本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。
有料コンテンツのコピーガード、ソフトウェアのシリアル認証、有料放送のアクセス制限——事業者は、対価を確実に回収するために、さまざまな技術的な仕組みでコンテンツを保護しています。ところが、こうした保護を無効化する装置やプログラムが出回ると、その仕組みは骨抜きになってしまいます。
コピーガードやアクセス制限(技術的制限手段)を無効化する装置・プログラムなどを提供する行為は、不正競争防止法2条1項17号・18号にあたり、差止め・損害賠償の対象になります。図利加害目的で行えば、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科という刑事罰の対象にもなり得ます(21条3項4号)。
今回のコラムでは、技術的制限手段の無効化への対応を、条文・裁判例にもとづいて解説いたします。
コピーガード解除装置の提供は、違法ですか?
営業上用いられている技術的制限手段(コピーガードやアクセス制限)を無効化する機能を持つ装置・プログラムなどを提供する行為は、不正競争防止法2条1項17号・18号にあたり、差止め・損害賠償の対象になります。
不正競争防止法は、コンテンツ保護の技術を無効化する装置などの提供を、「不正競争」として禁止しています。規制の対象を整理すると、次のとおりです。
| 対象行為 | 内容 |
|---|---|
| 装置・プログラム等の提供 | 無効化機能を持つ装置・プログラム・指令符号などの譲渡・引渡し・展示・輸出入・ネット提供 |
| 役務の提供 | 技術的制限手段の効果を妨げて視聴等を可能にする役務の提供 |
この規制は、平成11年改正で導入されました。コンテンツ提供事業者が対価を確実に回収できるようにし、事業者間の競争秩序を維持するためのものです。有料コンテンツのコピーガードやアクセス制限を破るツールの提供が、典型的な対象です。
17号と18号は、どう違うのですか?
17号は、コンテンツ一般に用いられる技術的制限手段を無効化する類型です。18号は、特定の相手だけに視聴等をさせるために用いる技術的制限手段(有料放送・会員制配信など)を無効化し、その特定の相手以外に提供する類型です。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 17号 | 18号 |
|---|---|---|
| 想定する技術的制限手段 | 営業上用いられている技術的制限手段(一般) | 特定の者以外に視聴等をさせないために用いるもの(限定提供型) |
| 典型例 | 市販コンテンツのコピーガード等 | 有料放送・会員制配信のアクセス制限等 |
いずれも、技術的制限手段の効果を妨げて視聴等を可能にする装置・プログラム等の提供を規制するものです。自社のコンテンツ保護がどちらの類型にあたるかは、その仕組みによります。
「技術的制限手段」とは、何ですか?
技術的制限手段とは、電磁的方法によって、映像・音の視聴、プログラムの実行、情報の記録などを制限する仕組みをいいます。特定の信号や変換を用いる方式のものが対象です。コピーガードやアクセス制限が典型です。
条文は次のとおりです。
8 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
少し長い条文ですが、要するに、映像・音・プログラム・情報の視聴や記録などを、電磁的な方法で制限する仕組みが技術的制限手段です。信号を使う方式(機器が特定の反応をする信号による方式)と、変換を使う方式(暗号化など)が対象とされています。アクセスを制限するもの(アクセス・コントロール)と、コピーを制限するもの(コピー・コントロール)の両方が含まれます。
裁判例では、こうした技術的制限手段や、その「効果を妨げる」ことの意味が争われてきました。たとえば、最高裁の決定(最一小決令和3年3月1日)は、「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味について、技術的制限手段から直接得られる結果に限られないという考え方(非限定説)を採用したものと理解されています。また、ソフトウェアのシリアル認証(アクティベーション)を回避するプログラムのネット提供を18号にあたるとした裁判例(建築CADソフトウェア事件・東京地判平成30年1月30日)もあります。
汎用パソコンなど、他の用途にも使える装置はどうですか?
規制の対象は、無効化の用途に供するために提供される装置などに限られます。パソコンのような汎用機器は、無効化以外の用途にも広く使われるため、原則として対象になりません。
技術的制限手段の無効化の規制には、対象を限定する要件があります。無効化以外の機能もあわせ持つ装置などについては、無効化の用途に供するために提供されるものに限って対象とされています。
参考になるのが、いわゆるマジコン事件(東京地判平成21年2月27日)です。この裁判例は、規制の対象を、管理技術の無効化を専らその機能として提供されたものに限る趣旨だとし、パソコンのような汎用機器や、そもそも反応しない機器は、対象にあたらないと解釈できることを示しました。
つまり、無効化のために作られ・提供された装置やプログラムが対象であり、たまたま無効化にも使える汎用機器まで規制されるわけではありません。何が対象になるかは、装置の機能や提供の実態を踏まえた検討が必要です。
刑事罰や、例外はありますか?
図利加害目的で無効化装置などを提供すれば、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象になります(21条3項4号)。一方、技術的制限手段の試験・研究のために用いられる装置などの提供は、適用除外とされています(19条1項10号)。
刑事罰と適用除外を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 刑事罰 | 不正の利益を得る目的、または技術的制限手段を用いる者に損害を加える目的で、17号・18号の不正競争を行うと、5年以下の拘禁刑/500万円以下の罰金/併科 | 21条3項4号 |
| 適用除外 | 技術的制限手段の試験・研究のために用いられる装置・プログラム等の提供、そのための役務提供 | 19条1項10号 |
刑名は、令和4年の刑法改正(令和7年6月1日施行)により「拘禁刑」に一本化されています。試験・研究のための提供が適用除外とされているのは、技術の検証・研究といった正当な目的での利用まで妨げないためです。
なお、コピーガードなどの回避は、著作権法でも規制されています。不正競争防止法はデジタルコンテンツ一般の視聴等の制限を保護対象とする点などで、著作権法と守備範囲が異なります。どちらで対応するか、あるいは両方かは、事案に応じた検討が必要です。刑事罰の対象・非対象の全体像は不正競争防止法とは?10類型と企業が取れる対抗手段をご覧ください。
弁護士に相談するタイミング
自社のコンテンツ保護を無効化するツールを見つけたとき、そしてコンテンツ保護の仕組みを設計するときの両方で、弁護士のサポートが役立ちます。
弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。
| 場面 | 弁護士ができること |
|---|---|
| 無効化ツールを見つけたとき | 17号・18号の該当性の検証、証拠の確保、差止め・刑事の検討 |
| コンテンツ保護の設計 | 技術的制限手段として保護される形での仕組みづくりの助言 |
| 予防 | 無効化ツールの監視、発見時の迅速な対応体制の整備 |
デジタルコンテンツの事業では、保護技術を無効化するツールへの対応が、収益を守るうえで欠かせません。保護の仕組みを適切に設計し、無効化ツールの出現を監視して迅速に対応する体制を整えておくことが重要です。こうした継続的な対応には、日常的に相談できる顧問契約が有効です。
顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. コピーガードやアクセス制限を解除する装置・プログラムを売るのは違法ですか?
違法です。営業上用いられている技術的制限手段(コピーガードやアクセス制限)を無効化する機能を持つ装置・プログラムなどを提供する行為は、不正競争防止法2条1項17号・18号にあたり、差止め・損害賠償の対象になります。図利加害目的で行えば、刑事罰の対象にもなり得ます。
Q2. 自社コンテンツのプロテクトを外すツールを、止められますか?
止められる場合があります。自社が営業上用いている技術的制限手段を無効化する装置・プログラム等の提供に対しては、コンテンツ提供事業者として、差止め・損害賠償を求めることができます(不正競争防止法2条1項17号・18号、3条・4条)。まずは、そのツールの機能や提供状況の証拠を確保することが重要です。
Q3. 17号と18号は、何が違いますか?
17号は、コンテンツ一般に用いられる技術的制限手段を無効化する類型です。18号は、特定の相手だけに視聴等をさせるために用いる技術的制限手段(有料放送・会員制配信など)を無効化し、その特定の相手以外に提供する類型です。いずれも、無効化機能を持つ装置・プログラム等の提供を規制します。
Q4. パソコンのような汎用機器も、規制の対象になりますか?
原則として対象になりません。規制の対象は、無効化の用途に供するために提供される装置などに限られ、パソコンのような汎用機器は、無効化以外の用途にも広く使われるため、対象にあたらないと解釈されています(マジコン事件・東京地判平成21年2月27日)。無効化のために作られ・提供された装置やプログラムが対象です。
Q5. 無効化装置の提供には、刑事罰がありますか?
あります。不正の利益を得る目的、または技術的制限手段を用いる者に損害を加える目的で、無効化装置などを提供する行為は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象になり得ます(不正競争防止法21条3項4号)。一方、技術的制限手段の試験・研究のために用いられる装置などの提供は、適用除外とされています(同法19条1項10号)。
コンテンツ保護を破るツールには法的対応を
コピーガードやアクセス制限(技術的制限手段)を無効化する装置・プログラムなどの提供は、不正競争防止法2条1項17号・18号として、差止め・損害賠償の対象になります。図利加害目的で行えば、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科という刑事罰の対象にもなり得ます(21条3項4号)。ただし、規制の対象は無効化の用途に供される装置などに限られ、汎用機器は原則対象外です。また、試験・研究のための提供は適用除外とされています(19条1項10号)。
当事務所では、コピーガード・アクセス制限を無効化するツールの提供への差止め・損害賠償・刑事の検討、無効化ツールの機能・提供状況の証拠の確保、コンテンツ保護の仕組みづくりの助言など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。コンテンツ保護を無効化するツールにお困りの方、コンテンツ保護の仕組みをお考えの方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
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