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不正競争防止法違反の警告書が届いたら何をすべきか?〜やってはいけない対応と正しい進め方を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

ある日突然、「貴社の行為は不正競争防止法に違反する」という警告書(内容証明郵便など)が届くと、多くの経営者・担当者は動揺します。取引先を採用したら前職の会社から通知が来た、自社商品に対して「模倣だ」とクレームが来た——こうした場面で、最初の対応を誤ると、かえって不利な状況を招きかねません。

警告書が届いたら、まずすべきは「事実関係・証拠を保全したうえで、主張されている不正競争の類型と要件を冷静に確認すること」です。無視や即時の謝罪、そして証拠の廃棄は、いずれも避けるべき対応です。

今回のコラムでは、警告書を受け取ったときの正しい進め方と、反論の柱になる考え方を、条文にもとづいて解説いたします。

警告書が届いたら、まず何をすべきですか?

まず、警告書の内容を正確に読み取り、①相手が主張している行為、②その根拠とする不正競争の類型(条文)、③求めている内容(使用中止・損害賠償・回答期限など)を整理してください。そのうえで、社内の事実関係と関連する証拠を保全します。回答期限があっても、安易に認める前に、必ず事実と法的要件を確認することが重要です。

警告書には、たいてい回答期限が設けられています。しかし、期限に追われて事実確認をしないまま謝罪や中止に応じてしまうと、後から「違反はなかった」と分かっても、不利な前提を自ら作ってしまうことになりかねません。

最初に確認・整理すべき事項は、次のとおりです。

確認・整理すべき事項内容
相手が主張する行為具体的にどの行為を問題にしているか(どの商品・表示・情報か)
根拠とする類型・条文営業秘密侵害(2条1項4号〜10号)・形態模倣(3号)・混同惹起(1号)など、どの類型か
求めている内容使用・販売の中止、損害賠償、廃棄、回答期限など
自社の事実関係いつ・誰が・何をしたか。相手の主張は事実か
関連する証拠契約書、開発の記録、取引の経緯、社内のやり取りなど

これらを整理したうえで、弁護士に相談し、反論や適切な回答方針を検討するのが安全です。全体像は不正競争防止法とは?10類型と企業が取れる対抗手段もご覧ください。

無視・即時謝罪・証拠廃棄は、なぜ危険なのですか?

無視すれば訴訟・仮処分に発展するリスクがあり、即時の謝罪は不利な事実の自認になりかねず、証拠の廃棄は後の立証を困難にし、刑事事件では証拠隠滅と評価されるおそれもあるからです。

やってはいけない対応と、その理由を整理すると、次のとおりです。

やってはいけない対応なぜ危険か
無視する相手が差止めの仮処分や訴訟に踏み切るきっかけになる。反論の機会を逃す
すぐに謝罪・中止に応じる「違反を認めた」という不利な前提を自ら作る。実際には違反がない場合もある
メール・ログ等を消す自社に有利な事実の立証もできなくなる。営業秘密事件では証拠隠滅とみられ、かえって不利になる
独断で相手に反論・反撃する感情的な応酬は、後述の営業誹謗(信用毀損)などの新たな紛争を招く

とくに、営業秘密の持ち出しを疑われている場面では、社内のデータやメールを消すことは絶対に避けるべきです。自社の潔白を示す証拠まで失われるうえ、「隠した」という事実自体が不利に評価されます。冷静に、証拠を保全したうえで対応することが、結果的に最善の防御になります。

相手の主張する類型と要件を、どう切り分けますか?

不正競争防止法は、行為の類型ごとに成立要件が異なります。相手がどの類型(条文)を主張しているのかを特定し、その類型の要件を一つずつ満たしているかを検討することが、反論の出発点です。

主な類型と、争点になりやすいポイントを整理すると、次のとおりです。

相手の主張する類型主な要件争点になりやすい点
営業秘密侵害(2条1項4号〜10号)情報が営業秘密(2条6項)であること、不正な取得・使用・開示そもそも「営業秘密」の3要件(とくに秘密管理性)を満たすか
形態模倣(2条1項3号)他人の商品形態の模倣(依拠+実質的同一)依拠したか、実質的に同一か、最初の販売から3年を過ぎていないか
混同惹起(2条1項1号)相手の表示が周知、類似、混同のおそれ相手の表示が本当に周知か、混同のおそれがあるか

これらの「不正競争」は、類型ごとに要件が定められています。だからこそ、相手が主張する類型を特定し、その要件を一つずつ検討することが、的確な反論につながります。営業秘密の3要件は営業秘密の3要件とは、形態模倣は商品デザインの模倣への対応、混同惹起は類似の社名・ロゴ・商品名への対応で詳しく解説しています。

どのような反論ができますか?(非侵害・適用除外の抗弁)

反論の柱は、①そもそも要件を満たさない(非侵害)という主張と、②要件を満たしても法律上の適用除外にあたるという主張(抗弁)です。とくに営業秘密・形態模倣には、法律が定める適用除外があります。

代表的な反論・抗弁を整理すると、次のとおりです。

反論・抗弁内容
営業秘密性の否定相手の情報が3要件(秘密管理性・有用性・非公知性)を満たさない
取引による善意取得(19条1項7号)取引で営業秘密を得た際、不正の介在を知らず・重過失もなかった
形態模倣の3年経過(19条1項6号イ)その商品が日本国内で最初に販売された日から3年を過ぎている
消滅時効(15条)営業秘密の使用差止請求権が時効消滅している

たとえば、営業秘密については、取引を通じて情報を得た人を保護する適用除外があります。

七 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について営業秘密不正開示行為であること又はその営業秘密について営業秘密不正取得行為若しくは営業秘密不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する行為

これは、正当な取引で情報を得た際に、不正が介在していることを知らず、知らないことに重大な過失もなかった場合には、取引で得た権限の範囲内での使用・開示は不正競争にあたらない、という趣旨の規定です(19条1項7号)。転職者を採用した会社などが反論の根拠にできる場面があります。

形態模倣については、保護期間による適用除外があります。

イ 日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

つまり、その商品が日本国内で最初に販売された日から3年を経過していれば、形態模倣(2条1項3号)の責任は問われません(19条1項6号イ)。相手の商品の発売時期を確認することが、有力な反論につながる場合があります。

逆に、相手の警告が「営業誹謗」になることもありますか?

警告の内容が事実に反し、その伝え方が正当な権利行使の範囲を超えている場合には、警告した側が、こちらの信用を害する営業誹謗(信用毀損行為・2条1項21号)の責任を負うことがあります。

不正競争防止法2条1項21号は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布する行為を「不正競争」としています。とくに、相手がこちらの取引先に対して「あの会社の商品は権利侵害だ」といった警告を出した場合、その内容が結果的に虚偽であれば、営業誹謗にあたる可能性があります。

したがって、警告書への対応は、単に守るだけでなく、相手の警告のしかた自体が問題ないかという視点も重要です。ただし、正当な権利行使の一環と認められる警告は違法とならない場合もあり、判断は微妙です。取引先への警告と営業誹謗のリスクについては取引先への警告と営業誹謗リスクで、虚偽の悪評を流された場合の対応は虚偽の悪評への対応で詳しく解説いたします。

弁護士に相談するタイミング

警告書が届いたら、回答する前に弁護士に相談することを強くおすすめします。

相談のタイミングと弁護士の役割を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
警告書を受け取った直後主張の類型・要件の分析、反論の検証、証拠保全の指示
回答書の作成事実と法的根拠にもとづく回答書の作成、交渉の代理
訴訟・仮処分への発展差止めの仮処分・訴訟への対応、和解交渉
再発防止自社の商品開発・採用・表示の見直し、社内体制の整備

警告書対応は、回答期限との関係でスピードが求められる一方、初動を誤ると不利になります。日常的に相談できる顧問契約があれば、警告書が届いた瞬間から迅速に方針を立てられ、平時から紛争に強い体制を築けます。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 不正競争防止法違反だという警告書が届きました。まず何をすべきですか?

まず、相手が主張する行為・根拠条文・求めている内容を正確に読み取り、社内の事実関係と関連証拠を保全してください。回答期限があっても、安易に認めたり謝罪したりする前に、主張された不正競争の類型と要件を確認することが重要です。無視・即時謝罪・証拠の廃棄はいずれも避け、早めに弁護士にご相談ください。

Q2. 回答期限が近いのですが、無視してもよいですか?

無視は避けるべきです。放置すると、相手が差止めの仮処分や訴訟に踏み切るきっかけになり、反論の機会も失います。一方で、期限に追われて事実確認をしないまま認めてしまうのも危険です。期限内に対応できないときは、弁護士を通じて期限の延長を求めるなど、適切な対応を取ることが望ましいといえます。

Q3. 転職者を採用したら前職の会社から警告が来ました。どう反論できますか?

いくつかの反論が考えられます。まず、前職の情報がそもそも「営業秘密」の3要件(とくに秘密管理性)を満たすかを検討します。また、正当な取引で情報を得た際に不正の介在を知らず、重大な過失もなかった場合には、取引で得た権限の範囲内での使用について適用除外(不正競争防止法19条1項7号)を主張できる場面もあります。事実関係の確認が反論の前提になります。

Q4. 「模倣品だ」と警告されましたが、相手の商品はかなり前から売られています。反論できますか?

反論の余地があります。形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)については、その商品が日本国内で最初に販売された日から3年を経過していれば責任を問われないという適用除外があります(同法19条1項6号イ)。相手の商品の発売時期を確認することが重要です。ただし、混同惹起など別の類型を主張されている場合は、別途の検討が必要です。

Q5. 相手の警告のしかたに問題がある場合、こちらから何か言えますか?

場合によっては可能です。警告の内容が事実に反し、その伝え方が正当な権利行使の範囲を超えて、こちらの信用を害している場合には、相手が営業誹謗(信用毀損行為・不正競争防止法2条1項21号)の責任を負うことがあります。ただし、正当な権利行使と認められる警告は違法とならない場合もあり、判断は微妙です。弁護士にご相談ください。

安易に認めず、事実と要件を確認することが第一歩

不正競争防止法違反の警告書が届いたら、まずは相手の主張を安易に認めず、事実関係と証拠を保全したうえで、主張されている不正競争の類型と要件を冷静に確認することが第一歩です。無視・即時謝罪・証拠廃棄はいずれも避けるべき対応です。営業秘密性の否定や、適用除外(形態模倣の3年経過・営業秘密の善意取得など)といった反論の余地もあり、場合によっては相手の警告自体が営業誹謗にあたることもあります。

警告書への対応は、回答する前の初動が結果を左右します。当事務所では、届いた警告書の主張・要件の分析と反論の検討、非侵害や適用除外(形態模倣の3年経過・営業秘密の善意取得など)の主張、証拠保全と回答書の作成など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。回答期限が来る前に、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

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