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「ラフ∞絵」展を若手クリエイターに薦める理由

 

こんにちは。

つい先日、秋葉原で、展覧会「ラフ∞絵(ラフむげんえ)」が始まりました。

私(数藤)も、契約のサポートで少しお手伝いさせていただきましたので、この機会にご紹介したいと思います。

 

「ラフ∞絵」展とは?

「ラフ∞絵」展とは何かといいますと、

・漫画家の秋本治氏(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など)

・イラストレーター・画家の天野喜孝氏(『FINAL FANTASY』シリーズなど)

・メカニックデザイナーの大河原邦男氏(『機動戦士ガンダム』など)

・キャラクターデザイナーの高田明美氏(『魔法の天使 クリィミーマミ』など)

の4アーティストによる展覧会です。

 

タイトルどおり、作品の「ラフ」がたくさん展示されていることが特徴で、4人の代表作を中心に、作品になる前のラフ絵や、完成原画、さらには互いの代表作品を描きあう「チェンジ・アンド・チャレンジ」の企画など、約1400点が展示されています。

 

どうして、この4人が展覧会を開くことになったのか?

実はこの4人は、1970年代にアニメプロダクション「タツノコプロ」で仕事を共にした間柄なのです。

今から1年少し前に、同窓会(飲み会)で久しぶりに4人が集まりました。

その記念に、イラストボードに描かれた4人のラフ・イラスト。

それを見た、おなじくタツノコプロ出身の演出家、布川ゆうじ氏が今回の企画を思いついたそうです。

ラフ絵に描かれた自由な線がたまらなく魅力的で、これを多くの人に見てほしいと。

 

私も先日、関係者むけの内覧会と、一般公開にお邪魔してきましたが、とても盛況で、多くのラフ絵を前にしたファンの熱気が伝わってきました。

 

このコラムでは、ごく簡単にですが、展覧会の見どころをメモしておきましょう。

 

 

① 天野喜孝氏

会場に足を踏み入れると、まずは天野喜孝氏のコーナーから始まります。

備え付けのインタビュー動画では、スタジオで一心不乱に鉛筆を走らせる天野氏の姿が。

「ラフは、頭の中にあるイメージが形になって出ていく感じ。ラフは自由で、出来上がったものよりも”上”にあって、無限の可能性がある」と語る天野氏。

会場には、ファイナルファンタジー(FF)シリーズの原画も展示されています。

子供のころに(スーパーファミコンで)FFをやり込んだ身としては、FF5の「バッツ」や、FF6の「ものまねしゴゴ」の原画にいきなり見入ってしまいますね。

 

②大河原邦男氏

順路をたどって、次は大河原邦男氏のコーナーへ。

「ラフを描いていると、あそこにこれを入れよう、あれを入れようというワクワク感がある。子どもの頃から蓄音機などを分解するのが好きだった。絵を描くときも常に、横、後ろ、上といったように、立体を想像する」と語る大河原氏。

たしかに会場のラフには、正面・横・背中の三面図のものが多く、大河原氏の頭のなかにうかぶ三次元を再現したかのよう。

アニメ化に至らなかったラフも多数展示されていて、もしこれがアニメ化されていたら・・という想像をかき立てます。

 

③秋本治氏

続いては、秋本治氏のコーナーへ。

『こち亀』などのネームがずらりと並んでいます。

「ネームは編集者だけに見せる設計図のようなもの。だからお見せするのは結構恥ずかしい」と語る秋本氏。

しかし今回、会場にあるネームを全部読み込んで気づいたのですが、こち亀は、ネームの時点ですでに面白い。

ボケとツッコミのすごいスピード感。

それもそのはず、そもそもネームは編集者を笑わせるために描かれたものですからね。

それと、もう一つ印象深かったことがあって、今回披露されたラフには、銃をまっすぐ構える女性の絵がとても多い。

秋本氏の強いこだわりを感じます。

 

 

【チェンジ&チャレンジのコーナー】

ここで、各アーティストがお互いの代表作のイラストを描く「チェンジ&チャレンジ」のコーナーへ。

挙げはじめるとキリがないですが、

・大河原氏が描く、ロボ化した両津勘吉

・秋本氏が下町の大衆酒場を前に描いたクリィミーマミ

・高田氏があえて女性版として描いた吸血鬼D

・天野氏が西洋絵画の名作にインスパイアされて、油絵で描いたガンダム

などのお宝作品ばかり。

詳しくは見てのお楽しみです。

このコーナーは写真撮影もOKですので、展覧会の思い出にぜひどうぞ。

 

 

④高田明美氏

そしてラストは、高田明美氏のコーナー。

クリィミーマミや、機動警察パトレイバーのキャラのラフ絵が、部屋の四方に並びます。

インタビュー動画では、高田氏がラフ絵を描く制作プロセスがそのまま収録されていて、私が立ち寄ったときは、若手デザイナーらしき方がじっくり見入ってました。

「ラフは、完成に向かう放物線の上にあるもの」と語る高田氏。

キャラクターの輪郭が、繊細な線で一本ずつ描かれる様子を見ていると、登場人物に息を吹き込むとはこういうことかと実感します。

 

 

終わりに:若いクリエイターに薦める理由

以上、駆け足ですが、展覧会の様子をお伝えしました。

ファンの方には(言うまでもなく)必見の展覧会だと思います。

 

それに加えて、私としては、これまで4アーティストの作品にリアルタイムで接してこなかったような若いクリエイターの方にこそ、この展覧会をおすすめしたい。

その理由は、紙と鉛筆で描いた「線」の魅力をたっぷりと味わえるからです。

 

公式図録の対談で、布川氏らが以下のように語っています(図録41頁から部分引用)。

-展覧会で見てほしいポイントは?

布川:今はアニメも漫画も作業のデジタル化が進んでいますが、こういうナマの絵の魅力を知ってほしいというのがあります。

大河原:基本的にデジタルはツールが一緒なので、その人の個性を出すのが難しいと思うんです。我々みたいにアナログのイラストを経験していると、筆致から何から全部にその人が出ちゃうんですよね。私もCGは使いますが、ベースとしてアナログをやっておくことは、長い間この仕事をするうえで大事なことだと思います。

高田:ファンの人から、「原画は見るたびに新しい発見があって何時間でも見ていられるけど、データである複製画はすぐに見終わってしまう」と言われます。私の展覧会でも、同じ原画の前に半日いるような方がいらっしゃるんですよね。だから手描きの原画を展示できるというのは、絵描きとしての強みになるんじゃないかなと思っています。

 

クリエイターでもなんでもない私が、ここに付け加えることは何もありません。

今はタブレットだけで完結するクリエイターの方も多いかと思いますが、大河原氏が記者会見で語っていたように、当時は紙と鉛筆さえあればすぐに創作できた時代。

その、紙に鉛筆で描いた「線」の力を目にすることができる、またとない機会です。

よろしければぜひ、会場に足をお運びください。

弁護士 数藤 雅彦

 

「ラフ∞絵」展

会場:「3331 Arts Chiyoda」(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

会期:2019年4月2日(火)~2019年4月16日(火)

詳しい情報は、公式ホームページ公式ツイッターをご覧ください。