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SNSプロフィール画像への写真の一部トリミング利用と著作権侵害(知財高裁令和元年12月26日判決)

はじめに

インターネット上で見つけた写真を、SNSやアプリのプロフィール画像として無断で利用してしまう例は少なくありません。さらに、写真の一部分のみを切り出して(トリミングして)利用した場合でも、著作権侵害に該当するのでしょうか。

今回のコラムでは、プロの写真家が撮影した2羽のペンギンの写真について、オンライン・カラオケサービスのユーザーが、写真をダウンロードし、それぞれのペンギンを個別にトリミングして自己のプロフィール画像として利用した行為が問題となった、知財高裁令和元年12月26日判決(通称「ペンギン画像事件」)をご紹介いたします。

本判決は、写真の一部分であっても独立した著作物性が認められ得ること、サーバに保存された画像のインラインリンク切断後も公衆送信権侵害の状態が継続し得ること、侵害行為が複数回行われた場合の損害額の評価方法など、インターネット上の画像利用に関する論点を含んでおり、実務上、参考となります。

事案の概要

本件は、プロの写真家である1審原告(X)が、1審被告(Y)に対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。

1審原告は、2羽のペンギンが前後(写真上は左右)に並んで歩いている様子を撮影した写真(本件写真)の著作者であり、自己のウェブサイト上で本件写真の画像データ(原告画像)に氏名表示を施して掲載していました。

1審被告は、平成28年1月7日頃、原告画像をウェブサイトからダウンロードし、2羽のペンギンのうち右側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理を行い、原告の氏名表示を削除した上で、オンライン・カラオケサービス「Smule」における自己のアカウントのプロフィール画像としてアップロードしました(行為1)。

さらに、1審被告は、同年2月18日頃、同様に左側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理を行い、プロフィール画像としてアップロードしました(行為2)。

1審原告は、これらの行為が複製権、公衆送信権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害するとして、損害賠償を請求しました。原判決は、71万2226円の限度で請求を認容し、これに対し双方が控訴しました。

本件の争点

本件の争点は、以下のとおりです。

争点番号争点の内容
争点①本件写真の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の成否
争点②1審原告の損害額

争点①については、特に、(ⅰ)写真の一部(1羽のペンギンのみの部分)に独立した著作物性が認められるか、(ⅱ)サーバとアカウントとのインラインリンク切断後も公衆送信権侵害の状態が継続するか、といった点が問題となりました。

裁判所の判断

争点① 著作権及び著作者人格権の侵害の成否について

知財高裁は、本件写真及びその一部(1羽のペンギンのみを被写体とする部分)について著作物性を認めた上で、1審被告の行為1及び2が、それぞれ複製権、公衆送信権、氏名表示権及び同一性保持権の侵害に当たると判断しました。

まず、裁判所は、写真の著作物性及び一部の著作物性について、以下のとおり判示しました。

著作物の複製(著作権法21条、2条1項15号)とは、著作物に依拠して、その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に再製する行為をいい、著作物の全部ではなく、その一部を有形的に再製する場合であっても、当該部分に創作的な表現が含まれており、独立した著作物性が認められるのであれば、複製に該当するものと解される。

その上で、裁判所は、本件写真及びそのうち1羽のペンギンのみを被写体とする部分について、以下のとおり創作性を認定しました。

本件写真(別紙写真目録記載の写真)は、1審原告が2羽のペンギンが前後(写真上は左右)に並んで歩いている様子を構図、陰影、画角及び焦点位置等に工夫を凝らし、シャッターチャンスを捉えて撮影したものであり、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、1審原告を著作者とする写真の著作物(同法10条1項8号)に当たるものと認められる。

また、本件写真の2羽のペンギンのうち、右側のペンギンのみを被写体とする部分は、著作物である本件写真の一部であるが、当該部分にも構図、陰影、画角及び焦点位置等の点において、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、独立した著作物性があるものと認められる。同様に、本件写真の2羽のペンギンのうち、左側のペンギンのみを被写体とする部分は、著作物である本件写真の一部であるが、1審原告の個性が表現されているものと認められるから、創作性があり、独立した著作物性があるものと認められる。

また、裁判所は、画像のインラインリンク切断後の公衆送信権侵害の継続についても判断を示しました。1審被告は、十分な長さと複雑さを有する被告画像のURLを一般公衆が直接ウェブブラウザに入力して被告画像のデータを受信することはおよそ考えられないから、インラインリンク切断後においては公衆送信権の侵害状態は継続していないと主張しましたが、裁判所は、以下のとおり判示し、Smule社がサーバから画像を削除するまでの間、公衆送信権侵害の状態が継続していたと判断しました。

一般人が被告画像1ないし4のURLを入力することが困難であるということはできず、(中略)少なくともURLを直接入力しさえすれば、自動公衆送信が行われて誰でも被告画像1ないし4を閲覧し得る状態が継続していたのであるから、同措置後にも公衆送信権の侵害状態は継続していた。

争点② 損害額について

知財高裁は、1審原告の損害額について、以下のとおり合計58万2226円と認定しました。

番号損害項目金額
1著作権法114条3項に基づく利用料相当額16万2000円
2内容証明郵便費用2226円
3発信者情報開示等関係費用25万8000円
4著作者人格権侵害に係る慰謝料10万円
5弁護士費用相当額6万円
 合計58万2226円

損害額の認定にあたり、裁判所は、行為1と行為2の関係について、以下のとおり判示しました。

1審被告の行為1及び2は、独立した行為ではあるが、それぞれ、1個の著作物である本件写真の一部である右側のペンギンのみを被写体とする部分(右側部分)及び左側のペンギンのみを被写体とする部分(左側部分)を複製及び公衆送信化したものであるから、全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価することができる。

また、1審原告は、原告料金表に基づき、行為1及び2のそれぞれにつき年間10万円(通常の利用料5万円の2倍)の利用料相当額が認められるべきであると主張しましたが、裁判所は、以下の事情を考慮し、これを認めませんでした。

番号考慮事実
1行為1及び2は独立した行為ではあるが、全体としてみれば1個の著作物を1回利用したものと評価できること
2インラインリンクの切断措置後において、1審原告以外の第三者が実際に被告画像にアクセスしたと認めるに足りる証拠がないこと
3東京書籍の教科書及びJRパンフレットについては原告料金表に従って料金額が算定されたことがうかがわれるものの、他の事例についても、常に原告料金表を厳格に適用して利用料が決定されていたと認めるに足りる証拠がないこと
41審原告が挙げる和解事例は、本件写真と異なる被写体の写真に関するものであって、利用の行為態様も本件と異なること

さらに、発信者情報開示等関係費用については、Smule社に対する仮処分の申立てに係る英訳費用相当分は、本来債務者であるSmule社から支払を受けるべきものであるとして、1審被告の不法行為と相当因果関係のある損害とは認めませんでした。

コメント

1 本判決の実務上の意義

本判決には、以下のような実務上の意義があると考えられます。

(1)写真の一部分にも独立した著作物性を明示的に認める

裁判所は、2羽のペンギンが写った写真のうち、1羽のペンギンのみを被写体とする部分についても、構図、陰影、画角及び焦点位置等の点で撮影者の個性が表現されているとして、独立した著作物性を認めました。

なお、原審である東京地裁令和元年5月31日判決は、本件写真全体の著作物性を認定した上で、最高裁昭和53年9月7日判決(いわゆるワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)の複製の定義に依拠して複製権侵害を認めるに留まっていましたが、本判決は、写真の一部であっても、当該部分に創作的な表現が含まれていれば独立した著作物性が認められることを正面から明示した点に特徴があります。

インターネット上の画像利用においては、写真の一部のみをトリミングして利用するケースが多く見られますが、そのような利用であっても、当該部分に創作的な表現が含まれている場合には著作権侵害が成立し得ることを明確に示した点で、参考となる判断です。

(2)インラインリンク切断後の公衆送信権侵害の継続を認める

裁判所は、サーバに格納された画像について、アカウントとのインラインリンクが切断された後も、URLを知る者がアクセスできる状態が続いている限り、公衆送信権侵害の状態が継続すると判断しました。URLが長く複雑であっても、一般人が入力することが困難とはいえないとして、侵害状態の継続を認めた点は、サーバからの完全削除の必要性を示唆するものであり、プラットフォーム事業者や投稿者にとって参考となります。

(3)侵害行為の独立性と損害算定の評価軸を分離

裁判所は、時期的に異なる2回のアップロード行為を独立した行為と認めつつ、損害額の算定にあたっては、全体として1個の著作物を1回利用したものと評価しました。

原審は、2回の侵害行為を「同一の目的に基づく時期的に近接した行為」として一連の不法行為と捉えていましたが、本判決は、両行為が独立した行為であることを明確にした上で、損害算定の場面では実質的な利用態様を重視して「1個の著作物を1回利用した」と評価した点に特徴があります。

この判示は、行為の独立性と損害額の評価軸を分離して検討したものであり、形式的に侵害行為が複数回にわたる場合であっても、損害賠償額が単純に倍増するわけではないことを示しています。著作権侵害に基づく損害賠償請求の戦略を立てる上で参考となる視点です。

(4)発信者情報開示関係費用の範囲を限定

本判決は、海外事業者であるSmule社に対する発信者情報開示仮処分の申立てに要した費用のうち、申立書等の英訳費用相当分について、本来は民事訴訟費用等に関する法律上、仮処分の債務者であるSmule社から支払を受けるべきものであるとして、1審被告に負担させるべき損害からは除外しました。この結果、原審が認めた仮処分申立費用27万円は、控訴審では15万円に減額されています。

海外のプラットフォームを経由して著作権侵害が行われた場合、権利者は、発信者情報開示のために翻訳費用や資格証明書取得費用等を負担することになりますが、これらの費用のうちどの範囲が侵害者に対する損害賠償として認められるかについて、具体的な判断を示した点で参考になります。

2 企業等に求められる対応

本判決を踏まえると、企業の広報担当者やSNS運用担当者においては、以下の点に留意する必要があります。

(1)画像利用における許諾取得の徹底

インターネット上で見つけた画像を自社のウェブサイトやSNS、アプリのプロフィール画像等に利用する際には、著作権者の許諾を得ることが原則です。写真の一部のみをトリミングして利用する場合であっても、当該部分に創作的な表現が含まれていれば独立した著作物として著作権侵害が成立し得るため、「一部の切り出しだから問題ない」という安易な判断は避ける必要があります。

(2)無断利用発覚した場合の対応

無断利用が発覚した場合には、対象画像をサーバから完全に削除する必要があります。投稿の削除やアカウントとのインラインリンクの切断のみでは、URLを直接入力すればアクセスできる状態が継続している限り、公衆送信権侵害の状態が続いていると判断されるおそれがあります。プラットフォーム事業者に対しても、リンクの切断にとどまらず、サーバからの完全削除を求める対応が必要です。

(3)自社画像が無断利用された場合の証拠保全と権利行使

自社が著作権者である画像が無断利用されている場合には、速やかに証拠を保全し、発信者情報開示請求や損害賠償請求を検討する必要があります。損害額の算定にあたっては、過去の実際の利用料支払実績や、和解事例の具体的な経過等が考慮されるため、日頃から料金表の運用実績を記録し、証拠化しておくことが有用です。

おわりに

画像の利用や権利行使については、事案ごとに判断が分かれる論点が多く、専門的な検討が必要となります。自社での画像利用や、自社の画像が無断利用されているケースでお悩みの場合には、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

 

本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。