就活セクハラとは?改正法の背景
貴社の採用担当者やOB・OG訪問に応じる社員が、就職活動中の学生やインターンシップ生に対してセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」といいます)を行った場合、企業はどのような責任を負うのでしょうか。
2025年6月4日、労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法等を改正する「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「本改正法」といいます)が成立し、同月11日に公布されました。本改正法は、2026年10月1日に施行される予定となっています(2025年11月労働政策審議会方針)。
本改正法のうち、改正男女雇用機会均等法(以下「改正均等法」といいます)は、これまで在職中の労働者を対象としていたセクハラ防止措置義務の範囲を拡大し、新たに就職活動中の学生・インターンシップ生等の求職者等(以下「求職者等」といいます)へのセクハラも、事業主の防止措置義務の対象に加えました。
本コラムでは、改正均等法が企業に課す就活セクハラ防止措置の内容を解説するとともに、施行に向けて各企業が取るべき実務対応のポイントについて、概要を解説いたします。
注記:本改正法には、カスタマー・ハラスメント(いわゆる「カスハラ」)に関する防止措置義務(改正労働施策総合推進法)も含まれますが、本コラムでは就活セクハラに関する部分を中心に解説します。
就活セクハラに該当する行為とは?
「就活セクハラ」とは、採用活動・インターンシップの場面において、企業の社員等が就職活動中の学生等に対して行う性的な言動を指します。
就活・インターンシップ場面で問題となりうる行為の具体例
以下はいずれも、就活セクハラに該当しうる行為です。
- ・OB・OG訪問の場で、容姿・体型・交際相手の有無等について発言する
- ・採用面接において、「女性は結婚・出産後も働けるか」等の性別に紐づいた質問をする
- ・インターンシップ中に、身体に触れる・性的な冗談を言うなどの行為を行う
- ・選考結果と引き換えに交際や性的な関係を迫る
- ・SNSやメッセージアプリで性的な画像・発言を送りつける
これらの行為は、相手が学生であること・未だ雇用関係がないことを問わず、改正均等法の規制対象となります。
就活セクハラ防止措置として企業に課される3つの義務(改正均等法)
義務① 求職者等からの就活セクハラ相談に応じる体制整備(改正均等法13条1項)
事業主は、自社の労働者による性的な言動により求職者等の求職活動が阻害されることのないよう、求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
具体的に求められる措置の内容は、施行後に厚生労働大臣が定める指針(以下「就活セクハラ指針」といいます)により明らかにされる予定ですが、既存のセクハラ指針(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)を参考に、少なくとも以下の内容が盛り込まれる見込みです。
| 措置の種類 | 具体的な内容(例) |
|---|---|
| 方針の明確化・周知・啓発 | 就活セクハラを許容しない旨の方針策定・社内周知、面談等のルール(1対1を避ける等)の設定 |
| 相談体制の整備・周知 | 求職者等が相談できる窓口の設置、相談先の周知 |
| 発生後の迅速かつ適切な対応 | 相談への対応手順の整備、被害者への謝罪・再発防止措置等 |
義務② 就活セクハラ相談対応に協力した社員への不利益取扱いの禁止(改正均等法13条2項)
事業主は、自社の労働者が求職者等からの相談への対応に協力する際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に不利益な取扱いを行うことが禁止されます。
これは、相談対応に協力した社員が、社内で不当な評価を受けたり、降格・異動等の不利益を被ることを防ぐための規定です。相談窓口担当者や関係者への報復的対応は、それ自体が法令違反となりますのでご注意ください。
義務③ 採用担当者等への就活セクハラ研修・啓発の努力義務(改正均等法14条)
事業主には、以下の努力義務も課されます。
- ・自社の労働者(役員を含む)が就活セクハラ問題に関心と理解を深め、求職者等への言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮を行うこと(14条2項)
- ・事業主自身も、就活セクハラ問題への関心・理解を深め、必要な注意を払うよう努めること(14条3項)
就活セクハラ防止措置義務に違反した場合の企業リスク
防止措置義務(上記2(1))に違反した場合、厚生労働大臣による報告徴収・助言・指導・勧告の対象となります(改正均等法29条・30条)。勧告に従わない場合には、企業名が公表されるリスクもあります(改正均等法30条2項)。
また、措置義務の懈怠が原因で就活セクハラ被害が発生した場合、被害者から企業に対して不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求(民法715条等)がなされる可能性があります。採用・ブランドイメージへの影響も含め、対応コストは決して小さくありません。
就活セクハラ防止のための企業の実務対応ポイントとチェックリスト
改正均等法が施行されるまでに、各企業は以下のような対応を進めることが推奨されます。既存のセクハラ防止体制と共通する部分も多いため、既存の規程・体制を求職者等にも対応できるよう拡張する方向での改訂が実務的には現実的です。
施行前に企業が確認すべき就活セクハラ対応チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 | |
|---|---|---|
| ☑️ | ハラスメント防止規程の見直し | 適用対象に「求職者等」が含まれているか。就活セクハラの定義・禁止行為が明記されているか。 |
| ☑️ | 相談窓口の拡張 | 求職者等(学生・インターン生)からの相談を受け付ける体制・連絡先が整備されているか。 |
| ☑️ | 採用・インターン担当者への研修 | 採用担当者・OB/OG訪問対応者・インターンシップ担当者に対して、就活セクハラに関する研修を実施しているか。 |
| ☑️ | 面談・連絡ルールの整備 | 就活生との1対1の個室面談・プライベートな食事・SNSでの個人的な連絡を原則禁止または記録化するルールが存在するか。 |
| ☑️ | 対応マニュアルの整備 | 就活セクハラの相談を受けた場合の対応手順(相談受付→事実確認→被害者対応→再発防止)が整備されているか。 |
| ☑️ | 不利益取扱い禁止の周知 | 相談対応に協力した社員が不利益を受けないことが社内に周知されているか。 |
| ☑️ | 役員・経営層への周知 | 経営トップを含む全役職員に対して、本改正法の内容と自社の方針が周知されているか。 |
就活セクハラ防止のための体制整備は今から始めましょう
本改正法により、未だ雇用関係が成立していない就職活動やインターンシップの場面におけるセクハラも、企業のセクハラ防止措置義務の対象となりました。採用活動はまさに企業の「顔」であり、就活セクハラは企業の信頼・ブランド価値に直結する問題です。
施行に向けた具体的な指針の内容は今後明らかにされる予定ですが、今から体制整備に着手することで、施行後も慌てることなく対応することができます。
ハラスメント防止規程の改訂・相談窓口の整備や外部委託、研修プログラムの策定などについてお困りの際は、お気軽に本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご相談ください。
上記の通り、就活セクハラ指針の詳細は今後公表される予定であり、施行後の指針の内容によっては対応が追加・変更される場合があります。本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。

