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「全国映画資料アーカイブサミット2026」に参加して

数藤 雅彦

弁護士の数藤です。

このたび、「全国映画資料アーカイブサミット2026」に参加させていただきました。

「映画」そのもののアーカイブではなく、ポスターや脚本、美術などの「映画資料」アーカイブの現在地がわかるこのイベント。

2024年、2025年に続き、3度目の参加となります。

私は権利処理に関する講演を務めましたが、会場でほかの参加者の報告も拝聴しましたところ、いずれも非常に興味深い内容でしたので、簡単にご紹介します。

 

会場の映像産業振興機構

 

今回のサミットでは、まず冒頭でVIPO(映像産業振興機構)から事業報告がなされたあと、国立映画アーカイブの玉田健太氏宮本法明氏による「国立映画アーカイブの映画資料を活用した教育普及事業」の報告がありました。

同館が行っている、子ども向けの試みとして、「こども映画館」やセルフガイドなどがあります。

映画をスマホで見れてしまう時代に、フィルムや映写機、ポスターを実際に見せて伝える試み。体験した子どもたちは、みんなそのあと展示室に足をはこぶという理想的な展開。

ここで学んだ子どもたちの将来が楽しみです。

 

続いて私からは、「ケーススタディで学ぶ、映画資料アーカイブの権利関係」と題する講演をさせていただきました。

映画ポスターや写真、脚本、画コンテや衣裳について、展示や出版、さらにSNSで公開するにはどのような権利処理が必要か(または不要か)について解説いたしました。

 

休憩をはさんで、2025年の映画資料展について。

まずは鎌倉市川喜多映画記念館の馬場祐輔氏による報告「映画字幕翻訳の仕事 ──1秒4文字の魔術」

映画字幕、というありそうでなかった企画展示。字数の制約のなかでいかに言葉を工夫するか。字幕の文字をどのように印字するか。そして翻訳者が選ぶとっておきの一文(池澤夏樹氏が訳した「シテール島の船出」の一言!)まで、これほど面白い展示を見逃していたのは誠に残念でした。

図録を手に入れたくなりましたが、作成されていないとのこと。

第2弾の企画展や、巡回展示にも期待したいと思います。

 

続くのは、羽島市映画資料館相談役の近藤良一氏による「川辺弘一 映画コレクション展」の報告。

川辺氏は、ジョン・ウェインの映画ポスター等を中心とした映画資料のコレクター。

西部劇をはじめとする貴重なポスター等の紹介と、寄贈にいたる経緯が説明されました。

当初、川辺氏が持っていた、「行政はコレクションを死蔵させてしまうのでは」との懸念は重いものがあります。

そして、「高校の教室くらいのスペース」に所狭しと並べられたポスター群は圧巻でした(「前半 ジョン・ウェイン展」、「後半 ハリウッド黄金時代展」)。

 

さらに続いて、鳥取大学の佐々木友輔氏、神戸大学大学院の杵島和泉氏からは、「映画資料から生まれた映画『ファントム・ライダーズ』二部作をめぐって」の報告。

鳥取の失われた映画館の、戦前のプログラムなどの映画資料をもとにして、なんと映画を2本作ってしまったという驚きの報告でした(一作目の予告編二作目の予告編)。

アーカイブを次の創作につなげるという、珍しく、かつ意欲的な取り組みに刺激を受けた方も多いのではないかと思います。

今年3月には、鳥取で、集大成となる展示や上映が行われるとのことです。

 

2度目の休憩をはさんで、神戸映画資料館の松山ひとみ氏からは、「書籍「日本アニメーション映画史」収録作品目録の改訂とウェブ版作成について」の報告。

日本のアニメ史を語るうえでの必須文献『日本アニメーション映画史』に関する目録を改訂するという、地道で、かつ重要な取り組みの実務が語られました。

大変な調査の詳細(検閲時報の確認!)や、フィルムからの緻密な情報収集(フォーマット、クレジットから、尺、色、音声さらに完成度まで)の成果は、テスト稼働の時点ですでに「デジタルアーカイブジャパン・アワード2025」を受賞しています。

今年3月に本稼働版が公開予定とのことで、楽しみです。

 

最後はイエール大学のアーロン・ジェロー氏から、「海外に広がる日本映画資料‐イェール大学図書館の日本映画コレクションについて」の講演。

イエール大学のフィルムアーカイブ、イエール・ライブラリーの紹介に加え、竹内重弘氏の映画雑誌等のコレクション(156箱分!)の話や、ドキュメンタリー作家の土本典昭氏の個人資料(83箱分が公開)の中身が詳しく語られました。

アーカイブ機関としての予算規模の違いにも圧倒されますが、データベースで土本の「ある機関助士」の欄をクリックすると資料一覧がずらりと出てくるように、公開方法の充実も特筆すべきでしょう。

 

今回の各講演は、後日、YouTubeで公開されるかと思います。

本日のサミットが、(願わくば私の講演も含めて)全国各地で映画資料のアーカイブに取り組む方々の一助となれば幸いです。

 

会場のある東劇ビル