁判所は、不競法2条1項21号にいう「虚偽の事実」は、客観的真実と異なる事実を指し、告知・流布の受け手になる者において、真実と異なる認識を招くものといえるか否かを検討すべきものとしたうえで、本件比較広告に記載された事実の受け手としては、原告商品及び被告商品に関する前提知識を有さない一般消費者を想定すべきとしました。そのうえで、本件比較広告における各記載について、以下のとおり判断しました。
| 記載 | 「虚偽の事実」該当性 | 裁判所の判断の理由 |
|---|---|---|
| 「年間定期購入(税抜)3ヶ月ごと3本ずつのお届け」「1本あたり2,533円+送料(合計:7,599円/1年契約)」 | 該当する | 原告商品の「年間購入コース」の1個当たりの価格は2384円であり、一般消費者において、「年間購入コース」が1本当たり2533円であるという真実と異なる認識を招く |
| 「定価では○○と同じだけど…」「単品購入は○○も△△も同じ2,980円ですが」 | 該当しない | 被告商品販売サイトにおいて特段の制約なく被告商品を2980円で単品購入することが可能であること、定期購入においては被告商品の方が安価である事実は真実に反するものではないことからすると、一般消費者において真実と異なる認識を招くものとまではいえない |
| 「1本ずつ届くお試し定期コースでも、△△はいつでも解約OK」「○○は定期コースを途中解約できない!」 | 該当する | 原告商品の「お試し定期コース」においても途中解約が可能であるにもかかわらず、被告商品のみについて途中解約が可能であることを赤字を用いて強調するものであり、一般消費者において、原告商品の「お試し定期コース」においては途中解約ができないという真実と異なる認識を招く |
争点②-3 本件比較広告の内容が原告の「営業上の信用を害する」といえるかについて
裁判所は、不競法2条1項21号にいう「信用」とは、人の経済面における社会的評価、すなわち財産上の義務履行に対する信頼をいうものと解されるところ、原告が主張する事情(原告商品と被告商品の価格差、販売における契約条件の有利不利)が原告の財産上の義務履行に対する信頼を損ねるとはいえないとして、本件比較広告における記載は「営業上の信用を害する」ものに当たらないと判断しました。
判決は、以下のとおり判示しています。
不競法2条1項21号にいう「信用」とは、人の経済面における社会的評価、すなわち財産上の義務履行に対する信頼をいうものと解されるところ、原告が主張する事情(○○と△△の価格差、販売における契約条件の有利不利)が原告の財産上の義務履行に対する信頼を損ねるとはいえないから、本件比較広告における記載は「営業上の信用を害する」ものに当たらない。
争点③ 被告らによる共同の不正競争及び共同不法行為の成否について
(1)本件ランキング表示に係る共同の不正競争の成否について
裁判所は、本件ランキング表示について、被告キーリーは被告商品販売サイトの営業主体として、被告リトルギアは本件ランキング表示をインターネット上に公開した者として、それぞれ不競法2条1項20号所定の不正競争が成立するとしました。被告キーリーが広告の制作等を被告リトルギアに一任していたため広告内容を認識していなかったとの主張については、自らの商品を一般消費者に販売するために開設したウェブサイトにおける宣伝広告の内容を把握していないことは通常考え難く、信用性を欠くとして採用しませんでした。そして、これらの行為は客観的関連共同性を有することは明らかであるとして、被告らは共同して(民法719条前段)不正競争を行ったものと認定しました。
判決は、以下のとおり判示しています。
被告キーリーは、広告の制作等を被告リトルギアに一任していたため、その広告内容を認識していなかった旨を主張するが、自らの商品を一般消費者に販売するために開設したウェブサイトにおける宣伝広告の内容を把握していないことは通常考え難く、当該主張は信用性を欠くというべきである。
(2)本件比較広告に係る共同不法行為の成否について
本件比較広告については、不競法2条1項21号の信用毀損行為には該当しないものの、「虚偽の事実」に当たる違法記載部分については、自由競争として許容される範囲を逸脱する態様による広告であって、一般不法行為(民法709条)としての違法性を有するとしました。そして、被告キーリーについては、広告主として一般消費者に対し商品の売買の誘引をする者として、信義則上、その内容に真実と異なる点がないか確認すべき注意義務を負うとして、過失による不法行為責任を認めました。
判決は、以下のとおり判示しています。
被告キーリーは、本件比較広告の広告主として一般消費者に対し△△の売買の誘引をする者として、信義則上、その内容に真実と異なる点がないか確認すべき注意義務を負うというべきであり、少なくともかかる注意義務を怠った過失による不法行為が認められる。
争点④ 原告の損害の有無及び額について
裁判所は、本件ランキング表示及び本件比較広告の違法記載部分による原告の損害額は、性質上その額を立証することが極めて困難なものといえるとして、民事訴訟法248条による「相当な損害額」の認定を行いました。その考慮要素は、以下のとおりです。
| 考慮要素 | 内容 |
|---|---|
| 本件比較広告の内容 | 原告商品の購入を検討する需要者に対し、定期購入した際の価格や解約の可否について真実と異なり、かつ原告商品の購入を妨げる認識を与えるものであること |
| 検索誘導の仕組み | 本件比較広告は冒頭の語が「○○」であるため、「○○」の語で指名検索した需要者が本件比較広告を閲読し、原告商品の購入をやめて被告商品を購入するに至った可能性があること |
| 本件ランキング表示の影響度 | 本件ランキング表示それ自体が需要者の購買意欲に影響する度合いはかなり限定的であるものの、本件比較広告におけるリンクから被告商品販売サイトへ転移した需要者に対しては、相応の影響を及ぼすこと |
| 比較広告経由の購入実績 | 平成30年11月22日から令和元年10月22日までの期間における本件比較広告のリンクから被告商品販売サイトに転移して被告商品を購入した件数が79件存在し、少なくともその半数程度は違法記載部分により原告商品の購入をやめて被告商品を購入するに至ったと推認されること |
裁判所は、これらの事情を踏まえ、40名が1年間で購入する平均累積購入額(12か月後LTV)に対する限界利益に概ね相当する36万円が「相当な損害額」であると認定しました。
コメント
1 本判決の意義
(1)本判決の全体的意義
本判決は、ウェブ広告における①客観的根拠を欠くランキング表示、②競合商品との虚偽の比較表示の違法性について、不正競争防止法の枠組みと一般不法行為の枠組みの双方から検討し、その法的責任の範囲を示した事例として、実務上参考になります。また、広告内容を代行業者に一任したとの広告主側の主張を退け、信義則上の注意義務違反による不法行為責任を認めた点も注目されます。
(2)客観的根拠のないランキング表示は「品質誤認表示」に当たり得ること
本判決は、「モニターが選んだ○○ランキング 1位」といった表示について、客観的な調査等の裏付けがなく、その正確性が担保されていないにもかかわらず、当該商品が消費者から高く評価されていると表示する行為は、「品質」について「誤認させるような表示」(不競法2条1項20号)に該当するとしました。
(3)広告代行業者も「競争関係」にある者として責任を負い得ること
不競法2条1項21号(信用毀損行為)における「競争関係」は、同種の営業を営む者に限定されず、被害者と競争関係にある営業者のためにすると認められる関係を有する者も含まれます。ウェブ広告の制作・運用を受託する代行業者も、行為の外形上、クライアント企業のために広告を制作・公開していると認められる場合は、原告との「競争関係」にある者として責任を問われ得る点に留意が必要です。
(4)比較広告における「虚偽の事実」の判定は一般消費者目線で行われること
比較広告における記載が「虚偽の事実」に該当するか否かは、商品に関する前提知識を有さない一般消費者の認識を基準に判断されます。本判決では、コース名等を正確に記載していたとしても、一般消費者がどのコースの価格なのかを誤認するおそれがあれば「虚偽の事実」に当たるとされました。業界関係者には当然に理解できる記載であっても、一般消費者の視点で紛らわしい記載がないかを確認することが求められます。
(5)「営業上の信用を害する」該当性は限定的に解されていること
本判決は、「営業上の信用」とは人の経済面における社会的評価、すなわち財産上の義務履行に対する信頼をいうと解したうえで、価格差や契約条件の有利不利に関する記載は、これに当たらないとしました。本判決の理解によれば、競合他社との価格や契約条件の優劣に関する比較広告については、不競法2条1項21号の信用毀損行為の枠組みでは捕捉されないことになります。
(6)「虚偽の事実」を含む比較広告は一般不法行為として違法性を有し得ること
本判決は、不競法上の信用毀損行為には該当しないとしつつも、比較広告のうち「虚偽の事実」に当たる記載部分(具体的には、競合他社商品の年間購入コースの価格について真実と異なる記載、及び、お試し定期コースの解約可否について真実と異なる認識を招く記載)について、自由競争として許容される範囲を逸脱する態様による広告として、一般不法行為(民法709条)としての違法性を認めました。「不競法上の信用毀損行為に該当しないから問題がない」という帰結にはならず、虚偽の事実が含まれる場合は別途不法行為責任を問われ得る点に注意が必要です。
(7)広告主は広告内容について信義則上の確認義務を負うこと
本判決は、広告主は一般消費者に対し商品の売買の誘引をする者として、信義則上、広告内容に真実と異なる点がないか確認すべき注意義務を負うとしました。広告代行業者に広告の制作・運用を一任していたことは、広告主の免責事由となりません。
(8)損害額は民訴法248条により「相当な損害額」として認定され得ること
本件のように、広告による売上減少の立証が性質上極めて困難な場合、裁判所は民事訴訟法248条により「相当な損害額」を認定することができます。本判決では、比較広告経由の購入件数や流入数等の客観的な数値を手がかりに、40名分の12か月後LTVに対する限界利益相当額が損害と認定されました。
2 企業に求められる対応
本判決を踏まえ、ウェブ広告を行う企業・広告代行業者において、以下のような対応が考えられます。
| 場面 | 対応のポイント |
|---|---|
| ランキング表示を行う際 | 客観的な調査等の裏付けを確保し、調査方法・調査主体・調査結果を記録・保存すること |
| 比較広告を行う際 | 一般消費者の視点で紛らわしい記載がないか検証し、競合商品の価格・契約条件について最新かつ正確な情報に基づき記載すること |
| 広告制作を外部委託する際 | 広告内容について広告主自身が事前に確認するプロセスを整備し、代行業者任せにしないこと |
| 広告制作を受託する際 | 表示内容について客観的根拠を確認し、根拠資料を保存しておくこと |
| 紛争に備えた記録管理 | 広告表示の内容・掲載期間・アクセス数・購入件数等の客観的データを適切に保存しておくこと |
おわりに
ウェブ広告をめぐる不正競争防止法・景品表示法・民法上の論点は、近年ますます多様化・複雑化しています。ランキング広告・比較広告・口コミ投稿・アフィリエイト広告・ステルスマーケティング等、広告手法の発展に伴い、法的リスクを検討すべき場面は広がっています。
広告表示を行う前の検討、取引先・広告代行業者との契約設計、他社から指摘を受けた場合の対応、自社商品に関する不当な広告を発見した場合の対応など、実務上の問題は多岐にわたります。早期に弁護士に相談することで、紛争の予防・早期解決が可能となります。
当事務所では、不正競争防止法・景品表示法をはじめとする広告関連法規について、企業からのご相談・ご依頼を幅広くお受けしております。広告表示のリーガルチェック、取引先との契約設計、紛争対応まで、実務に即したサポートを提供いたします。ご関心のある方は、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、ご連絡ください。
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