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ネット上の画像の転載と著作権侵害の成否(「NAVERまとめ」事件:東京地裁平成28年1月18日判決)

はじめに

SNSやまとめサイト、自社のウェブサイトやオウンドメディアに、インターネット上で見つけた画像を掲載する行為は、日常的に行われています。しかし、画像検索などで「拾った」画像の多くには著作権者が存在しており、無断で転載すれば著作権侵害となるおそれがあります。他方、権利を侵害された側から見ると、投稿者が匿名である場合には、まず投稿者を特定しなければ責任追及ができないという問題があります。

今回のコラムでは、まとめサイト「NAVERまとめ」に写真を無断掲載された著作権者が、投稿に使われたインターネット接続サービスを提供する経由プロバイダに対して発信者情報の開示を求め、これが認められた裁判例(東京地裁平成28年1月18日判決)をご紹介いたします。

本判決は、①インターネット上の権利関係が不明な画像について「利用を控えるなど、著作者の権利を侵害しないように配慮すべき注意義務」があると明示し、②画像を記事に添えるだけの利用は「引用」(著作権法32条1項)に当たらないと判断し、さらに③開示される発信者情報には電子メールアドレスも含まれるとした点に特徴があります。画像を「利用する側」のコンプライアンスと、「権利を守る側」の救済手段の両面について実務の指針を示すものであり、ウェブサイトやSNSの運用に関わる企業のご担当者にとって有益な裁判例です。

事案の概要

Xは、宗教法人であり、その一部門である新聞社に所属する職員カメラマンが、Xの業務として、Xの名誉会長を撮影した写真(以下「本件写真」といいます。)を保有していました。本件写真は、Xの機関誌に掲載され、Xの名義で公表されていました。

氏名不詳の投稿者(以下「本件投稿者」といいます。)は、Yの提供するインターネット接続サービスを経由して、まとめサイト「NAVERまとめ」に、Xの名誉会長の言動等を批判する内容のタイトルを付した記事を投稿し、そのタイトルの横に、本件写真の一部をトリミングした写真(以下「本件掲載写真」といいます。)を掲載しました。本件掲載写真には、出典の表示は一切ありませんでした。本件投稿者は、本件掲載写真を、画像検索サイト上にあった写真から入手したものでした。

Xは、本件投稿者に対する損害賠償請求権を行使するために必要であるとして、経由プロバイダであるYに対し、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)4条1項に基づき、本件投稿者の氏名・住所・電子メールアドレス等の発信者情報の開示を求めて提訴しました。

これに対し、Yは、本件写真の著作物性や複製該当性を争うとともに、本件掲載写真の掲載は「引用」に当たる余地があり著作権侵害が明らかとはいえない、仮に開示するとしても電子メールアドレスまで開示する必要はない、などと主張して争いました。

本件の争点

本件の主な争点は、以下のとおりです。

争点内容
争点①本件写真は著作物に当たるか。また、その著作権は誰に帰属するか(職務著作の成否)
争点②本件掲載写真は、本件写真を複製したものといえるか
争点③本件投稿者に故意又は過失が認められるか
争点④本件掲載写真の掲載は、「引用」(著作権法32条1項)として適法となる余地があるか
争点⑤発信者情報の開示は損害賠償請求権の行使のために必要か(電子メールアドレスも開示の対象となるか)

なお、判決文上、争点①ないし④は、「本件記事により原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるか」(プロバイダ責任制限法4条1項1号の権利侵害の明白性)という争点の中で判断されています。

裁判所の判断

争点① 写真の著作物性と著作権の帰属について

裁判所は、次のとおり判示し、本件写真の著作物性を認めました。

「本件写真(甲5)は、A名誉会長を被写体としてその上半身を写真中央に配置し、顔の表情がはっきりと分かるように撮影し、背景の花などはぼかすなどして、撮影者であるBの思想・感情が創作的に表現されたものであるから、写真の著作物として著作物性が認められる。」

その上で、裁判所は、以下の事実から、本件写真は職務著作(著作権法15条1項)に当たり、法人であるXがその著作者となると判断しました。

職務著作(著作権法15条1項)に関する認定内容
作成主体Xの一部門である新聞社の職員であったカメラマンが撮影した
作成の経緯Xの業務として名誉会長を撮影した
公表名義Xの機関誌に掲載され、Xの著作名義の下に公表された

争点② 本件掲載写真は本件写真の複製かについて

裁判所は、本件掲載写真は、名誉会長の胸部を削除して肩までの上半身の写真にしている点を除き、被写体の表情、姿勢、服装、背景、顔に映る陰影等において本件写真と同一であり、本件写真で特徴的に表現されている名誉会長の表情及び姿勢を明確に覚知することができると認定しました。その上で、次のとおり判示し、複製該当性を認めました。

「本件掲載写真は、本件投稿者が、本件写真と同一性を有する画像検索サイト上の写真に依拠して再製したものといえ、本件掲載写真は、本件写真を複製したものと認められる。」

Yは、本件投稿者は画像検索サイト上の写真を利用したにすぎず、Xの著作物である本件写真に接する機会はなかったとして、依拠性を争いました。しかし、裁判所は、画像検索サイト上の写真がXの著作物であるか否かという認識の有無は故意・過失の問題であって、依拠性の判断には影響しないとして、この主張を退けました。元の著作物を直接見ていなくても、その複製物(ここでは画像検索サイト上の写真)に依拠すれば複製は成立する、という判断です。

争点③ 本件投稿者の故意・過失について

裁判所は、次のとおり判示し、インターネット上の著作物の利用についての注意義務を示しました。

「およそ自らが創作(著作)したものでない著作物を利用する場合には、対象著作物の権利者の許諾を得るべき注意義務があるというべきであって、これを無許諾で利用した場合には、そのことを正当とすべき特段の事情がない限り、少なくとも過失があるというべきである。この点は、インターネット上に溢れている様々な著作物の利用に関しても異なるものではなく、識別情報や権利関係が明らかでない著作物については、著作権等を侵害する可能性が否定できない以上、当該著作物の利用を控えるなど、著作者の権利を侵害しないように配慮すべき注意義務があるというべきである。」

その上で、裁判所は、本件投稿者が、写真の権利関係について確認した上で権利者等から許諾を得たなどの事実関係はなく、権利関係が不明であったにもかかわらず「安易に」本件サイト上に掲載したものであるとして、少なくとも過失があると認めました。

争点④ 引用(著作権法32条1項)の成否について

裁判所は、次のとおり判示し、本件掲載写真の掲載が引用に当たる余地はないとしました。

「本件記事のうち本件掲載写真を説明する記述はなく、本件記事において本件掲載写真を掲載する必要性は明らかではない上、本件記事は、本件掲載写真を掲載するにあたってその出典を明示していないものと認められるから、本件掲載写真の掲載が著作権法32条1項にいう引用に当たる余地があるとはいえない。」

裁判所が引用の成立を否定するに当たり指摘した事情は、以下のとおりです。

考慮された事情内容
記事との関連性記事のうち本件掲載写真を説明する記述がない
掲載の必要性記事において本件掲載写真を掲載する必要性が明らかでない
出典の明示掲載に当たって出典を明示していない
掲載の目的記事は名誉会長の言動等を批判することなどを目的とし、写真もそのような意図の下に掲載されており、著作者の制作意図に沿うものでないことには容易に思い至るはずであって、正当な目的の引用として許容できるものでない

争点⑤ 発信者情報(電子メールアドレスを含む)の開示の必要性について

Yは、損害賠償請求権の行使には氏名・住所の開示で足り、電子メールアドレスの開示は必要ないと主張しました。しかし、裁判所は、次のとおり判示し、電子メールアドレスを含む発信者情報の全部について開示の必要性を認めました。

「不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するためには、最終的には民事訴訟の提起が必要であるとしても、これに先立って、裁判外で任意の履行請求することは、ごく通常のことであって、電子メールアドレスの開示がこれに資することは、明らかである。」

裁判所が電子メールアドレスの開示の必要性を認めた理由は、以下のとおりです。

理由内容
裁判外の請求に有用であること訴訟提起に先立つ裁判外での任意の履行請求は通常のことであり、電子メールアドレスの開示がこれに資する
省令の定め総務省令は、氏名・住所と並んで電子メールアドレスを発信者情報として掲げており、氏名・住所で特定できない場面のみに開示を限定した趣旨とは解されない
特定の実効性回線契約者が法人である場合など、氏名・住所だけでは具体的な発信者を特定できないことも想定される

以上により、裁判所は、Xの請求を全部認容し、Yに対し発信者情報の開示を命じました。

コメント

本判決は、インターネット上のコンテンツを利用する企業にとっても、権利侵害を受けた企業・団体にとっても、以下の点で実務上の示唆に富むものといえます。

1 「ネットで拾った画像」の利用には過失が認められやすいこと

本判決は、自ら創作したものでない著作物を無許諾で利用した場合には、特段の事情がない限り少なくとも過失があるとした上で、この理は「インターネット上に溢れている様々な著作物」についても異ならず、権利関係が明らかでない著作物については利用を控えるなどの配慮義務があると判示しました。本件投稿者は、画像検索サイトから入手した写真をそのまま掲載したものであり、権利者の表示がない画像であったにもかかわらず、過失が認められています。「検索で出てきた画像だから」「権利表示がなかったから」という事情は、責任を免れる理由にならないことを示すものです。

企業のウェブサイト、SNSアカウント、広報資料等で画像を使用する場合には、自社で撮影・制作した素材、権利処理済みのストックフォト、利用規約を確認したフリー素材など、出所と利用条件が確認できるものに限定する運用が求められます。

2 記事に画像を添えるだけでは「引用」にならないこと

本判決は、記事中に写真を説明する記述がなく、掲載の必要性が明らかでないこと、出典を明示していないことなどを指摘して、引用(著作権法32条1項)の成立を否定しました。記事の内容と関連性のない画像を、いわば挿絵やアイキャッチとして掲載する利用は、引用として適法になるものではありません。他人の著作物を引用するには、自らの記述との関連でその著作物を利用する必要性があり、出典を明示することが前提となります。ウェブコンテンツの制作に当たっては、「引用と書けば使える」といった理解が誤りであることを、担当者に周知しておくことが重要です。

3 権利者は、発信者情報開示請求により匿名投稿者を特定できること

権利者側の視点では、本判決は、匿名の投稿者による著作権侵害について、経由プロバイダに対する発信者情報開示請求が救済手段として機能することを示すものです。開示の対象として、氏名・住所に加えて電子メールアドレスも認められた点は、その後の実務でも参考になります。

【後日加筆】なお、本判決は当時のプロバイダ責任制限法4条1項に基づくものですが、その後の法改正により、発信者情報開示命令という迅速な裁判手続が新設され、現在、同法は「情報流通プラットフォーム対処法」に名称が改められています。制度の枠組みは変わりましたが、権利侵害の明白性などの判断において、本判決の考え方は現在も参考になるものです。

4 企業に求められる対応

コンテンツを利用する場面では、画像・文章等の利用ルールを社内ガイドラインとして整備し、SNSやウェブサイトの運用担当者に研修等で周知することが、侵害の予防につながります。他方、自社のコンテンツを無断転載された場合には、投稿のURL・スクリーンショット等の証拠を保全した上で、開示請求の要否を検討することになりますが、プロバイダの通信ログの保存期間は限られているため、対応のスピードが結果を左右します。いずれの場面でも、早い段階で弁護士に相談し、方針を立てることが有益です。

おわりに

本判決が扱った問題は、インターネット上の画像利用のコンプライアンスと、匿名の侵害者に対する権利行使という、ウェブを活用するすべての企業に関わる実務課題です。発信者情報開示の制度は法改正により変化しており、証拠の保全やプロバイダへの請求には時間的な制約もあるため、個別の事案に応じた適切な対応をとるには、専門的な検討が必要となります。

当事務所は、著作権をはじめとする知的財産権に関する紛争対応・予防法務や、発信者情報開示請求をはじめとするインターネット上の権利侵害への対応について、ご相談・ご依頼をお受けしております。ウェブサイトやSNSの運用ルールの整備、無断転載への対応にお悩みの企業のご担当者は、お気軽にご相談ください。

本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。