03-6550-9202 (受付時間 平日10:00〜17:00)

お問い合わせ

デザイン制作委託契約における著作権の帰属と黙示の利用許諾の範囲(大阪高裁令和3年1月21日判決)

企業のロゴマーク、商品パッケージ、ウェブサイト、レシピブック、店頭POPなどのデザイン制作を外部のデザイン会社に委託する場面は、日常的に見られます。しかし、契約書に著作権の帰属や利用範囲についての明確な定めがない場合、納品されたデザインを発注者がどこまで自由に利用してよいのかが、後になって争いになることが少なくありません。

大阪高裁令和3年1月21日判決は、ブランディング・ビジュアルアイデンティティ(以下、「VI」といいます。)制作を中核とする業務委託契約と、その後に続く個別のデザイン制作委託契約について、著作権の譲渡の有無、黙示の包括的利用許諾の範囲、写真の著作物性、そして利用許諾の範囲を逸脱した利用が著作権侵害となるかという論点について、実務上参考となる判断を示しました。

上記大阪高裁判決は、原審(大阪地裁令和2年1月27日判決)が広く認めた黙示の利用許諾の範囲を一部限定するとともに、原審が著作権侵害を否定した部分について、写真1枚に関する著作権侵害を肯定しており、注目されます。

今回のコラムでは、デザインを発注する企業の担当者の方や、デザイン制作を業とする方に向けて、本判決のポイントをわかりやすく解説いたします。

事案の概要

本件は、ビジュアル・アイデンティティ(VI)の制作等を業とするデザイン制作会社(控訴人)が、社会インフラ関連商品の販売等を業とする会社及びその関連会社(播磨喜水、ナカシマエナジー。被控訴人がこれらを吸収合併)から、ロゴマーク等のVI基本デザインの制作(業務委託費1000万円)に加え、商品パッケージ、レシピブック、商品カタログ、チラシ、店頭POP、コーポレートシンボル、リクルートパンフレット、動画など、多数のデザイン制作を順次受託し、納品したという事案です。

控訴人は、被控訴人らが、控訴人の事前の許諾を得ることなく、納品済みのデザインや写真を切り貼りするなどして新たなチラシやカタログ等を制作したことが、著作権(複製権・翻案権)侵害に当たるなどと主張し、差止め、廃棄・回収、損害賠償等を請求しました。あわせて、商品パッケージデザインの未払報酬(追加印刷分の料金)の支払も請求しました。

原審(大阪地裁令和2年1月27日判決)は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴したのが本件です。

本件の争点

本件の争点は、以下のとおりです。

争点番号争点の内容
争点①原告制作物(写真、レシピブック掲載の写真、ホームページ、商品紹介写真等)の著作物性
争点②VI基本デザインに係る業務委託契約(本件業務委託契約2)が、その後の個別のデザイン制作委託契約に対する基本契約として適用されるか
争点③個別のデザイン制作委託契約において、著作権の譲渡又は黙示の包括的な利用許諾があったといえるか
争点④黙示の利用許諾があるとして、被告制作物の制作・利用がその許諾の範囲内といえるか(著作権侵害の成否)
争点⑤商品パッケージデザインに係る未払報酬請求権の有無

裁判所の判断

争点① 原告制作物の著作物性について

裁判所は、レシピブックに掲載された料理写真(原告制作物1)については、その著作物性に当事者間で争いがないことを前提に、控訴人の取締役であった撮影者が控訴人の業務として撮影した写真であり、職務著作として控訴人に著作権が帰属すると認めました。

判決は、次のように判示しています。

「原告制作物1は、控訴人の取締役であったP2が控訴人の業務として撮影した写真であって、職務著作として控訴人に著作権が帰属すると認められる。」

他方、被控訴人の商品カタログに掲載された商品写真及び文章(原告制作物5-2)については、撮影方法も付された文章もありふれた表現であるとして、著作物性を否定しました。

判決は、次のように判示しています。

「原告制作物5-2の著作物性については、いずれも、3種類の商品(播磨喜水の白、黒、赤)を右下角斜め上方から撮影した写真であり、その撮影方法は、商品を紹介する写真としてありふれた表現である。また、これに付された文章及び『●商品カタログ』に記載された文章……の創作性については具体的主張立証がされていないところ、これらは播磨喜水の商品の特性や個別の調理法を紹介したりする内容であるが、それらを説明する表現としては、ありふれたものというべきである。『播磨喜水_白』及び『●商品カタログ』の記載において、素麺の原材料である小麦の香りをアロマと例える表現があるが、その例えがあるというだけで、これらの文章に創作性を認めることはできず、原告制作物5-2の著作物性を認めることはできない。」

商品紹介用写真(原告制作物4)の翻案権侵害の主張については、被告制作物4との対比において表現上の創作性がある部分の同一性を認められないとして、翻案権侵害を否定しました。

判決は、次のように判示しています(原判決を補正して引用した部分)。

「カメラアングルのほか、中央上部の光源により左右に影を生じているという被写体と光線の関係は共通するといい得るとしても、これらの点は、一般的な商品の宣伝広告・販促用写真として顕著な特徴を有するともいい難く、表現上の創作性がある部分に当たるとは俄かにいい難い上、陰影の付け方及び色彩の配合は相違しており、被告制作物4を原告制作物4と比較して見たとき、表現上の本質的特徴の同一性を維持し、原告制作物4の表現上の本質的特徴を直接感得することができるとは評価し難い。」

ホームページ(原告制作物3)についても、編集著作物としての著作物性は認められないと判断しました。控訴人は、被告制作物3が原告制作物3のソースコードをデッドコピーしたものである旨主張しましたが、判決は、次のように判示しています。

「原告制作物3が編集著作物としての著作物性を認められないことは、補正して引用した原判決第4の2に記載のとおりである。なお、上記ホームページの制作においては、控訴人のみならず、播磨喜水が委託したホームページ制作業者……も制作に携わっており、被控訴人は被告制作物3のホームページも同一のホームページ制作業者に委託して制作したというのである……。そうすると、ソースコードに関する何らかの権利が控訴人に帰属するとは限らず、被告制作物3の制作が悪質な侵害行為であるとは直ちに認められない。」

争点② VI基本デザインに係る業務委託契約の基本契約性について

裁判所は、本件業務委託契約2が、その後の個別のデザイン制作委託契約全般に対する基本契約として適用されるとは認められないと判断しました。

判決は、次のように判示しています。

「同契約書2の条項中に、基本契約であることを窺わせる規定はない。かえって、控訴人と播磨喜水との個別取引の継続にかかわらず、有効期間を業務委託費の支払完了までに限定した規定を設けており、控訴人は平成27年8月には業務委託費残代金を請求し、同年9月30日までにその支払が完了していることからすると、原告レシピブック1の制作以前に播磨喜水関連業務委託契約2の有効期間は終了していると解される。」
「播磨喜水関連業務委託契約2は、対象物を社名・商品のネーミング、ロゴマーク、名刺、封筒等、ブランドの核心となる基本的成果物に限定しており、様々な用途や時期に対応して発注、制作される個別のデザイン制作委託契約とは必ずしも成果物の同質性を認められない。」

争点③ 著作権の譲渡又は黙示の包括的利用許諾の有無について

裁判所は、まず、控訴人が成果物の著作権の自社帰属を一貫して主張してきたこと、契約解消の交渉時に被控訴人側が「著作権は既に取得している」と主張した形跡がないこと、被控訴人らが事業遂行に必要な範囲で成果物を利用するためには利用許諾があれば足り著作権の譲渡まで必要とはいえないことなどから、著作権の譲渡があったとは認められないと判断しました。

判決は、次のように判示しています。

「播磨喜水又は被控訴人において、自身の事業活動に必要な場面で機動性、円滑性をもってデザイン制作委託契約の成果物を使用するためには、著作権の帰属が必要とまではいえず、利用許諾があれば足りる。……これらによれば、控訴人が播磨喜水との間のデザイン制作委託契約に基づき制作した成果物の著作権が被控訴人に譲渡されたと認めることはできず、控訴人に留保されていたものと解される。」

他方、黙示の利用許諾については、その存在自体は肯定しつつも、許諾の範囲を「成果物の本来の目的の範囲内での利用」に限定しました。すなわち、デザイン制作委託契約の趣旨に基づき、成果物の目的の範囲内で原告制作物を複製することを許諾する合意が黙示に存在すると解するのが合理的としています。

判決は、原告制作物1(レシピブック写真)についての黙示の利用許諾の内容に関し、次のように判示しています。

「原告レシピブック1は、播磨喜水の取扱商品をレシピ情報の提供と組み合わせて紹介することによって、宣伝広告、販売促進に役立て、さらにはブランドイメージの向上を図るものとして、播磨喜水が制作を依頼し、控訴人が制作したものと解される。そして、播磨喜水の事業遂行において、原告レシピブック1の内容と整合する範囲で、その成果物の一部をそのまま使用する場合については、播磨喜水のブランドイメージの形成、向上を企図した宣伝広告や販売促進活動における使用として、播磨喜水はもちろん、控訴人も想定していたとみるのが合理的である。」

争点④ 利用許諾の範囲を超えた利用の有無(著作権侵害の成否)

写真(原告制作物1)について

裁判所は、レシピブックに掲載された料理写真を、被控訴人が「2017 SUMMER」と明記された平成29年夏期用のチラシの背景に使用したことは、原告制作物1の本来の制作目的と異なる利用であり、黙示の利用許諾の範囲を超えるものとして、著作権(複製権)侵害を認めました。

判決は、次のように判示しています。

「播磨喜水において、その事業活動の一環として、控訴人が制作した成果物又はその一部をその作成目的に従って、そのまま別の機会に利用する場合はともかく、成果物を構成する素材である原告制作物1(写真)を、事前の許諾を得ずにこれを異なる目的で利用することまで許諾していたと認めることはできない。」

そして、損害額については、レシピカード1枚の制作費用2万5000円を写真1枚の使用料相当額と認め、弁護士費用2500円と合わせて、合計2万7500円の限度で損害賠償請求を認容しました。差止め・廃棄・回収請求については、対象が「2017 SUMMER」用チラシで、今後頒布されるおそれがないことなどを理由に、いずれも棄却しました。

店頭POP(原告制作物5)について

裁判所は、姫路店オープンに際して制作された店頭用POPの写真・文章を、姫路店以外の店舗の店頭POPとして利用した行為は、いずれも「播磨喜水のブランドイメージの形成、向上を企図した宣伝広告や販売促進活動等のため、必要な範囲で複製したもの」であり、原告制作物5-1に係るデザイン制作委託契約における黙示の利用許諾の範囲内と判断し、著作権侵害を否定しました。

コーポレートシンボル等(原告制作物6〜12)について

裁判所は、ナカシマ関連業務委託契約2(VI基本デザインに係る業務委託契約)について、納品されたデザイン制作物の使用範囲・態様についての明示の規定がないこと、業務委託費1000万円の対価の性質、被控訴人の事業遂行上の必要性等に照らし、被控訴人が事業遂行に必要な範囲で成果物を複製・利用することを許諾する黙示の合意があったと認定しました。

そして、コーポレートシンボル、事業領域図、椅子用カバー、リクルート用パンフレット、ポスターパネル、社内発表用動画のいずれの利用についても、許諾の範囲内であるとして著作権侵害を否定しました。控訴人が制作物6について提示したガイドラインについても、判決は次のように判示しています。

「上記ガイドラインは、最小使用サイズを規定した上で、シンボルマークのバリエーションを提示したものであり、そこに記載された色彩等を含む形態での利用以外を一切禁ずる趣旨を読み取ることは困難である。」
「むしろ、控訴人が上記ガイドラインを交付したことにより、原告制作物6の一定程度の改変を許諾していたと認めることが可能である。」

裁判所が黙示の利用許諾を認める前提で考慮した事情は、以下のとおり整理できます。

考慮事情内容
契約の趣旨・目的被控訴人の宣伝広告、販促物、広報資料の制作を目的とするデザイン制作委託であること
契約書の規定成果物の使用範囲・態様について制限を課す明示の規定がないこと
対価の性質業務委託費が制作料金として相当額であり、利用態様を制限する前提とは整合しないこと
事業遂行上の必要性発注者が成果物を機動的・円滑に事業活動に用いる必要があること
当事者の行動シンボルマークについて控訴人が被控訴人の自由な利用を認めていた事実

争点⑤ 商品パッケージデザインの未払報酬請求について

裁判所は、控訴人と播磨喜水との間で、商品パッケージデザインの料金は発注累計個数に応じて算定するとの合意がされていたものと認め、未払報酬請求を棄却した原審の判断を維持しました。

判決は、次のように判示しています。

「控訴人が値下げの要望に応じて印刷個数による料金の見積を提示した経過からすれば、むしろそれ以前の料金の提示は撤回され、あらたな料金算定方法が合意されたものと解される。……当時、被控訴人が同パッケージデザインを長期間用いて販売を行うということが期待され、その結果、印刷個数により料金を算定することが合意されたとしても、交渉経過において発注個数に応じた見積料金を提示する条件として発注総数等について取決めがされたものでもなく、追加印刷がなくなったからというだけで、上記算定方法についての合意の効力が失われるとは考えられない。」

コメント

本判決の意義

本判決は、VI制作・デザイン制作委託契約をめぐる実務に対し、次の点で参考となります。

第一に、VI基本デザインに関する業務委託契約が、その後の個別のデザイン制作委託契約全般の「基本契約」となるかどうかは、契約条項の文言(基本契約性を示す規定の有無、有効期間の定め、対象成果物の範囲)に即して個別に判断されるという点を明らかにしました。VI契約を締結したからといって、その後の追加発注が当然に同契約の枠組みに服するわけではない、ということです。

第二に、契約書に著作権の帰属や利用範囲についての明示の定めがない場合、著作権は制作者に留保されるのが原則としつつも、発注者には「成果物の本来の目的の範囲内での利用」を内容とする黙示の利用許諾が成立しうることを示した点です。

第三に、その黙示の許諾の範囲は、納品物をその作成目的に従って「そのまま」別の機会に使用する場面までは及び得るとしても、納品物を構成する素材(個別の写真等)を切り出して、当初とは異なる目的の制作物に転用する行為までは及ばないと判断した点です。本判決は、許諾範囲の外延を画する基準として、「成果物の作成目的との同一性」という視点を重視しました。

原審との比較──黙示の利用許諾の射程をめぐる判断の差異

本判決の実務上の意義を理解する上で、原審(大阪地裁令和2年1月27日判決)判決との比較が有益です。両判決は、以下の点で結論を分けました。

論点原審(大阪地裁)控訴審(大阪高裁)
黙示の利用許諾の判断基準「自身の商品の宣伝広告、販促物又は広報資料として……必要な範囲で利用したもの」かどうか(広い)「成果物の作成目的に従って、そのまま別の機会に利用する」場合かどうか(限定的)
原告制作物1(レシピブック写真)のチラシ背景使用許諾範囲内(侵害否定)許諾範囲外(侵害肯定。損害賠償2万7500円の限度で認容)
原告制作物5(店頭POP)の他店舗での使用許諾範囲内(侵害否定)許諾範囲内(侵害否定)※結論は同じ
原告制作物6〜12(VI関連)の使用許諾範囲内(侵害否定)許諾範囲内(侵害否定)※結論は同じ

原審は、デザインの利用が「販促・広告」という大括りの目的内に収まれば許諾範囲内と評価する傾向にあったのに対し、控訴審は、「個々の成果物がもともと何のために制作されたか」という作成目的の同一性を、より厳格に問う立場を採りました。

控訴審のこの判断は、デザイナーが納品した素材を、発注者が後日別の販促物の素材として転用する行為に対し、明確な制約を課すものです。

企業の担当者の方としては、原審のような広い基準ではなく、控訴審が示した「個々の成果物の作成目的との同一性」という基準を前提に、納品物の社内利用の運用ルールを設計する必要があります。

企業の担当者に求められる対応

本判決を踏まえると、デザイン制作を委託する企業の担当者の方には、次のような対応が望まれます。

1. 契約書において、著作権の帰属と利用範囲を明示すること

契約書に著作権の帰属や利用範囲についての定めがない場合、紛争が生じた際に「黙示の合意の内容」をめぐって主張立証の負担が生じます。発注者としては、利用想定(媒体、目的、地域、期間、改変の可否、第三者への再許諾の可否、二次利用の可否等)を可能な限り具体的に契約書に落とし込むことが望まれます。

2. 「ブランディング」のための長期的VI契約と、個別の販促物制作契約とを区別して整理すること

VI基本デザインの契約は、その後の販促物制作の「基本契約」になるとは限りません。後続の個別契約においても、VI契約と整合する形で著作権・利用範囲についての定めを置くことが望まれます。

3. 納品物の「目的外利用」のリスクを認識すること

本判決が示したとおり、デザイナーから納品を受けた写真等の素材を切り貼りして、当初の制作目的と異なる新たな販促物(チラシ、カタログ等)を制作する行為は、黙示の利用許諾の範囲を超え、著作権侵害となるリスクがあります。社内で過去のデザイン素材を二次利用する場合には、当初の制作目的との同一性を確認するか、改めてデザイナーに確認をとる運用が望まれます。本判決のとおり、損害賠償額自体は写真1枚あたり数万円程度にとどまる場合もありますが、訴訟対応や企業のレピュテーション上の負担はそれを大きく上回ります。

デザイン制作者(受託者)側の留意点

他方、本判決は、デザイン制作者の立場から見ても示唆に富んでいます。

1. 利用範囲の限定を契約書又は見積書に明示すること

契約書に明示の利用範囲の定めを置かないままデザインを納品した場合、たとえ著作権が制作者に留保されていても、発注者の事業活動の必要性に応じた「成果物の目的の範囲内」の利用については、黙示の許諾が及ぶと解釈されうる点に注意が必要です。デザイン制作者としては、利用範囲の限定や追加利用時の追加料金の発生について、契約書又は見積書の段階で明示しておくことが望まれます。

2. ガイドライン交付時の位置付けを明確にすること

本判決は、デザイナーがブランド保護のために発注者にガイドライン(最小使用サイズや使用バリエーション等を定めたもの)を交付した事実を、「一定程度の改変を許諾していたと認めることが可能」な事情として援用しました。デザイナー側の感覚では、ガイドラインは「許される使い方の上限」を示すものと位置付けられがちですが、本判決の枠組みでは、発注者側から「ガイドラインに従う限り改変は許諾されていた」と主張される根拠ともなり得ます。ガイドラインを交付する際には、別途の文書又は契約条項によって、「ガイドラインに記載のない利用態様は許諾していないこと」「ガイドラインは許諾範囲を画する目的のものではないこと」を明示することが望まれます。

3. 印刷個数連動の見積提示にあたり料金体系を保全すること

商品パッケージデザインの料金について、本判決は、印刷個数連動の見積を一度提示した後に追加印刷がなくなったという事情では、当初の料金算定方法に立ち戻ることはできない旨を判示しました。デザイン制作者としては、印刷個数連動の見積を提示する際に、「最低発注個数の保証」「発注見込数を下回った場合の料金体系の取り戻し条項」などを見積書又は契約書において明示しておくことが望まれます。

おわりに

本判決が示した「黙示の利用許諾の範囲」は、契約書の文言、対価、契約締結に至る経過、業務の性質、当事者の言動など、多角的な事情を踏まえた個別判断によって画されるものです。デザイン制作委託契約をめぐるトラブルは、契約締結時の準備によって多くを予防することができます。すでに紛争が生じている場合にも、本判決が示した判断枠組みを踏まえた的確な主張立証が必要です。

デザイン制作委託契約の作成・レビュー、納品物の利用範囲をめぐるトラブル、著作権侵害の疑いへの対応など、本コラムでお取り上げした論点に関係するご相談がございましたら、ぜひ当事務所までお問い合わせください。契約書のドラフト段階からの伴走支援、紛争発生後の交渉・訴訟対応まで、案件の段階に応じて対応いたします。


本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。