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結婚式場のキャンセルと違約金条項(夜間法律相談から)

【ご相談】

 今般、諸事情から、婚約者との結婚披露宴の式場の予約をキャンセルすることになりました。

 早速、式場に連絡をしたところ、挙式予定日の約1年前のキャンセルにもかかわらず、契約書及び規約により、違約金は予約金全額と定められているため、既に支払った予約金300万円の返金には応じられないと言われました。

 このような場合、契約書を交わしてしまっている以上は、予約金の返還はできないのでしょうか?

【回答】

 挙式予定日の1年以上前のキャンセルにもかかわらず、申込金全額の違約金がかかるとする違約金条項は、消費者契約法9条1項に定める平均的損害を超える違約金を定めるものとして無効の可能性が高く、予約金全額の返還を求めることができる場合が多いように思います。

 

一生に一度の大切な晴れ舞台だから…

 一生に一度の晴れ舞台だからこそ、人気のホテルで結婚披露宴を行いたい、このように考えている方も多くいらっしゃると思います。

 ところが、人気のホテルであればあるほど、1年あるいは1年半後でなければ、予約が取れないことも多いのが実情です。

 そのため、いったんは申込をして、予約金を支払ったものの、その後、挙式予定日までの間の事情の変化等により、どうしても予約をキャンセルせざるを得ない事態が生じてしまうことも現実にはあり得ます。

 それでは、今回のご相談者様のように、挙式予定日の1年前に予約をキャンセルをした場合でも、契約書に違約金は予約金全額と定められている場合には、支払った予約金の返還を求めることはできないのでしょうか?

 

契約自由の原則

 まず、民法上の原則から見ていくことにしましょう。

 民法上は、当事者は合意によって債務不履行により生じる損害賠償額の予定をすることができ(420条1項)、契約書上の違約金規定は、損害賠償額の予定に当たります(420条3項)。

 当事者が損害賠償額の予定をした場合、裁判所は、その額を増減することができないため(420条1項)、民法上は、申込者は、違約金規定により定められた損害賠償の予定額を支払うことになります。

 

消費者契約法による修正

 しかしながら、事業者と消費者との間で締結される契約においては、両者の間に情報や交渉力の格差が構造的に存在するため、民法上の契約自由の原則をそのまま認めてしまうと、消費者にとって不当に高額な違約金条項が規定されてしまうことが多くあります。

 そこで、消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定の定めがある場合でも、解除時に当該事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超える部分については無効とするとし、消費者は「平均的な損害」さえ賠償をすれば足りると規定しています。

 

「平均的な損害の額」とは?

 「平均的な損害の額」とは、同一の事業者が締結する多数の同種契約事案において類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいうとされ、具体的には、解除事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約解除に伴い、当該事業者に生ずる損害額の平均値を意味すると考えられています。


裁判例

 実際の裁判例においても、たとえば、東京地裁平成17年9月9日判決では、挙式予定日の約1年前に結婚式及び披露宴の予約を撤回したところ、結婚式場側が違約金条項を理由として予約金の返還を拒んだ事案について、この時期に予約を撤回した場合、消費者契約法が定める平均的な損害を見積もることができないとして、予約金の返還が認められています。

 

式場の予約をキャンセルする場合にはすぐに連絡をすること

 挙式予定日が近づけば近づくほど、キャンセルにより平均的な損害が生じる蓋然性は高くなることから、何らかの事情により予約した式場のキャンセルの必要が生じた場合には、早急に式場に対し、連絡をすることが大切です。

 連絡をしたにもかかわらず、違約金条項を理由に返還を拒まれた場合には、すぐに弁護士に相談をしてみると良いでしょう。

 

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 当事務所では、仕事等の理由により日中、ご相談に来ることが難しいお客様を対象に夜間の法律相談を実施しております(事前予約制です)。

 これまでにも結婚式場のキャンセルに関するトラブルや金融商品取引に関するトラブルに関する相談・ご依頼を多く戴いております。

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