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Rights Statementsの解説 - 新しい著作権表記について

 

こんにちは。
今日は、著作権の新しい「権利表記」の情報をお届けします。

この権利表記のことは、私(数藤)が先日参加した、デジタルアーカイブ学会の研究大会で知りました。

学会では様々な分野の先生方と情報交換しましたが、その中で興味深かったのが、
Rights Statements(ライツ・ステイトメンツ)
という権利表記の方法です(私は時実象一先生の発表パートを通じて知りました)。

 

これは、ヨーロピアーナ(Europeana)やアメリカのDPLA(Digital Public Library of America:デジタル公共図書館)のようなデジタルアーカイブにおいて、2016年から準備が進められている表記方法です。

美術館、博物館、図書館などの文化施設が公開する作品について、著作権の有無や、利用条件をわかりやすく示せるマークです。

このRights Statementsについては、日本の美術館、博物館、図書館の関係者も検討を始めているようです。

日本ではまだあまり知られていないマークですので、今回のコラムでは、このRights Statementsのポイントを解説します。

 

 

Rights Statementsの話題の前に − クリエイティブ・コモンズ


本題に入る前に、まずは、日本ですでに用いられている権利表記を確認しておきましょう。

よく知られている権利表記に、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons License:以下CCライセンス)があります。

これは、作品を公開する作者が、「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をするためのツールです。

つまり、作者自身が作品を公開するような場面を想定しています。

 

基本ライセンスとして、次の4種類があります。
(画像はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトより)

表示(BY):作品のクレジットを表示すること
非営利(NC):営利目的での利用をしないこと
改変禁止(SA):元の作品を改変しないこと
継承(ND):元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること

これらのライセンスの組み合わせで、6通りの表記が準備されています。

 

たとえば、CC-BY(表示)であれば、原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することが主な条件となります。

 

なお、自らの著作権を主張せず、パブリック・ドメインで提供する場合は
CC0(シーシーゼロ)
と表記します。

また、とある作品(自分が創作したものでない作品)がパブリックドメインであることを示すためには、
パブリックドメインマーク(Public Domain Mark:以下PDマーク)
もあります。

 

CCライセンスは、一般のクリエイターに限らず、文化庁などの公的機関でも用いられています。

また、美術館でも利用が盛んです。例えば今年2月に、アメリカのメトロポリタン美術館が37万点超の画像をCC0で公開したことは大きな話題になりました(「カレントアウェアネス・ポータル」2017年2月8日付記事を参照)。
 

フェルメールの「水差しを持つ女」も、もちろんCC0です。

 

スーラの「習作:グランド・ジャット島の日曜日の午後」もCC0です。


 

文化施設におけるCC-BYの誤用(?)


もっとも、CCライセンスは、作者自身が、自分の作品の利用方法について表記することを想定したマークです。

そのため、作者以外の人や組織がこのマークを用いる場合、誤用(?)をまねくケースもあり得ます。

 

例えば、大阪市立図書館は、先日(2017年7月26日)、デジタルアーカイブのオープンデータ利活用事例の紹介ページを公開しました

私(数藤)も大阪市出身で、大阪市立図書館には若い頃によく通っていたので(特に中央区図書館の蔵書とCDは圧巻でした)、興味深く閲覧しました。

この紹介ページでは、オープンデータ人気画像コンテストの結果が発表されており、パブリックドメインになった作品がアップされているようです。

例えば、4位にランクインした「海産商」(出版者名義:柴田卯吉、1868年)は、真っ赤な鯛のインパクトが鮮烈で、当時の大阪の海産業の勢いを伝えるとともに、単純に1枚の絵としても見応えがあります。

もっともこの作品、大阪市立図書館のウェブサイトを見ると、「CC-BY(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)」と表示されていました

先ほど述べましたとおり、CC-BYは、本来は著作権者が表示することを想定した表示です。しかし、このイラストは、制作時期からすると既にパブリック・ドメインです。

つまり、著作権は存在しないので、厳密にいうと、CCマークの本来の使い方とは離れてしまったように思われます(あえて付けるとすれば、CC0か、PDマークが適切かと思います)。

 

おそらく図書館側としては、利用者に対して、著作者のクレジットを表示することを求めているものと思われます(あるいはもしかすると、作品の所蔵者=所有権者のクレジットを求めているのかもしれません)。

ただ、無理にCCライセンスを用いなくても、そのような表記は可能です。

このケースでは、CCライセンスを用いたことで、かえって権利表示としてわかりづらくなってしまったように思われます。

 

Rights Statementsとは


前置きが長くなりましたが、本題に移ります。
Rights Statementsの話です。

Rights Statementsは、上記のCCライセンスとは別の趣旨で作られたマークです。

CCライセンスは、先ほども述べましたように、作者自身が自作のライセンスをする場面を想定したものでした。

これに対して、Rights Statementsは、単に権利のありかを表示するためのものです。

たとえば、文化機関(美術館、博物館、図書館など)が、デジタル化した作品を公開する際に、著作権の有無や利用方法を表示する場面が想定されています。

実際、Rights Statementsは、ヨーロピアーナとDPLAというアーカイブ機関によって創設され、使用ルールが公開されています。

 

具体的には、公式ウェブサイトで、以下の10を超えるマークが用意されています。
以下、順にご紹介します。
(日本語表記に不適切な点などがありましたら、お手数ですがお問い合わせページからご連絡を頂けますと幸いです)

 

(1)著作権が存在する場合


まず、著作権が存在する場合です。

 

IN COPYRIGHT
(著作権あり)

文字通り、著作権が存在する場合です。
公開した者自身が著作権者であるか、著作権者から利用許諾を得ているか、または何らかの権利制限規定のもとで利用する作品に用います。

 

IN COPYRIGHT – EU ORPHAN WORK
(著作権あり+EU孤児著作物)

著作権は存在するものの、EU孤児著作物指令(Directive 2012/28/EU)に基づいて孤児著作物とされた作品に用います。
(EU孤児著作物指令については、ここでは詳しく述べませんが、別のコラムで部分的に解説したことがありますのでご参照ください)

 

IN COPYRIGHT – EDUCATIONAL USE PERMITTED
(著作権あり+教育目的の利用可)

著作権は存在するものの、著作権者により、教育目的の利用が認められた作品に用います。

 

IN COPYRIGHT – NON-COMMERCIAL USE PERMITTED
(著作権あり+非営利目的の利用可)

著作権は存在するものの、著作権者により、非営利目的の利用が認められた作品に用います。

 

IN COPYRIGHT – RIGHTS-HOLDER(S) UNLOCATABLE OR UNIDENTIFIABLE
(著作権あり+著作権者不明)

著作権は存在するものの、一定の合理的な調査を経ても、著作権者が判明しないか、または連絡先がわからない場合に用います。
(このマークは、公開した者において、著作権が存在していると合理的に判断した場合に用いるものです。EU孤児著作物指令に基づく孤児著作物である場合は、上記のIN COPYRIGHT – EU ORPHAN WORKを用います)

 

(2)著作権が存在しない場合

次は、著作権が存在しない場合です。
著作権は存在しないものの、他の理由で自由な再利用ができない場合に用いるマークです。

 

NO COPYRIGHT – CONTRACTUAL RESTRICTIONS
(著作権なし+契約による制限)

すでに著作権は消滅している(パブリック・ドメインになっている)ものの、第三者の利用については契約で何らかの制限が課されている場合に用います。このマークを用いる場合には、契約による制限の具体的な内容を示す必要があります。

 

NO COPYRIGHT – NON-COMMERCIAL USE ONLY
(著作権なし+非営利目的の利用のみ可)

すでに著作権は消滅しているものの、公的機関と民間企業の協定(partnership)により、非営利目的の利用に制限してデジタル化した場合に用います。
背景としては、特にヨーロッパの図書館とGoogleとの間の協定を想定したものですが、他の類似のケースにも適用されます。

 

NO COPYRIGHT – OTHER KNOWN LEGAL RESTRICTIONS
(著作権なし+他の法的制限あり)

すでに著作権は消滅しているものの、他の法的制限により自由な利用ができない場合に用います。このマークを用いる場合は、法的制限の具体的な内容を示す必要があります。

 

NO COPYRIGHT – UNITED STATES
(著作権なし – アメリカ合衆国において)

アメリカ合衆国の法律で、パブリック・ドメインになった場合に用います。

 

(3)その他の権利表記

その他の権利表記は、以下の3つです。
いずれも、著作権の状態がはっきりとわからない場合に用います。

 

COPYRIGHT NOT EVALUATED
(著作権未評価)

著作権の状態が不明で、表示者が著作権の状態を決定するための調査を尽くしていない場合に用います。

 

COPYRIGHT UNDETERMINED
(著作権未決定)

著作権の状態が不明で、かつ著作権の状態を決定するための調査を尽くした場合に用います。著作権の正確な状態を決定するために不可欠なkey factsが存在しない場合などが想定されています。

 

NO KNOWN COPYRIGHT
(知る限り著作権なし)

表示者において、著作権その他の権利がないと信じるだけの合理的な理由があるものの、著作権がないという決定まではできない場合に用います。

 

Rights Statementsの可能性 - 日本への示唆


これらのRights Statementsは、現時点では、文化機関などがデジタルアーカイブ等で利用することを想定しています(当然、検索エンジンにも対応しています)。

DPLAのウェブサイトによると、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、インドのデジタル図書館も、このRightsStatements.orgのプロジェクトに参加予定のようです。

もちろん、EUやアメリカの法制度と、日本の法制度には違いもありますので、これらのマークが日本でそのまま使えるとは限りません。

もっとも、美術館、博物館、図書館のように、第三者の著作物を展示する機関においては、CCライセンスよりもRights Statementsのほうが使い勝手がいい場合もあります。

今後は日本の文化施設でも、Rights Statementsのような権利表記が積極的に検討されることになるかと思われます。


これから著作物のデジタル利用がさらに進めば、文化機関における著作権の表記方法も、より正確なものが求められます。

既存のマークが使える場面ではマークを使い、既存のマークを使えない場面では、法律家などの専門家のチェックの下で、他の適切な権利表記を行う必要があるでしょう。

利用者から見てわかりやすい権利表記によって、コンテンツの鑑賞や、二次利用がさらに活発になることを期待します。

弁護士 数藤 雅彦

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