03-6550-9202 (受付時間 平日10:00〜17:00)

お問い合わせ

比較サイトに関する景品表示法の注意点

こんにちは。

今日のコラムは、インターネット上の「比較サイト」がテーマです。

先日、消費者庁が以下のリリースを発表し、新聞各紙でも報道されました。

景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁:平成29年11月2日付)
(※ 本コラムでは、具体的な会社名やサービス名は割愛して記載します)


これは、ある事業者が、ネット上の広告で事実と異なる表示を行っていたため、消費者庁が措置命令を下したというリリースです。

とくに注目すべき点は、この事業者がいわゆる「比較サイト」(業界サービス間の順位づけをするサイト)を自作自演で作っていたことが認められ、そのようなサイトについても違法と判断されたことです。

企業のPR戦略として、自社サービスが他社のものより優れていることを示す表示は、しばしば行われます。

しかし、ひとたび違法な表示と判断されると、消費者庁のリリースという形で公開され、新聞等で報道され、ひいては企業の評判を下げる結果につながりかねません。

そこで本コラムでは、今回の消費者庁のリリースを参考に、企業のPR担当者が注意すべきポイントを解説します。
 


今回のケースのどこが違法なのか?


今回のケースで違法とされたのは、大きく以下の6点です
(※ 以下、実際のケースを抽象化して記載します)。

このうち、【6】が、比較サイトに関する判断です。
 

【1】ネット上の広告などで、役務を提供する拠点数を、1000か所以上と表示
→ 実際には、1000か所を大きく下回っていました。

【2】役務の年間受注実績を10万件以上と表示
→ 実際には、10万件を大きく下回っていました。

【3】テレビ番組からの取材実績があるように示す表示
→ 実際には、そのうち一部または全部からの取材実績がありませんでした。

【4】自社が業界で「最大手」「No.1」「日本一」であるかのように示す表示
→ 消費者庁が、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、事業者が資料を提出しなかったか、または提出した資料が合理的な根拠を示すものと認められませんでした。

【5】作業員が同業他社に比べて最も現場に早く到着したかのように示す表示
→ 上記【4】と同様に裏付け資料の提出を求めたところ、事業者が資料を提出しなかったか、または提出した資料が合理的な根拠を示すものと認められませんでした。

【6】自社と無関係の事業者が運営しているように装った比較サイトを作り、15事業者のサービス内容を客観的に比較した結果、自社サービスが1位、2位、3位として評価されたかのように示す表示
→ 上記【4】と同様に裏付け資料の提出を求めたところ、事業者が資料を提出しませんでした。


これらの各表示が、景品表示法の優良誤認表示(景品表示法5条1号)に該当すると判断されました。

不当景品類及び不当表示防止法

第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

 


裏付け資料の提出が必須


ここまでを読んでお気づきの方も多いと思いますが、まず重要な点は、裏付け資料の提出を求められた場合、提出が必須になるということです。

すなわち、消費者庁から裏付け資料の提出を求められた場合に、事業者が「合理的な根拠を示す資料」を提出できなければ、それだけで違法な表示(優良誤認表示)とみなされます(景品表示法7条2項。以下、引用の際の下線部は筆者)。

不当景品類及び不当表示防止法

第7条
2 内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。


そして、この資料の提出期限は、原則として、消費者庁長官が事業者に対して資料の提出を求める文書を交付した日から15日です(景品表示法施行規則7条2項)。

不当景品類及び不当表示防止法施行規則

第7条
2 法第七条第二項及び第八条第三項に規定する期間は、前項の文書を交付した日から十五日を経過する日までの期間とする。ただし、事業者が当該期間内に資料を提出しないことについて正当な事由があると認められる場合は、この限りでない。


もっとも、文書が到着するまでの時間や、企業の営業日なども考慮すると、実質的には準備期間は2週間もありません。早急な対応が必要になります。
 


合理的な根拠を示す資料とは?


また、仮に資料を提出できたとしても、その資料が、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」を示すものでなければ、優良誤認などの不当表示と認定され得ます。

それでは、「合理的な根拠」とはどのようなものでしょうか?

この点については、公正取引委員会が平成15年に発表した、「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針(不実証広告ガイドライン)」が参考になります。

この運用指針によると、提出資料が合理的な根拠を示すものと認められるためには、次の2点を満たす必要があります。

1 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
すなわち、
(1) 試験・調査によって得られた結果か、
(2) 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
のいずれかに該当すること

2 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること


比較広告の注意点


また、比較サイトに関しては、「比較広告」について公正取引委員会が昭和62年に発表した「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(比較広告ガイドライン)」も参考になります。

このガイドラインによると、比較広告をすること自体は認められていますが、比較広告が不当表示にならないためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

1 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること

2 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること

3 比較の方法が公正であること


すなわち、比較サイトで比較広告を表示する場合には、客観的な実証データを用いて、そのデータを正確かつ適正に引用し、さらに公正な方法(例えば、単に長所を示すだけでなく、必要に応じて短所も比較する方法等)による必要があります。


なお、さらに進んで「No.1」の表示をする場合は、商品の範囲(何についてのNo.1か)や、調査期間(いつの時点のNo.1か)などの点にも注意が必要です。

No.1表示を検討する際には、公正取引委員会が平成20年に発表した「No.1表示に関する実態調査報告書」も参照してください。
 


終わりに:消費者からの信頼のために


今回のコラムでは、実際の事例を参考に、景品表示法の概要を解説しました(個々の要件についてご不明な点があれば、当サイトのお問い合わせページなどからご連絡ください)。


思えば、アメリカの著名な起業家、ピーター・ティール氏は、著書『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版、2014年)の中で、このように述べていました。

「独占は、すべての成功企業の条件なのだ。」(同書57頁)

しかし、現実には、多くの企業にとって競争はつきものです。
そして、競争にもルールがあります。
 

裏付けのない比較サイトは、まず法律というルール違反であり、同業他社からの攻撃の対象になり得るものであり、そして何よりも、消費者を騙す行為です。

法律によるペナルティとしては、消費者庁の措置命令リスクや、課徴金リスクがありますし、冒頭でも述べましたとおり、事件が広く報道されることによって企業の評判が低下するレピュテーションリスクも重要です。

企業のPR担当者においては、フェアな競争、フェアな広告を通じて、自社サービスの優れた点を発信するよう心がけて下さい。

弁護士 数藤 雅彦

【関連コラム】

Instagramに関する情報商材トラブルの注意点