本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令(不正競争防止法ほか)に基づきます(更新)。
「競合他社が、取引先に『あの会社の製品は欠陥品だ』と嘘を言いふらしている」「事実無根の悪評を流されて、取引を打ち切られそうだ」——こうした行為は、会社が築いてきた信用を不当に傷つけるものです。「泣き寝入りするしかないのか」と悩む前に、法的な対抗手段を知っておきましょう。
競争関係にある会社が、こちらの営業上の信用を害する虚偽の事実を流した場合、それは「営業誹謗行為(信用毀損行為)」(2条1項21号)にあたり、差止め・損害賠償・信用回復措置(謝罪広告など)を求めることができます。しかも、差止めは相手の故意・過失がなくても認められます。
今回のコラムでは、営業誹謗行為の要件と対抗手段を、条文・裁判例にもとづいて解説いたします。
嘘の悪評を流されたら、止められますか?
止められる場合があります。競争関係にある相手が、こちらの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布した場合、営業誹謗行為(信用毀損行為)として、その差止めや損害賠償を求めることができます。
不正競争防止法は、こうした行為を「不正競争」の一つとして禁止しています。
二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
条文は短いですが、重要な意味を持ちます。とくに、民法上の一般的な不法行為(名誉毀損など)と違い、不正競争防止法では、差止めについて相手の故意・過失を必要としません。虚偽の悪評が広がるのを、迅速に止めることができる点に、大きな実益があります。
営業誹謗行為への対抗手段を整理すると、次のとおりです。
| 手段 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 差止め | 虚偽の事実の告知・流布の停止(故意・過失は不要) | 3条 |
| 損害賠償 | 故意・過失による損害の賠償 | 4条 |
| 信用回復措置 | 謝罪広告・訂正広告など | 14条 |
なお、この営業誹謗行為(21号)は、不正競争防止法の中でも刑事罰の対象ではなく、民事上の手段(差止め・損害賠償など)で対応する類型です。
営業誹謗行為(2条1項21号)の要件は何ですか?
営業誹謗行為の要件は、①競争関係にある他人について、②その営業上の信用を害する、③虚偽の事実を、④告知・流布することです。この4つを満たすと、差止め・損害賠償の対象になります。
要件を整理すると、次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①競争関係 | 流した側と流された側が競争関係にあること |
| ②信用を害する | 相手の営業上の信用を害する内容であること |
| ③虚偽の事実 | 客観的な事実に反すること |
| ④告知・流布 | 特定の人に告げる(告知)、または不特定・多数に広める(流布)こと |
たとえば、「あの会社の製品には欠陥がある」「あの会社は倒産しそうだ」といった、事実に反する内容を取引先や市場に流す行為が、これにあたり得ます。ポイントは、③のとおり、流された内容が客観的な事実に反する(虚偽である)ことです。次の見出しで、この「事実」と「意見・論評」の区別を説明します。なお、この規定は、競争相手の取引先へ「侵害品だ」と警告する場面でも問題になります。詳しくは取引先への警告と営業誹謗リスクをご覧ください。
「虚偽の事実」と「意見・論評」は、どう区別されますか?
「事実」とは、証拠によってその存否を判断できる事柄をいい、これが客観的に反していれば虚偽の事実にあたります。一方、単なる価値判断や批評は「意見・論評」であり、事実の摘示とは区別されます。
営業誹謗行為の対象は「虚偽の事実」であり、単なる意見や論評は、そのままでは対象になりません。両者の区別について、参考になるのが脱ゴーマニズム宣言事件(最一小判平成16年7月15日・民集58巻5号1615頁)です。この判決は、名誉毀損に関するものですが、ある表現が「事実の摘示」か「意見・論評」かの区別について、証拠によってその存否を判断できる事柄を主張するものであれば事実の摘示にあたるという考え方を示しており、営業誹謗の場面でも参考になります。
区別のイメージを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 事実の摘示(対象になり得る) | 「あの会社の製品にダイオキシンが含まれている」など、真偽を証拠で判断できるもの |
| 意見・論評(そのままでは対象外) | 「あの会社の商品は好みではない」など、価値判断・評価にとどまるもの |
もっとも、意見・論評の形をとっていても、その前提として虚偽の事実を含んでいる場合には、問題になり得ます。実際の事案では、どこまでが「事実」でどこからが「論評」かの見極めが重要になります。
損害賠償と、信用回復措置(謝罪広告)は請求できますか?
相手に故意・過失があれば損害賠償を、また、信用が害された場合には、損害賠償に代えて(または加えて)謝罪広告などの信用回復措置を請求できます。ただし、損害額の立証には工夫が必要です。
信用回復措置の条文(14条)は、次のとおりです。
(信用回復の措置)
第十四条 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。
つまり、虚偽の悪評で信用を害された場合、裁判所は、加害者に対し、謝罪広告や訂正広告といった信用を回復するための措置を命じることができます。金銭賠償だけでは回復しきれない信用の毀損に対応するための制度です。
もっとも、営業誹謗による損害額の立証は、必ずしも容易ではありません。悪評によって売上げがどれだけ減ったのか、因果関係と金額を示す必要があるためです。こうした立証が難しい場合には、裁判所が相当な損害額を認定する規定(9条)を活用することも考えられます。損害額の考え方は損害賠償の計算もご覧ください。
名誉毀損(民法)とは、どう使い分けますか?
営業誹謗行為(不正競争防止法)と名誉毀損(民法)は、同じ事実について両方を主張できる場合があります。不正競争防止法は、差止めを故意・過失なく求められる点で実益があります。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 営業誹謗行為(不正競争防止法2条1項21号) | 名誉毀損(民法709条など) |
|---|---|---|
| 前提 | 競争関係にあること | 競争関係は不要 |
| 差止め | 故意・過失がなくても可 | 認められる範囲が限定的 |
| 主な効果 | 差止め・損害賠償・信用回復措置 | 損害賠償・謝罪広告など |
競争関係にある相手からの虚偽の悪評であれば、不正競争防止法を使うことで、故意・過失を問わず迅速に差止めを求められる点が大きな利点です。事案によっては、両方を主張して対応することもあります。どちらで、あるいは両方でいくかは、事案に応じた判断が必要です。
弁護士に相談するタイミング
虚偽の悪評に気づいたら、拡散が広がる前に、証拠を確保して弁護士に相談してください。
弁護士が支援できる場面を整理すると、次のとおりです。
| 場面 | 弁護士ができること |
|---|---|
| 悪評に気づいたとき | 証拠(発信内容・発信者・拡散状況)の確保、差止め・仮処分の検討 |
| 損害・信用回復 | 損害賠償・信用回復措置(謝罪広告)の請求 |
| 発信者の特定 | 匿名の発信の場合の発信者情報開示の検討 |
| 予防 | 自社の情報発信のリスク管理(逆に加害者にならないための注意) |
虚偽の悪評は、時間がたつほど拡散し、信用の回復が難しくなります。気づいたら早めに、発信内容・発信者・拡散状況の証拠を確保することが重要です。こうした対応や、逆に自社が加害者にならないための日常的な注意には、顧問契約による継続的なサポートが有効です。
顧問契約については顧問契約のご案内もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 競合他社が取引先に「あの会社の製品は欠陥品だ」と嘘を流しています。訴えられますか?
その内容が事実に反するものであれば、営業誹謗行為(信用毀損行為・不正競争防止法2条1項21号)として、差止め・損害賠償・信用回復措置を求めることができる場合があります。とくに差止めは、相手の故意・過失がなくても認められる点に実益があります。まずは発信内容・発信者・拡散状況の証拠を確保してください。
Q2. 営業誹謗行為が認められるには、何が必要ですか?
①競争関係にある他人について、②その営業上の信用を害する、③虚偽の事実を、④告知・流布したこと、の4つが必要です(不正競争防止法2条1項21号)。ポイントは、流された内容が客観的な事実に反する(虚偽である)ことです。単なる価値判断や批評(意見・論評)は、そのままでは対象になりません。
Q3. 「悪評」と「正当な批評」は、どう区別されますか?
証拠によってその存否を判断できる事柄(事実の摘示)が客観的な事実に反していれば、営業誹謗の対象になり得ます。一方、価値判断や評価にとどまる意見・論評は、そのままでは対象になりません(脱ゴーマニズム宣言事件・最一小判平成16年7月15日の考え方が参考になります)。ただし、意見・論評の形でも、前提に虚偽の事実を含む場合は問題になり得ます。
Q4. 謝罪広告を出させることはできますか?
できる場合があります。故意・過失により営業上の信用を害された場合、裁判所は、損害賠償に代えて、または加えて、信用を回復するのに必要な措置(謝罪広告・訂正広告など)を命じることができます(不正競争防止法14条)。金銭賠償だけでは回復しきれない信用の毀損に対応するための制度です。
Q5. 名誉毀損とは、どちらで争えばよいですか?
同じ事実について、営業誹謗行為(不正競争防止法)と名誉毀損(民法)の両方を主張できる場合があります。競争関係にある相手からの虚偽の悪評であれば、不正競争防止法を使うことで、故意・過失を問わず迅速に差止めを求められる利点があります。どちらで、または両方でいくかは、事案に応じて弁護士が判断します。
虚偽の悪評には迅速な差止めを
競争関係にある相手が、こちらの営業上の信用を害する虚偽の事実を流した場合、営業誹謗行為(信用毀損行為・2条1項21号)として、差止め・損害賠償・信用回復措置(謝罪広告など)を求めることができます。とくに差止めは、相手の故意・過失がなくても認められる点で、拡散を迅速に止める有力な手段です。対象になるのは「虚偽の事実」であり、単なる意見・論評とは区別されます。悪評に気づいたら、拡散が広がる前に証拠を確保し、早めに動くことが重要です。
当事務所では、虚偽の悪評(営業誹謗行為)に対する差止め・仮処分、損害賠償・信用回復措置(謝罪広告)の請求、匿名の発信の場合の発信者の特定など、不正競争防止法に関するご相談・ご依頼を多数承っております。ブランドマネジメントや、虚偽の悪評にお困りの方は、証拠を確保のうえ、まずは本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
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