弁護士数藤雅彦が、「映画の孤児著作物のデジタル利用に関する法制度報告書」を発表いたしました。
東京国立近代美術館ウェブサイト内「デジタル映画の保存・活用に係る法制度等に関する調査」
本報告書は、東京国立近代美術館フィルムセンターが実施した「デジタル映画の保存・活用に係る法制度等に関する調査」の一環として、弊所が同センターから委託を受けて執筆したものです。
報告書では、映画の孤児著作物(権利者不明著作物)のデジタル利用をテーマに、日本の著作権法に関する法制度(保存のための複製、パブリック・ドメイン、裁定制度、国立国会図書館を通じたデジタル配信等)について解説した上で、海外の事例として、北欧諸国やイギリスで導入済みの拡大集中許諾制度、オランダやイギリスのフィルムアーカイブ機関におけるデジタル利用の実践例を取り上げ、各制度の可能性と限界を分析いたしました。
本報告書の全体構成は、東京国立近代美術館フィルムセンター研究員の松山ひとみ氏、三浦和己氏、佐崎順昭氏、大傍正規氏及び弊所数藤が担当し、執筆は数藤が担当いたしました(一部、同センター執筆による調査原稿を元に、構成・編集を数藤が担当した箇所があります)。
本報告書は、東京国立近代美術館ウェブサイト内からダウンロード可能です。
以下、同報告書の目次から引用いたします。
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目次
第1章 はじめに ― 本調査の目的
第2章 日本の法制度の可能性と限界
1 総説
(1)問題設定
(2)所有権
(3)著作権
(4)その他
2 保存のための複製
(1)法制度の概要
(2)要件
ア 図書館資料
イ 図書館等
ウ 保存のため必要がある場合
3 パブリック・ドメイン
(1)法制度の概要
(2)昔の映画の著作物の留意点
ア 旧著作権法の適用
イ 保護期間の確定不可能性
ウ 保護期間の判断を誤った場合の利用者の責任
エ 戦時加算
オ 映画音楽
(3)小括
4 権利者からの利用許諾
5 裁定制度
(1)法制度の概要
(2)要件
(3)平成28年の要件の一部緩和
(4)利用者の負担
ア 「相当な努力」の費用対効果
イ 調査の困難性
ウ 申請書の記載事項
エ 供託金の前払い
オ 補償金の直接請求
(5)検討中の改善案
(6)小括
6 国立国会図書館を通じたデジタル配信
(1)法制度の概要
(2)法文上の可能性
ア 平成21年改正
イ 平成24年改正
(3)権利者団体との合意事項
ア 資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会による合意事項
イ 映像資料のデジタル化及び利用に係る関係者協議会による合意事項
(4)小括
7 総括
第3章 拡大集中許諾制度
1 法制度の概要
2 諸外国の導入状況及び日本の近時の動向
(1)北欧諸国及びイギリス
(2)アメリカ
(3)日本
3 拡大集中許諾制度の特徴
(1)集中管理団体の適格性
ア 権利者の相当数の代表
イ 政府の認可
(2)自主的な交渉を通じたECL契約の締結
(3)対象とする著作物の種類及び利用形式の制限
(4)非構成員の利益を保護するための措置
ア オプトアウト(離脱)権の保証
イ 使用料分配に関する構成員との平等性
ウ 個別の使用料請求権
エ 調整・仲裁申立ての制度
4 諸外国の映画・映像分野における実例
5 日本の映画・映像分野に拡大集中許諾制度を導入する際の留意点
(1)法的正統性の担保
(2)映画・映像業界を代表する集中管理団体の組織
(3)使用料の設定・収受(透明性の確保)
(4)著作者人格権
6 総括
第4章 海外における映画の孤児著作物のデジタル利用の実践例
1 総説
2 オランダ
(1)概要
(2)自発的なECLモデル構築の背景
ア ECLモデル構築に至った背景
イ VoDプラットフォーム「Ximon」の構築
(3)サービスの終了とその理由
(4)日本への示唆
3 イギリス
(1)概要
(2)法制度との関係
(3)日本への示唆
第5章 終わりに ― 本調査からの示唆