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YouTube動画投稿による肖像権・プライバシー権侵害(東京高裁令和5年3月30日判決)

YouTubeをはじめとする動画共有プラットフォームの普及に伴い、他人が映り込んだ動画の投稿をめぐるトラブルが増加しています。

今回のコラムでは、YouTuberが第三者の逮捕場面を撮影・編集してYouTubeに投稿した行為について、名誉毀損、肖像権侵害およびプライバシー権侵害の成立を認め、慰謝料40万円の支払いを命じた東京高裁令和5年3月30日判決(知的財産高等裁判所第4部。原審:東京地裁令和4年10月28日判決)を紹介します。

本判決は、YouTube動画の投稿と肖像権・プライバシー権の関係について判断を示した裁判例として、動画コンテンツを扱う企業やクリエイターにとって重要な示唆を含むものです。

事案の概要

当事者と動画投稿の経緯

一審被告(YouTuber)は、平成28年3月9日に路上で一審原告(一般人)が警察官に現行犯逮捕される状況を撮影しました。一審被告は、その約2年半後の平成30年8月3日、自身のYouTubeチャンネル(登録者数55万人超)において、「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題する動画(以下「本件逮捕動画」といいます。)を投稿しました。

本件逮捕動画は、一審原告の容ぼうにモザイク処理や音声の加工を施すことなく、一審原告が警察官に逮捕されている場面を撮影したものであり、後半部分では、テロップで「逮捕だYO!」「変態だYO!」などと表示し、面白おかしく編集したものでした。本件逮捕動画は、少なくとも210万回以上再生されました。

本訴と反訴

 請求の根拠請求額
本訴本件逮捕動画の投稿により名誉権、肖像権およびプライバシー権が侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求60万円
反訴一審原告がYouTubeに投稿した複数の対抗動画により著作権(複製権・公衆送信権)、著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)およびプライバシー権が侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求438万7900円

原審(東京地裁)の判断

原審は、本訴について、名誉毀損および肖像権侵害を認め、慰謝料30万円の支払いを命じました。他方、反訴については、一審原告の各動画投稿はいずれも著作権法32条1項の「引用」に該当するなどとして、全て棄却しました。

これに対し、一審被告が控訴し、一審原告が附帯控訴しました。

本件の争点

本件の争点は、以下のとおりです。

本訴に関する争点

争点内容
争点①本件逮捕動画の投稿による名誉毀損の成否(社会的評価の低下の有無、違法性阻却事由の有無)
争点②本件逮捕動画の投稿による肖像権侵害の成否
争点③本件逮捕動画の投稿によるプライバシー権侵害の成否
争点④一審原告の損害額

反訴に関する争点

争点内容
争点⑤一審原告の各動画投稿による著作権侵害の成否(引用の抗弁の成否を含む。)
争点⑥一審原告の各動画投稿による著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)侵害の成否
争点⑦一審原告の動画投稿(原告動画3)による一審被告のプライバシー権侵害の成否

裁判所の判断

争点① 名誉毀損の成否

社会的評価の低下

裁判所は、本件逮捕動画のタイトルが「不当逮捕の瞬間!」等とされていたとしても、動画の内容に照らせば、一般の閲覧者の通常の注意と視聴の仕方を基準として、一審原告が警察官によって白昼路上で逮捕され手錠を掛けられたという事実を摘示するものであると認定しました。

一審被告は、動画のタイトルから「不当逮捕を暴く動画」として視聴されると主張しましたが、裁判所は、動画の内容を検討し、以下の事実を指摘してこの主張を退けました。

番号動画の内容
道路脇の草むらにおいて一審原告が仰向きの状態で警察官に制圧されている状況から動画が始まる
警察官とこれに抵抗する一審原告との間で押し問答している状況
一審原告が警察官により片手に手錠を掛けられ、一審原告がこれに抗議している状況
応援に駆け付けた警察官に取り囲まれている模様
上記①~④の場面が再生され、テロップに、警察官の発言として「逮捕だYO!」「変態だYO!」「じゃねーんだYO」、一審原告の発言として「え?(変態?)」「メイシワタシマシタカラ」と表示される

裁判所は、「こうした動画の内容からみても、警察官による逮捕が不当逮捕であるとか、誤認逮捕であるといった事情は明らかではなく、一般の閲覧者の通常の注意と視聴の仕方を基準とすれば、警察官による不当逮捕を暴く動画として視聴するとはいえず、むしろ、一審原告が警察官によって白昼路上で逮捕され手錠を掛けられたという事実を摘示するものであるといえる」と判示しました。

違法性阻却事由(公益目的性)の有無

裁判所は、本件逮捕動画が「専ら公益を図る目的」に出たものとは認められないと判断しました。裁判所は、動画の内容や体裁が一審原告を面白おかしく編集して嘲笑の対象とするものであることに加え、以下の事情を指摘しました。

「本件逮捕動画の撮影日は、平成28年3月9日であるところ、本件逮捕動画は、その約2年半後の平成30年8月3日に投稿されたものであり、しかも、一審被告がYouTube に開設した被告チャンネルに本件逮捕動画が投稿されたという事実関係からしても、本件逮捕動画の投稿目的が主として警察官の不当逮捕を暴くというものにあったとの一審被告の主張は採用することができない。」

すなわち、撮影から約2年半後に自身の収益化チャンネルに投稿したという経緯も、公益目的を否定する事情として考慮されています。

争点② 肖像権侵害の成否

裁判所は、本件逮捕動画の投稿が一審原告の肖像権を侵害するものであると判断しました。

原審は、肖像権侵害の判断にあたり、撮影された場所が公的領域であること、動画の内容が社会通念上受忍すべき限度を超えて一審原告を侮辱するものであることなどを考慮して、肖像権侵害を認めていました。控訴審もこの判断を維持しました。

さらに、控訴審は、違法性を補強する事情として、以下のとおり判示しました。

「一審被告が一審原告の容ぼうや声に加工等の処理をする、あるいはその了承を得るなどの最低限の配慮すらせずに、本件逮捕動画を自らのYouTube チャンネルに投稿していること自体からも、投稿の主たる目的が公益を図るものとはいえないことが裏付けられるというべきである。」

争点③ プライバシー権侵害の成否

控訴審は、原審が認めなかったプライバシー権侵害を新たに認定しました。この点は、控訴審における重要な判断の一つです。

裁判所は、まず、「一般に、警察官に逮捕された事実は、その者の名誉や信用に関わる事項であるから、そのような事実はみだりに第三者に公表されないことについて法的利益を有するものである」と述べた上で、以下のとおり判示しました。

「こうした事実を公表することが不法行為を構成するか否かについては、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する利益を比較衡量し、前者が後者に優越する場合には不法行為を構成するものと解するべきである(最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁参照)。」

その上で裁判所は、以下の事情を指摘して、プライバシー権侵害を認定しました。

考慮要素具体的事情
動画の内容氏名等は明らかにされていないものの、容ぼうや音声に加工等の処理がされておらず、一審原告の容ぼう等を知る者には逮捕されている人物が一審原告と同定可能
動画の体裁タイトルと内容が乖離しており、不当逮捕の事情は明らかではなく、むしろ逮捕場面を面白おかしく編集の上、不特定多数の者が閲覧可能なYouTubeに投稿されたもの
比較衡量一審原告が警察官に逮捕されたという事実を公表されない利益が、これを公表する利益に優越する

争点④ 損害額

裁判所は、慰謝料について、原審の30万円から40万円に増額しました。裁判所は、以下の事情を総合考慮しています。

考慮要素具体的事情
動画の内容一審原告の容ぼうのマスキング処理や声の加工処理なく、面白おかしく編集されたものであること
公表の態様不特定多数の者が閲覧可能なYouTubeに投稿されたこと
再生回数一審被告自身が主張するところによっても、少なくとも210万回再生されたこと
削除の経緯一審原告による要請を受けても直ちに本件逮捕動画を削除しなかったこと
一審被告の態度謝罪や反省の意思を示すことなく、反訴を提起して一審原告に多額の金銭を請求するとともに、現時点においてもその責任を否定し続けていること

争点⑤⑥⑦ 反訴請求(著作権侵害等)の成否

一審原告が投稿した3つの対抗動画について、裁判所は、いずれも著作権法32条1項の「引用」に該当するなどとして、一審被告の反訴請求を全て棄却しました。

主な判断のポイントは以下のとおりです。

原告動画1(本件逮捕動画をモザイク処理等を施して引用した動画)について:

著作権侵害について、裁判所は以下のとおり判示して、引用の抗弁の成立を認めました。

「原告動画1を投稿した目的は、一審被告がモザイクや音声の加工等を施すことなく、一審原告の容ぼう等をそのままさらす体裁で本件逮捕動画がYouTube に投稿されたことにより被害を受けたことを明らかにするものであり、その目的のために、一審原告が受けた被害そのものである本件逮捕動画を動画として引用することが最も直接的かつ有効な手段であるといえる」

また、同一性保持権侵害について、モザイク処理や音声の加工は、一審原告の名誉権、肖像権およびプライバシーが侵害されることを回避するために必要な措置であるとして、著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に該当し、同一性保持権侵害は認められないとしました。

原告動画2(一審被告のコラボ動画の一場面を引用した動画)について:

著作権侵害について、裁判所は以下のとおり判示して、引用の抗弁の成立を認めました。

「原告動画2は、本件逮捕動画では一審原告が容ぼうを隠すことなくさらされたのに対して、一審被告が投稿動画において顔出ししていないことを表現するために、被告動画1の出所を明記した上で、本件イラストが映り込んだ被告動画1の一場面を引用したものであり、引用の目的及び態様等に照らし正当な範囲で行われたものと認められる」

氏名表示権侵害についても、本件イラストが映り込んだ場面が数秒であり、こうした態様に照らせば一審被告に実質的な不利益が具体的に生じたとは認め難いとして、著作権法19条3項に基づき著作者名の表示を省略できるとしました。

原告動画3(答弁書と募金動画の一場面を引用した動画)について:

著作権侵害について、裁判所は以下のとおり判示して、引用の抗弁の成立を認めました。

「原告動画3は、一審被告が現金10万円を募金しているのに、一審原告には裁判で1円も払わないと反論していることを表現するために、被告動画2が一審被告の動画であることを表示した上で、その目的の限度で被告動画2の各場面を画像として引用したものであって、その引用の目的において正当な範囲内で行われたものである」
「こうした引用の目的のためには、被告動画2で一審被告が募金をしている場面の画像を利用することは直接的かつ有効な手段であるといえるから、引用において正当な範囲を逸脱するものではなく、質的、量的にみても過剰な引用に当たるものとはいえない。」

プライバシー権侵害(郵便番号の公開)について、裁判所は以下のとおり判示しました。

「郵便番号は、居住地を含む一定の範囲の地域で特定されるものであるから、それが公開されることで直ちに居住地が明らかになるものではない。」
「郵便番号についてマスキング処理を施すことなく答弁書を掲載したことに配慮を欠く面があったとしても、社会通念上許容される限度を逸脱した違法な行為であったとまではいえない。」

コメント

1. 本判決の意義

本判決は、YouTubeへの動画投稿と肖像権・プライバシー権の関係について、控訴審として判断を示した裁判例です。

本判決の意義は、以下の点に整理できます。

第一に、本判決は、動画のタイトルと内容が乖離している場合の判断手法を示しました。動画のタイトルが「不当逮捕を暴く」という公益性のある表現であったとしても、裁判所は、動画の内容を実質的に検討し、一般の閲覧者の通常の注意と視聴の仕方を基準として判断しています。タイトルだけでは公益目的は正当化されないということを示した点で、動画投稿に携わる者にとって参考になります。

第二に、本判決は、撮影から投稿までの期間(約2年半)や、自身の収益化チャンネルへの投稿という事情を、公益目的を否定する事情として考慮しています。公益目的を主張する場合には、撮影から投稿までの経緯や投稿の態様も問われることを示しています。

第三に、本判決は、原審が認めなかったプライバシー権侵害を新たに認定しました。逮捕された事実は、その者の名誉や信用に関わる事項であり、みだりに第三者に公表されないことについて法的利益を有すると判示しており、逮捕場面を含む動画の投稿にはプライバシー権の観点からも注意が必要です。

第四に、本判決は、容ぼうのマスキング処理や音声の加工処理をせずに投稿したことを、違法性を基礎づける事情として考慮しています。裁判所は、「最低限の配慮すらせずに」投稿したことを指摘しており、他人が映り込む動画を投稿する際の実務上の留意点を示しています。

2. 肖像権ガイドラインからみた本判決の検討

本判決の検討にあたり、デジタルアーカイブ学会が公表している「肖像権ガイドライン~自主的な公開判断の指針~」(2021年4月正式公開、2023年4月補訂。以下「肖像権ガイドライン」といいます。)が参考になります。

肖像権ガイドラインの概要

肖像権は、判例法理上認められた権利であり、その要件や保護範囲を定めた法律上の明文規定はありません。そのため、個別の事案において肖像権侵害の成否を判断することは容易ではありません。

肖像権ガイドラインは、最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決(法廷内写真撮影事件判決)が肖像権侵害の成否を判断するにあたって示した考慮要素(被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性)を基礎として、これらの要素をポイント化し、合計点数によって公開の適否を判断するという枠組みを提示しています(肖像権ガイドライン第3~第5)。

具体的には、各考慮要素について、公開に適する要素にはプラスの点数を、公開に適さない要素にはマイナスの点数を配点し、合計点数に応じて以下の4段階で公開の適否を判断します。

合計点数判定公開の可否
0点以上公開に適する
-1点~-15点公開範囲の限定またはマスキング処理を行えば公開に適する
-16点~-30点厳格なアクセス制限またはマスキング処理を行えば公開に適する
-31点以下マスキング処理を行った場合にのみ公開に適する

本件へのあてはめ

肖像権ガイドラインは、非営利のデジタルアーカイブ機関が静止画(写真)をインターネット上で公開する場面を直接の対象としており、YouTube上の動画投稿を直接の対象とするものではありません(肖像権ガイドライン第3の2(1)②参照)。しかし、同ガイドラインは、動画についても各項目をアレンジすることで応用可能であるとしており、その考え方の枠組みは本件の分析においても参考になります。

本件の事実関係を肖像権ガイドラインの評価項目に照らすと、以下のとおり整理できます。

評価項目本件の事情点数の方向
被撮影者の社会的地位一般人(公人ではない)加点要素なし
活動内容私生活上の出来事(逮捕場面)マイナス方向
撮影の場所公道上(公的領域)プラス方向
撮影の態様(被撮影者の状態)手錠を掛けられた状態(身体的拘束)マイナス方向
撮影の態様(被撮影者の状態)一般的に恥ずかしいと感じる状況マイナス方向
撮影の態様(撮影の経緯)撮影について被撮影者の同意がないマイナス方向
撮影の態様(公開の方法)容ぼうのモザイク処理・音声加工なしマスキングなし(加点なし)

このように整理すると、本件では、撮影場所が公道上であるという点ではプラス方向に働く要素があるものの、被撮影者が一般人であること、手錠を掛けられた状態であること、容ぼうの加工処理がなされていないことなどマイナス方向の要素が複数存在し、合計点数はマイナスとなる可能性が高いと考えられます。

肖像権ガイドラインの評価項目に照らしても、本件逮捕動画のように、一般人が手錠を掛けられている状態を同意なく撮影し、容ぼうの加工処理を施さずにYouTubeに投稿する行為は、肖像権侵害のリスクが高い類型であるといえます。本判決が肖像権侵害を認めた結論は、肖像権ガイドラインの考え方とも整合するものです。

3. 企業や動画投稿者に求められる対応

本判決から導かれる実務的な留意点は、以下のとおりです。

(1)他人の容ぼうが映る動画の投稿に関する注意

他人の容ぼうが映り込む動画をYouTube等に投稿する場合、当該個人の同意を得るか、容ぼうにモザイク処理を施し、音声を加工するなどの措置を講じる必要があります。これらの措置を怠った場合、肖像権侵害として損害賠償責任を負うリスクがあります。

(2)モザイク処理等が常に必要になるわけではないこと

もっとも、本判決を前提としても、同意のない他人の容ぼうが映り込む動画について常にモザイク処理等が必要になるわけではありません。本判決において、モザイク処理等を施さなかったことは、肖像権侵害を独立に基礎づける要素としてではなく、公益目的を否定する間接事情として考慮されています。

肖像権侵害の成否は、被撮影者の社会的地位、撮影場所、動画の内容・編集態様、公表の範囲等を総合的に考慮し、受忍限度を超えるかどうかによって判断されるものです。例えば、公道上の祭りやイベントで群衆の中に人物が映り込んでいるにすぎない場合や、街頭での風景撮影で特定の人物にフォーカスしていない場合などには、モザイク処理等を施していなくても、直ちに肖像権侵害が成立するものではないと考えられます。

この点は、前述の肖像権ガイドラインのポイント制の考え方からも裏付けられます。肖像権ガイドラインでは、撮影場所が公的領域であること、大勢の人が映っていること、特定の人物にフォーカスしていないことなどはプラス方向の要素として評価され、これらのプラス要素が十分に大きい場合には、合計点数が0点以上(青判定:公開に適する)となり得ます。すなわち、肖像権ガイドラインの枠組みに照らしても、モザイク処理等の要否は一律に決まるものではなく、個別の事案における諸要素の総合的な評価によって判断されることになります。

本件において肖像権侵害が認められたのは、一般人が手錠を掛けられた状態を同意なく撮影し、面白おかしく編集した上で、容ぼうの加工処理を施さずにYouTubeに投稿したという、複数のマイナス要素が重なった事案であったためです。動画投稿にあたっては、こうした諸要素を踏まえて、モザイク処理等の措置が必要かどうかを個別に判断することが重要です。

(3)「公益目的」の主張に対する留意点

本判決は、動画のタイトルや形式的な体裁だけでなく、動画の内容、編集の態様、撮影から投稿までの経緯等を実質的に検討しています。単に「公益のため」と標榜するだけでは、公益目的による違法性阻却は認められません。

(4)権利侵害コンテンツの削除対応

本判決では、一審原告が削除を要請したにもかかわらず、直ちに削除しなかった点も、慰謝料の増額事由として考慮されています。動画プラットフォームを運用する企業や投稿者としては、権利侵害の指摘を受けた場合には速やかに対応を検討することが重要です。

(5)社内体制の整備

企業がYouTubeその他のSNSを活用したマーケティングやコンテンツ配信を行う場合には、動画投稿前のチェック体制を整備することが重要です。撮影される個人からの同意取得、容ぼうの加工処理、投稿後の削除要請への対応フローなどをあらかじめ定めておくことで、肖像権・プライバシー権侵害のリスクを低減できます。

(6)肖像権ガイドラインの活用

前述の肖像権ガイドラインは、デジタルアーカイブ機関だけでなく、メディア、研究教育機関、映像関連団体(営利・非営利を問わない。)が自主的なガイドラインを策定する際の参考として活用できるとされています。

企業がYouTubeやSNSで動画コンテンツを配信する場合にも、肖像権ガイドラインのポイント制の考え方を参考として、投稿前に他人の肖像が映り込む動画の公開リスクをチェックする仕組みを構築することが有用です。特に、合計点数がマイナスとなる場合には、モザイク処理等のマスキング措置を施すか、撮影された本人の同意を取得するなどの対応を行うことが、肖像権侵害のリスクを低減するために有効です。

4. 引用(著作権法32条1項)の実務への示唆

本判決は、反訴において、一審原告が自身の被害を明らかにするために投稿した対抗動画について、著作権法32条1項の「引用」の成立を認めています。

権利侵害を受けた者が、その被害を明らかにする目的で加害行為に係るコンテンツを引用することが許容される場合があることを示した点で、権利侵害への対抗手段の範囲を検討する上で参考になります。

本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の法律上のアドバイスではありません。具体的な事案については、本ウェブサイト右上の問い合わせフォームよりご連絡ください。