【本コラムのポイント】
- ・2026年3月、消費者庁は、エクスコムグローバル株式会社(「イモトのWiFi」)に対し、不当なNo.1表示を理由に約1.7億円の課徴金納付命令を発出しました。
- ・調査会社に委託した調査であっても、利用経験のない回答者にウェブサイトの印象を問う「イメージ調査」を根拠としたNo.1表示は、優良誤認表示として景品表示法に違反します。
- ・広告主(事業者)は、委託先の調査手法が適切かを自ら確認する義務を負う点に留意する必要があります。
1. エクスコムグローバルに対する課徴金納付命令の概要
消費者庁は、2026年(令和8年)3月12日、エクスコムグローバル株式会社(以下「エクスコムグローバル」)に対し、同社が提供する「イモトのWiFi」のレンタルサービスに関するNo.1表示が景品表示法に違反するとして、1億7,262万円の課徴金納付命令を発出しました(消費者庁 令和8年3月12日公表)。
エクスコムグローバルに対しては、2024年(令和6年)2月28日付けで、同一の違反行為(優良誤認表示)について措置命令(No.1表示の取りやめ、一般消費者への周知徹底、再発防止策の実施)が行われていました(消費者庁 令和6年2月28日公表)。今回の課徴金納付命令は、この違反行為について、景品表示法第8条に基づき算出された課徴金の納付を命じるものです。
実務担当者が押さえるべきポイント: 措置命令と課徴金納付命令は別個の処分です。措置命令に従って表示を是正しても、過去の違反行為に対する課徴金の納付義務は免除されません。
2. No.1表示の取り締まりが強化されている背景
近年、「顧客満足度No.1」のように、第三者の主観的評価を指標とするNo.1表示が広告で利用されることが増えてきています。もっとも、このようなNo.1表示は、合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合には、景品表示法上の不当表示(優良誤認表示)に該当します。
消費者庁は、2024年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、No.1表示に対する規制の考え方を明確に示しました。
今回のエクスコムグローバルに対する約1.7億円の課徴金納付命令は、こうした取り締まり強化の流れの中で発出されたものです。
3. エクスコムグローバルの違反行為の内容
問題となった表示
消費者庁が認定した事実によると、エクスコムグローバルは、旅行ガイドブックに掲載した広告において、以下の表示を行っていました。
| 表示内容 |
|---|
| 「お客様満足度No.1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」 |
| 「海外旅行者が選ぶNo.1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」 |
| 「顧客対応満足度No.1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」 |
これらの表示は、あたかも、サービスを実際に利用した者を対象とした調査の結果、同社のサービスがそれぞれ第1位であるかのような印象を消費者に与えるものでした。
調査の実態
しかし、実際には、エクスコムグローバルが委託した調査会社の調査は、回答者がサービスを実際に利用したことがあるかどうかを確認せず、同種のサービスを提供する事業者のウェブサイトの印象を問うだけのものでした(いわゆる「イメージ調査」)。
消費者庁の判断
No.1表示が「合理的な根拠」に基づくと認められるためには、①No.1表示の根拠とされている調査が、社会通念上妥当と認められる方法等で実施されていること、及び、②表示内容が調査結果と適切に対応していることの2つの要件を満たす必要があります。
消費者庁は、以下の2点から、エクスコムグローバルのNo.1表示は合理的な根拠に基づくものではないと判断しました。
| 判断のポイント | 内容 |
|---|---|
| 調査方法の問題 | 調査対象者の選定(利用経験の未確認)及び調査方法(イメージ調査)に問題があった |
| 表示と調査結果の不一致 | 「顧客満足度」「海外旅行者が選ぶ」等の表示から消費者が受ける印象と、実際の調査内容が対応していなかった |
実務担当者が陥りがちなミス: 「※」印をつけて注記を添えれば問題ないと考える担当者は少なくありません。しかし、消費者庁は、小さな注記や但し書きで主たる表示が消費者に与える誤認を打ち消すことはできないという立場を示しています(消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」p.20〜21参照)。
4. 課徴金の算出根拠
今回の課徴金は、景品表示法第8条の規定に基づき、以下のとおり算出されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課徴金対象行為をした期間 | 令和2年2月12日〜令和6年5月7日 |
| 課徴金対象行為をやめてから最後に取引をした日 | 令和6年6月21日 |
| 課徴金対象期間 | 令和3年6月22日〜令和6年6月21日(注) |
| 課徴金対象行為に係る役務の売上額 | 57億5,428万9,344円 |
| 課徴金額(売上額の3%、1万円未満切捨て) | 1億7,262万円 |
(注)課徴金対象期間が3年を超えるときは、当該期間の末日から遡って3年間が課徴金対象期間となります(景品表示法第8条第2項)。
実務担当者への注意点: 課徴金は、違反行為に係る売上額に一律3%を乗じて算出されます。そのため、売上規模が大きいサービスについて長期間にわたりNo.1表示を行っていた場合、課徴金額は本件のように高額になります。「表示を直ちに取りやめれば課徴金は小さくなる」と考えるのは正しいですが、発覚後に取りやめても、過去の売上額に基づく課徴金は免れません。違反の早期発見と是正が重要です。
5. 「調査会社に任せていた」は免責されるか
エクスコムグローバルの主張
エクスコムグローバルは、課徴金納付命令に対し、以下の点を理由に法的対抗措置を検討する旨コメントしています。
・外部の調査会社に調査を委託し、その結果に基づいて広告表示を行っていた
・調査会社に対して表示の適法性について問い合わせるなど、注意を尽くしていた
景品表示法上の考え方
しかし、景品表示法上の規制対象はあくまで表示を行った事業者(広告主)です。調査会社の説明を信頼して表示を行った場合であっても、原則として広告主が責任を負います。
課徴金の免除が認められるのは、「相当の注意を怠ったものでないと認められるとき」(景品表示法第8条第1項ただし書)に限られますが、実務上、このハードルは高いのが実情です。
この点について、消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(p.24〜25)は、広告主が「調査のことを聞いても分からない」、「他社も同じ調査会社を利用しているから大丈夫」、「調査会社が適法と言っている」等の理由から自ら調査内容を十分に確認していない実態を問題視した上で、次のように述べています。
No.1表示等の根拠を確認する際は、単に、第三者機関による調査が実施されていることのみを確認するだけでは不十分であり、調査内容が表示内容と適切に対応しているかどうかなど、自らの責任において当該No.1表示等が合理的な根拠を有しているといえるかを確認する必要がある。(同報告書p.25)
すなわち、調査会社への委託があったとしても、広告主自身が調査内容を確認する義務を負うことが明示されています。
間違いやすいポイント: 「調査会社が適法と言っていた」「弁護士がチェック済みと聞いていた」という説明は、実務上、免責事由として機能しにくい点に注意が必要です。同報告書(p.13〜14)では、「結果が悪ければ返金する」「1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する」といった勧誘を行う調査会社の存在も報告されており、調査会社の選定自体にリスクが潜んでいます。
6. No.1表示を行う場合に確認すべき事項
前述の通り、No.1表示が合理的な根拠に基づくと認められるためには、以下の2つの要件をいずれも満たす必要があります(消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」p.17 脚注2参照)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (A) 調査方法の妥当性 | 調査が社会通念上妥当と認められる方法で実施されていること |
| (B) 表示内容と調査結果の対応 | 表示の内容が調査結果と適切に対応していること |
特に、「顧客満足度No.1」のような第三者の主観的評価を指標とするNo.1表示については、上記(A)の要件を充足するために、以下の点を確認する必要があります(同報告書p.17〜21)。
| 確認事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 比較対象の選定 | 市場における主要な同種商品・サービスが比較対象に含まれているか。検索上位のみを選定するなど恣意的な選定になっていないか |
| 調査対象者の選定 | 無作為に抽出された者を対象としているか。自社顧客や社員が含まれていないか。「顧客満足度」を謳う場合、実際の利用者を対象としているか |
| 調査方法の公平性 | 自社を選択肢の最上位に固定するなどの回答誘導がないか。1位が出るまで調査を繰り返していないか |
| 表示と調査の整合性 | 表示の内容(何を訴求しているか)と調査で実際に測定した内容が対応しているか |
自社点検のためのチェックリスト
現在No.1表示を行っている事業者は、以下の点を確認することが有益です。
| No. | 確認事項 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 1 | 調査報告書の保管 | No.1表示の根拠となる調査報告書を保管しているか |
| 2 | 調査内容の自社確認 | 調査報告書の内容(調査対象者・調査方法・比較対象の選定基準)を自社で確認したか |
| 3 | 比較対象の妥当性 | 比較対象に主要な競合が含まれているか |
| 4 | 調査対象者の適格性 | 「顧客満足度」等の表示について、実際の利用者を対象とした調査か(イメージ調査のみではないか) |
| 5 | 調査対象者の抽出方法 | 調査対象者は無作為に抽出されているか(自社顧客・社員が含まれていないか) |
| 6 | 調査会社の選定 | 調査会社が「1位保証」「結果が悪ければ返金」等の条件を提示していないか |
| 7 | 表示方法の適切性 | 注記・但し書きに依存した表示になっていないか |
| 8 | 根拠資料の事後提出体制 | 表示の根拠資料を事後的に消費者庁に提出できる状態で保管しているか |
7. おわりに
本件は、調査会社に委託した調査の結果に基づくNo.1表示であっても、広告主が景品表示法上の責任を免れないこと、そして、課徴金が高額に上り得ることを改めて示した事例です。
No.1表示は消費者への訴求力が高い一方で、調査設計や表示内容に問題があれば、措置命令のみならず課徴金納付命令の対象ともなります。措置命令を受けた場合には社名と処分内容が消費者庁のウェブサイトで公表されるため、レピュテーションへの影響も避けられません。
No.1表示を行っている事業者、またはこれから行うことを検討している事業者は、本コラムを参考に、調査内容と表示内容の整合性を今一度確認されることをお勧めします。
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