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宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)のポイント【弁護士解説】

令和3年5月20日、国土交通省より「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」(以下、本コラムでは「事故物件ガイドライン」と表記します)が公表されました。

事故物件ガイドラインは、これまで明確な基準があるわけではなく、トラブルになることが多かった「心理的瑕疵」について、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき責務について、現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられる考え方を示したものです。

今後、令和3年6月18日まで、パブリックコメントを募集したうえで、寄せられた意見を踏まえ、最終的な内容が確定することになります。

同ガイドラインについては、まだパブコメ段階ではありますが、報道等で取り上げられていることもあり、顧問先の不動産オーナーや不動産業者の方からも、多くのお問い合わせをいただいており、関心の高さが伺われます。

そこで、今回のコラムでは、取り急ぎ、事故物件ガイドライン(案)のポイントについて、簡単に解説をしてみたいと思います。

(※なお、パブコメ終了後、必要に応じて、修正・追記をする予定ですので、後日、内容が変更となる可能性があることをあらかじめご了承ください)。

 

ガイドラインが対象とする事案と不動産

まず、事故物件ガイドラインは、取引の対象となる不動産において生じた他殺、自死、事故死などの人の死に関する事案を対象とするものです。

そして、このガイドラインは、住宅として用いられる不動産(居住用不動産)のみを対象とします。

たとえば、オフィス等として用いられる不動産や隣接住戸、あるいは前面道路など取引の対象となる不動産以外において発生した上記事案は事故物件ガイドラインの対象外とされています。

なお、いわゆる集合住宅においては、居住の用に供する専有部分・貸室に加え、たとえば、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関やエレベーター、廊下・階段のうち、買主・借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分も対象とされる点に注意が必要です。

対象不動産対象外

・住宅として用いられる不動産(居住用不動産)

・なお、集合住宅においては、居住の用に供する専有部分・貸室に加え、ベランダ等の専用使用な可能な部分、さらには買主・貸主が日常生活において通常使用すると考えられる部分も対象とされる

・オフィス等として用いられる不動産

・取引の対象となる不動産以外(隣接住戸や前面道路等)

 

告げるべき事案(告知対象事案)

そのうえで、ガイドラインでは告げるべき事案(告知対象事案)について、大きく2つに分けて整理をしています。

 

(1)他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合

まず、対象不動産において、過去に他殺自死事故死(以下の(2)に該当するものを除く)その他原因が明らかでない死(たとえば、事故死か自然死か明らかでない場合)が生じた場合、原則として、これを告げる必要があるとしています。

 

(2)自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合

他方、老衰、持病による病死などの自然死又は事故死に相当するものであって、自宅の階段からの転落や、入浴中の転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活で生じた不慮の事故死については、原則として、告げる必要はありません

ただし、このような自然死や日常生活の中での不慮の事故による死が発生した場合であっても、いわゆる特殊清掃(注:自死や孤独死などが発生した住居において、現状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス)等が行われた場合については、原則として、告げる必要があるとされます。

告知の対象対象外

・他殺

・自死

・事故死(日常生活で生じた不慮の事故死と言えないもの)

・その他原因が明らかでない死

・自然死または日常生活の中での不慮の事故死で特殊清掃等が行われた場合

・自然死のうち、特殊清掃等が行われていない場合

・事故死のうち、日常生活で生じた不慮の事故死で、特殊清掃等が行われていない場合

 

宅地建物取引業者の調査義務

次に宅地建物取引業者の調査義務について、見ていくことにしましょう。

対象となる不動産における告知対象事案の有無に関し、宅地建物業者は、原則として(当該事案が生じたことを疑わせる特段の事情がない限り)、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行ったり、自発的な調査を行ったりする義務はないとされています。

他方、販売活動や媒介活動に伴う通常の情報収集等の調査過程において、売主・貸主や管理業者から、過去に上記対象事案が発生したことを知らされた場合や自らこれらの事案が発生したことを認識した場合には、後述のとおり、買主・借主にこれを告げなければなりません。

なお、媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主から確認した事実関係を明確にし、トラブルを防止する観点から、心理的瑕疵が疑われる事案の存在については、告知書等への記載を求めることにより照会を行うことが望ましいとされ、告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務は果たしたものとするされています。

(ただし、告知書等により、売主・貸主から告知がない場合であっても、告知対象事案の存在を疑う事情があるときは、売主・貸主に確認して、買主・借主に情報提供する必要があるとされています)。

 

告知すべき内容と範囲(期間)

そのうえで、ガイドラインでは、告知すべき内容と範囲(期間)について、賃貸借契約と売買契約とに分けたうえで、整理をしています。

(1)賃貸借契約において告知すべき内容・範囲

まず、賃貸借契約については、取引の対象となる不動産において、過去に、告知対象事案(1)が発生している場合には、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、事案の発生時期、場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、借主に対してこれを告げる必要があります

そして告げるべき範囲(期間)としては、特段の事情がない限り、事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを告げるものとされています。

なお、過去に、告知対象事案(2)が発生している場合については、前述のとおり、原則としてこれを告げる必要はありませんが、特殊清掃等が行われた場合においては、上記事項(事案の時期、場所及び死因)に加えて、発見時期及び臭気・害虫等が発生した旨について、特段の事情がない限り、事案の発生から概ね3年間、借主に対してこれを告げるものとされています。

 

(2)売買契約において告知すべき内容・範囲

他方、売買契約に関しては、告知対象事案が発生している場合の告知すべき内容については、上記賃貸借契約の場合と同様ですが、範囲(期間)については、賃貸借契約と異なり、制限は設けられていない点に注意が必要です。

 

 告知対象事項(1)

告知対象事項(2)

(※特集清掃等が行われた場合)

告知すべき内容

・事案の発生時期

・事案の発生場所

・死因(不明である場合はその旨)

・事案の発生時期

・事案の発生場所

・死因(不明である場合はその旨)

・発見時期

・臭気や害虫等が発生した旨

告知すべき範囲

・賃貸借契約:事案の発生から概ね3年

・売買契約:期間制限なし(調査を通じて判明した範囲で告げる)

・同左

 

なお、以上が原則的な対応になるものの、ガイドラインにおいては、①取引の対象となる不動産における事案の存在に関し、買主・借主からの依頼に応じて追加的な調査を行った場合や、②その社会的影響の大きさから買主・借主において特別に把握しておくべき事案があると認識した場合等には、宅地建物取引業者は、調査を通じて判明した点を告げる必要があるとされている点に留意する必要があります(ただし、この場合においても、調査先の売主・貸主や管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨を告げれば足りるとされています)。

また、告知事項を告げる際、亡くなった方の遺族等、関係者のプライバシーに配慮する必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死亡原因、発見状況等を告げる必要はないとされている点、さらには、事案の存在を告げる際には、書面の交付等によることが望ましいとされている点にも注意をしてください。

 

おわりに

本ガイドライン(案)3頁にも記載のとおり、心理的瑕疵の存在について紛争が生じた場合の民事上の責任については、当該事案における具体的な事実関係を前提に個別に判断されるものであることから、宅地建物取引業者が本ガイドラインに基づく対応を行った場合でも、常に民事上の責任が免責されるわけではありません。

しかしながら、宅地建物取引業者が、本ガイドラインを参照し、適切に対応をすることで、「心理的瑕疵」に関するトラブルの未然防止に繋がることが期待されていますし、実際にもそうなると思います。

現状、まだパブリックコメントを募集している状況であり、今後、内容等に変更が生じる可能性はありますが、このガイドライン案の骨子が大幅に変更される可能性は少ないと思います。

本ガイドラインは、不動産取引実務に大きな影響を与えることが予想されますので、不動産オーナーや不動産取引業を営む方におかれては、本コラムを参考に、まずはガイドライン本文をご自身で直接読み、内容の把握に努めていただければ幸いです(注:冒頭にリンクを張っております)。

 

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