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産地・品質を偽った表示は違法?〜誤認惹起行為(2条1項20号)を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

「競合他社が、国産でない原料を国産と偽って表示している」「実際には持っていない品質・性能を、あるかのように表示して売っている」——こうした偽りの表示は、正直に表示している事業者を競争上不利にし、市場をゆがめます。「これは景品表示法の話では?」と思われるかもしれませんが、事業者どうしの問題として、不正競争防止法でも対応できます。

商品の原産地・品質・内容・製造方法などについて誤認させる表示をする行為は、不正競争防止法2条1項20号の「誤認惹起行為」にあたり、被害を受けた事業者が差止め・損害賠償を求めることができます。行政が消費者保護のために規制する景品表示法とは、目的も担い手も異なります。

今回のコラムでは、誤認惹起行為の要件と、景品表示法との違いを解説いたします。

産地・品質を偽った表示は、違法ですか?

商品や役務の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量などについて、誤認させるような表示をする行為は、不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為として違法です。被害を受けた競合事業者は、差止め・損害賠償を求めることができます。

条文は次のとおりです。

二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

規制の対象になる表示事項を整理すると、次のとおりです。

対象表示事項
商品原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量
役務質・内容・用途・数量

この規定は、商品などの品質・内容を偽る表示により需要を不当に喚起し、正当な表示をする事業者を競争上不利にすることを防ぐためのものです。この誤認惹起行為の禁止は、パリ条約やマドリッド協定に由来する規制でもあります。「国産」「◯◯産」といった産地の偽り、実際にない品質・性能の表示などが典型例です。

景品表示法とは、どのように違うのですか?

景品表示法は、行政(消費者庁)が一般消費者を保護するために不当表示を規制するものです。これに対し、不正競争防止法の誤認惹起行為は、事業者間の公正な競争を確保するためのもので、被害を受けた事業者自身が差止め・損害賠償を求める点が異なります。

両者の違いを整理すると、次のとおりです。

項目不正競争防止法(2条1項20号)景品表示法
目的事業者間の公正な競争の確保一般消費者の利益の保護
主な担い手被害を受けた事業者行政(消費者庁など)
主な手段事業者による差止め・損害賠償措置命令・課徴金などの行政規制
規制範囲原産地・品質・内容等(条文に列挙)品質・規格その他の内容に加え、価格などの取引条件も対象

景品表示法が一般消費者による自主的・合理的な選択の確保を目的とするのに対し、不正競争防止法は事業者間の公正な競争の確保を特徴とし、消費者には原告適格がありません。つまり、同じ「偽りの表示」でも、消費者保護の観点から行政が動くのが景品表示法、事業者が競争上の被害を回復するために使うのが不正競争防止法、という役割の違いがあります。同じ事案について、両方が問題になることもあります。

誰が、どのようなときに請求できますか?

その偽りの表示によって営業上の利益を侵害された(またはそのおそれがある)事業者が、差止め・損害賠償を求めることができます。競争関係にあり、偽りの表示によって売上げなどに影響を受ける立場にあることがポイントです。

請求できる立場と手段を整理すると、次のとおりです。

手段内容根拠
差止め誤認させる表示の使用停止、表示をした商品の販売停止3条
損害賠償故意・過失による損害の賠償。5条の推定規定を利用4条・5条
信用回復措置信用を害された場合の措置14条

参考になるのが、原産地の誤認が問題になった氷見うどん事件(名古屋高金沢支判平成19年10月24日)で、原産地を誤認させる表示によって被害を受けた事業者の損害について、5条2項(侵害者の利益を損害と推定する規定)が適用されました。損害額の考え方は損害賠償の計算をご覧ください。

損害賠償は認められやすいのですか?

認められる場合がありますが、損害額の立証は難しいことが多いです。競合他社が複数いる市場では、偽りの表示がなければ自社だけが売れたはずだ、という関係を示しにくいためです。

誤認惹起行為による損害は、算定が難しい面があります。市場に競合他社が複数いる場合、その表示がなかったとしても、自社の売上げだけが特に増えたはずだ、という定型的な関係を認めにくいためです。実際、表示によって競合他社に損害が生じたとはいえないと判断された例(電子ブレーカ事件・大阪地判平成24年9月13日)もあります。

もっとも、市場での自社の地位や、商品の競合関係などの事情によっては、損害が認められることもあります。損害額の立証が難しい場合には、裁判所が相当な損害額を認定する規定(9条)を活用することも考えられます。損害の立証の見通しを含めて、事案ごとの検討が必要です。

偽りの表示は、刑事罰の対象になりますか?

不正の目的で原産地などを誤認させる表示をする行為などは、刑事罰(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科)の対象になり得ます。

不正競争防止法は、誤認惹起行為のうち一定のものを刑事罰の対象としています。具体的には、不正の目的で混同惹起・誤認惹起を行った場合や、商品の原産地・品質などについて誤認させる虚偽の表示をした場合などが、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象とされています(21条3項1号・5号)。刑名は、令和4年の刑法改正(令和7年6月1日施行)により「拘禁刑」に一本化されています。

もっとも、実務上の中心は、被害を受けた事業者による民事の差止め・損害賠償です。刑事・民事の使い分けや、景品表示法・行政の関与も含めて、総合的な検討が必要になります。

弁護士に相談するタイミング

競合の偽りの表示に気づいたとき、そして自社の表示が問題ないか確認したいときの両方で、弁護士のサポートが役立ちます。

弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
競合の偽表示に気づいたとき誤認惹起の成否の検証、証拠の確保、差止め・損害賠償の検討
自社表示のチェック自社の広告・表示が誤認惹起や景品表示法に触れないかの確認
予防表示ルールの整備、広告表現のチェック体制づくり

表示の問題は、競合を攻める場面だけでなく、自社が思わぬ形で「偽りの表示だ」と指摘されるリスクもあります。自社の広告・表示を平時からチェックする体制を整えておくことが、攻守両面で有効です。こうした継続的な対応には、日常的に相談できる顧問契約が役立ちます。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 競合が産地や品質を偽って表示しています。景品表示法とは別に、不正競争防止法で争えますか?

争えます。商品の原産地・品質・内容・製造方法などについて誤認させる表示は、不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為にあたり、被害を受けた事業者が差止め・損害賠償を求めることができます。行政が消費者保護のために動く景品表示法とは別に、事業者が競争上の被害を回復するために使えます。

Q2. 景品表示法と不正競争防止法は、何が違うのですか?

景品表示法は一般消費者の保護を目的とし、行政(消費者庁など)が措置命令・課徴金などで規制します。これに対し、不正競争防止法の誤認惹起行為は、事業者間の公正な競争の確保を目的とし、被害を受けた事業者自身が差止め・損害賠償を求める点が異なります。同じ事案で両方が問題になることもあります。

Q3. 誰が請求できますか?

その偽りの表示によって営業上の利益を侵害された、またはそのおそれがある事業者です。競争関係にあり、偽りの表示によって売上げなどに影響を受ける立場にあることがポイントです。消費者には、不正競争防止法にもとづく原告適格はありません。

Q4. 損害賠償は認められやすいですか?

認められる場合もありますが、損害額の立証は難しいことが多いです。競合他社が複数いる市場では、偽りの表示がなければ自社だけが売れたはずだ、という関係を示しにくいためです(電子ブレーカ事件など)。一方で、原産地の誤認について損害が認められた例(氷見うどん事件・名古屋高金沢支判平成19年10月24日)もあります。立証が難しい場合は、裁判所が相当な損害額を認定する規定(9条)の活用も考えられます。

Q5. 偽りの表示は、刑事罰の対象になりますか?

なる場合があります。不正の目的で原産地などを誤認させる表示をする行為などは、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象になり得ます(不正競争防止法21条3項)。もっとも、実務上の中心は、被害を受けた事業者による民事の差止め・損害賠償です。

「事業者どうしの競争」の武器として

商品の原産地・品質・内容などについて誤認させる表示は、不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為として、被害を受けた事業者が差止め・損害賠償を求めることができます。一般消費者の保護を目的に行政が動く景品表示法とは、目的も担い手も異なり、事業者が競争上の被害を回復するための武器になります。損害額の立証には難しさもありますが、事案によっては相当な損害額の認定などで対応できます。

当事務所では、競合の産地・品質偽装表示への差止め・損害賠償請求、誤認惹起の成否や損害立証の見極め、自社の広告・表示が誤認惹起や景品表示法に触れないかのチェックなど、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。競合の偽りの表示にお困りの方、自社の表示が問題ないか確認したい方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

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