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不正競争防止法違反の損害賠償はいくら請求できるのか?〜不競法5条の損害額推定を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

模倣品を売られた、営業秘密を侵害された——被害を受けたとき、多くの企業が「いくら請求できるのか」「損害をどう計算するのか」と考えます。実は、不正競争による損害額を一から立証するのは容易ではありません。そこで役立つのが、立証の負担を軽くする「損害額の推定」の規定です。

不正競争防止法5条は、損害額の立証負担を軽くするために、①逸失利益(数量×単位利益)、②侵害者が得た利益、③使用料相当額、という3つの算定方法を用意しています。とくに5条2項(侵害者の利益を損害と推定)がよく使われます。令和5年改正では、この算定がさらに強化されました。

今回のコラムでは、5条の損害額推定のしくみを、条文にもとづいて解説いたします。

損害賠償は、いくら請求できますか?

損害賠償の基本は、不正競争によって実際に生じた損害の額です(4条)。もっとも、その額を一から立証するのは難しいため、5条が3つの算定方法(推定規定)を用意し、被害者の立証負担を軽くしています。

損害賠償の一般規定(4条)は、故意・過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、生じた損害を賠償する責任を負う、と定めています。しかし、「不正競争がなければどれだけ売れて、いくら利益が出たか」を厳密に立証するのは、被害者にとって大きな負担です。

そこで、5条が次の3つの算定方法を用意しています。

算定方法内容根拠
①逸失利益侵害品の販売数量 × 自社製品の単位あたり利益5条1項
②侵害者の利益侵害者が侵害行為で得た利益の額を、自社の損害と推定5条2項
③使用料相当額その権利の使用に対して受けるべき金銭(ライセンス料相当額)5条3項

これらは、損害額の算定を助けるための方法であり、事案に応じて使い分けられます。以下、順に見ていきます。

5条1項(逸失利益)とは、どんな計算ですか?

5条1項は、侵害者が売った侵害品の数量に、自社製品の単位あたりの利益額を掛けて、逸失利益(本来得られたはずの利益)を算定する方法です。令和5年改正で、自社の販売能力を超える分などについても、使用料相当額を上乗せできるようになりました。

5条1項は、「侵害品がなければ自社が売れたはずの利益」を損害と考える算定方法です。基本の考え方は、次のとおりです。

要素内容
侵害品の譲渡数量侵害者が販売した侵害品の数量
単位あたりの利益額自社製品を1つ売ったときの利益(限界利益)
控除される事情自社の販売能力を超える分や、販売できない事情がある分は控除

そして、令和5年改正により、5条1項に2号が加わりました。従来は、自社の販売能力を超える分などは損害から控除されるだけでしたが、改正後は、その控除された数量についても、使用料相当額を上乗せして請求できるようになりました。この改正は、損害賠償額の算定規定を整備・強化したものです。取りこぼされていた部分の回復につながる、実務上重要な改正です。

5条2項(侵害者の利益の推定)とは、何ですか?

5条2項は、侵害者が侵害行為によって得た利益の額を、被害者が受けた損害の額と推定する規定です。被害者は自社の損害を細かく立証しなくても、侵害者の利益を示せばよいため、最もよく使われます。

5条2項の条文は、次のとおりです。

2 不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

つまり、侵害者が侵害行為でいくら儲けたかを示せば、その額が被害者の損害額と推定されるしくみです。被害者が自社の損害を一から立証する負担が大きく軽減されます。

ここでいう「利益の額」は、侵害品の売上げから、その製造販売に直接必要な費用を差し引いた「限界利益」と考えるのが実務です(特許法の同種の規定〔102条2項〕に関する二酸化炭素含有粘性組成物事件・知財高判令和元年6月7日が示した考え方で、不正競争防止法5条2項でも同様に考えられます)。もっとも、これは「推定」であるため、侵害者の側が、市場が異なる・自社の営業努力による部分が大きいといった事情を示せば、推定が一部くつがえされる(覆滅される)ことがあります。営業秘密の持ち出しへの対応は退職者による情報持ち出しへの対応もご覧ください。

5条3項(使用料相当額)と、令和5年改正のポイントは?

5条3項は、その権利の使用に対して受けるべき金銭(ライセンス料相当額)を損害として請求できる規定です。令和5年改正では、使用料相当額を算定する際に、不正競争を前提とした対価を考慮できることが明確化されました(5条4項)。

5条3項は、たとえば商品等表示や営業秘密の使用に対して受けるべき金銭の額を損害として請求できる、という算定方法です。実際の損害の発生を細かく立証しなくても、最低限の損害額として請求できる点に意義があります。

そして、令和5年改正により、5条4項が整備され、この使用料相当額を認定するにあたって、裁判所は、不正競争があったことを前提として当事者間で対価の合意をするとしたら得られたであろう額を考慮できることが明確化されました。これは、正規のライセンス料をそのまま当てはめると、侵害者が「侵害した方が得」になりかねないため、侵害の事案にふさわしい水準を考慮できるようにする趣旨です。

算定方法の全体像を整理すると、次のとおりです。

算定方法適用の目安
5条1項(逸失利益)自社が競合品を販売しており、侵害で販売機会を失った場合
5条2項(侵害者の利益)侵害者の利益額を把握でき、それを損害とみられる場合
5条3項(使用料相当額)上記が使いにくい場合の、最低限の損害額として

どの方法が有利かは、事案によって異なります。複数の方法を検討し、最も適切なものを選ぶことになります。

損害額の立証が難しいときは、どうなりますか?

損害が生じたことは認められるものの、その額の立証が極めて困難なときは、裁判所が、審理に現れた事情にもとづいて相当な損害額を認定することができます(9条)。営業誹謗など、損害額の算定が難しい類型で活用されます。

不正競争の中には、損害額の算定が特に難しい類型があります。たとえば、営業誹謗(信用毀損)による損害は、悪評でどれだけ売上げが減ったかを厳密に示すのが困難です。こうした場合に備えて、不正競争防止法は次のような規定を置いています。

不正競争による損害が生じたことは認められるが、その額を立証するのに必要な事実の立証が、事柄の性質上きわめて困難なときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨や証拠調べの結果にもとづいて、相当な損害額を認定できます(9条)。これにより、「損害は生じたのに、額が立証できないから賠償ゼロ」という不当な結果を避けられます。損害額の立証を助けるために、書類の提出命令(7条)などの手続も用意されています。営業誹謗の損害については虚偽の悪評への対応もご覧ください。

弁護士に相談するタイミング

損害賠償を検討する段階では、どの算定方法が有利か、どんな証拠が必要かの見極めが重要です。早めに弁護士に相談することで、請求できる金額を最大化しやすくなります。

弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
損害賠償を検討するとき5条の算定方法の選択、必要な証拠の見極め、請求額の試算
立証の準備侵害者の売上げ・利益の把握、書類提出命令などの活用
訴訟・交渉損害賠償請求の訴訟対応、和解交渉
予防いざというときの立証に備えた記録・管理の整備

不正競争の損害賠償は、どの算定方法を選び、どんな証拠をそろえるかで、結果が大きく変わります。また、いざというときに損害を立証できるよう、平時から自社製品の利益率や販売数量などの記録を整えておくことも有効です。こうした備えには、日常的に相談できる顧問契約が役立ちます。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 模倣品・営業秘密侵害で、いくら損害賠償を請求できますか?

損害賠償の基本は、不正競争によって実際に生じた損害の額です(不正競争防止法4条)。もっとも、その額を一から立証するのは難しいため、5条が3つの算定方法(①逸失利益=数量×単位利益、②侵害者が得た利益、③使用料相当額)を用意し、立証負担を軽くしています。事案に応じて有利な方法を選ぶことになります。

Q2. いちばんよく使われる算定方法は何ですか?

実務では、5条2項(侵害者の利益の推定)がよく使われます。侵害者が侵害行為で得た利益の額を示せば、それが被害者の損害額と推定されるため、自社の損害を一から立証する負担が大きく軽減されるからです(不正競争防止法5条2項)。ただし「推定」であるため、侵害者の反証により一部くつがえされることもあります。

Q3. 「侵害者の利益」とは、売上げのことですか?

売上げそのものではありません。実務では、侵害品の売上げから、その製造販売に直接必要な費用を差し引いた「限界利益」と考えるのが一般的です(特許法の同種の規定〔102条2項〕に関する二酸化炭素含有粘性組成物事件・知財高判令和元年6月7日が示した考え方で、不正競争防止法5条2項でも同様に考えられます)。管理部門の人件費など、侵害品の製造販売に直接関係しない費用は、通常は差し引きません。

Q4. 令和5年改正で、損害賠償はどう変わりましたか?

損害賠償額の算定が強化されました。5条1項に2号が加わり、自社の販売能力を超える分などについても使用料相当額を上乗せして請求できるようになりました。また、5条4項が整備され、使用料相当額の認定にあたり、不正競争を前提とした対価を考慮できることが明確化されました。

Q5. 損害額を立証できないと、賠償はゼロになりますか?

必ずしもゼロにはなりません。損害が生じたことは認められるものの、その額の立証が事柄の性質上きわめて困難なときは、裁判所が、審理に現れた事情にもとづいて相当な損害額を認定することができます(不正競争防止法9条)。とくに営業誹謗など、損害額の算定が難しい類型で活用されます。

算定方法の選択が請求額を左右する

不正競争による損害賠償は、実際に生じた損害の額が基本ですが(4条)、その立証は容易ではありません。そこで5条が、①逸失利益(5条1項)、②侵害者の利益の推定(5条2項)、③使用料相当額(5条3項)という3つの算定方法を用意し、立証負担を軽くしています。令和5年改正では、算定がさらに強化されました。どの方法を選び、どんな証拠をそろえるかで請求額は大きく変わるため、早めの検討が重要です。

当事務所では、5条の算定方法(逸失利益・侵害者の利益・使用料相当額)の選択、損害額の立証に必要な証拠の見極め、請求額の試算と損害賠償請求の遂行など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。損害賠償の請求をお考えの方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

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