はじめに
企業の自社ウェブサイトでは、自社の役務の特徴や料金、他の事業者との違い等を訴求する表現を掲載することが一般的です。しかし、その表現の仕方によっては、不正競争防止法上の品質等誤認表示や営業誹謗(虚偽事実の告知)に該当するのではないかという疑義が生じることがあります。
今回のコラムでは、インターネット上の情報削除に関連する役務を提供する事業者が、自社ウェブサイトにおいて、「弁護士は、料金が高い」、「ネット削除に詳しい弁護士」として原告ら(弁護士)の氏名を表示する等の記載をしたことに対し、原告らが、品質等誤認表示及び営業誹謗に当たるとして慰謝料の支払を求めた事案について判断した、知財高裁平成28年2月24日判決をご紹介いたします。
本判決は、ウェブサイト上の表示が不正競争防止法上の品質等誤認表示又は営業誹謗に当たるかの判断に当たり、特定の文言のみではなく、ウェブサイトの前後の文脈等を総合して評価すべきとの考え方を示した裁判例です。自社サイトで他社や他業種との対比表示・料金比較等を行う際の留意点を考えるうえで、企業の担当者にとって参考になります。
事案の概要
本件の当事者の立場は、以下のとおりです。
| 当事者 | 立場 |
|---|---|
| 控訴人ら(X1、X2) | 弁護士。インターネット上の情報削除に関する法律事務等を扱う |
| 被控訴人(株式会社WEB広報) | インターネット上の情報削除に関するITサポート等の役務を提供する事業者 |
被控訴人は、自社ウェブサイト上において、「削除代行サービス」、「誹謗中傷サイトを削除してきました」、「専門スタッフが最速で誹謗中傷を完全消去いたします」、「一括して削除代行を承ります」等の記載をするとともに、「ネット削除(削除依頼)のITサポート」、「ネット削除申請サービス(技術サポート)」、「ITやWEBの専門技術を生かし、削除依頼の手続きを最後までお手伝いします」等の記載をしていました。
また、被控訴人ウェブサイトには、「弁護士は、料金が高い」、「法律のプロの力を借りなければ削除が難しいサイトだけに限って弁護士に依頼すれば、全体の費用を大幅に減らすことができます」等の表示があり、「ネット削除に詳しい弁護士」として控訴人らの氏名が表示されていました。
控訴人らは、被控訴人による上記の表示が、①控訴人らよりも契約条件において有利であるかのような表示をしている点で不正競争防止法2条1項13号の品質等誤認表示に当たり、②控訴人らと被控訴人とは競争関係にあるところ、控訴人らの料金が不相当に高額であり、被控訴人に比べてコストパフォーマンスが悪いとの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知(同項14号)に当たり、これにより控訴人らの営業権が侵害され、控訴人らの名誉・信用に対する損害を被ったと主張して、慰謝料各80万円の支払を求めて本訴を提起しました。原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らがこれを不服として控訴したのが本件です。
なお、原審(東京地方裁判所平成27年9月25日判決)における認定によれば、被控訴人は、本訴の訴訟係属中である平成27年12月5日までに、被控訴人ウェブサイト上の「■弁護士は、料金が高い」等の記載を削除し、「■ネット削除の『代理』は弁護士へ」などと記載を変更しています。
本件の争点
本件の争点は、以下のとおりです。
| 争点 | 内容 |
|---|---|
| 争点① | 被控訴人ウェブサイトの記載が、不正競争防止法2条1項13号の品質等誤認表示に当たるか |
| 争点② | 被控訴人ウェブサイトの記載が、不正競争防止法2条1項14号の営業誹謗(虚偽の事実の告知)に当たるか |
なお、不正競争防止法2条1項13号及び14号に基づく損害賠償請求の前提として、控訴人らと被控訴人との間に競業関係の存在が必要となります。
裁判所の判断
競業関係について
裁判所は、控訴人らと被控訴人との競業関係について、両者は、ウェブサイトにおける情報の削除要請を希望する顧客の要請を受けて、これに関わる各種のサービスの提供をすることをその業務の一部とするものであるところ、顧客に対する法律的助言や相手方との法律的交渉などの法律事務を措いて、少なくとも、一般的なネット削除に関する情報提供の限度で、競業関係にあると認めました。
「原告ら及び被告は、共に、ウェブサイトにおける情報の削除要請を希望する顧客の要請を受けて、これに関わる各種のサービスの提供をすることをその業務の一部とするものであるところ、顧客に対する法律的助言や相手方との法律的交渉などの法律事務を措いて、少なくとも、例えば、相手方の特定方法やネット情報削除における手順の教示などの一般的なネット削除に関する情報提供の限度で、競業関係にあるものと認められる。」
争点① 被控訴人ウェブサイトの記載の品質等誤認表示該当性について
裁判所は、被控訴人ウェブサイトの一部の表現を取り出せば、被控訴人が顧客に代わって削除請求を代理するかのような表現があると認めながらも、ウェブサイトの表示を正確に理解するためには、特定の文言のみならず、その他前後の文脈等も見る必要があるとの判断枠組みを示しました。
「被告ウェブサイトの表示を正確に理解するためには、原告らも認めるとおり、当該ウェブサイトの特定の文言のみならず、その他前後の文脈等も見る必要がある」
その上で、裁判所は、被控訴人ウェブサイトの前後の文脈を確認し、被控訴人が顧客に代わって削除依頼を直接行ったり、法的助言を行ったりするものと理解することはできないと判断しました。判断において裁判所が確認した被控訴人ウェブサイトの記載は、以下のとおりです。
| 番号 | 被控訴人ウェブサイトの記載 |
|---|---|
| ① | トップページの「ブログの削除」欄における「当社では、ブログの削除代行も行っています」との記載に引き続いて「削除依頼をITの面からサポートし、解決いたします」との記載 |
| ② | 削除ページにおける「ネット削除(削除依頼)のITサポート」、「ネット削除申請サービス(技術サポート)」との見出し、及び「ITやWEBの専門技術を生かし、削除依頼の手続きを最後までお手伝いします」、「当社では、これまでの数千件以上の削除実績と経験をふまえ、最も効果的な削除要請ができるよう、技術面からサポートいたします」との記載 |
| ③ | 相談ページにおける「ネットの削除養成については法律知識だけでなく、ITの知識や技術も必要になります。当社では、ITの面から削除要請をサポートしています。削除の方法が技術的に分からないようなときは、当社にご相談下さい」との記載 |
裁判所は、これらの記載を踏まえて、以下のとおり判断しました。
「これらによれば、原判決が述べるように、被告が、顧客と顧客が削除を求める相手との関係でどのように関わるのかについて明確でなく、技術的サポートの内容も具体的ではないものの、被告が顧客に代わって削除依頼を直接行ったり、法的助言を行ったりするものと理解することはできない。そうすると、被告ウェブサイトが、本来、被告が適法に行うことができない法律的な業務について、これを行うことが適法に可能であるように表示したとまではいうことができず、したがって、「役務の質、内容」について消費者を誤認させたということはできない。」
控訴人らは、被控訴人ウェブサイトの「根拠のある要請文書」、「削除を要請する理由や根拠を明確に示す必要があります。『名誉毀損』『業務妨害』『著作権侵害』など、理由は案件ごとに異なりますが、しっかりと根拠のある削除要請文を提出しなければなりません」との記載は、法的助言に当たるとも主張しましたが、裁判所は、当該記載は削除要請に関する一般的事項を指摘するにとどまっており、案件ごとに異なる法的主張についての助言とは解されないとして、この主張も退けました。
また、控訴人らは、被控訴人が広告する「逆SEO」を長期間継続すると、被控訴人が指摘する弁護士費用と同額以上となるから、「業界最安値」は虚偽広告に当たるとも主張しました。しかし、裁判所は、逆SEOは弁護士が通常行う法的業務と異なることが明らかであり、被控訴人ウェブサイトに月額単価であることが明示されていることから、虚偽広告には当たらないと判断しました。
争点② 被控訴人ウェブサイトの記載の営業誹謗該当性について
本判決は、本争点について、原審(東京地方裁判所平成27年9月25日判決)の判断を引用する形で結論を導いており、原審は本争点について重要な判断枠組みを示しています。
原審は、不正競争防止法2条1項14号にいう「虚偽の事実」について、最高裁判所平成16年7月15日第一小法廷判決(民集58巻5号1615頁)を引用しつつ、以下のとおり判示しました。
「不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」とは客観的事実に反する事実をいうところ、そこにいう事実は証拠等により虚偽か否かが判断可能な客観的事項をいい、事実ではない主観的な見解ないし判断、証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議ないし法的な見解の表明は、事実を摘示するものではなく、意見ないし論評の表明の範ちゅうに属すると解すべきである」
その上で、原審は、被控訴人ウェブサイト相談ページにある「弁護士は料金が高い」との記載は、弁護士報酬(料金)が算定される事実上の根拠を示した上での被控訴人なりの意見ないし評価を述べたものと理解されるべきであるから、「虚偽の事実」には当たらないと判断しました。
また、原審は、被控訴人ウェブサイトの相談ページにおける控訴人らの氏名表示についても、その前後の文脈を確認し、控訴人らが好意的に紹介されていたものであり、控訴人らの営業上の信用を害する事実は記載されていないと認定しています。
「相談ページに記載されている原告らの氏名は、「『ネットの削除』に詳しくない弁護士はNG 『ネットの削除』に詳しくない弁護士に誹謗中傷の対応を依頼しても、お金がかかるばかりで、結果が出ないことが多いです。」との記載を前提とした上で、「■削除の実績のある弁護士がオススメ」、「ネットの削除には、特殊な技能や経験が必要となるため、経験が豊富で、かつ、仕事に熱心な弁護士がオススメです。」との記載の文脈の中で、「〈ネット削除に詳しい弁護士〉」として紹介しているのであるから、そこでは原告らはネット削除に関し特殊な技能や豊富な経験を有し、かつ、仕事に熱心な弁護士として極めて好意的に紹介されているものであって、特段原告らの営業上の信用を害する事実は記載されていない。」
これらの原審の判断を引用した上で、本判決の裁判所は、被控訴人ウェブサイトの全体を見ても、弁護士が削除仮処分しか受任しない旨の記載や、弁護士が一部のサイトについての削除要求にしか対応しない旨の記載は存在せず、控訴人らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布があったとは認められないと判断しました。
「被告ウェブサイトの全体を見ても、弁護士が削除仮処分しか受任しない旨の記載はなく、一部のサイトについての削除要求にしか対応しないなどとは記載されておらず、原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知や流布があったとは認められない。」
以上の判断に基づき、裁判所は、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決を相当として、本件控訴を棄却しました。
コメント
(1)本判決の意義
本判決は、ウェブサイト上の表示が不正競争防止法2条1項13号の品質等誤認表示又は同項14号の営業誹謗(虚偽の事実の告知)に当たるかの判断に当たり、サイト上の特定の文言のみで判断するのではなく、サイト全体の前後の文脈等を総合して評価すべきであるとの考え方を示しました。ウェブサイトの一部分を取り出すと顧客に誤解を与えかねない表現があったとしても、サイト全体の文脈から見て役務内容に関する誤認を与えるものでなければ、品質等誤認表示には当たらないとされた事例として、ウェブサイトでの広告表示の在り方を考える上で参考になります。
また、本判決は、専門家業務(本件では弁護士)と異業種事業者との間にも、提供する役務の重なる部分がある限度で、不正競争防止法上の「競業関係」が認められることを示しました。専門家業務に関連する役務を提供する企業の担当者にとっても、不正競争防止法の規律対象となり得ることを意識する手がかりとなります。
(2)ウェブサイトの広告表示の評価方法
本判決によれば、ウェブサイト上の広告表示が品質等誤認表示等に当たるかの判断に当たっては、特定の文言だけでなく、サイト全体の前後の文脈、他のページの記載、見出しの位置付け等を総合考慮することが必要となります。
このことは、ウェブサイトを運営する企業にとって、二つの示唆を与えます。
第一に、サイトの一部分のみを切り出して評価されるリスクへの対応です。広告表示の自由度はある程度確保される一方、サイト全体としての一貫した表現設計が求められます。たとえば、強調的な表現(「完全消去」「最速」「業界最安値」等)を用いる場合には、その表現が何を意味するのかを、サイト全体の文脈で明確にしておくことが重要です。
第二に、サイト全体での補足説明の重要性です。本件においても、「削除代行」等の表現が単独では誤解を招き得るものであっても、見出しや他の説明箇所において「技術サポート」、「ITの面からサポート」等の説明が併記されていたことが、品質等誤認に当たらないと判断される一要素となっています。誤解を生じさせ得る表現を用いる際は、サイト内の関連箇所に補足説明を配置することが、紛争予防の観点から有益です。
(3)他社・他業種との比較表示における留意点
本判決は、他社や他業種との比較表示について、対比される役務の内容が実際に異なる場合には、料金の高低や役務の優劣に関する記載が直ちに品質等誤認表示や営業誹謗には当たらないとの判断を示しました。もっとも、裁判所は、サイト全体を見れば「弁護士は削除仮処分しか受任しない」等の記載は存在しないことを確認した上で結論を導いており、サイト内で他社や他業種の業務範囲を限定的・否定的に記述している場合には、別の判断となる可能性があります。
他社や他業種との比較表示を行う企業の担当者としては、(ⅰ)自社と他社・他業種の役務内容が異なる場合、その違いをサイト全体で明確に示すこと、(ⅱ)他社や他業種の業務範囲について限定的・否定的な記述(「Aは○○しかしない」、「Aは△△に対応できない」等)を避けること、(ⅲ)比較対象とする数値(料金、実績等)について、何を対象とする数値かをサイト全体で明示することが、紛争予防の観点から重要となります。
加えて、本判決が引用する原審(東京地方裁判所平成27年9月25日判決)の判断枠組みは、他社や他業種を言及する表示について、不正競争防止法2条1項14号の「虚偽の事実」に当たるか否かは、当該記載が客観的事実の摘示か、意見ないし論評の表明かの区別に依存する場面が多いことを示しています。原審においては、「弁護士は料金が高い」との記載は、弁護士報酬(料金)が算定される事実上の根拠を示した上での意見ないし評価を述べたものと理解されたことが、「虚偽の事実」に当たらないとの判断につながっています。意見ないし論評と評価され得る表現であっても、その事実上の根拠を併せて示すことが、紛争予防の観点から有益です。
(4)専門家業務に関連する役務を提供する企業の留意点
本判決は、専門家業務(弁護士)と異業種事業者との間にも、提供する役務の重なる部分がある限度で「競業関係」を認めました。専門家業務に関連する役務を提供する企業は、自社の役務と専門家業務との境界を明確にし、専門家でなければなし得ない業務(弁護士であれば弁護士法72条が定める法律事務等)を行っているかのような表示を避けることが、不正競争防止法上の規律と専門家法制(弁護士法、税理士法、司法書士法等)の双方の観点から、有益となります。
ウェブサイトでの広告表示の設計に当たっては、(ⅰ)自社の役務の範囲を明確に示すこと、(ⅱ)専門家業務との違いを明確に説明すること、(ⅲ)専門家への相談を促す表現を併記する等の工夫を検討することが、リスクの低減につながります。
おわりに
ウェブサイトでの広告表示、料金比較、他社や他業種との比較表示の設計は、企業活動において日常的に行われている一方で、不正競争防止法上のリスクや専門家法制上のリスクが潜む論点でもあります。表現の仕方を一歩誤ると、訴訟リスクや事業上の信用への影響が生じることがあります。
このような問題については、ウェブサイトの公開前のレビュー段階から、また、他社からの指摘や紛争が顕在化した初期段階から弁護士にご相談いただくことで、表示内容の見直し、リスクの整理、紛争対応について、具体的な助言を得ることが可能です。
当事務所では、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼(ウェブサイトの広告表示のレビュー、比較表示の設計、差止め・損害賠償請求への対応等)をお受けしております。ウェブサイトの広告表示のレビュー、比較表示・他社言及表示の設計、不正競争防止法に基づく差止め・損害賠償請求への対応など、お困りの際は、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、ご連絡ください。
本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。

