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Instagramに関する情報商材トラブルの注意点


こんにちは。
今日のコラムは、Instagram(インスタグラム)などのSNSを利用した、情報商材のトラブル(詐欺)がテーマです。

先日、消費者庁が以下のニュースリリースを発表しました。

「あなたの写真が、今すぐお金に変わる!」などとうたい消費者に情報商材等の購入を持ちかけ、多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起(消費者庁、2017年10月30日付)

これは、Instagramを利用した情報商材のトラブルが増えているため、消費者庁が、消費者にむけて注意を呼びかけるリリースです。

私(数藤)は、このリリースが出された直後に、テレビ局の報道番組から取材を受け、このリリースに関する法律面や、ユーザーからみた注意点についてコメントしました。

結局、同じ日に別の大きな刑事事件が発覚しましたので、番組ではこの話題は取り上げられませんでしたが、消費者にとって重大な問題であることには変わりありません。

そこで、テレビの取材でコメントしたことと同じ内容を、本コラムでもまとめておきます。

 

何が問題だったのか?


まず、今回の消費者庁のリリース(注意喚起)は、消費者安全法に基づくものです。

消費者庁のリリースによると、今回問題になったのは、以下のようなケースでした(概要のみを短く記載します)。
 

(1) 問題となった事業者Aは、「あなたの写真が、今すぐお金に変わる!」などとウェブサイトに記載して、簡単にお金を稼げるように見せかけて、消費者を勧誘しました。

(2) 事業者Aは、さらに、スマホで写真を撮って稼ぐ方法を解説した情報商材について、「通常価格10万円のところ、今なら2万円(で買える)」などと記載して、消費者を勧誘しています。

(3) この情報商材(PDF)には、「3日間でインスタグラムのフォロワーを●●人以上集めた方に、現金3万円をプレゼントします」「詳しくは電話サポートにて確認ください」などと記載されており、お金を稼いだ旨の体験談も多数書かれているため、消費者は、詳しい説明を受けようと、事業者Aに電話説明の予約をします。

(4) すると事業者Aは、消費者への電話の中で、「高額なコースに入れば、長くやることができます。」「確実に稼げます」などと言って、7万円〜150万円の特別コースに入るよう執ように勧誘し、元がとれると思い込んだ消費者に、特別コース料金を支払わせます。

 

消費者安全法の「消費者事故等」と注意喚起


そして、消費者庁は、事業者Aの行為のうち、以下の2点が消費者安全法にいう「消費者事故等」(同法2条5項3号・同施行令3条)すなわち、消費者の利益を不当に害する行為にあたると判断したようです。
 

勧誘の際に、ウェブサイトに、「通常価格10万円→今だけ会員様特別価格2万円」と書いた行為。

→ 実際には、過去に10万円で販売した事実がなかったため、不実告知と判断されました。

ェブサイトに、「月収200万円以上稼いでいる人もいます」と書いた行為や、実際に稼げたとする人の体験談を多数記載した行為。

→ 実際には、このような事実が全くなく、虚偽であると判断されました。
 

【消費者安全法より抜粋】


(定義)
第二条
5 この法律において「消費者事故等」とは、次に掲げる事故又は事態をいう。(中略)
三 前二号に掲げるもののほか、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって政令で定めるものが事業者により行われた事態
(※ 政令の引用は本コラムでは割愛します)


そして、このような不実告知や虚偽による「消費者事故等」が発生し、同種・類似の事案の防止を図るために消費者に注意喚起する必要があるときは、消費者事故の態様などを公表することになっています(消費者安全法38条1項)。

(消費者への注意喚起等)
第三十八条 内閣総理大臣は、第十二条第一項若しくは第二項又は第二十九条第一項若しくは第二項の規定による通知を受けた場合その他消費者事故等の発生に関する情報を得た場合において当該消費者事故等による被害の拡大又は当該消費者事故等と同種若しくは類似の消費者事故等の発生(以下「消費者被害の発生又は拡大」という。)の防止を図るため消費者の注意を喚起する必要があると認めるときは、当該消費者事故等の態様、当該消費者事故等による被害の状況その他の消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を都道府県及び市町村に提供するとともに、これを公表するものとする。(※下線部は筆者)


そのため、今回は、冒頭に挙げた消費者庁のニュースリリースが出されることになりました。
 


SNSに関する情報商材トラブルの傾向


消費者庁のリリースにもあるように、最近では、このようなインスタグラム等のSNSに関する情報商材のトラブル(詐欺)が増加しています。

当事務所(五常法律会計事務所)にも、同種の相談が寄せられています。

トラブルの特徴としては、以下の点を指摘できます。

・まず2万円や3万円といった、それほど大きくない金額を振り込ませる点
・そのため、被害者が軽い気持ちで事業者にアクセスしてしまう点
・少額の被害にとどまる被害者は泣き寝入りしやすく、情報が広まりにくい点
・情報商材の場合、情報の内容は中身を見るまで分からないため、情報商材の中身を見た後にも、さらに高額の請求がなされ得る点

 

SNSの利用者における注意点


このような情報商材をめぐるトラブルそれ自体は、InstagramなどのSNSが流行する前から見られたものであり、SNSに特有のものではありません。

ただ、最近では、SNSのDM(ダイレクトメッセージ)などで勧誘が始まる例もみられ、そのような事業者と消費者の距離の近さは、SNSの特徴と言い得るものです。
(奇しくも、このコラムの冒頭で触れた、「別の大きな刑事事件」でも、被疑者がSNSを用いて、被害者に接触した形跡があるとの報道がなされています)


そもそも一般論で言いますと、スマホで写真を撮ってインスタにアップするだけで簡単に稼げるということは、およそ考えにくいものです。

そのため、利用者における注意点としては、

「誰でも簡単に稼げます」
「多くの人が収益を上げています」

などと、都合のいいことだけを強調するような勧誘には特に注意して、安易にこのようなビジネスに騙されないよう、慎重に行動してください。


そして、万が一被害にあったときは、泣き寝入りすることなく、すぐに消費生活センターや、弁護士に相談してください(当事務所のお問い合わせ窓口はこちら)。

弁護士 数藤 雅彦

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