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自社名に似たドメインを取られた場合、どうするか?〜ドメイン名の不正取得への対抗手段を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

「自社の商標そっくりのドメインを第三者に取られてしまった」「高値で買い取れと持ちかけられている」「そのドメインで無関係なサイトが運営され、顧客が混乱している」——インターネット上の“住所”であるドメイン名をめぐるトラブルは、ブランドを守るうえで見過ごせません。

他人の商品・営業を表示する名称(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を、不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で取得・保有・使用する行為は、不正競争防止法2条1項19号の「ドメイン名の不正取得等」にあたり、使用の差止めや登録の抹消を求めることができます

今回のコラムでは、ドメイン名の不正取得への対抗手段と限界を、条文・裁判例にもとづいて解説いたします。

似たドメインを取られたら、取り戻せますか?

そのドメインが自社の名称・商標と同一・類似で、相手に「不正の利益を得る目的」または「他人に損害を加える目的」がある場合、不正競争防止法にもとづき、使用の差止めや登録の抹消を求めることができます。ただし、後述のとおり「移転登録」を求めるのは難しいのが実務です。

条文は次のとおりです。

十九 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

要件を整理すると、次のとおりです。

要件内容
特定商品等表示他人の氏名・商号・商標・標章など、商品・役務を表示するもの
同一・類似そのドメイン名が特定商品等表示と同一または類似であること
図利加害目的不正の利益を得る目的、または他人に損害を加える目的
行為ドメイン名を使用する権利の取得・保有、またはドメイン名の使用

この規定は平成13年改正で導入されたもので、事業者が築いた名声や信頼にただ乗りするドメインの取得などに対応するためのものです。ポイントは、相手の「目的」です。次の見出しで詳しく見ていきます。

「不正の利益を得る目的・損害を加える目的」とは何ですか?

「不正の利益を得る目的」とは、公序良俗に反する態様で自己の利益を不当に図る目的をいい、「他人に損害を加える目的」とは、他人に財産上・信用上の損害などを加える目的をいいます。高値での転売目的や、他人の顧客吸引力へのただ乗り目的などが典型です。

裁判例が示してきた考え方を整理すると、次のとおりです。

目的認められる典型例
不正の利益を得る目的周知・著名な名称の顧客吸引力を利用して利益を上げる(MP3ドメイン名事件・東京地判平成14年7月15日ほか)
他人に損害を加える目的保有するドメインを不当に高額で転売する(dentsu事件・東京地判平成19年3月13日)、無関係な中傷・わいせつ情報を掲載して関連企業に損害を与える

たとえば、有名企業の商標と似たドメインを取得し、それを高く買い取らせようとする行為(いわゆるサイバースクワッティング)は、加害目的が認められやすい典型です。周知・著名な名称にただ乗りして自社サイトへ誘導するような使用も、不正の利益を得る目的が認められ得ます。目的の有無は、名称の周知・著名性の程度、相手の正当な利益の有無、取得の経緯・使用状況などを総合して判断されます。

どんな手段を取れますか?ドメインを自社に移せますか?

使用の差止めや、ドメイン登録の抹消を求めることができます。一方、そのドメインを自社に「移転」させる請求は、認められないとするのが多数の考え方です。この点は誤解されやすいので注意が必要です。

取り得る手段を整理すると、次のとおりです。

手段可否・留意点
使用・保有の差止め求めることができる(3条)
登録の抹消侵害の停止・予防に必要な行為として認容した裁判例がある(マリカー事件・知財高判令和2年1月29日ほか)
移転登録(自社への移転)認めないとするのが多数の考え方
損害賠償故意・過失があれば請求できる(4条・5条)

ここで実務上重要なのが、「移転登録」は難しいという点です。ドメイン名は申請順に簡単に登録できる性質のもので、特定の文字列について複数の企業が権利を持ち得るため、訴訟を起こした企業にだけドメインの取得を認めるのは合理的でない、という理由から、移転登録請求を否定するのが多数の考え方です。したがって、実務では、まず相手の使用を止めさせ、登録を抹消させることを目指すのが基本になります。「取り戻して自社で使う」ことを期待していると、見込みと異なる結果になりかねません。

なお、ドメイン名に関する紛争処理としては、不正競争防止法による裁判のほか、紛争処理機関を利用する手続もありますが、どの手段が適切かは事案によります。

混同惹起・著名表示冒用でも争えますか?

ドメイン名の使用が、自社の周知・著名な表示と混同を生じさせる、または著名表示にただ乗りする場合には、混同惹起行為(2条1項1号)や著名表示冒用行為(2条1項2号)としても主張できることがあります。

ドメイン名の不正取得(19号)は、混同惹起(1号)・著名表示冒用(2号)と重ねて主張できる場合があります。

類型着眼点
ドメイン名の不正取得(19号)ドメイン名の取得・保有・使用と図利加害目的
混同惹起(1号)周知表示との類似と、出所の混同のおそれ
著名表示冒用(2号)著名表示へのただ乗り・希釈化(混同は不要)

たとえば、著名なブランド名を含むドメインで紛らわしいサイトを運営している場合、19号に加えて1号・2号での主張も検討できます。どの構成が有効かは、自社表示の知名度や相手の使用態様によります。混同惹起・著名表示冒用の詳細は類似の社名・ロゴ・商品名への対応をご覧ください。

ドメインの不正取得は、刑事罰の対象になりますか?

ドメイン名の不正取得等(2条1項19号)は、不正競争防止法の中でも刑事罰の対象ではなく、差止め・損害賠償といった民事上の手段で対応する類型です。

不正競争防止法は、営業秘密侵害や不正目的の混同惹起・形態模倣などを刑事罰の対象としていますが、ドメイン名の不正取得等は、当事者間の民事的請求に委ね、刑事罰の対象としていない類型に位置づけられています。したがって、対応は差止め・登録抹消・損害賠償といった民事手段が中心になります。刑事罰の対象・非対象の全体像は不正競争防止法とは?10類型と企業が取れる対抗手段をご覧ください。

弁護士に相談するタイミング

似たドメインを見つけたら、また買取りを持ちかけられたら、早めに弁護士に相談してください。

弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
似たドメインを見つけたとき19号の成否の検証、証拠(使用状況・目的を示す資料)の確保、差止め・抹消の準備
買取りを持ちかけられたとき加害目的(高額転売目的)の立証可能性の検討、対応方針の助言
予防重要な商標に関連するドメインの事前確保、監視体制の整備

ドメインをめぐるトラブルは、相手の使用が続くほど顧客の混乱や信用への影響が広がります。重要な商標については、関連ドメインをあらかじめ確保し、類似ドメインの出現を監視しておくことが有効な予防策です。こうした継続的な管理には、日常的に相談できる顧問契約が役立ちます。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 当社の商標に似たドメインを第三者に取られました。取り戻せますか?

そのドメインが自社の名称・商標と同一・類似で、相手に不正の利益を得る目的または損害を加える目的がある場合、不正競争防止法2条1項19号にもとづき、使用の差止めや登録の抹消を求めることができます。ただし、そのドメインを自社に「移転」させる請求は認められないとするのが多数の考え方で、まずは使用停止・登録抹消を目指すのが実務です。

Q2. 「高く買い取れ」と持ちかけられています。これも違法ですか?

保有するドメインを不当に高額で転売しようとする目的は、「他人に損害を加える目的」にあたり得るとされています(dentsu事件・東京地判平成19年3月13日)。こうした目的が認められれば、2条1項19号の不正競争として、差止め・登録抹消・損害賠償を検討できます。買取りに応じる前に、弁護士にご相談ください。

Q3. 取られたドメインを、自社の名義に移すことはできますか?

難しいのが実務です。ドメイン名は申請順に簡単に登録できる性質で、特定の文字列について複数の企業が権利を持ち得るため、訴訟を起こした企業にだけ移転を認めるのは合理的でないとして、移転登録請求を否定するのが多数の考え方です。まずは相手の使用を止めさせ、登録を抹消させることを目指すことになります。

Q4. ドメインの不正取得は、刑事告訴できますか?

できません。ドメイン名の不正取得等(不正競争防止法2条1項19号)は、刑事罰の対象ではなく、差止め・損害賠償などの民事上の手段で対応する類型です。悪質な事案でも、対応は民事が中心になります。

Q5. 混同惹起や著名表示冒用でも争えますか?

争える場合があります。ドメイン名の使用が、自社の周知表示と混同を生じさせる場合は混同惹起(不正競争防止法2条1項1号)、著名表示にただ乗りする場合は著名表示冒用(同項2号)としても主張できることがあります。どの構成が有効かは、自社表示の知名度や相手の使用態様によります。

「使用停止・登録抹消」を軸に、早めの対応を

自社名・商標に似たドメインを不正の利益を得る目的または損害を加える目的で取得・保有・使用する行為は、ドメイン名の不正取得等(2条1項19号)として、使用の差止めや登録の抹消の対象になります。ただし、そのドメインを自社に移転させる請求は認められないとするのが多数の考え方で、対応は使用停止・登録抹消を軸に進めるのが基本です。混同惹起・著名表示冒用での主張が可能な場合もあります。

当事務所では、類似ドメインの使用差止め・登録抹消の請求、図利加害目的(高額転売目的など)の立証の検討、重要な商標に関連するドメインの確保・監視など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。ドメイン名のトラブルにお困りの方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

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