【質問】
保釈をしてもらうにはどうすれば良いですか?
刑事弁護のご依頼・ご相談を受けた際、保釈については、ご家族から必ずご質問をいただきます。
大切な家族が逮捕され、身柄拘束が継続している場合、誰しも早期に保釈をして欲しいと願うものですし、実際、多くの方から保釈に関するご要望をいただきます。
しかし、保釈は、起訴後でなければ請求をすることができず、また、保釈を実現するためには、一定の条件を満たし、保釈保証金を納付する必要があります。
このため、起訴後、早期の保釈を実現するためには、保釈の条件や手続の流れを把握をしたうえで、事前に準備を進めておくことが大切です。
以下、刑事手続における保釈について、概要を解説いたします。
保釈とは?
まず「保釈」とは、どのような制度なのでしょうか?
一般に、保釈とは、逮捕・勾留され、身柄を拘束されている人が起訴された場合に、保釈保証金の納付等を条件として、身柄拘束を解く制度をいいます。
保釈には、①権利保釈(必要的保釈)、②裁量保釈(任意的保釈)、③義務的保釈の3種類があります。権利保釈とは、一定の事由がある場合を除いて、被告人に権利として保釈が認められるというものであり、裁量保釈とは、権利保釈の要件を満たさない場合であっても、裁判所の裁量によって保釈が許可されるというもの、義務的保釈は、不当に勾留が長引いたときに、請求または職権によって保釈されるものをいいます。
法律上は、権利保釈が原則とされ、保釈は被告人の権利とされていますが、残念ながら、実務の運用としては、被告人の権利とは言い難いのが実情です。
このため、実務上は、①権利保釈の主張だけではなく、②裁量保釈についても併せて保釈請求を行うのが一般的です。
保釈はいつから請求できるのか?
それでは、保釈は、いつから請求できるのでしょうか?
前述のとおり、保釈は、起訴された後、はじめて請求をすることができます(刑訴法88条)。
このため、起訴前(捜査段階)については、保釈請求をすることはできません。
そこで、逮捕・勾留中に身柄拘束を解くためには、弁護士に依頼し、勾留請求されないように意見書を提出したり、勾留された場合には「準抗告」という法律上認められた不服申立て制度を利用して身柄拘束からの解放を目指すことになります。
保釈は誰がどのように請求をするのか?
刑事訴訟法上は、被告人本人やご家族(配偶者等)からも保釈請求をすることが認められています。
しかしながら、実務的には、保釈請求は、書面(保釈請求書)で行うのが通常ですし、保釈を実現するためには、保釈請求書に身元引受書や示談関係書類等を添付したうえで、保釈の必要性等を説得的に主張し、それを裏付ける資料を添付する必要があります。
このため、ご本人や家族で対応をすることは現実的ではありません。保釈請求については、弁護人に依頼をするのが一般的です。
保釈保証金の相場は?
刑事訴訟法上、保釈を許す場合、裁判所は保釈保証金を定め、保釈を許す決定は保釈保証金の納付があった後でなければ、これを執行することができないとされています(93条1項、94条1項)。
このため、保釈を実現するためには、必ず保釈保証金を納付する必要があります。
保釈保釈金の額は、犯罪の性質や情状、証拠、被告人の性格や資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされ(93条2項)、一般的な刑事事件では、最低で150万円、200万円から300万円が相場と言われています。
もっとも、具体的な事実関係次第で金額が変わることもあるため、上記相当額を用意できない場合でも、保釈の請求をすぐに諦める必要はありません。依頼をされている弁護士に事情を説明したうえで、何か方策はないか検討をすることが大切です。
保釈請求の具体的な流れ
それでは、実際に保釈請求を行う場合の具体的な流れについて、見ていくことにしましょう。
①保釈請求書の提出
②検察官の意見
③裁判官面接
④保釈許可決定 or 保釈却下決定
↓ ↓
⑤保釈保証金納付 準抗告(抗告)
↓
⑥被告人の釈放
まず、保釈請求は、裁判所に保釈請求書を提出して行います。その際、添付資料として、既に被害者との間で示談が成立している場合には示談書の写しを添付したり、身元引受書や、身元引受人の陳述書、被告人本人の誓約書や反省文などを併せて提出することが一般的です。
そして、保釈請求書が提出をされると、裁判官(裁判所)は、検察官に対し、保釈に関する意見を求めることになります。検察官の意見には、「しかるべく」(裁判官に任せる)、「相当」(保釈を認めてよい)、「不相当」(保釈すべきでない)などがあり、特に否認事件では不相当の意見が出されることになります。
また、保釈請求書に面接希望と記載しておけば、弁護人も裁判官と面接をすることができるため、通常、裁判官と面接し、弁護人の意見を伝えます。
そのうえで、裁判官(裁判所)は、検察官の意見、そして弁護人の意見を踏まえ、保釈を認めるかどうかを決定することになります。そして、保釈を認める場合には、納付すべき保釈金額の決定に加え、保釈後の住居や旅行の制限など、裁判所が適当と認める条件も付せられます。
なお、保釈請求が却下された場合(保釈が認められなかった場合)については、準抗告により不服を申し立てる(争う)ことができます。
裁判所から保釈許可決定がなされた場合、決められた保釈保証金を裁判所の出納課に納付することになります。そして、手続完了後、3時間程度で釈放をされるのが一般的です(もっとも、ケースにより早くなることもあれば、遅くなることもあります)。
保釈請求をしてから実際に釈放されるまでどの程度の時間を要するかは、早ければ1~3日程度、土日祝日を挟んだ場合でも、1週間程度で決定自体は出ることが通常で、その後は、保釈金を納付するタイミング次第で、実際に釈放されることになります。
先程、説明したとおり、保釈保証金は150万円以上となることが多く、銀行預金から引き出す場合には、窓口の営業時間やATMの限度額等の事情から、保釈決定当日に保釈金を用意できないケースも実務的にはあり得ます。
早期の釈放を目指す場合には、上記のスケジュールを念頭に、起訴前から保釈請求の準備を進め、裁判所の判断後、速やかに対応できる体制を整えておくことが重要です。
納付した保釈保証金は戻ってくるのか?
良くいただく質問として、裁判所に納付した保釈保証金は戻ってくるのか?というものがあります。
結論から言うと、没収されない限り、納付した保証金は、一審判決後に全額還付されることになります。
どのような場合に保証金が没収されるかというと、保釈条件に違反し、保釈が取り消された場合や、保釈された者が刑の言渡しを受けその判決が確定した後、執行のため呼出しを受け正当な理由がなく出頭しないとき又は逃亡したときなどです(96条2項・3項)。
再保釈について
また、一審で保釈されていた被告人が実刑判決を受けた場合、保釈の効力は失効するため、新たな保釈決定がない限り、被告人は判決言渡し直後に法廷から連れ去られ、そのまま収容されることになります。
このため、再度、保釈を実現するためには、再保釈を請求する必要があります。再保釈の場合の保釈保証金については、概ね1.5倍程度、増額されるのが通常のため、増額を踏まえて保釈保証金を準備しておく必要があります。
おわりに
法律上、保釈は被告人の権利とされていますが、実務上は、特に否認事件や共犯事件、さらには組織的犯罪などでは、保釈が容易には認められない実情があります。
このため、特にこれらの事件において、保釈を実現するためには、裁判所を説得するため、入念な準備が必要となります。
早期に保釈を実現し、身柄拘束を解くためにも、刑事弁護に精通した弁護士に依頼をすることが有益です。
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