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模倣や営業秘密の侵害を今すぐ止めたい〜差止請求・仮処分の使い方を弁護士が解説〜

本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。

模倣品が出回っている、営業秘密が使われている——被害を受けた企業がまず望むのは、「損害賠償」よりも「今すぐ止めること」ではないでしょうか。侵害が続く限り、被害はどんどん広がっていきます。

不正競争防止法は、侵害行為そのものを止めさせる「差止請求権」を正面から認めています(3条)。しかも、裁判の結論を待たずに、迅速に侵害を止める「仮処分」という手段もあります。スピードが求められる模倣・侵害対策では、この差止め・仮処分が中心的な武器になります

今回のコラムでは、差止請求と仮処分の使い方を、条文にもとづいて解説いたします。

侵害を、今すぐ止められますか?

止められる場合があります。不正競争防止法は、侵害の停止・予防を求める「差止請求権」を認めており、緊急の場合には、裁判の判決を待たずに侵害を止める「仮処分」を利用できます。

一般の不法行為(民法709条)では、原則として、被害が生じた後の損害賠償しか認められません。しかし、これでは侵害が続く間の被害拡大を止められません。そこで、不正競争防止法は、損害賠償請求権に加えて特に差止請求権を付与しています。

対応のスピード感を整理すると、次のとおりです。

手段位置づけスピード
仮処分裁判の結論を待たずに、暫定的に侵害を止める速い(緊急対応)
差止請求訴訟(本案)判決で確定的に差止めを命じてもらう時間がかかる

模倣品や営業秘密の侵害は、時間がたつほど被害が広がります。だからこそ、まず仮処分でスピーディに止め、並行して本案(訴訟)で決着をつける、という進め方が実務では有効です。損害賠償の考え方は損害賠償の計算をご覧ください。

差止請求権(3条)とは、どのような権利ですか?

差止請求権とは、不正競争によって営業上の利益を侵害された(またはそのおそれがある)者が、侵害している相手に対して、その侵害の停止や予防を求めることができる権利です。侵害品の廃棄や設備の除却も求めることができます。

条文は次のとおりです。

(差止請求権)

第三条 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

差止請求で求められる内容を整理すると、次のとおりです。

請求できる内容
侵害の停止模倣品の製造・販売の停止、営業秘密の使用・開示の停止、似た表示の使用停止
侵害の予防侵害のおそれがある行為の予防
廃棄・除却侵害品・在庫の廃棄、侵害に使った設備の除却

ポイントは、損害賠償と違い、差止請求には相手の故意・過失は必要ないという点です(営業誹謗の差止めなどで実益が大きいことは、別の記事で触れています)。侵害の事実(またはそのおそれ)があれば、まず止めることを求められます。

「仮処分」は、なぜ有効なのですか?

仮処分は、本案の判決を待たずに、暫定的に侵害を止められる手続だからです。判決までに数か月〜年単位の時間がかかることを考えると、その間の被害拡大を防げる仮処分は、模倣・侵害対策で非常に有効です。

仮処分(民事保全)は、不正競争防止法そのものではなく民事保全法にもとづく手続ですが、差止請求権を実現するための実務上の重要な手段です。その意義を整理すると、次のとおりです。

項目内容
目的本案の判決前に、暫定的に侵害を止める
メリット被害の拡大を早期に食い止められる
留意点権利があることを疎明する必要があり、担保(保証金)を求められることがある

たとえば、模倣品が大量に流通し始めているような場面では、本案の判決を待っていては、その間に市場が模倣品で埋め尽くされてしまいます。仮処分で早期に販売を止められれば、被害を最小限に抑えられます。ただし、仮処分では、権利があることを一定程度示す(疎明する)必要があり、担保の提供を求められることもあります。迅速さと引き換えに、準備が求められる手続です。

差止めを求めるには、何を準備すればよいですか?

侵害の事実を示す証拠と、差止めの対象を特定するための資料が必要です。対象があいまいだと、差止めが認められても実際に止めさせることが難しくなるため、特定が重要です。

差止めを求める際に必要になる準備を整理すると、次のとおりです。

準備事項内容
侵害の証拠模倣品の現物・販売ページ、営業秘密の使用状況、似た表示の使用状況など
対象の特定差し止める対象(どの商品・表示・情報か)を具体的に特定する
自社の権利・利益自社の商品形態・表示・営業秘密などが保護対象であることを示す資料
緊急性仮処分の場合、なぜ今すぐ止める必要があるか

とくに、差止めの対象を具体的に特定することが重要です。対象があいまいだと、仮に差止めが認められても、実際に何を止めさせるのかがはっきりせず、実効性が失われかねません。侵害の類型ごとに、何をどう特定するかは専門的な検討が必要です。営業秘密の初動対応は退職者による情報持ち出しへの対応もご覧ください。

差止めには、時間制限(消滅時効)がありますか?

営業秘密・限定提供データの「使用」を止める差止請求権は、侵害の事実と行為者を知ったときから3年、行為の開始から20年で時効消滅します。放置は禁物です。

営業秘密や限定提供データの使用に対する差止請求権には、消滅時効の定めがあります。

(消滅時効)

第十五条 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争のうち、営業秘密を使用する行為に対する第三条第一項の規定による侵害の停止又は予防を請求する権利は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 その行為を行う者がその行為を継続する場合において、その行為により営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある営業秘密保有者がその事実及びその行為を行う者を知った時から三年間行わないとき。

二 その行為の開始の時から二十年を経過したとき。

つまり、営業秘密の使用に対する差止請求権は、侵害の事実と行為者を知ったときから3年、行為の開始から20年で時効により消滅します。この規定は、限定提供データの使用に対する差止請求権にも準用されています(15条2項)。

「様子を見ているうちに時効にかかってしまった」という事態は避けなければなりません。侵害に気づいたら、早めに動くことが、差止めを含むすべての手段の前提になります。限定提供データについては限定提供データとはもご覧ください。

弁護士に相談するタイミング

侵害を止めたいと思ったら、できるだけ早く弁護士に相談してください。仮処分はスピードが命であり、証拠の準備と対象の特定が結果を左右します。

弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。

場面弁護士ができること
侵害に気づいたとき差止め・仮処分の要否判断、証拠の確保、対象の特定
仮処分の申立て疎明資料の準備、申立書の作成、担保への対応
本案訴訟差止請求訴訟の遂行、和解交渉
予防いざというときに迅速に動けるよう、権利・証拠の整備

差止め・仮処分は、スピードが結果を大きく左右します。侵害を発見してから証拠を集め、対象を特定し、申立ての準備を整えるまでを、いかに素早く進められるかが鍵です。平時から、自社の権利や商品情報を整理しておくことが、いざというときの迅速な対応につながります。こうした備えには、日常的に相談できる顧問契約が有効です。

顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 模倣品の販売を今すぐ止めさせたいです。裁判より早い方法はありますか?

あります。不正競争防止法は侵害の停止・予防を求める差止請求権を認めており(3条)、緊急の場合には、裁判の判決を待たずに侵害を止める「仮処分」を利用できます。模倣品が流通し始めている場面では、仮処分で早期に販売を止め、並行して本案(訴訟)で決着をつけるのが実務的です。

Q2. 差止めには、相手の故意や過失が必要ですか?

必要ありません。損害賠償には相手の故意・過失が必要ですが、差止請求(不正競争防止法3条)には故意・過失は不要です。侵害の事実(またはそのおそれ)があれば、まず止めることを求められます。この点が、迅速な救済につながっています。

Q3. 仮処分をするには、何が必要ですか?

侵害の事実を示す証拠と、差し止める対象を特定する資料が必要です。仮処分では、権利があることを一定程度示す(疎明する)必要があり、担保(保証金)の提供を求められることもあります。迅速さと引き換えに準備が求められるため、早めに弁護士に相談し、証拠を整えることが重要です。

Q4. 差止めの対象は、どこまで具体的にする必要がありますか?

差し止める対象(どの商品・表示・情報か)を、具体的に特定する必要があります。対象があいまいだと、差止めが認められても実際に何を止めさせるのかがはっきりせず、実効性が失われかねません。侵害の類型ごとに、何をどう特定するかは専門的な検討が必要です。

Q5. 侵害から時間がたっていますが、まだ差止めを求められますか?

営業秘密・限定提供データの「使用」に対する差止請求権は、侵害の事実と行為者を知ったときから3年、行為の開始から20年で時効消滅します(不正競争防止法15条)。時間の経過は不利に働くため、できるだけ早く対応することが重要です。まずは現状を弁護士にご確認ください。

「まず止める」ためのスピードが鍵

不正競争防止法は、侵害そのものを止めさせる差止請求権(3条)を認めており、緊急の場合には仮処分で迅速に侵害を止められます。損害賠償と違い、差止めには相手の故意・過失は不要です。ただし、営業秘密などの使用に対する差止請求権には消滅時効(知ったときから3年・行為開始から20年)があり、対象の特定や証拠の準備も欠かせません。侵害に気づいたら、被害が広がる前に、早めに動くことが何より重要です。

当事務所では、侵害行為の差止請求や仮処分の申立て、差止めの対象の特定と疎明資料の準備、消滅時効に注意した早期の対応など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。模倣・侵害を今すぐ止めたい方は、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

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