本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。
苦労して開発・デザインした自社商品。ところが、そっくりな模倣品が他社から安く売り出されている——こうした「デッドコピー」の被害は、先に投資した企業ほど深刻です。「意匠登録をしていないから泣き寝入りするしかない」と諦めていませんか。
他社商品の形態をそっくり模倣した商品を販売する行為は、意匠登録がなくても、不正競争防止法の「形態模倣行為」(2条1項3号)として差止め・損害賠償の対象になります。ただし、保護されるのは、その商品が日本国内で最初に販売された日から3年間に限られます(19条1項6号イ)。
今回のコラムでは、形態模倣で差止め・賠償するための要件と手続を、条文と裁判例にもとづいて解説いたします。
商品デザインの模倣は、違法になりますか?
他社商品の形態を模倣(デッドコピー)した商品を販売等する行為は、不正競争防止法2条1項3号の「形態模倣行為」として違法になります。意匠登録がなくても、この規定で差止め・損害賠償を求めることができます。
条文は次のとおりです。
三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
この規定は、他人が資金や労力をかけて商品化した成果を、そっくりそのまま模倣して市場に提供する行為が、先行者の投資回収の機会を奪い、公正な競争をゆがめるため、これを禁止するものです。裁判例(加湿器事件・知財高判平成28年11月30日など)でも、先行開発者の投資成果を保護し、事業者間の公正な商品開発競争を促す趣旨だと理解されています。
ポイントは次のとおりです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 登録は不要 | 意匠登録がなくても、形態模倣として保護される |
| 対象は「デッドコピー」 | 他人の商品形態に依拠し、実質的に同一の商品を作る行為 |
| 例外あり | 商品の機能を確保するために不可欠な形態は保護対象外 |
| 期間制限あり | 最初の販売から3年間に限られる(後述) |
意匠登録という手続を経ていなくても、市場に出したデザインが一定期間保護される点が、この制度の大きな意義です。
保護されるのは「販売から3年間」だけですか?
形態模倣として保護されるのは、その商品が日本国内で最初に販売された日から3年間です。3年を経過すると、形態が模倣されても2条1項3号の責任は問えなくなります。
この期間制限は、適用除外の規定として定められています。
イ 日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
つまり、最初の販売日から3年を過ぎた商品の形態模倣は、不正競争にあたりません(19条1項6号イ)。形態模倣による保護は、模倣を防いで先行者に市場先行の利益を確保させる制度であり、その期間を3年に区切っているのです。
したがって、模倣被害に気づいたら、自社商品の発売日から3年以内に、早めに動くことが重要になります。3年に近づいている場合はとくに急ぐ必要があります。なお、期間経過後でも、商品名やロゴが周知であれば混同惹起(2条1項1号)など別の類型で争える場合があります。詳しくは似た社名・ロゴ・商品名への対応をご覧ください。
また、商品のデザインそのものについては、著作権法による保護の可能性もゼロではありません。実用品のデザイン(応用美術)が著作物として保護されるハードルは高いものの、美術品としての性質が認められるような場合には、著作権侵害として主張できる余地もあります。もっとも、これはあくまで例外的な場面であり、商品形態の保護は形態模倣(2条1項3号)を軸に考えるのが基本です。
「模倣」とは、どこまで似ていれば認められますか?
「模倣」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます。つまり、①相手の商品を知って真似た(依拠)こと、②実質的に同一といえるほど似ていること、の2つが必要です。
不正競争防止法は「模倣する」を次のように定義しています。
5 この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。
この定義から、模倣が認められるには2つの要素が必要です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ①依拠性 | 他人の商品を知り、それをもとに(依拠して)作ったこと。独自に偶然似た形になった場合は該当しない |
| ②実質的同一性 | 細部の違いを除けば、実質的に同一といえるほど似ていること |
参考になるのが、キャラクター育成ゲーム機の形態が争われたたまごっち事件(東京地判平成10年2月25日・判タ973号238頁)です。この事件では、両商品の形態にわずかな違いはあったものの、その違いは付随的な部分にとどまり、基本的な構成や重要な要素が共通していることから、実質的に同一の形態だと評価され、また、先行商品の大ヒット後まもなく酷似商品が発売されたことなどから、先行商品に依拠して作られたと判断されました。
このように、多少アレンジを加えても、基本的な形態がそのままであれば「模倣」と評価され得ます。逆に、偶然似ただけで依拠がない場合や、ありふれた形態にすぎない場合には、模倣とは認められません。
保護される「商品の形態」とは何ですか?機能上の形は除かれますか?
「商品の形態」とは、需要者が通常の使い方で知覚によって認識できる、商品の外部・内部の形状や、模様・色彩・光沢・質感をいいます。ただし、商品の機能を確保するために不可欠な形態は、保護されません。
不正競争防止法は「商品の形態」を次のように定義しています。
4 この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
ポイントを整理すると、次のとおりです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 外部だけでなく内部も | 通常の使用時に知覚で認識できれば、内部の形状も含む |
| 形状+模様・色彩・光沢・質感 | これらが結合したものが「形態」 |
| 機能上不可欠な形態は除外 | その機能を実現するために必然的にそうならざるを得ない形は保護されない(2条1項3号の括弧書) |
機能を確保するために不可欠な形態が除かれるのは、その形を特定の企業に独占させると、同種の商品を他社が作れなくなってしまうからです。たとえば、ある機能を果たすうえで技術的に一つしかない形状は、模倣として規制する対象になりません。
令和5年改正で、ネット上の模倣品も対象になったのですか?
令和5年改正により、商品形態の模倣品を「電気通信回線を通じて提供」する行為も明確に対象となりました。ネット上・デジタル空間で提供される模倣品にも対応できます。
令和5年改正では、デジタル空間上での商品形態の模倣に対応するため、2条1項3号の対象行為に「電気通信回線を通じて提供」する行為が加えられました。これにより、たとえばメタバースやオンライン上で流通する模倣品の提供についても、形態模倣として差止め等を求める余地が明確になっています。
物理的な商品だけでなく、オンラインでの模倣品提供にも網がかかる形になった点は、デジタル化が進む現在、実務上重要です。改正の全体像は令和5年改正の実務ポイントで解説いたします。
模倣品を見つけたら、どんな手段を取れますか?
差止め(販売の停止・在庫の廃棄)、損害賠償を求めることができ、緊急の場合は仮処分で速やかに販売を止めることも可能です。不正の目的がある場合には刑事罰の対象にもなり得ます。
取り得る手段を整理すると、次のとおりです。
| 手段 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 差止め・廃棄 | 模倣品の製造・販売の停止、在庫・設備の廃棄を請求 | 3条 |
| 仮処分 | 裁判の結論を待たずに販売を止める(緊急時) | 民事保全 |
| 損害賠償 | 故意・過失による損害の賠償。5条の推定規定を利用 | 4条・5条 |
| 刑事罰 | 不正の利益を得る目的での形態模倣は刑事罰の対象 | 21条 |
模倣品対策では、発売から3年という期間制限があるため、スピードが決定的に重要です。模倣品を見つけたら、まず現物・販売ページ・販売時期などの証拠を確保し、早めに弁護士に相談してください。損害額の考え方は損害賠償の計算で解説いたします。
弁護士に相談するタイミング
模倣品を見つけたら、3年の期間が過ぎる前に、できるだけ早く弁護士に相談してください。新商品を出す際の予防的なチェックにも、顧問契約が役立ちます。
弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。
| 場面 | 弁護士ができること |
|---|---|
| 模倣品を見つけたとき | 形態模倣の成否の検証、証拠の確保、差止め・仮処分の準備 |
| 交渉・訴訟 | 警告書の作成、交渉、差止め・損害賠償請求の訴訟対応 |
| 新商品を出すとき | 自社商品が他社の形態を模倣していないかの事前チェック、発売日の記録・管理 |
形態模倣は「3年」という時間との勝負である一方、新商品を出す側としては「他社の模倣品だと言われない」備えも必要です。こうした攻守両面の対応には、日常的に相談できる顧問契約が有効です。とくに、商品の発売日をきちんと記録・管理しておくことは、いざ模倣被害に遭ったときの立証に直結します。
顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 意匠登録をしていなくても、模倣品を止められますか?
止められる場合があります。他社商品の形態をそっくり模倣(デッドコピー)した商品の販売等は、意匠登録がなくても、不正競争防止法2条1項3号の形態模倣行為として差止め・損害賠償の対象になります。ただし、保護されるのは、その商品が日本国内で最初に販売された日から3年間です(同法19条1項6号イ)。
Q2. どのくらい似ていれば「模倣」になりますか?
「模倣」とは、他人の商品の形態に依拠して、実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます(不正競争防止法2条5項)。相手の商品を知って真似たこと(依拠)と、細部の違いを除けば実質的に同一といえるほど似ていること(実質的同一性)の両方が必要です。多少アレンジしても、基本的な形態がそのままなら模倣と評価され得ます。
Q3. 発売してから3年以上たった商品でも、模倣品を止められますか?
形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)による保護は、日本国内で最初に販売された日から3年間に限られます(同法19条1項6号イ)。3年を過ぎると、この規定では止められません。ただし、商品名やロゴが広く知られている場合は、混同惹起(同法2条1項1号)など別の類型で争える場合があります。
Q4. 商品の機能上どうしてもその形になる場合も、保護されますか?
保護されません。商品の機能を確保するために不可欠な形態は、形態模倣の対象から除かれています(不正競争防止法2条1項3号の括弧書)。その機能を実現するうえで必然的にそうならざるを得ない形を特定の企業に独占させると、他社が同種の商品を作れなくなるためです。
Q5. ネット上でだけ売られている模倣品にも対応できますか?
できます。令和5年改正により、商品形態の模倣品を「電気通信回線を通じて提供」する行為も、形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)の対象として明確化されました。オンラインやデジタル空間で流通する模倣品の提供についても、差止め等を求める余地があります。
「3年」以内のスピード対応が鍵
自社商品のデザインをそっくり模倣されたとき、意匠登録がなくても、不正競争防止法の形態模倣行為(2条1項3号)として差止め・損害賠償を求めることができます。「模倣」には依拠性と実質的同一性が必要で、機能上不可欠な形態は保護されません。そして、保護期間は日本国内での最初の販売から3年間に限られるため(19条1項6号イ)、模倣品を見つけたら、証拠を確保して早めに動くことが何より重要です。
当事務所では、形態模倣(デッドコピー)品への差止め・仮処分・損害賠償請求、模倣の成否や3年の保護期間の見極め、新商品の発売前の模倣リスクの事前チェックなど、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。模倣品にお困りの方、新商品の発売を控えている方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
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