クリニックのホームページについて、厚生労働省の委託事業者から、医療広告の規制を案内し、記載の見直しを求める通知が届くことがあります。厚生労働省の委託事業「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業」として行われている、医療機関のウェブサイトなどの監視(「医療機関ネットパトロール」。以下「ネットパトロール」といいます)による通知です。令和7年度(令和8年2月末時点)には、1,819サイトについて医療機関に通知が送られました。
結論から言えば、通知を受けた場合は、すぐに広告の内容を見直すとともに、再発防止に向けた体制を整えることが求められます。令和7年度は、通知を受けた1,819サイトのうち1,238サイトで、改善または広告の中止が確認されています。一方で、2回の確認を経ても改善が不十分だったサイトのうち377サイトについては、所管の自治体に改善指導などが依頼されました。自治体の指導にも従わない場合には、広告の中止・是正命令や、罰則の対象になりえます。
本コラムでは、ネットパトロールの仕組み、通知が届いた後の流れ、改善しない場合の自治体の対応と期限の目安、通知が届いたときに確認したい点を、厚生労働省の公表資料の数字とともに解説いたします。
この記事でわかること
- ネットパトロールとは何か、どのくらいのサイトに通知が届いているか
- 通知が届いた後の流れと、改善しない場合の自治体の対応・期限の目安
- 通知が届いたときに確認したいことと、よくある失敗の例
ネットパトロールとは、何ですか
ネットパトロールは、前記の厚生労働省の委託事業として、平成29年度から行われている取組みです。委託事業者が、医療機関のウェブサイトなどが医療法や医療広告等ガイドラインに違反していないかを監視し、不適切な記載を認めた場合には、医療機関に規制を周知して、自主的な見直しを求めます。改善が認められない場合は、所管の自治体に情報が提供され、自治体が指導などを行います(厚生労働省「ネットパトロール事業について(令和7年度)」)。
監視は、一般の方などからの通報と、委託事業者が自らキーワードを設定して探す「能動監視」の両方で行われています。通報の窓口は医療機関ネットパトロールのウェブサイトに設けられており、通報は、令和6年度(通年)に7,052サイト(うち医療広告に関係するもの2,926サイト)、令和7年度は2月末までに6,324サイト(同5,009サイト)でした。令和7年度の能動監視は、ウェブサイトのほか、X、Instagram、YouTube、TikTokも対象としています(同資料)。
なお、同ウェブサイトでは、事務局を装った迷惑メールや問い合わせが医療機関に送られていることを受けて、事務局や厚生労働省からメールを送ることはないとして、なりすましへの注意を呼びかけています。
どのくらいのサイトに通知が届いていますか
令和7年度(令和8年2月28日時点)の対応状況は、次のとおりです。審査した2,092サイトのうち1,842サイトで違反が確認され、1,819サイトについて医療機関に通知が送られています。
表1 令和7年度のネットパトロールの対応状況(令和8年2月28日時点)
| 段階 | サイト数 |
|---|---|
| 医療広告の規制に抵触するかを審査したサイト | 2,092 |
| 違反ありと判断されたサイト | 1,842 |
| 医療機関に通知したサイト | 1,819 |
| 通知の後、改善・広告の中止が確認されたサイト | 1,238 |
| 2回目の確認でも未改善・改善不足だったサイト | 389 |
| 自治体に改善指導などを依頼したサイト | 377 |
| 自治体の指導の後、改善・広告の中止が確認されたサイト | 14 |
出典:厚生労働省「ネットパトロール事業について(令和7年度)」4ページ。医療機関が対応中のサイト(581サイト。2回目の確認でも未改善・改善不足だった389サイトを含みます)があり、自治体に依頼した377サイトのうち363サイトは自治体で対応中のため、各段階の数を足し引きしても一致しません。違反ありの1,842サイトのうち23サイトは、通知の発送を保留または準備中です。
違反ありのサイトの数は、令和4年度が768、令和5年度が1,098で、令和7年度は1,842でした(各年度の同資料)。ただし、令和4・5年度は各年度末、令和7年度は令和8年2月末の時点の数字で、委託事業者が自ら探す能動監視の件数も年々増えているため(令和4年度63件、令和7年度413件)、単純に比べることはできません。分野別では、令和7年度は美容が803サイトで、違反ありのサイトの約44%を占め、歯科が377サイト、内科系が258サイトなどとなっています。1サイトあたりの違反は平均で約2.8件でした。
通知が届いた後は、どう進みますか
同資料によれば、通知の後、委託事業者が改善の状況を2回にわたって確認します。改善または広告の中止が確認されれば、対応は完了です。2回目の確認でも未改善・改善不足の場合は、所管の自治体(都道府県、保健所を設置する市、特別区)に情報が提供され、改善指導などが依頼されます。
また、令和7年度からは、通知したすべてのサイトについて、改善指導などの依頼をしない形で、所管の自治体にも情報が提供されるようになりました(同資料4ページの注記)。通知とあわせて、所管の自治体にも情報が伝わる運用になっています。
改善しないと、どうなりますか
自治体に情報が提供された後の対応について、厚生労働省は、令和6年8月に「医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」を自治体に示しました。都道府県などの指導を受けても1年以上改善しない事例が一定程度あることを受けて、標準的な期限を含めた手順の例を示したものです。期限や段階は、このひな型を参考に、各自治体が個々の事例に応じて判断します。
表2 自治体による指導・措置の流れ(ひな型)
| 段階 | 主な内容 | ひな型が示す期限の目安 |
|---|---|---|
| 調査・行政指導 | 広告の確認、電話でのヒアリング、口頭や書面による改善の依頼 | 違反を把握してから2〜3週間で事前の確認、改善の依頼から2か月以内に改善の報告、全体で2〜3か月以内に完了 |
| 報告命令・立入検査 | 調査に応じない場合や、説明・書類に疑義がある場合などに、医療法6条の8第1項に基づいて行われる命令・検査 | 報告命令では、2週間を目途に報告を求める |
| 中止命令・是正命令 | 行政指導に従わない場合や、違反を繰り返すなどの悪質な場合。原則として、命令の前に弁明の機会が与えられます | 違反を把握してから6か月以内。弁明の期間は通常2週間程度 |
| 告発・行政処分 | 命令に従わない場合などの告発、管理者の変更命令など | (定めなし) |
出典:厚生労働省「医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型について」(令和6年8月23日事務連絡)。期限は目安で、各自治体が定めます。ひな型は全体として、違反を把握してから1年を超えない範囲で是正を完了させることが望ましいとしています。
罰則も定められています。虚偽の広告をした場合や、広告の中止・是正命令に違反した場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(医療法6条の5第1項・87条)。報告命令に対して報告を怠ったり虚偽の報告をしたりした場合や、立入検査を拒んだ場合は、20万円以下の罰金です(同法89条)。
通知が届いたら、何をすればよいですか
通知が届いたときに確認しておきたい点として、次のようなものが挙げられます。
01指摘された箇所と、その理由を確認する
通知で指摘された箇所が、医療広告等ガイドラインのどの項目に当たるのかを確認します。厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」には、違反とされる表示の例と、改善の例が載っています。
02ほかのページやSNSにも、同じ問題がないかを確認する
令和7年度は、違反ありのサイト1つあたり、平均で約2.8件の違反が確認されています。指摘された箇所だけを直しても、同じ趣旨の表現がほかのページや、クリニックのSNS・動画に残っていることがあります。ネットパトロールはSNSや動画も対象としているため、あわせて確認します。
03自由診療の「限定解除」の要件を満たしているかを確認する
令和7年度の違反の種類で最も多かったのは、「広告が可能とされていない事項の広告」で、違反の数の約31%を占めました(1,595件/5,225件)。本来は広告できない自由診療の治療内容などを載せるには、患者が自ら求めて見るウェブサイトなどであること、問い合わせ先を示すこと、通常必要とされる治療内容・費用、主なリスク・副作用などの情報を示すこと、という要件をすべて満たす必要があります。費用やリスクの情報は、分かりやすい場所に示します。未承認医薬品等を使う場合は、さらに記載が必要な事項があります(医療広告等ガイドライン)。
04制作会社や広告代理店と、修正の進め方を決める
ホームページの制作を外部に任せている場合でも、医療機関自身もその広告の内容に責任を持つべきとされています(前記の手順書のひな型)。修正を依頼するときは、どの箇所を、どのように直すかを医療機関の側でも確認します。
05修正の内容を記録しておく
いつ、どの箇所を、どのように直したかを記録しておくと、その後の確認や、自治体から問い合わせを受けたときに説明しやすくなります。修正前のページの内容も、あわせて保存しておくとよいでしょう。
よくある失敗の例
よくある失敗例としては、例えば、次のようなケースが挙げられます。
- 指摘された一文だけを削除し、同じ趣旨の表現が、ほかのページや院長のSNSに残っている
- 自由診療の費用だけを書き足し、主なリスク・副作用の記載を加えていない
- リスク・副作用の説明を、リンク先のページや、極端に小さな文字でだけ示している
- 制作会社に修正を任せたまま、修正後の内容を確認していない
このような失敗をしないように、修正の内容をよく確認してから公開する必要があります。
通知が届いたときの確認リスト
| 確認すること | ポイント |
|---|---|
| 指摘の根拠 | 指摘された箇所が、ガイドラインのどの項目に当たるか |
| ほかのページ・SNS | 同じ趣旨の表現が、ほかのページやSNS・動画に残っていないか |
| 自由診療の記載 | 治療内容・費用、主なリスク・副作用を、分かりやすい場所に書いているか |
| 症例写真 | 治療前後の写真に、治療内容・費用・リスクなどの説明を付けているか |
| 修正の体制 | 制作会社に修正を依頼する場合、修正後の内容を医療機関が確認したか |
| 記録 | 修正の日付・内容と、修正前のページを保存しているか |
よくある質問
ネットパトロールの通知を無視すると、すぐに罰則がありますか。
通知は、医療広告の規制を周知し、自主的な見直しを求めるものです。ただし、改善が確認できない場合は所管の自治体に改善指導などが依頼され、自治体の指導にも従わない場合には、広告の中止・是正命令の対象になりえます。命令に違反すると、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。また、虚偽の広告は、それ自体が罰則の対象です。
指摘された内容に納得できない場合は、どうすればよいですか。
指摘された箇所が、医療広告等ガイドラインや事例解説書に照らして本当に問題となるのかを検討し、問題とならないと考える場合は、その理由を整理しておくことが考えられます。自治体の調査の段階では、電話などで事情を聞かれることがあり、命令の前には、原則として弁明の機会も与えられます。
自治体から連絡が来た場合は、何をすればよいですか。
自治体からは、口頭や書面で改善を依頼されたり、報告を求められたりすることがあります。手順書のひな型では、改善の依頼から2か月以内を目途に改善の報告を求めることとされています。報告命令に対して報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりすると罰則があるため、期限を確認して対応します。
制作会社が作ったホームページでも、医療機関の責任になりますか。
なります。医療広告の規制は「何人も」を対象としており、制作会社や広告代理店も対象になりますが、医療機関も、依頼して掲載している広告の内容に責任を持つべきとされています。制作会社との契約で、規制への対応や修正の分担を決めておくことをお勧めします。
ネットパトロールの通知への対応は、当事務所にご相談ください
当事務所では、医療法・医療広告等ガイドラインと、厚生労働省・消費者庁の公表資料を踏まえて、クリニックのホームページ・SNS・動画の点検から、ネットパトロールの通知や自治体の指導への対応まで、お引き受けしております。
- ネットパトロールから通知が届いたが、どこをどう直せばよいか分からない
- 指摘された箇所のほかにも、問題がないかを点検したい
- 自治体から、改善の依頼や報告を求められている
- 広告代理店・制作会社として、クリニックから依頼された広告の表現が規制に触れないか確認したい
費用の目安としては、ホームページなどのスポットでの点検が110,000円から、ネットパトロールの通知・行政指導への対応が着手金330,000円から、医療広告チェック顧問サービスが月額110,000円から承っております(いずれも消費税込みで、工数によって変わります)。ご相談はオンライン(Google Meet等)でも承っており、全国からご依頼いただけます。ご関心のある方は、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
健康食品・化粧品の広告については、『数字で見る健康食品・化粧品の広告規制』として、「消費者庁の「改善指導」が届いたら、何をすべき?」についても、取り上げています。よろしければ、併せてご参照ください。
医療広告の規制の全体像と、当事務所によるクリニックの広告チェックについては、特集「数字で見る医療広告の違反と対策」でご案内しています。
本コラムは2026年10月時点の法令・判例に基づいています(更新)。本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません(その他、免責事項についてもご参照ください)。具体的な事案については、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。