こんにちは。
当事務所(五常法律会計事務所)は、2015年に、Instagram(インスタグラム)にアップロードした写真の著作権について、コラム形式で解説いたしました。
あれから2年、今でもInstagramは根強い人気を保っています。
そして、上記のコラムをご覧になった、企業のマーケティング担当者様やInstagramユーザーの皆様から、これまで数多くのお問い合わせを頂きました。
今回は、その中から、著作権や肖像権に関するよくある質問を、Q&A形式でまとめておきます。
※ なお、当事務所(五常法律会計事務所)は、Instagramを運営するInstagram,LLCとは無関係の組織です。以下の回答は、Instagram,LLCが公表した利用規約その他のポリシーのうち、2017年7月中旬時点で確認できた内容をもとに、第三者の弁護士の目線で分析した結果となります。
Instagramの利用規約や運用については、随時変更される可能性がありますので、最新の情報をご参照ください。
Q1
Instagramにアップされている写真は、他人が無断で使ってもいいのですか?
A1
Instagram上でシェアする場合などを除いて、原則として、Instagramに投稿された他人の写真を無断で使うことはできません。
例外的に使える場合もありますが、InstagramのAPIを使うなど一定の条件を満たす必要があるようです。
【解説】
まず大前提として、ユーザーがアップした写真などのコンテンツの著作権は、Instagram側には移転せず、各ユーザー本人のもとに残ったままです(詳しくは以前のコラムでも述べた通りです)。
そのため、著作権者からの許諾を得ることなく、他人の写真を利用することは原則としてできません。まずこの点を強調しておきます。
ただし、例外もあります。
Instagramの利用規約の「各種権利」1項にはこう書かれています。
ただし利用者は、利用者が本サービスに、またはこれを通じて投稿するユーザーコンテンツを、Instagramがhttp://instagram.com/legal/privacy/に掲載されている本サービスのプライバシーポリシー(第3条(「利用者情報の共有」)、第4条(「弊社による利用者情報の保存方法」)および第5条(「利用者情報に関する利用者の選択肢」)を含みますがこれに限りません)に従って利用する、非独占的かつ無料、譲渡可能かつ再許諾権付きの世界的使用許諾を付与するものとします。
そして、ここで挙げられている、プライバシーポリシーの第3条を見ますと、こう書かれています。
他のユーザーは、利用者が共有または公開したユーザーコンテンツを再共有できます。
「再共有 (re-shared)」というのは、要するに「シェア」のことだと思われます。
シェアはInstagramユーザーの皆さんにはおなじみですね。
さらに第3条の続きをみると、
利用者が公開したユーザーコンテンツは、利用者のプロフィールおよびプライバシー設定に従い、他のユーザーがInstagramのAPIを使って検索できるコンテンツとなります。InstagramのAPIの利用については、本プライバシーポリシーが盛り込まれているAPI利用条件が適用されます。
つまり、利用者は、InstagramのAPIを使って、他のユーザーのコンテンツを「検索(search)」できます。
API(Application Programming Interface)というのは、ざっくりとわかりやすく言いますと、Instagramの機能を他のサービスから簡単に利用できるように、機能の呼び出し方法などを定めたルール(仕様書)のことです。
そのため、InstagramのAPIを使うなど各種ポリシーに書かれた条件を満たせば、企業や他のユーザーはInstagramにアップされた写真を「検索」できますし、ユーザーもこのような検索についてはInstagramにあらかじめ許諾している形になっています。
このように、Instagramの写真を他人が利用するには、一定のルールがあることに注意してください。
Q2
それでは、InstagramのAPIを使う場合は、商用利用も問題ないですか?
A2
Instagramの求める条件を満たせば、商用利用も可能になると思われます。
詳しくは、最新のInstagramのAPIポリシー等をご確認ください。
【解説】
先ほどのQ1と重なりますが、商用利用に関する質問も多く頂くところです。
改めて、Instagramのプライバシーポリシーの第3条を見ますと、
利用者が公開したユーザーコンテンツは、利用者のプロフィールおよびプライバシー設定に従い、他のユーザーがInstagramのAPIを使って検索できるコンテンツとなります。InstagramのAPIの利用については、本プライバシーポリシーが盛り込まれているAPI利用条件が適用されます。
とあります。また、利用規約の「基本規定」の10項を見ますと、
利用者は、Instagramが認めていない方法でInstagramが公開していないAPIへアクセスすることはできません。InstagramのAPIの利用については、http://instagram.com/about/legal/terms/api/に掲載されている規定(以下「API利用規約」)が適用されます。
とあります。
例えばハッシュタグ検索などを活用して、Instagramの写真を利用するサービスをビジネス展開するような場合を考えましょう。
このような場合には、InstagramのAPI利用規約に従った形で、Instagramにレビュー申請をして、承認を受けることが必要になるようです。
なおこのAPI利用規約は、現時点(2017年7月)でも英語版しか存在しないようです。エンジニアの方が独自に和訳したウェブサイトもありますので、英語に不慣れな方はそちらもお探しください。
話を戻しますと、商用利用をお考えの方は、Instagramの指定する条件にきちんと従って、ビジネスを進めてください。
Q3
著作権の許諾をクリアできれば、肖像権の問題もセーフになるのですか?
A3
いえ、肖像権は、著作権とは全く別の権利です。
他人の顔や姿などがはっきり映った写真をInstagramにアップするときは、十分にご注意ください。
【解説】
Instagramの特徴として、人の肖像(容ぼう、姿態など)が映った写真がアップされることが多くあります。
肖像権については、著作権と混同している方もいらっしゃいますが、写真それ自体の著作権とは全く別の権利です。
そのため、仮に著作権をクリアしてビジネス展開するような場合でも、肖像権の問題(例えば被写体の方から、写真の公開停止などを求められる可能性)はなお残っていることにご注意ください。
ちなみに、肖像権違反の写真をアップした責任は、第一にはアップしたユーザー自身が負う形になっています。
Instagramの利用規約の、「各種権利」の4項をみますと、
利用者は、以下に掲げる事項について表明および保証するものとします。
(中略)
(ii)本サービスへの、または本サービスを通じたユーザーコンテンツの投稿や、本サービスの、または本サービスを通じたユーザーコンテンツの利用により、第三者の権利(プライバシー権、パブリシティ権、著作権、商標権および/または知的財産権を含むがこれに限定されません)が侵害され、不正使用されないこと。
つまり、Instagramにアップされた写真などのコンテンツについては、アップしたユーザー自身が、他人の権利を侵害していないことを「表明(represent)」し、「保証(warrant)」する形になっています(英文の契約書などでよく見られる、表明・保証条項と呼ばれる書き方を踏まえているため、このようなフレーズになっています)。
また、同じ利用規約の「各種権利」の8項を見ますと、
ユーザーコンテンツが本規約に反するものとみなされた場合、利用者はかかるユーザーコンテンツについて法的責任を負う場合があります。
この保証に違反して写真が他人の権利を侵害していたような場合には、法的責任を負う(bear legal responsibility)場合があると明確に書かれています。
そのため、肖像がはっきり映っている写真で、その人がアップされることを嫌がるであろう写真については、アップを控えるか、その人の了承をしっかり得てからアップしてください。
ただし、たとえユーザー本人が責任を負う場合であっても、他人の権利を侵害した写真をビジネスに用いることはリスクがあります。
他人の肖像権を侵害する写真や、他社の有名キャラクターが大きく映りこんだ写真(法的に許される映り込みの限度を超えた写真)などをビジネスで利用する際には、その利用した企業自身にも、少なくともレピュテーション(評判)リスクが生じる可能性があり得ます。
そのような写真を使う際は、十分にご注意ください。
※ 本コラムは、皆様から頂いたお問い合わせを踏まえて、さらにQ&Aの追加を予定しております。
Instagramの著作権、肖像権やビジネス利用に関する法律相談の申込みは、こちらからお願いします。
【関連コラム】
・Instagramにアップした写真の著作権はどうなってしまうのか