はじめに
上場企業が有価証券報告書に虚偽の記載を行い、その後に過年度決算の訂正が行われた場合、当該株式を取得した投資者は、どのような法的根拠に基づき、どのような範囲で損害賠償を請求できるのでしょうか。
東京地裁令和3年5月13日判決は、大手電機メーカーが複数の事業分野にわたり不適切な会計処理を行い、有価証券報告書等に重要な事項についての虚偽記載がなされた事案について、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償と金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)21条の2に基づく損害賠償の双方について、損害額の算定方法を詳細に判示しました。
本判決は、複数期にわたる虚偽記載が存在する場合の損害額の算定手法、市場要因による株価下落の控除方法、算定対象株式の特定方法(総平均法の採用)など、有価証券報告書の虚偽記載に基づく損害賠償請求における損害論の重要な論点について判断を示しており、実務上の参考となるものです。
今回のコラムでは、本判決の概要と各争点に対する裁判所の判断を紹介し、企業実務への示唆について検討します。
事案の概要
本件は、被告会社(東証一部上場の電気機械器具製造業等を目的とする株式会社)の株式を取引所市場において取得した原告ら(信託銀行2社)が、被告が提出した有価証券報告書及び四半期報告書に重要な事項についての虚偽記載があったとして、被告に対し損害賠償を請求した事案です。
被告会社では、第三者委員会の調査により、以下の4分野にわたる不適切な会計処理が認定されました。
| 分野 | 不適切な会計処理の内容 |
|---|---|
| インフラ関連の工事進行基準適用案件 | 工事原価総額を意図的に過少見積りし、売上を過大計上。工事損失引当金の不計上・過少計上 |
| 映像事業 | 当期計上すべき経費の翌期以降への先送り(キャリーオーバー)、部品取引における利益の不適切な計上 |
| PC事業 | 部品取引におけるマスキング値差に係る利益の取消し未処理、経費計上の先送り |
| 半導体事業 | 販売可能性が見込まれない在庫について評価損を計上しなかった |
これらの不適切な会計処理の原因について、第三者委員会は、被告の経営トップらが意図的な当期利益の嵩上げの実行等を認識しながら中止や是正の指示をしなかったこと、幹部職員等がその目的のもとで不適切な会計処理を実行・継続してきたことを指摘しました。
原告らは、(1)主位的に不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を、(2)予備的に金商法21条の2第1項に基づく損害賠償(同条2項の推定規定を用いないもの)を、(3)さらに予備的に金商法21条の2第1項に基づく損害賠償(同条2項の推定規定を用いるもの)をそれぞれ請求しました。
本件の争点
本件の争点は以下のとおりです。
| 争点 | 内容 | 関連する請求 |
|---|---|---|
| 争点① | 虚偽記載の有無及び範囲 | 全請求に共通 |
| 争点② | 虚偽記載が重要な事項についてのものであるか | 全請求に共通 |
| 争点③ | 不法行為の成否(虚偽記載についての故意又は過失の有無) | 主位的請求 |
| 争点④ | 不法行為に基づく請求についての損害論 | 主位的請求 |
| 争点⑤ | 金商法21条の2第1項に基づき、同条2項の推定損害額の規定を用いない場合の損害額 | 予備的請求① |
| 争点⑥ | 金商法21条の2第2項による推定損害額 | 予備的請求② |
裁判所の判断
1. 虚偽記載の有無及び範囲(争点①)
裁判所は、まず、虚偽記載の判断基準について、以下のとおり判示しました。
「金商法の規定に基づいて提出される財務計算に関する書類は、一般に公正妥当であると認められる企業会計の基準に従って作成されなければならないから(金商法193条、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則1条1項等参照)、いわゆる財務情報に関して投資者に対する不法行為責任が成立する程度の虚偽記載がされた、又は、改正前金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」に当たるというためには、いずれも有価証券報告書等への虚偽記載が一般に公正妥当であると認められない不適切な会計処理に基づくものであることが必要というべきである。」
その上で、裁判所は、第三者委員会の報告書の信用性を認め、本件有価証券報告書等の過年度訂正のうち、組替えの影響を反映する前の額と本件訂正報告書の額との差額の範囲内の額については、虚偽記載に該当すると推認しました。
組替えに伴う訂正(非継続事業に関する組替え及び事業買収に関する組替え)については、第三者委員会の指摘する不適切な会計処理を理由として行われたものではないことから、虚偽記載に該当しないと判断しました。
減損損失の追加計上については、被告が「訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきであったことを理由に行ったものではない」と主張しましたが、裁判所は、不適切な会計処理により当期利益が嵩上げされていた際に作成された中期経営計画に基づく将来キャッシュフローの見積りは合理的とはいえないとして、虚偽記載の推認を覆すに足りないと判断しました。裁判所は以下のように判示しています。
「半導体事業、PC事業及び映像事業においては、いずれも不適正な会計処理により当期利益が嵩上げされていたものであって、当期利益が嵩上げされていた際に作成された中期経営計画に基づく将来キャッシュフロー(又は営業損益)の見積りは、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定や予測に基づいて行われたものとはいえないし、現に、その後の実績等を踏まえた結果、全てについて、減損損失を追加計上することになったことにも鑑みれば、上記中期経営計画の合理性にもかなり疑問があるところであり、そのような計画に基づく割引前の将来キャッシュフローという将来予測値に、営業損益の訂正額という実績値を反映させただけで、直ちに、訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきではなかったと評価するのは困難である。」
2. 重要な事項についての虚偽記載か否か(争点②)
裁判所は、虚偽記載が「重要な事項」に該当するか否かは、当該虚偽記載が投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであったか否かを基準として判断すべきであるとした上で、各財務指標について以下のとおり判断しました。
| 財務指標 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 継続事業税引前当期純損益 | 重要な虚偽記載あり(一部期) | 過大計上額は400億円超、訂正比率50%超 |
| 当期純損益 | 全期間で重要な虚偽記載あり | 訂正金額は90億円超、訂正比率は最低でも14.86% |
| 売上高 | 該当しない | 各期の訂正比率がいずれも1%未満 |
| 株主資本 | 全期間で重要な虚偽記載あり | 訂正金額は742億円超、訂正比率は最低でも8.5%超 |
なお、いわゆる「逆粉飾」(利益を過少に表示する虚偽記載)について、裁判所は以下のように述べ、逆粉飾であることから直ちに重要な虚偽記載に当たらないとすることはできないと判断しました。
「逆粉飾に当たる虚偽記載であっても、その訂正額や訂正比率が相応のものであれば、投資者の投資判断に重大な影響を与えることに変わりはない。」
また、課徴金納付命令の対象が一部の期の当期純損益のみであったことについて、裁判所は、課徴金納付命令は行政上の判断であって裁判所の判断を拘束しないとしています。
3. 不法行為の成否(争点③)
裁判所は、法人の不法行為責任について、以下の3つの類型を整理しました。
「法人については、①法人自身が業務遂行に関わる者の行為を介することなく直接不法行為責任を負うことが明定されている場合(民法717条1項、製造物責任法3条等)を除けば、②法人の代表者(会社法350条等)又は被用者(民法715条)の加害行為により他人に損害を被らせた場合にはじめて不法行為責任を負うのが原則である。もっとも、③法人の一個の組織体としての行動の結果として、他人の生命身体等の重要な法益が侵害されており、代表者又は被用者の誰かに過失があることが明らかである場合においては、業務遂行に関わる代表者や被用者個人の行為や過失を個別に問題とすることなく、法人が民法709条により不法行為責任を負うべきものとされることもあり得るというべきである。」
そして、本件では、被告の経営トップらが意図的な当期利益の嵩上げを認識しながら中止・是正を指示しなかったこと等を認定し、被告の一個の組織体としての行動として不適切な会計処理が行われ、投資者の財産権が侵害されたとして、法人としての被告が民法709条に基づく損害賠償責任を負うと判断しました。
4. 不法行為に基づく損害額の算定(争点④)
(1) 損害の内容
裁判所は、本件虚偽記載と相当因果関係のある損害について、以下の2つを認めました。
| 損害の類型 | 内容 |
|---|---|
| 高値分 | 虚偽記載により不当に高く評価された株式価値相当分 |
| ろうばい売り等から生ずる損害 | 虚偽記載の発覚による信用毀損・投資者の過剰反応から生ずる株価下落 |
(2) 損害額の算定方法
裁判所は、損害額の正確な認定が困難であるとして、民訴法248条(損害額の認定)を適用し、以下の手順で損害額を算定しました。
手順1:虚偽記載と相当因果関係のある株価下落期間の認定
裁判所は、株価下落の始期を平成27年4月3日(特別調査委員会設置の公表日)、終期を同年9月7日(訂正報告書提出日)と認定し、同期間の下落分を159.7円(512.4円−352.7円)としました。
手順2:市場要因による株価下落の控除
裁判所は、シャープら5社の株価との比較分析を行い、以下のように認定しました。
「本件虚偽記載と相当因果関係のある株価下落の期間のうち、概ね前半の2箇月程度株価の推移状況は、被告株式の株価が下落傾向にある一方でシャープら5社の株式の大半の株価は下落傾向にはなかったこと(中略)に照らすと、被告株式の株価の動きはシャープら5社の株式の株価の動きと連動するものではないことが明らかである。他方、後半については、その変動幅に差があるものの、シャープら5社の株式の株価の動きと被告株式の株価の動きとの間には一定の相関関係が認められる。」
以上を踏まえ、市場要因による株価下落分として公表後下落額の30%を控除しました。
手順3:取得時期に応じた調整
裁判所は、被告株式の取得時期に応じて、虚偽記載が株価に与えた影響の度合いが異なるとして、有価証券報告書の縦覧期間ごとに以下の割合を適用しました。
| 縦覧期間 | 期間 | 損害の割合 |
|---|---|---|
| 縦覧期間A(第171期) | 平成22年6月23日〜平成23年6月21日 | 調整後下落額の30% |
| 縦覧期間B(第172期) | 平成23年6月22日〜平成24年6月21日 | 調整後下落額の30% |
| 縦覧期間C(第173期) | 平成24年6月22日〜平成25年6月24日 | 調整後下落額の60% |
| 縦覧期間D(第174期) | 平成25年6月25日〜平成26年6月24日 | 調整後下落額の100% |
| 縦覧期間E(第175期) | 平成26年6月25日〜平成27年4月3日 | 調整後下落額の100% |
手順4:算定対象株式の特定(総平均法の採用)
裁判所は、振替株式は没個性的な株主たる地位の割合的単位にすぎないとして、先入先出法ではなく総平均法の考え方を採用し、算定対象株式を特定しました。
「株券が発行されず、数量のみによって把握される振替株式については、株式は、没個性的な株主たる地位の割合的単位にすぎず、株式の取得及び処分は、その会社の持分割合の増減として把握される。そうすると、個々の取得と処分とを紐付けせず、一定期間内の取得と処分とを割合的に捉えて棚卸資産の取得価額を算定するという総平均法の考え方を算定対象株式の特定に援用することは、上述した振替株式の性格と整合的なものであるということができる。」
(3) 認容額
以上の算定方法により、不法行為に基づく損害賠償として、原告X1社につき1億3117万4668円(弁護士費用含む)、原告X2社につき86万3910円(弁護士費用含む)が認容されました。
5. 金商法21条の2第1項に基づく損害額(争点⑤・⑥)
予備的請求①(同条2項の推定規定を用いない場合)
裁判所は、金商法21条の2第2項が因果関係及び損害額の立証責任の負担を軽減するために導入された規定であることに鑑みて、同条1項の損害の発生自体は認められるものの損害額の立証が困難な場合には同条2項によるべきであるとし、民訴法248条の適用は相当ではないと判断しました。その結果、予備的請求①は損害額の立証ができていないとして棄却されました。
予備的請求②(同条2項の推定規定を用いる場合)
裁判所は、金商法21条の2第2項の「虚偽記載等の事実の公表」の時期について、平成27年5月8日開示をもって「公表」に該当すると認定しました。
「平成27年5月8日開示によって、過年度訂正額や規模までが具体的に明らかにされたわけではないものの、工事進行基準適用案件等に不適切な会計処理があり、過年度決算の訂正を行う可能性があること、平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配とするなど、上述した問題が一定の規模に及ぶ可能性があることをうかがわせる事実が明らかにされていること、平成27年5月8日開示を受けて、被告株式の株価が急落したことを併せ考えると、平成27年5月8日開示で公表された情報は、被告株式に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実に当たるということができ(る。)」
推定損害額は1株当たり60.98円(公表日前1箇月の平均株価484.98円−公表日後1箇月の平均株価424.00円)と算定されました。
金商法21条の2第4項の減額の抗弁について、裁判所は、市場要因については、公表前後の各1箇月間に限定して検討した結果、シャープら5社の株価の推移から市場要因が株価形成に影響を及ぼしたとは認められないとし、組替えの影響額についても割合が小さいとして、いずれも減額事由としては認めませんでした。
予備的請求②について、原告X1社につき1億4091万0383円、原告X2社につき2154万3832円が認容されました。最終的に、主位的請求の認容額との差額が追加的に認容されています。
6. 遅延損害金の起算日
裁判所は、不法行為に基づく損害賠償については、損害は株式を処分して初めて現実化するとして、株式の処分時を遅延損害金の起算日としました。一方、金商法21条の2第2項の推定損害額による場合は、公表日(平成27年5月8日)を起算日としました。
コメント
1. 本判決の位置づけと先行裁判例との関係
有価証券報告書等の虚偽記載を理由とする株主からの損害賠償請求訴訟については、これまでにも複数の最高裁判例・下級審裁判例が蓄積されています。本判決の各判断事項と関連する先行裁判例の関係を整理すると、以下のとおりです。
第一に、法人の直接的な不法行為責任の肯定については、東京高判平成29年2月23日(資料版商事402号61頁、いわゆるIHI事件判決)においても同様の考え方が示されています。
第二に、損害の内容として、高値分に加えてろうばい売り等から生ずる損害も相当因果関係のある損害とする考え方は、大阪高判平成28年6月29日(金判1499号20頁、いわゆるオリンパス事件判決)において示されたものであり、本判決もこの枠組みを踏襲しています。
本判決は、これに加えて、損害額の算定が困難であるとして民訴法248条を適用した点に特徴があります。他方で、金商法21条の2第1項に基づく請求(同条2項の推定規定を用いない場合)については民訴法248条の適用を否定しており、同条の規定の構造・趣旨を踏まえた判断がなされています。
第三に、金商法21条の2第2項の「公表」の解釈については、最判平成24年3月13日(民集66巻5号1957頁、いわゆるライブドア事件判決)が、虚偽記載のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実について、多数の者が知り得る状態に置く措置がとられれば足りるとの基準を示しています。
本判決は、この基準に従い、第三者委員会の調査結果の全容が明らかになる前の段階の開示であっても「公表」に該当し得ると判断したものです。
その他、市場要因による株価下落の控除について、同業他社(シャープら5社)の株価の変動率を具体的に分析し、株価下落期間の前半と後半で連動性の度合いが異なることを認定した上で、公表後下落額の30%を市場要因として控除するという判断を行った点も注目されます。
また、複数期にわたる虚偽記載が存在する場合に、株式の取得時期に応じて虚偽記載の影響度が異なるとして、有価証券報告書の縦覧期間ごとに30%から100%の割合を適用して損害額を調整した点も注目されます。
2. 総平均法の採用とその射程
本判決において実務上注目すべき点は、算定対象株式の特定方法として総平均法の考え方を採用したことです。
振替株式制度のもとでは個々の株式に個性がなく、取得と処分の対応関係をどのように特定するかが問題となります。本判決以前にも、先入先出法による紐付けを行った裁判例はありましたが(東京地判平成24年6月22日金判1397号30頁等)、特定方法の選択自体が争点として正面から争われた事例は見当たりません。
本判決は、振替株式の没個性的な性質を根拠に、当事者の一方が総平均法を主張している場合にはそれによるべきであると明示的に判示した点に意義があります。
加えて、本判決は、総平均法の考え方を損害賠償請求の対象株式の特定の場面にとどまらず、(1)金商法21条の2第2項の推定損害額を算定する際の対象株式(公表日前1年以内に取得し公表日に引き続き所有する株式)の特定、(2)金商法19条1項の限度額(株式の取得について支払った額や控除する処分価額・市場価額)の算定にも一貫して採用しています。
このように複数の算定局面において総平均法の考え方を全面的に展開した点は、今後の同種事案において参考になるものと考えられます。
なお、総平均法の採用は、遅延損害金の起算日にも影響を及ぼします。総平均法を採用した場合、個々の株式の取得と処分の対応関係を特定しないため、遅延損害金の起算日の決定方法にも影響が生じます。
本判決が、不法行為に基づく請求において株式の処分時を遅延損害金の起算日とし、金商法21条の2第2項に基づく請求において公表日を起算日としたことは、総平均法の採用と整合的な帰結であるといえます。企業としては、損害賠償請求を受けた場合に、対象株式の特定方法の選択が損害額のみならず遅延損害金にも波及し得ることを認識しておく必要があります。
3. 法人の直接的な不法行為責任
本判決は、法人の不法行為責任について、法人の一個の組織体としての行動の結果として他人の重要な法益が侵害され、代表者又は被用者の誰かに過失があることが明らかである場合には、個々の加害行為者を特定しなくても法人が民法709条により直接不法行為責任を負い得るとの判断を示しました。
前述のとおり、IHI事件判決においても同様の判断が示されており、組織的に不適切な会計処理が行われた事案における原告側の立証負担を軽減する方向の裁判例が蓄積されつつあるといえます。企業としては、仮に個々の行為者の特定が困難であっても、組織的な関与が認められる限り法人自体の責任が肯定され得ることを踏まえ、内部統制の整備・運用に努めることが重要です。
4. 企業に求められる対応
本判決の判断を踏まえると、企業においては、以下の対応が求められると考えられます。
(1)虚偽記載のリスクの認識と対応
本判決は、継続事業税引前当期純損益の訂正比率が50%を超える場合はもとより、当期純損益の訂正比率が14.86%であっても重要な虚偽記載に該当し得ると判断しています。また、逆粉飾であっても重要な虚偽記載に該当し得るとしています。
企業においては、財務数値の正確性を担保するための体制を整備し、仮に誤りが発見された場合には速やかに訂正を行うことが重要です。
(2)損害額の拡大リスクへの理解
本判決では、高値分のみならず、ろうばい売り等による株価下落も損害として認められています。虚偽記載の発覚に伴う株価下落は、高値分を超えて生じ得るものであり、企業の損害賠償リスクは虚偽記載による株価の嵩上げ分にとどまりません。このことは、虚偽記載の未然防止に努めるべき理由の一つとなります。
(3)有事における情報開示のあり方
本判決では、第三者委員会の調査結果の全容が明らかになる前の段階(平成27年5月8日開示)で、金商法21条の2第2項の「公表」に該当すると判断されました。この判断は、虚偽記載の事実が段階的に明らかになる過程において、どの時点の開示が「公表」に当たるかという問題に関するものであり、有事における企業の情報開示戦略にも影響を与え得るものです。
本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。

