03-6550-9202 (受付時間 平日10:00〜17:00)

お問い合わせ

限定提供データとは?〜営業秘密との違いとデータビジネスの保護を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

データを収集・整備し、他社に提供したり、共有して活用したりするビジネスが広がっています。しかし、「他社に提供したデータを不正に使われた」「秘密ではないが価値あるデータを勝手に流用された」というとき、そのデータは法律で守られるのでしょうか。特許や著作権では守りにくく、他社との共有が前提のため「営業秘密」にもあたりにくい——そんなデータのためにあるのが、「限定提供データ」の保護です。

特定の相手に業として提供するデータで、電磁的方法により相当量蓄積・管理されているものは、不正競争防止法の「限定提供データ」(2条7項)として保護され、不正な取得・使用・開示に対して差止め・損害賠償を求めることができます。営業秘密とは、要件も守り方も異なります。

今回のコラムでは、限定提供データのしくみと営業秘密との違いを、条文・経済産業省の指針にもとづいて解説いたします。

限定提供データとは、どのようなデータですか?

限定提供データとは、業として特定の相手に提供する情報として、電磁的方法により相当量蓄積・管理されている、技術上または営業上の情報(営業秘密を除く)をいいます。共有を前提とする価値あるデータを守るための制度です。

条文は次のとおりです。

7 この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)をいう。

この定義から、限定提供データには次の要件が必要です。

要件内容
①限定提供性業として「特定の者」に提供する情報であること(相手を限定せず無償で広く提供するデータは対象外)
②相当量蓄積性電磁的方法により「相当量」蓄積され、蓄積によって価値が生じていること
③電磁的管理性特定の者にのみ提供する意思が、アクセス制限などにより第三者にも認識できる形で管理されていること
④技術上又は営業上の情報利活用される(または期待される)情報であること(営業秘密は除く)

限定提供データの保護は、平成30年改正で導入されました。IoTやAIの進展でデータの価値が高まる中、特許・著作権では守りにくく、他社との共有を前提とするため営業秘密にもあたりにくい価値あるデータを、不正な流通から守るためのものです。

営業秘密とは、どう違うのですか?

営業秘密は「秘密として管理」され「公然と知られていない」ことが必要で、秘匿が前提です。これに対し、限定提供データは、他社との共有を前提とし、「電磁的管理性」が要件で、非公知性は求められません。同じ情報が両方にあたることはなく、営業秘密は限定提供データから除かれます。

両者の違いを整理すると、次のとおりです。

項目営業秘密(2条6項)限定提供データ(2条7項)
前提秘匿(秘密として管理)特定の相手との共有
主な要件秘密管理性・有用性・非公知性限定提供性・相当量蓄積性・電磁的管理性
非公知性必要不要
管理の方法秘密として管理(マル秘表示・アクセス制限など)電磁的な管理(アクセス制限など)
両者の関係営業秘密は限定提供データから除外される

もっとも重要な違いは、営業秘密が「秘密にしておくこと」を前提とするのに対し、限定提供データは「特定の相手に提供・共有すること」を前提とする点です。データビジネスでは、多くの相手にデータを提供するため秘密管理性を満たしにくいことがありますが、そうしたデータでも限定提供データとして保護され得ます。なお、条文上、営業秘密は限定提供データから除かれるため、訴訟では、主位的に営業秘密の侵害を、予備的に限定提供データの侵害を主張する、という組み立てもあり得ます。営業秘密の要件は営業秘密の3要件とはをご覧ください。

どのような行為が規制されますか?

不正取得、著しい信義則違反による使用・開示、不正の介在を知った転得者による取得・使用・開示などが規制されます。保有者の保護と取引の安全のバランスをとって、対象行為が定められています。

規制される行為の類型を整理すると、次のとおりです。

類型内容根拠(2条1項)
不正取得型窃取・詐欺・強迫など不正の手段による取得、その使用・開示11号
著しい信義則違反型提供を受けた者が、図利加害目的で、管理任務に違反して使用、または図利加害目的で開示14号
取得時悪意の転得型不正取得・不正開示の介在を知って取得、その使用・開示12号・15号
取得時善意の転得型後で不正の介在を知り、権原の範囲を超えて開示13号・16号

これらの類型は、営業秘密の規制(2条1項4号〜10号)と似ていますが、データが共有を前提とする性質を踏まえ、より悪質性の高い行為に絞られている部分があります。データを提供・利用する際は、契約で使用・開示の範囲を明確にしておくことが、後のトラブル防止に有効です。

限定提供データは、刑事罰の対象になりますか?

限定提供データに係る不正競争(2条1項11号〜16号)は、不正競争防止法の中でも刑事罰の対象ではなく、差止め・損害賠償といった民事上の手段で対応する類型です。

営業秘密の侵害は刑事罰の対象になりますが、限定提供データの不正利用は、当事者間の民事的請求に委ね、刑事罰の対象としていない類型に位置づけられています。したがって、対応は、差止め(3条)・損害賠償(4条・5条)といった民事手段が中心になります。

なお、限定提供データの「使用」に対する差止請求権には、営業秘密と同様に消滅時効があり、侵害の事実と行為者を知ったときから3年、行為の開始から20年で時効消滅します(15条2項)。放置せず、早めの対応が重要です。差止め・仮処分の詳細は差止請求と仮処分をご覧ください。

令和5年改正で、何が変わりましたか?

令和5年改正により、秘密として管理されているビッグデータも、限定提供データとして保護を受けられるようになりました。保護の範囲が広がっています。

限定提供データは、当初、「秘密として管理されているもの」を除くとされていました。しかし、これでは、秘密として管理されていても、公然と知られているなどの理由で営業秘密にはあたらないデータ(ビッグデータなど)が、営業秘密としても限定提供データとしても保護されないという「保護の隙間」が生じていました。そこで、令和5年改正により、除外の対象が「秘密として管理されているもの」から「営業秘密」に改められ、こうした秘密管理されたビッグデータについても、限定提供データとして保護を受けられるようになりました。これにより、社内で秘密管理しつつ特定の相手に提供するようなデータについても、限定提供データによる保護の余地が広がっています。

改正の全体像は令和5年改正の実務ポイントで解説しています。

弁護士に相談するタイミング

データを提供・利用するビジネスを始める段階、そしてデータの不正利用が疑われた段階の両方で、弁護士のサポートが役立ちます。

弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
データ提供・利用を始めるとき限定提供データとして保護される形での管理・契約の設計
不正利用が疑われるとき限定提供データ該当性の検証、差止め・損害賠償の検討
契約の整備データ提供契約での使用・開示範囲の明確化
予防電磁的管理(アクセス制限など)の体制づくり

データビジネスでは、「限定提供データとして保護される形」で管理・提供しておくことが、いざというときの備えになります。とくに、電磁的管理(アクセス制限など)の体制と、データ提供契約での使用・開示範囲の明確化が重要です。こうした設計と運用には、日常的に相談できる顧問契約が有効です。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 他社に提供しているデータを不正利用されました。営業秘密でなくても保護されますか?

保護される場合があります。業として特定の相手に提供するデータで、電磁的方法により相当量蓄積・管理されているものは、不正競争防止法の「限定提供データ」(2条7項)として保護され、不正な取得・使用・開示に対して差止め・損害賠償を求めることができます。他社との共有を前提とするため営業秘密にあたりにくいデータでも、対象になり得ます。

Q2. 限定提供データと営業秘密は、何が違いますか?

営業秘密は「秘密として管理」され「公然と知られていない」ことが必要で、秘匿が前提です。これに対し、限定提供データは、特定の相手との共有を前提とし、「電磁的管理性」が要件で、非公知性は求められません。同じ情報が両方にあたることはなく、営業秘密は限定提供データから除かれます。

Q3. 限定提供データとして守られるには、何が必要ですか?

①業として特定の相手に提供する情報であること(限定提供性)、②電磁的方法により相当量蓄積されていること(相当量蓄積性)、③特定の相手にのみ提供する意思がアクセス制限などにより第三者にも認識できる形で管理されていること(電磁的管理性)、④技術上または営業上の情報であること(営業秘密を除く)が必要です。

Q4. 限定提供データの不正利用は、刑事告訴できますか?

できません。限定提供データに係る不正競争(不正競争防止法2条1項11号〜16号)は、刑事罰の対象ではなく、差止め・損害賠償などの民事上の手段で対応する類型です。対応は民事が中心になります。

Q5. 令和5年改正で、限定提供データの保護はどう変わりましたか?

令和5年改正により、秘密として管理されているビッグデータも、限定提供データとして保護を受けられるようになりました。これにより、社内で秘密管理しつつ特定の相手に提供するようなデータについても、限定提供データによる保護の余地が広がっています。

「共有前提のデータ」を守る制度

限定提供データは、特定の相手に業として提供するデータで、電磁的方法により相当量蓄積・管理されているものを保護する制度です(2条7項)。秘匿を前提とする営業秘密とは異なり、他社との共有を前提とするデータを守れる点に特徴があります。不正な取得・使用・開示に対して差止め・損害賠償を求めることができますが、刑事罰の対象ではなく民事での対応が中心です。令和5年改正で、秘密管理されたビッグデータにも保護が広がりました。データビジネスでは、限定提供データとして保護される形での管理・契約が、いざというときの備えになります。

当事務所では、限定提供データとして保護される形での管理・提供契約の設計、データの不正利用への差止め・損害賠償の検討、電磁的管理(アクセス制限など)の体制づくりなど、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。データの保護についてお考えの方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

関連記事

  1. 不正競争防止法とは?10類型と企業が取れる対抗手段
  2. 営業秘密の3要件とは?秘密管理性・有用性・非公知性
  3. 令和5年改正の実務ポイント|デジタル空間の模倣・損害賠償強化ほか
  4. 模倣・侵害を今すぐ止めたい|差止請求・仮処分の使い方