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従業員を休職させる際の注意点(人事担当者のための労働法)

従業員が病気や怪我で働けなくなったとき、会社としてどのような対応をとるべきでしょうか。

「休職」は、適切に運用しなければ、後に「不当解雇」や「安全配慮義務違反」を問われるリスクがあります。

今回のコラムでは、人事担当者が押さえておくべき休職制度の基本と、トラブルになりやすいメンタルヘルス不調への対応について、概要を解説いたします。

 

休職とは何か

休職とは、労働者に就労させることが困難な事情が生じた場合に、雇用関係を維持したまま、労働義務を免除または禁止する措置です。

一般的な休職の種類には、以下のものがあります。

  • ・私傷病休職(業務外の病気や怪我)
  • ・起訴休職(刑事事件で起訴された場合)
  • ・出向休職・留学休職
  • ・組合専従休職

このなかで、実務上、対応に注意が必要なのが「私傷病休職」です。

 

休職制度は法律上の義務ではない

まず、重要な前提として確認しておく必要があるのが、休職制度は法律で義務付けられたものではないという点です。

休職制度は、あくまで会社の就業規則や労使間の合意によって決まります。したがって、就業規則に休職の規定がなければ、会社は原則として従業員を休職させる義務を負いません(厚生労働省「モデル就業規則(令和7年12月版)」p.16(第9条〔休職〕の解説)。

制度を設ける場合には、就業規則に以下の事項を明確に定めておくことが求められます。

記載事項定めておくべき内容の例
休職の要件どのような状態になれば休職が開始されるか
休職期間開始日・満了日・延長の可否
休職中の賃金・賞与無給か有給か、賞与算定への影響
社会保険料の負担方法本人負担分の徴収方法(立替・口座引落など)
復職の手続き診断書の提出期限、復職判定の手順
休職期間満了時の取扱い自然退職か解雇か

規定が曖昧なまま運用すると、後に従業員との間でトラブルが生じたときに、会社が不利な立場に置かれることがあります。

 

メンタルヘルス不調による休職の注意点

近年、うつ病などのメンタルヘルス不調による休職が増加しています。骨折などの目に見える怪我と異なり、メンタルヘルス不調による休職については対応が難しい点が多くあります。

安全配慮義務に注意する

労働契約法第5条は、使用者に対して「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務を課しています。

本人が「働ける」と主張していても、客観的に見て明らかに体調が悪化している場合、そのまま働かせ続けると、会社が安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

「企業者は、必ずしもメンタルヘルスに関する情報について労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っており、労働者の体調の悪化が看取される場合には、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があります」

出典:厚生労働省「こころの耳:管理職が知っておくべき個人情報保護と安全配慮義務とは?」(ウェブページ)

逆に、「仮病ではないか」と決めつけて必要な配慮を怠ることも、法的なリスクにつながります。

 

診断書と産業医の意見を確認する

判断に迷う場合には、必ず医学的な客観的資料(診断書)を確認しましょう。具体的には、以下の手順が有効です。

  1. ・主治医の診断書を取得・確認する
  2. ・必要に応じて、自社の産業医や指定医の意見を聴取する

ただし、注意が必要な点があります。主治医の診断書は、日常生活レベルでの回復を基準にしていることが多く、職場での業務遂行能力の回復を意味するわけではありません

「主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です」

出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」p.4(第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断)

診断書だけで復職の可否を判断するのではなく、産業医の意見も踏まえた上で、組織として判断することが重要です。

同手引きは、休業開始から職場復帰後のフォローアップまでを5つのステップに整理しており(p.3:流れの概要図、p.4〜:各ステップの詳細)、休職・復職の対応フローを整備する際の参考になります。

 

問題行動の背景にメンタル疾患が隠れているケース

なお、ミスが多い、協調性がないといった「問題行動」の背景に、本人が気づいていないメンタル疾患が隠れているケースがあります。

こうした状態を単なる能力不足として即座に解雇(懲戒解雇を含む)の判断をしてしまうと、後に「無効」とされるリスクがあります。まずは、受診を促し、休職による療養の機会を与えるなど、慎重な対応のステップを踏むことが重要です。

 

実務担当者が陥りがちなミス

ミス1:口頭だけで休職を命じている

休職を命じる際、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、必ず書面(休職発令通知書)を交付し、本人に説明を行いましょう。

書面には、以下の事項を記載することが推奨されます。

記載項目内容の例
休職の理由私傷病による休職(診断書に基づく)
休職期間〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日
休職中の賃金無給(または傷病手当金の案内)
社会保険料の扱い本人負担分を会社が立替え、復職後に精算 など
復職の手続き復職希望日の〇週間前までに主治医の診断書を提出
期間満了時の扱い期間内に復職できない場合は自然退職となる旨

ミス2:休職期間満了時の取扱いを規定していない

休職期間が満了した場合に、退職扱いとなるのか、解雇となるのか——この点が就業規則に明記されていないと、後の紛争の原因になります。「自然退職」とする規定を設けておくことが一般的ですが、その規定自体の有効性が争われるケースもあります。

厚生労働省のモデル就業規則には、「第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする」という規定例が示されています(モデル就業規則(令和7年12月版)p.16、第9条第3項)。

ミス3:傷病手当金の案内を怠っている

私傷病による休職の場合、健康保険から傷病手当金が支給される可能性があります(支給開始日から最長1年6か月)。会社が休職中の賃金を支払わない場合、本人への案内を怠ると、後からトラブルになることがあります。

 

適切な休職規定が会社を守る

休職制度は、労働者の雇用を守るための「猶予期間」であると同時に、会社を法的リスクから守るための仕組みでもあります。

「このケースで休職を命じてよいのか」「診断書の内容に疑問がある」「期間満了時にどう対応すればよいか」——こうした場面は、判断を誤ると深刻なトラブルに発展します。

このため、通常想定される内容については、あらかじめ検討した上で、就業規則に落とし込んでおくことが大切です。


休職対応でお困りの方へ

休職・復職をめぐるトラブルは、初動の対応を誤ると解決が難しくなります。個別のケースにどう対応すべきか、就業規則の規定が適切かどうかは、事案によって判断が異なります。

当事務所では、就業規則の整備から、個別の休職・復職に伴うトラブル対応まで、幅広くサポートしております。「このケースはどう対応すればよいか」とお悩みの人事担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイトの問い合わせフォームよりご連絡ください。