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ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱いに関するQ&A(厚生労働省公表)の注意点

厚生労働省は、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を更新し、ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱いに関するQ&A(「4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」問20)を公表しました。

現在、高齢者を対象としたワクチン接種が進められておりますが、ワクチン接種のため、従業員への休暇の付与やテレワークの実施等を検討されている企業も増えてきており、このテーマに関するご質問を戴くことも増えてきています。

以下、上記Q&Aの内容と注意点について、簡単に解説をいたします。

 

必要な手続

まず、上記Q&Aでは、以下の2つの対応について、「労働者が任意に利用できるものである限り」という条件の下、「一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生する」ものと考えられるとしています(なお、常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要となります)。

 

ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと
特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)を認めること

 

注意点

上記Q&Aの注意点は、あくまで「労働者が任意に利用できるものである限り」という条件が付されている点です。

周知のとおり、ワクチンの接種は、統計的な確率は低いものの、アナフィラキシー(急性のアレルギー反応)など、重症の副反応を引き起こすことがあるため、接種を受けるかどうかは、従業員本人の自由な意思に委ねられるべきものといえます。

実際、予防接種法(昭和23年法律第68号)においても、ワクチン接種は「努力義務」にとどまるとされており(予防接種法附則7条2項、法9条1項)、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案の成立に際しても、「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられる」ものであり、「差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではない」との附帯決議がなされています。

このため、企業として、ワクチン接種のため、従業員への休暇の付与やテレワークの実施等を検討するに際には、ワクチンの接種が、あくまで従業員本人の自由な意思に委ねられるべき事柄であることを前提に、制度の導入・運用が、直接・間接を問わず、ワクチン接種の強制とならないように、すなわち、「労働者(従業員)が任意に利用できるもの」とすることが求められている点に、注意が必要です。

 

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