はじめに
企業が自社の商品・役務を識別するために使用する文字ロゴ、商号、ドメイン名は、ブランド戦略の中核をなすものです。他社が類似する文字ロゴ・商号・ドメイン名を使用してきた場合、著作権法、会社法、不正競争防止法のいずれによる法的対応が可能かは、実務上しばし問題となることがあります。
今回のコラムで紹介する知財高裁令和4年9月27日判決(ANOWA事件控訴審)は、文字から構成されるロゴタイプ(標章)の著作物性について、原審である東京地裁令和3年12月24日判決の判断を維持しつつ、著作物該当性の判断基準をより明確・具体的な形で示すとともに、被控訴人標章の依拠性、会社法8条1項の「不正の目的」、不正競争防止法2条1項19号の「不正の利益を得る目的」「他人に損害を加える目的」の判断枠組みについても整理した裁判例です。
自社ブランドを保護する観点からも、他社からブランド侵害の主張を受けた場合の対応という観点からも、企業の担当者にとって参考となる内容です。
事案の概要
控訴人(原審原告)と被控訴人(原審被告)は、いずれも「株式会社アノワ」という同一の商号を有する株式会社です。控訴人は、文字ロゴ(以下「控訴人標章」といいます)について商標登録を受けていた株式会社であり、他方、被控訴人は、後に商号を「株式会社山神」から「株式会社アノワ」に変更し、「ANOWA」の文字からなる標章(被控訴人標章1ないし3)を使用してスキンケア用ジェル等の商品(商品名「ANOWA41」)を宣伝・販売していた株式会社です。
本件事案の主要な事実経過は、以下のとおりです。
| 時期 | 当事者 | 出来事 |
|---|---|---|
| 平成28年1月8日 | 控訴人 | ドメイン名「ANOWA.JP」を登録 |
| 平成30年6月20日 | 被控訴人 | 商号を「株式会社山神」から「株式会社アノワ」に変更 |
| 令和元年5月14日 | 被控訴人 | ドメイン名「ANOWA41.JP」(以下「被控訴人ドメイン名」)を登録 |
| 令和元年9月13日 | 控訴人 | 文字ロゴの図案及び標準文字「アノワ」について、「店舗内装のデザインの考案」、「店舗什器のデザインの考案」、「小売店舗のデザインの考案」を指定役務(第42類)として商標登録 |
| 令和2年6月頃 | 被控訴人 | 被控訴人ドメイン名のウェブサイトにおいて、「ANOWA」の文字からなる被控訴人標章1ないし3を使用し、スキンケア用ジェル等の被控訴人商品(商品名「ANOWA41」)を宣伝・販売 |
控訴人標章は、一般的なセリフフォントを使用して「ANOWA」の語を「ANO」と「WA」の上下2行に分け、「A」の右下と「N」の左下のセリフ部分を接続し、「W」の中央部分が交差するように配置した上、その行間(文字の高さの3分の1の幅)に、小さな文字で英単語「SPACE」(空間)、「DESIGN」(デザイン)、「PROJECT」(プロジェクト)の3語を1行に配置し、全体を9対7の横長の範囲に収めたロゴタイプです。
控訴人は、被控訴人に対し、①被控訴人標章1ないし3の使用が控訴人標章に対する控訴人の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして著作権法112条に基づく差止請求等、②被控訴人商号の使用差止・抹消登記請求(会社法8条2項)、③被控訴人ドメイン名の使用差止請求(不正競争防止法3条1項)を求めました。
原審(東京地裁令和3年12月24日判決)は、以下のとおり判断し、控訴人の請求をいずれも棄却しました。
| 争点 | 原審の結論 |
|---|---|
| 控訴人標章の著作物性 | 控訴人標章は、出所を表示するという実用目的で使用される域を出るものではなく、それ自体が独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているような特段の事情は認められないとして、著作物性を否定 |
| 会社法8条1項の「不正の目的」 | 原告・被告は本店所在地・業種が全く異なっていたこと、被告代表者が著名であり社会的にも信用のある実業家であったこと等を踏まえ、被告は原告や原告標章の存在を知ることなく被告商号を独自に考案したと認定し、「不正の目的」を否定 |
| 不正競争防止法2条1項19号 | 被告ドメイン名の取得・保有・使用についても、被告商号の使用に関する上記判断と異なるところはないとして、「不正の利益を得る目的」等を否定 |
控訴人は、原審の判断を不服として控訴しました。
本件の争点
本件の争点は、以下のとおりです。
| 争点 | 内容 |
|---|---|
| 争点① | 控訴人標章(ロゴタイプ)に著作物性が認められるか |
| 争点② | 被控訴人標章1の作成にあたり、控訴人標章への依拠(模倣)があったか |
| 争点③ | 被控訴人が「不正の目的」(会社法8条1項)をもって被控訴人商号を使用したか |
| 争点④ | 被控訴人ドメイン名の使用等が不正競争防止法2条1項19号の「不正競争」に該当するか |
裁判所の判断
争点① 控訴人標章(ロゴタイプ)の著作物性について
控訴審である本判決は、原審の結論を維持しつつ、文字から構成される標章(ロゴタイプ)が著作物に該当するかの判断基準について、以下のとおり、原審より明確な形で判示しました。
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)。そして、商品又は営業の出所を表示するものとして文字から構成される標章は、商品又は営業の出所を示すという実用的な目的で作出され、使用されるものであり、その保護は、商標法又は不正競争防止法により図られるべきものである。文字からなる商標の中には、外観や見栄えの良さに配慮して、文字の形や配列に工夫をしたものもあるが、それらは、文字として認識され、かつ出所を表示するものとして、見る者にどのように訴えかけるか、すなわち標章としての機能を発揮させるためにどのように構成することが適切かという実用目的のためにそのような工夫がされているものであるから、通常は、美的鑑賞の対象となるような思想又は感情の創作性が発揮されているものとは認められない。商品又は営業の出所を表示するものとして文字から構成される標章が著作物に該当する場合があり得るとしても、それは、商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた顕著な特徴を有するといった独創性を備え、かつそれ自体が、識別機能という実用性の面を離れて客観的、外形的に純粋美術と同視し得る程度の美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えなければならないというべきである。
本判決が提示した著作物該当性の2つの要件を整理すると、以下のとおりです。
| 番号 | 著作物該当性の要件 |
|---|---|
| ① | 商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた顕著な特徴を有するといった独創性を備えていること |
| ② | それ自体が、識別機能という実用性の面を離れて、客観的・外形的に純粋美術と同視し得る程度の美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えていること |
その上で、本判決は、控訴人標章について、以下のとおり判示し、著作物性を否定しました。
商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた顕著な特徴を有するといった独創性を備え、かつそれ自体が、識別機能という実用性の面を離れて客観的、外形的に純粋美術と同視し得る程度の美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えるものとは認められないから、著作権法により保護されるべき著作物に該当するとは認められない。
なお、控訴人は、控訴審において、以下のような補充主張を行いましたが、本判決はこれらをいずれも採用しませんでした。
| 番号 | 控訴人の補充主張 |
|---|---|
| ① | 被控訴人が控訴人標章に美の表現・印象を強く感じて模倣したこと自体から、控訴人標章には個性があり著作物性が認められること |
| ② | 不正競争防止法によればTシャツの柄は保護の対象となるから、著作権法によってもデザインは保護されるべきであること |
| ③ | 控訴人標章は、ロゴタイプとして利用を目的にデザインされたものであるところ、文字は誰でも使用できるものであるから、文字を強調するロゴタイプ・デザインの全てが著作物となりえないとする合理的理由はないこと |
| ④ | 控訴人標章はポスターと等価値であり、著作権法制定当時ポスターが著作物として扱われていたことを踏まえれば、控訴人標章も著作権法上保護されるべきであること |
| ⑤ | 一品制作の図・絵や漫画の一こまが保護されるのと同様に、ロゴタイプ・デザイン(量産品の原画)であるという理由で著作権法の保護の対象から除外するのは、著作権法上の著作物の定義に反すること |
本判決は、①について、被控訴人が独自に「アノワ」という語を含む被控訴人商号を考案した経緯が認められるとして、模倣の前提事実を否定し、②・④・⑤については、控訴人標章は商品又は営業の出所を表示する標章であり、Tシャツのデザイン、ポスター、一品制作の図・絵、漫画とは性質を異にすると判示しました。また、③については、控訴人標章は標章としての機能を発揮させるための実用目的で工夫されているものであり、美的鑑賞の対象となるような思想又は感情の創作性が発揮されているものとは認められないと判示しました。
争点② 被控訴人標章1の依拠性(控訴人標章を模倣したか)について
控訴人は、被控訴人標章1が控訴人標章に依拠して作成されたものであると主張し、その根拠として、文字の配列、高さの比率、セリフ部分の形状等の共通性を指摘しました。
本判決は、以下のとおり判示し、控訴人標章への依拠を認めるに足りる証拠はないと判断しました。
「アノワ」という文字を商号等として選択することは、控訴人及び被控訴人以外にもあり得るものと認められる。そして、片仮名名の商号等をアルファベットで表記することは取引上よくみられるものであるところ、「アノワ」をアルファベットで表記する場合に「ANOWA」と表記されるのが普通であって、「アノワ」を自らの商号として選択した被控訴人が「ANOWA」いう文字を使用することは何ら不自然ではないから、控訴人標章に依拠せず、ANOWAの5文字を選定することは確率からみてあり得ないとはいえない。
依拠性に関する結論として、本判決は以下のとおり判示しました。
せいぜい、被控訴人標章1及び2が完成するまでの間に、控訴人標章が参照され、又は控訴人標章からヒントを得た可能性があるといえるにとどまり、被控訴人が控訴人標章に依拠し、又は控訴人標章を真似して被控訴人標章1及び2を作成したと認めるに足りる証拠があるとはいえない。
争点③ 会社法8条1項の「不正の目的」の有無について
本判決は、会社法8条1項の「不正の目的」の判断基準について、以下のとおり明示しました。
会社法8条1項の『不正の目的』は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など、特定の目的のみに限定されるものではないが、不正な活動を行う積極的な意思を有することを要するものと解するのが相当である。
その上で、本判決は、以下の事情を踏まえ、被控訴人には「不正な活動を行う積極的な意思」が認められないと判断しました。
| 番号 | 裁判所が考慮した事情 |
|---|---|
| ① | 控訴人と被控訴人は、本店所在地・業種が全く異なっていたこと |
| ② | 控訴人標章は、著名であって誰でもその出所を認識しているようなものではなかったこと |
| ③ | 被控訴人商号・ドメイン名が、営業主体の混同を引き起こす態様で使用されているものとは認められないこと |
| ④ | 被控訴人の代表者が、様々な意図や願望を込めて「アノワ」という語を独自に考案した経緯が認められたこと |
本判決は、以下のとおり判示しました。
控訴人と被控訴人は、本店所在地、業種が全く異なる上、控訴人標章は、著名であって誰でもその出所を認識しているようなものでもないから、商号が同一であり、ドメイン名の「ANOWA」の部分が共通しているとしても、被控訴人による被控訴人商号、ドメイン名は、営業主体の混同を引き起こす態様で使用されているものとは認められない。
争点④ 被控訴人ドメイン名の使用が不正競争防止法2条1項19号の「不正競争」に該当するかについて
本判決は、同号にいう「不正の利益を得る目的」「他人に損害を加える目的」の判断基準について、以下のとおり判示しました。
不正競争防止法2条1項19号にいう『不正の利益を得る目的』とは、公序良俗に反する態様で、自己の利益を不当に図る目的をいい、『他人に損害を加える目的』とは、他人に対して財産上の損害や信用失墜などの有形無形の損害を加える目的を指すと解すべきである。
その上で、本判決は、以下のとおり判示し、被控訴人には不正競争防止法2条1項19号の「不正の利益を得る目的」等は認められないとしました。
控訴人と被控訴人は業種が全く異なる上、ホームページの外観や内容も大きく異なる(甲5、6、30、乙6の1、2)から、ドメイン名の「ANOWA」という部分が共通しているとしても、それによって直ちに控訴人と被控訴人の誤認混同を生ずるとは認められない。
結論として、本判決は、控訴人の請求はいずれも理由がないとして、控訴を棄却しました。
コメント
本判決は、文字ロゴタイプの著作物性をめぐる判断枠組みを中心に、商号・ドメイン名に関連する複数の論点について、実務上参考となる判断を示しました。以下、本判決の意義と、本判決から導かれる企業等に求められる対応について、順に整理します。
1 本判決の意義
(1) 文字ロゴタイプの著作物性に関する判断基準の明確化
本判決は、原審の結論を維持しつつ、文字から構成される標章の著作物性について、より明確・具体的な判断枠組みを示しました。原審と本判決の判断基準を対比すると、以下のとおり整理できます。
| 項目 | 原審(東京地裁令和3年12月24日判決) | 本判決(控訴審) |
|---|---|---|
| 基本的立場 | 文字から構成される標章は、出所を文字情報で表示する実用目的で使用されるものであり、原則として著作物に該当しない | 左記に加え、文字ロゴの保護は、「商標法又は不正競争防止法により図られるべきもの」と明示 |
| 例外的に著作物性が認められる場合 | 「それ自体が独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているような特段の事情」がある場合 | (i) 商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた「顕著な特徴を有するといった独創性」を備え、かつ、(ii) 識別機能という実用性の面を離れて、客観的・外形的に「純粋美術と同視し得る程度の美的鑑賞の対象となり得る創作性」を備えること |
本判決は、原審の「特段の事情」という要件を、上記(i)及び(ii)の2つの要素に分解して明確化したものと理解できます。また、本判決が、文字ロゴの保護について「商標法又は不正競争防止法により図られるべきもの」と明示した点は、法制度間の棲み分けをより意識的に位置づけるものであり、原審にはない特徴です。
本判決では、文字ロゴの著作物該当性のハードルが相当高いことがより明確に示されたと評価することができます。
(2) 「商標法又は不正競争防止法により図られるべき」との明示の意義
本判決の特徴の一つは、文字から構成される標章について、その保護が「商標法又は不正競争防止法により図られるべきもの」と、保護の担い手となるべき法律を正面から指し示した点にあります。原審にはこのような明示はなく、本判決で新たに加えられた判示です。
この判示は、文字ロゴの法的保護が、創作的表現の保護を目的とする著作権法ではなく、出所識別機能の保護を目的とする標識法の枠内で行われるべきであるという、制度目的に即した位置付けを、裁判所が正面から述べたものと理解することもできます。
本判決が示した著作物該当性の2つの要件(上記(i)及び(ii))も、この位置付けを具体的な判断規範に落とし込んだものとみることができます。すなわち、
| 要件 | 制度目的との関係 |
|---|---|
| (i) 標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた顕著な特徴を有する独創性 | 標識法が担う機能の守備範囲を超える独創性を求めるものであり、標識法による保護との切り分けを意識した絞り込みである |
| (ii) 識別機能という実用性の面を離れて純粋美術と同視し得る程度の創作性 | 識別機能という実用目的を捨象しても、なお美的鑑賞の対象たり得る価値を要求するものであり、著作権法固有の保護領域を画するものである |
このように、本判決は、著作物該当性のハードルを具体的に高めるのみならず、そのハードル設定の背後にある制度目的の相違を意識した判断枠組みとして評価することができます。文字ロゴを商標登録の対象とする企業にとっては、商標法による保護が第一義的であり、著作権による保護はあくまで例外的・補完的な位置付けにとどまるという実務的示唆を読み取ることができます。
(3) 応用美術の著作物性をめぐる判例との関係
本判決で問題となった文字ロゴは、出所識別のための実用的機能を有するものですから、著作権法との関係では、いわゆる応用美術に属するものと整理されます。応用美術の著作物性に関しては、これまで以下のような判例の蓄積があり、本判決は、これらの判例の流れに一事例を加えるものとして位置付けられます。
| 番号 | 判例 |
|---|---|
| ① | 知財高裁平成26年8月28日判決・判時2238号91頁(ファッションショー事件) |
| ② | 知財高裁平成27年4月14日判決・判時2267号91頁(TRIPP TRAPP事件) |
| ③ | 大阪地裁平成27年9月24日判決・判時2348号62頁 |
これらの判例は、応用美術について、実用目的のために必要な構成と創作的表現部分との関係をどのように整理すべきかという問題に関し、様々な角度からの判断を示したものです。
本判決は、こうした応用美術の著作物性に関する判例の蓄積を背景としつつ、文字ロゴについては、商標法等の標識法による保護との棲み分けの観点を明示的に取り入れた判断枠組みを示した点に、特徴があります。すなわち、自他商品・役務識別機能を超えた独創性を要求し、かつ、識別機能という実用性の面を離れた創作性を求めるという二段階の枠組みを採用したことは、著作権法による保護領域を、標識法が担う機能的領域と明確に切り分ける姿勢を示すものといえます。
(4) 依拠性の判断における「参照・ヒントの可能性」と「模倣の事実認定」の区別
本判決は、被控訴人標章1の作成過程で控訴人標章が「参照され、又はヒントを得た可能性」があることを認めつつも、それだけでは「依拠」や「模倣」の事実認定には十分でないと判断しました。
この判断は、著作権侵害や不正競争の成否を判断する場面での「依拠性」の立証のハードルを示すものとして注目されます。類似性が存在するだけでは、直ちに依拠性が推認されるわけではなく、具体的・客観的な証拠(模倣の目的、複製の経緯、具体的な類似点の細かさ等)の積み重ねも必要であることが示されています。
(5) 「不正の目的」「不正の利益を得る目的」の判断基準の整理
本判決は、会社法8条1項の「不正の目的」について、「不正な活動を行う積極的な意思を有することを要する」と判示し、また、不正競争防止法2条1項19号の「不正の利益を得る目的」「他人に損害を加える目的」についても、それぞれ明確な定義を示しました。
これらの判断基準に照らすと、単に商号・ドメイン名が類似しているだけでは「不正の目的」等は認められず、本店所在地・業種の異同、標章の著名性、類似使用者の主観的態様、商号等の選択経緯といった事情を総合的に検討する必要があることになります。
2 企業等に求められる対応
本判決から、企業ブランドの保護を検討するにあたり、企業等に求められる対応として、以下の点が挙げられます。
(1) 商標登録を中心とした法的保護の設計
文字ロゴの法的保護は、商標登録による保護を中心に設計することが求められます。本判決の枠組みによれば、文字ロゴについて著作権法上の保護が認められる場面は限定的であると見込まれるため、商品・役務分野を踏まえた商標登録を、ブランドの使用開始前又はその早期段階で行うことが考えられます。
(2) 他社の類似使用を発見した場合の事実関係の調査・整理
他社による類似の商号・ドメイン名等の使用を発見した場合には、事前の事実関係の調査・整理が求められます。本判決は、類似商号・ドメイン名の使用があっても、業種・本店所在地の異同、類似使用者の主観的態様、商号等の独自考案の経緯等によっては「不正の目的」等が否定されることを示しています。自社ブランドの類似使用を発見した際には、使用者の事業内容・使用経緯等を丁寧に調査した上で、法的要件の該当性を検討し、対応方針(交渉、警告、訴訟等)を選択することが求められます。
(3) 依拠性立証に向けた客観的証拠の確保
類似性を主張する立場から依拠性を立証する際には、類似の細かさ・具体性、使用者側の認識・動機、複製の経緯等に関する客観的証拠の確保が求められます。本判決は、「参照・ヒントの可能性」と「依拠・模倣の事実認定」とを区別する立場を明らかにしており、依拠性の立証には相応のハードルがあることが示唆されています。日頃から、自社ロゴ・商号等の使用開始時期、デザイン作成の経緯、関連する契約書類等を整理・保存しておくことが考えられます。
おわりに
ロゴマーク、商号、ドメイン名等の企業ブランドに関する紛争は、著作権法、商標法、会社法、不正競争防止法など、複数の法域にまたがる複雑な論点を含みます。自社のブランドをいかに保護するか、他社のブランドと衝突する形で自社の事業を展開する場合にいかに対応するか、他社から侵害主張を受けた場合にいかに反論するかについては、個別の事案の事実関係に即した法的分析と、証拠の丁寧な整理が必要となります。
当事務所は、知的財産関係の相談・ご依頼を受けており、企業の商標登録戦略、ロゴマーク・商号・ドメイン名の保護、ブランドに関する紛争対応(侵害主張側・反論側を問わず)についても、経験に基づく対応が可能です。自社ブランドの使用開始前の調査・登録戦略のご相談、他社から警告書を受けた場合の対応、類似ブランドの使用を発見した場合の対応、訴訟対応等でお困りの場合は、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。

