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就活セクハラ指針の概要と企業に求められる実務対応

2026年2月26日、厚生労働省は、①職場におけるカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)及び②就職活動中の学生やインターンシップ生等の求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下「就活セクハラ」といいます)のそれぞれについて、事業主が雇用管理上講ずべき措置等に関する指針を公表しました。

今回のコラムでは、このうち、就活セクハラに関する指針の内容を概説するとともに、企業が講ずべき対策のポイントについて解説します(なお、カスハラ指針の概要及び企業に求められる対応については、こちらのコラムをご覧ください)。

 

就活セクハラ指針の概要

改正男女雇用機会均等法は、既に義務付けられていたセクハラの防止措置義務の対象に、新たに就活セクハラを追加し、事業者が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害されることがないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けました(13条1項)。

事業主が雇用管理上講ずべき措置等に関しては、厚生労働大臣が指針を定めるとされており(13条3項)、2026年2月26日、「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号、以下「就活セクハラ指針」といいます)が公表されました。

改正法は、2026年10月1日から施行されるため、企業はそれまでに、就活セクハラ指針の内容を踏まえ、必要な体制整備等を行う必要があります。

 

1 就活セクハラの定義

改正男女雇用機会均等法13条1項は、就活セクハラを「事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるもの」と定義しています。

なお、就活セクハラ指針では、就活セクハラには、同性に対するものも含まれ、被害を受けた者の性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、当該者に対する求職活動等におけるセクシャルハラスメントも、就活セクハラ指針の対象となるとしています。

(1)「求職活動等」とは

就活セクハラ指針は、「求職活動等」とは、「求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動」を指し、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれるとしています。また、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らないとしています。

就活セクハラ指針では、「求職活動等」の具体例として以下を挙げています。

・企業の採用面接への参加
・企業の就職説明会への参加
・企業の雇用する労働者への訪問
・インターンシップへの参加
・教育実習、看護実習等の実習の受講

(2)「労働者」とは

就活セクハラ指針では、「労働者」の定義について、正規雇用労働者だけではなく、パートタイム労働者、契約社員などのいわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいうとしています。

また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者も、本指針が定める配慮や措置等を講ずることが必要であるとされています。

(3) 「性的な言動」とは

就活セクハラ指針では、「性的な言動」とは、「性的な内容の発言及び性的な行動」を指し、「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等がそれぞれ含まれるとしています。

また、就活セクハラ指針は、「性的な言動」を行う者には事業主(法人の場合はその役員)も想定されるとした上で、これらの者による性的な言動についても必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとしています。

 

2 就活セクハラの典型例

就活セクハラ指針は、上記1の定義を前提に、就活セクハラの典型例として以下を挙げています。就活セクハラ指針は、就活セクハラに問題があるのは、意に反する性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害され、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、求職活動等を行う上で看過できない程度の支障が生じる場合であるとしており、その状況は多様であるとしています。

 典型例の内容
少人数の説明会において、労働者が求職者等の腰、胸等に触ったため、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
企業が実施するインターンシップにおいて、性的な内容を含むポスターの掲示や画面の表示等を行っているため、求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動の意欲が低下していること。
求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

 

3 事業主等の責務

就活セクハラ指針は、改正男女雇用機会均等法14条2項及び4項に基づき、事業主及び労働者それぞれの責務について以下のように定めています。

事業主の責務については、就活セクハラを行ってはならないことその他就活セクハラに起因する問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動・啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならないとされています。

また、事業主(役員を含む。)は、自らも就活セクハラ問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないとされています。

他方、労働者の責務については、就活セクハラ問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる後記4の措置に協力するように努めなければならないとされています。

 

4 事業主が講ずべき就活セクハラ防止措置の内容

就活セクハラ指針は、事業主は、就活セクハラを防止するために、以下の措置を講じなければならないとしています。なお、措置の具体例についても指針に記載されています。

区分措置の内容
①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容及び求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

・求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、これを労働者及び求職者等に周知・啓発すること。
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知すること。なお、求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されることから、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられる。

・相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた求職者等が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談を行った求職者等の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。

③事後の迅速かつ適切な対応・事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。

・改めて求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。なお、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
④①から③までの措置と併せて講ずべき措置・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該セクシュアルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者及び求職者等に対して周知すること。

・求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する事実関係の確認等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

 

5 行うことが望ましい取組

就活セクハラ指針は、上記4の措置に加えて、以下の取組を行うことが望ましいとしています。

【就活セクハラに関する望ましい取組】

 取組の内容
求職活動等を行う大学生や専門学校生が所属する教育機関が設置する相談窓口の担当者等から就活セクハラに係る相談に関する情報提供があった場合には、連携し、適切な対応を行うこと
求職者等から、顧客・取引の相手方・施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者による就活セクハラに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、上記の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うこと

【求職活動等におけるパワーハラスメント類似行為等に関する望ましい取組】

また、就活セクハラだけではなく、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為、求職活動等における妊娠・出産等に関するハラスメントに類する行為及び求職活動等における育児休業等に関するハラスメントに類する行為について、事業主は、事業主(役員を含む。)自らと労働者の求職者等に対する言動について必要な注意を払うよう努めるとともに、上記行為についても、就活セクハラと同様の方針を併せて示すことが望ましいと記載されています。

さらに、求職者等の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うこと、求職者等の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報について、当該求職者等の了解を得ずに他の者に暴露すること(いわゆるアウティング)又は当該求職者等が開示することを強要若しくは禁止すること等についても、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとされています。

 

おわりに

就活セクハラ指針の公表により、就活セクハラの定義の詳細や、企業が講ずべき防止措置の内容が明らかになりました。各企業は、これらの指針を踏まえ、2026年10月1日の施行に向けて、必要な体制を整備することが求められます。

当事務所では、就活ハラスメント対応に関し、平時における基本方針の策定や体制整備、マニュアルの作成等に関する支援はもちろん、実際に求職者等からハラスメントの申告を受けた場合の対応や従業員に向けた研修等についてもお引き受けをしております。

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本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。