令和4年4月1日に施行された改正少年法により、18歳以上20歳未満の者は「特定少年」として位置づけられ、保護処分の選択にあたっては「犯情の軽重」を考慮することが求められるようになりました。
今回のコラムでは、特定少年による無免許運転の事案について、第1種少年院送致とし、収容期間を2年間と定めた那覇家庭裁判所沖縄支部令和5年3月7日決定(令和5年(少)第5012号)を取り上げます。
本決定は、改正少年法のもとで「犯情の軽重」をどのように評価し、少年院送致の可否や収容期間をどのように判断するかについて、実務上の参考となる事例です。
事案の概要
本件は、審判時19歳の特定少年が、公安委員会の運転免許を受けずに普通自動二輪車を運転した道路交通法違反の保護事件です。
少年の経歴と本件に至る経緯は、以下のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 令和2年 | 普通自動二輪車の無免許運転等により保護観察の決定を受ける |
| 保護観察中 | 無免許運転2件、速度超過1件の非行を起こす |
| 令和3年 | 上記非行により第1種少年院送致(短期間の処遇勧告付き)の決定を受ける |
| 令和4年 | 少年院を仮退院。鳶職に就くも寝坊が続き退職。仮退院から約1か月で不良交友を再開し、無免許運転を再び行うようになる |
| 令和4年(本件非行日) | 友人との待ち合わせに向かうため、無免許で普通自動二輪車を運転。走行距離は約26キロメートルに及ぶ。警察官に呼び止められた際、対向車線を逆走するなどして逃走を図る |
| 本件非行後 | 県外に逃亡し、約9か月間にわたり逃亡生活を送る。その間、職を転々とし、SNSで知り合った交際相手を妊娠させるなど、場当たり的な行動を繰り返す |
| 令和5年 | 逮捕される |
裁判所は、少年を第1種少年院に送致し、収容期間を2年間と定めました。
本件の争点
本件の争点は以下のとおりです。
| 争点 | 内容 |
|---|---|
| 争点① | 本件の犯情の軽重に照らして、少年院送致が許容されるか |
| 争点② | 要保護性を踏まえた処遇として、社会内処遇ではなく少年院送致を選択すべきか |
| 争点③ | 少年院に収容する期間をどの程度と定めるべきか |
裁判所の判断
争点①:犯情の軽重の評価(少年院送致の許容性)
裁判所は、本件の犯情について以下の事情を指摘し、少年院送致も許容されると判断しました。
| 考慮事実 | 内容 |
|---|---|
| 走行距離 | 無免許でありながら約26キロメートルにわたり走行した |
| 逃走行為の危険性 | 警察官に呼び止められた後、対向車線を逆走するなどして逃走を図った |
| 同種の保護処分歴 | 過去にも無免許運転で2回の保護処分(保護観察及び第1種少年院送致)を受けていた |
| 仮退院後の再犯の早さ | 少年院を仮退院してから約1か月で無免許運転を再開した |
裁判所は、これらの事情を踏まえ、次のように判示しました。
「走行距離は約26キロメートルに及んでいる。さらに、警察官から呼び止められた後は、逃走するために対向車線を逆走するなどしており、一歩間違えれば重大な交通事故を引き起こしかねない(中略)危険な行為である。しかも、少年は、過去にも無免許運転で2回の保護処分歴があり、(中略)少年院を仮退院したにもかかわらず、その後1か月足らずで無免許運転を再開し、本件非行に及んでいるというのであり、交通法規軽視の姿勢が顕著である。」
争点②:要保護性を踏まえた処遇判断(社会内処遇の可否)
裁判所は、要保護性の観点から以下の事情を総合的に検討し、社会内処遇を選択することはできないと判断しました。
| 考慮事実 | 内容 |
|---|---|
| 非行性の深まり | 過去2回の保護処分(少年院送致を含む)が歯止めとならず、仮退院直後に同種非行を繰り返している |
| 規範意識の低さ | 保護処分を受けながらも同種非行を繰り返しており、規範意識の低さが顕著である |
| 逃亡中の行動 | 本件非行後に約9か月間にわたり県外で逃亡し、職を転々とするなど場当たり的な行動を繰り返した |
| 資質上の問題 | 欲求本位で刹那的に行動しやすく、自己の責任を考えて行動する姿勢が身についていない。この問題点は前件でも指摘されていたが、少年院での矯正教育を経ても改善されていない |
| 保護環境の不十分さ | 少年の母は、過去2回の保護処分にもかかわらず少年の非行を防止できておらず、今後も家庭における十分な指導は期待できない |
裁判所は、以下のとおり判示しました。
「少年の規範意識が低く、少年院による矯正教育も奏功しておらず、少年の非行性が深まりをみせていると言わざるを得ないこと、今後も家庭における十分な指導は期待できないことなどからすると、社会内処遇を選択することはできず、少年を再び第1種少年院に収容した上、改めて系統だった矯正教育を通じて規範意識を高め、不良交友を断ち切らせ、自立した社会生活を営むための社会適応力を身に着けさせるとともに、問題が生じた際の適切な対処方法を身につけさせる必要がある。」
争点③:収容期間の決定
裁判所は、犯情に鑑み、収容期間を2年間と定めました。
コメント
1. 本決定の意義
本決定は、改正少年法の施行後に、特定少年を少年院送致とした公刊裁判例の一つです。犯情の軽重の評価方法や収容期間の定め方について具体的な判断を示した点で、実務上の参考になる決定です。
2. 改正少年法における「犯情の軽重」の位置づけと本決定の判断
改正少年法のもとでは、特定少年に対する保護処分は「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内」で選択しなければなりません(少年法64条1項)。「犯情」とは、当該犯罪の性質、犯行の態様、犯行による被害等を意味するとされています(玉本将之=北原直樹「『少年法等の一部を改正する法律』について」法曹時報74巻1号31頁参照)。
本決定との関係で注目されるのは、同種の保護処分歴を「犯情の軽重」の判断において考慮できるかという点です。実務上は、少なくとも同種の保護処分歴は犯情の軽重を判断する際に考慮しうるとする見解が多数とされています(入江猛「家庭裁判所における改正少年法の運用について」家庭の法と裁判36号33頁)。
本決定も、少年が過去に同種の無免許運転で2回の保護処分を受けていることを犯情の評価において考慮しており、この多数説と同様の立場に立つものと評価できます。
3. 収容期間の定め方について
改正少年法は、特定少年を少年院に送致する場合、家庭裁判所が3年以下の範囲で収容可能な期間の上限を設定しなければならないと定めています(少年法64条3項)。この期間は、少年院での施設内処遇だけでなく、仮退院後の保護観察の期間も含めた上限として機能します。
改正法施行後の運用状況をみると、令和4年4月から同年9月までの間に少年院送致となった特定少年は335人であり、そのうち収容期間を1年6月超2年以内と定められた者が219人と、全体のおよそ7割を占めています(福岡涼「改正少年法施行後の運用状況について」家庭の法と裁判42号103頁以下参照。いずれも速報値。)。
本決定が収容期間を2年間としたことは、こうした実務の傾向とも整合するものです。
本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。

