【2017年7月追記】Instagramと著作権・肖像権に関して、読者の皆様からよく頂くお問い合わせを、Q&A形式のコラムにまとめました。こちらも併せてご覧ください。
最近、まわりでInstagram(インスタグラム)が流行っています。
Instagramといえば、写真や画像・動画に特化したSNSサービス。
もちろんInstagramは以前から広く使われていましたが、なぜかここ数カ月、私のまわりでも利用者が急増しました。
とくに、デザイナーや学生のあいだでは、ツイッターやFacebookよりも、Instagramでの情報交換が流行っているように見えます(会う人からは「なんでinstagramやってないんですか?」とよく聞かれます)。
最近では、「女子大生は食べログではなく、Instagramで飲食店を探している」という声まで聞かれるようになりました
保田隆明氏コラム | ぐるなびや食べログはもう古い!?女子大生は「Instagram」(インスタグラム)で飲食店を探し、雑誌感覚で画像も検索する-株ニュースの新解釈-
このような背景もあり、最近は多くの企業がアカウントを開設し、ブランディングや商品の広告PRに利用される機会も増えてきました。
in the looop | Instagram企業アカウント トレンド調査 2015年9月度
そこで気になってくるのは、「Instagramにアップされた写真や画像の著作権はどうなっているのか?」ということです。
ユーザーの中には、きれいな風景写真をアップする人もいれば、親しいイケメンの写真をアップする人、自作のアートや小物の写真をアップする人もいます。
しかし、中には「自分の写真を、見ず知らずの人に勝手に使われたくない」という人もいるはずです。
今回のコラムでは、Instagramにアップした写真の著作権がどのように扱われているのか、Instagramの「利用規約」を読んで確かめてみましょう。
(※以下では、コラム執筆時点でInstagramのHPに掲載されている2013年1月19日付の利用規約を取り上げます)
Instagramの利用規約を読んでみよう
Instagram | 利用規約
ご覧になればおわかりのように、Instagramの利用規約は16,000字以上もあって、英語の直訳風のややカタい文章です(余談ですが、「放棄する」と書くべきところが「法規する」になっていたりと、漢字変換ミスもみられますね)。
その中で、ユーザーがアップした写真の著作権については、「各種権利」の1項のくだりで、このように書かれています。
Instagramは、利用者が本サービスに、またはこれを通じて投稿するいかなるユーザーコンテンツについても、その所有権を主張しません。
これをみると、まず、Instagramがあなたの写真の所有権(ownership)を主張しない、とはっきり書かれています。どうやら写真の所有権は、あなたが持ち続けられるようです(日本の法律でいう著作権も、あなたが持ち続けられるように読めます)。
ただし、次の部分に注意が必要です。
ただし利用者は、利用者が本サービスに、またはこれを通じて投稿するユーザーコンテンツを、Instagramがhttp://instagram.com/legal/privacy/に掲載されている本サービスのプライバシーポリシー(引用者:中略)に従って利用する、非独占的かつ無料、譲渡可能かつ再許諾権付きの世界的使用許諾を付与するものとします。
利用者が投稿するコンテンツ(写真など)については、あなたはInstagram社に対して、「非独占的」に「無料」で、しかも「譲渡可能」で、「再許諾権付き」の「世界的」な「使用許諾」を付与する、となっています。
要するに、Instagram社があなたの写真を広く利用できる…といったことが書かれていますが、耳慣れない単語も出てきましたので、1つずつ順番にご説明しましょう。
〇まず「非独占的(non-exclusive)」とは、その名のとおり、Instagram社だけに利用権を独占させないということ。あなたは、Twitterにも、Facebookにも、その他のサービスにも、同じ写真をアップするなどして利用できます。
〇「無料で(fully paid and royalty-free)」とは、文字どおり、あなたに写真の権利料は支払われないということです。
〇「譲渡可能(transferable)」とは、Instagramが他の会社などに、写真の利用権を売ったり提供したりできるということです。ある日気づいたら、Instagram以外にも、A社のサービスでもB社のサービスでも、あなたの写真が使われているかもしれません。
〇「再許諾権付き(sub-licensable)」も似たような意味で、InstagramがA社やB社に、あなたの写真の利用をOKすることができるということです。
いかがでしょうか。
勘のいい方なら、「これって結局、アップした写真はInstagramのほうで相当広く使えてしまうのでは? 実際問題として、著作権をInstagramにあげたのとほとんど同じような気が…」とお考えかもしれません。
写真の権利それ自体をInstagramに譲渡したわけではないので、あなた自身も(当然)写真を自由に使えますが、たしかにInstagram側でもその気になれば、ほとんど「使い放題」になっているのは事実です。
Instagramの利用はプライバシーポリシーの範囲内?
ただし、Instagram側が写真を利用するとしても、「プライバシーポリシー」の範囲内だと思われます。
利用規約の続きの部分では、
利用者は、前述のプライバシーポリシーに記載されている方法で利用者のユーザーコンテンツおよび活動内容(利用者の写真を含みます)の共有範囲を選択することができます。
と補足されていますし、プライバシーポリシー(http://help.instagram.com/155833707900388)を見ると、
弊社は、Instagramが属する企業グループ内の他社か、このグループに加わる予定の他社(以下「関連会社」)と、ユーザーコンテンツや利用者の情報(Cookie、ログファイル、機器ID、位置情報、および利用データを含みますが、これらに限定されません)を共有する場合があります。関連会社は、(引用者:中略)利用者の写真の共有範囲については利用者の選択を尊重します。
とありますので、アップする写真の権利についてあなたが何らかのコントロールをしたいのであれば、まずは「共有範囲」を自分で選択するべし、という仕組みになっています。
現時点では、Instagramのデフォルトの設定は全公開になっているようですので、アップする際はくれぐれもご注意ください。
Instagramを上手に使いましょう
いかがでしたでしょうか?
利用規約の中には、他にもユーザーのみなさんに関係する重要な記載がたくさんありますが、今回はアップした写真の権利にしぼってお伝えしました。
ちなみに、以上に述べてきたような、Instagramにおけるコンテンツの取扱いは、他のSNSサービスと比べて、それほど特殊なものではありません。Instagram側も無料で便利なサービスを提供している以上、かわりにユーザーサイドの権利を自分でも利用できるようにしたり、法的なリスクを減らして事業を推進したいのは当然のこと。
みなさんも自分のお気に入りの写真をアップするときは、以上の話を思い出して、写真の権利や公開範囲の「コントロール」を心がけてください。
なお、Instagramを企業のブランディングやPRに活用する場合、景品表示法等の広告規制を守ることはもちろん、Instagramの利用規約、そして各種ガイドラインを依拠する必要があります。
五常法律会計事務所では、Instagramを企業のブランディングやPRに活用する場合を含め、広く広告・表示規制に関するご相談をお受けしております。
何かお困りのことがございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
【2017年7月追記】なお、冒頭にも記載したとおり、Instagramと著作権・肖像権に関して、読者の皆様からよく頂くお問い合わせを、Q&A形式のコラムにまとめまております。こちらも併せてご覧ください。
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