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未払い残業代請求に関する質問と企業に求められる対応

未払い残業代請求に関する調査結果

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 未払い残業代請求に関しては、公益財団法人連合総合生活開発研究所が2012年に実施した調査によれば、残業手当が出る人のうち残業手当全額が支払われているのは46.9%に過ぎず、支払われるべき残業代の4~6割が不払いである人は5.5%、残業代がまったく支払われていない人も6.9%との結果が公表されています。

 また、厚生労働省が平成27年9月に公表した監督指導結果によれば、今年の4月から6月までの間に対象とした2362の事業所のうち約6割に該当する1479の事業所において、違法な時間外労働の事実が認められ、監督指導をした旨が示されております。

 

長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します|厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000098487.html

 

 最近では、残業時間の削減で過去最高益を出した企業が報道されるなど、上場会社を中心に長時間労働を抑制するため積極的に取り組みを行う企業も増えてきていますが、上記の調査結果等が示すように、いわゆるサービス産業を中心に、本来、支払われるべき残業代が支払われていないケースも多く存在しているのが実情です。

 労働基準法は、原則として、1日8時間、週40時間を超えた労働、休日や深夜の労働に対し、割増賃金(残業代)の支払いを使用者に義務付けており、長時間労働させないよう労働者を保護しています。

 労働者の中には、サービス残業が当たり前で、未払いの残業代を会社に請求することに躊躇してしまう方も多いようですが、未払いになっている残業代を請求することは労働者に認められた権利であって、非難される事柄ではありません。むしろ社会全体としては、法律が長時間労働から労働者を保護しようとしている趣旨を踏まえ、いかに長時間労働をさせない労働環境を実現するか、労使が対話をしながら希求していくこと望ましく、労働人口が減少していく中、企業の側にも、労務管理を適切に行い、改善すべき点がある場合には労務環境を改善し、有意な人材が集まるよう魅力的な労働環境を作ることへの積極的な姿勢が求められています。

 本コラムでは、これまで労使双方からご依頼を受けてきた経験を踏まえ、未払い残業代の請求に関し、まず労働者の方から良くある質問について説明をしたうえで(なお、ここで説明をした内容は、企業の法務・人事担当者の方にとっても、残業代の請求に関して知っておくべき必須の事項となります)、その内容を踏まえ残業代に関するトラブルを避ける観点から企業に求められる姿勢・ポイントについて解説をしたいと思います。

【目次】

 


1 未払い残業代を請求することができる場合(Q1)

 そもそも残業代はどのような場合に請求できるのでしょうか?

 法律では、以下の3つの場合について、使用者に対し、一定の割増率以上の残業代(割増賃金)を支払わなければならないと規定されています(労働基準法37条1項、4項)。

  1. ・法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させた場合(時間外労働
  2. ・法定休日に労働させた場合(休日労働
  3. ・午後10時から午前5時までの間に労働させた場合(深夜労働) 

 したがって、上記いずれかに該当している労働をしているにもかかわらず、通常の賃金に加え残業代(割増賃金)が支払われていない場合には、原則として、使用者に対して残業代(割増賃金)を請求できることになります。


2 未払いの残業代を請求する場合の割増率とは?(Q2)

 それでは、「一定の割増率」とはどのような数字でしょうか?

 そもそも法律により使用者に対し割増賃金(残業代)の支払いが義務付けられているのは、労働者への補償を行うとともに、使用者に対し経済的負担を課すことによって、時間外労働や休日労働を抑制する必要があるためです。

 そこで、法律では、以下の表のとおり、労働の種類に応じて、抑制する必要性に比例する形で、割増率が高く規定されています。

【割増率】(労基法37条1項3項、施行規則20条)

法定外労働の種類

割増率

通常の時間外労働

25%以上

法定休日労働

35%以上

深夜労働

25%以上

深夜・時間外労働

50%以上(25+25)

深夜・法定休日労働

60%以上(35+25)

(※なお、法律では、時間外労働が1か月60時間を超えた場合の特則および適用除外の特例も設けられています)。


3 未払いの残業代を請求することができる期間はどのくらいか?(Q3)

 このように労働者には、時間外労働をしたり、休日・深夜労働をした場合に、割増賃金(残業代)を請求することが法律上認められていますが、ここで注意しなければならないのは、法律上、残業代を含む賃金については、請求できる期間(消滅時効)が2年とされている点です。

 そのため、仮に長期間にわたり残業代が支払われていなかったとしても、賃料の支払日から2年を経過した分の残業代については、請求することはできないことになります。


4 未払い残業代を請求するためにはどのような方法があるのでしょうか?(Q4)

 上記のとおり残業代を含む賃金については、法律上、請求できる期間(消滅時効)が支払日から2年間と限定されているため、残業代を請求する際には、まず内容証明郵便により未払いの残業代を請求して消滅時効を中断させる必要があります。

 多くの場合、賃金の支払いは月給制ですので、賃金の支払日は毎月1回来ることになります。そのため、毎月の積み重ねで消滅時効が進行していくことになりますが、未払いの残業代を請求するため準備には相応の時間を要するため、まずは内容証明郵便を送り消滅時効を中断させ、それから使用者との交渉に向けた準備を進めることになります。

 そのうえで、通常は会社と裁判外の交渉を行い、それでも残業代の支払いを拒まれた場合には、裁判手続を利用して、未払いの残業代を請求することになります(その他の手段もありますが、本コラムでは割愛いたします)。

 未払いの残業代を請求する場合の裁判手続としては、労働審判か通常の民事訴訟を利用することが一般的です。

 労働審判とは、労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を、裁判所において、原則として3回以内の期日で、迅速に解決することを目的として設けられた制度です。労働審判の場合、統計的には申立後70日程度で解決することが一般的です。このように、労働審判は訴訟に比べ短期間での解決が期待できる一方、原則3回の期日で終わるため詳細な証拠調べはできず、「ざっくり」とした解決となる(より端的に言えば、支払われるの大幅なディスカウントが求められる)傾向がある点に注意する必要があります。

  結局、労働審判を申し立てるか通常の民事訴訟を提起するかは、どちらの手続にもメリット・デメリットがあるため、時間外労働の事実を立証するための証拠がどれだけ手元に揃っているかなど個別具体的な事情を踏まえて、最適な手続は何かを慎重に検討する必要があります。


5 未払いの残業代を請求するために必要な証拠は?(Q5)

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 ところで、裁判手続を利用して残業代を請求する場合、所定の労働時間外に労働(残業)をした事実を、原則として労働者の側で主張立証する必要があります。

 そのため、残業代を請求する際には、残業をした事実を立証するための証拠を集めておく必要があります。それでは、どのような証拠を集めておく必要があるのでしょうか?

 残業をした事実を立証するための証拠として、一番良いのは、タイムカードIDカード業務管理ソフトに基づく労働時間の記録など労働時間を直接立証できる証拠です。自己申告の記録でも良いのか、労働者の方から質問を戴くことがありますが、使用者の承認印や受理記録があればもちろん、仮にこれらがない場合でも、証拠としてまったく意味がないわけではありません。

 次に、直接労働時間を立証することはできなくても、労働時間を間接的に推認することができる客観的な証拠はないか検討することになります。

 たとえば、会社から貸与されているPCを使用した業務記録としてのログインやログオフの記録、業務上送受信した電子メールの時間記録、会社のPCから自宅への帰宅メール、業務に使用した携帯電話の通話記録やメールなどです。

 これにより、少なくともそのPCを使用していた時間は会社にいた、業務をしていたということが推認できる場合があります。

 その他、たとえば、業務日誌や営業記録などに時間の記入がある場合には、労働時間を推認することができる場合があるので、これらも証拠となりますし、警備会社の警備記録やビルの出退館記録が証拠となることもあります。

 また、職種によっても、たとえば、タクシー運転手をはじめとする自動車運転を業とする労働者の場合には、タコグラフ(タコメーター)を分析することにより、運行記録から労働時間の一部が明らかになりますし、飲食店や理容室・美容室などの店舗営業をしている職場で働く労働者の場合には、当該店舗の開店時刻と閉店時刻も労働時間の立証に役立つことがあります。

 このように、タイムカードなど労働時間を直接立証する証拠がない場合でも、何か労働時間の立証に繋がる事実はないか根気よく調べてみることが残業代を請求する労働者の立場からは大切です。


6 準備時間や持ち帰り残業、接待は未払い残業代請求の対象に含まれるのでしょうか?(Q6)

 労働時間に当たるかどうかは、基本的に労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間といえるか否かによって判断されることになります。

 ところが、実際にはその区別が難しいものも多く、残業代を請求した際、使用者との交渉・裁判手続で争点とされることも少なくありません。

 本コラムでは、労働者の方から質問を受けることが多い、準備や引き継ぎのための時間持ち帰り残業顧客等の接待について、簡単に解説いたします。

(1)準備や引き継ぎのための時間は労働時間に含まれるのか?

 本来の業務開始前に作業服の着用や朝礼、体操等の準備作業を行ったり、本来の業務終了後に機会等の点検や清掃、作業服の着替え、引き継ぎ等の後始末を行っている場合、これらに要した時間は労働時間に当たるのでしょうか?

 基本的には、これらが業務上あるいは法律上義務付けられており、または使用者の指揮命令による場合には、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているといえるので労働時間に当たると考えられます。

 準備作業や後始末作業を労働時間と主張する場合には、これらの作業と本来の業務との関連性の程度や使用者の指示の有無(指示があったことを裏付ける証拠の有無)、法令や就業規則等の根拠の有無などを事前に確認しておく必要があります。

(2)持ち帰り残業は?

 次に、いわゆる持ち帰り残業はどうでしょうか。

 仕事を自宅に持ち帰って行う場合、これについて使用者からの明示または黙示の指示があれば、労働時間と認められることになります。

 納期が翌日に迫っているにもかかわらず、物理的に職場を使用できない場合などは、黙示の命令があったと考える余地があります。

 もっとも、持ち帰り残業は、私生活上の行為との峻別が難しいことに加え、タイムカード等がなく、労働時間の立証自体も難しい場合が多いので注意が必要です。

(3)顧客等の接待

 接待への参加が命じられている場合には、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される可能性もありますが、一般的には業務との関連性が不明であることが多く、直ちに労働時間と認めることは困難な場合が多いのが実情です。


7 未払い残業代を請求した場合の使用者の反論について(Q7)

 未払い残業代の請求を受けた場合、最近では、社会保険労務士や労務コンサルタントの助言等もあり、固定残業代制度等の給与体系を採用している会社も多く、裁判例を見ると、そのような給与制度の採用を前提に既に残業代は支払っていると反論をしているケースも見受けられます。

 それでは、このような使用者の反論は、現在の裁判実務では、どのようなに扱われているのでしょうか?

(1)もともと賃金や各種手当に残業代が含まれている?(Q7-1)

 未払い残業代の請求に対し、使用者から「もともとの賃金には時間外・休日労働手当は全額含まれており残業代を支払う必要はない」と反論した場合はどうでしょうか?

 判例によると、労働者と使用者との割増賃金を基本給に含める旨の合意は、基本給のうち割増賃金部分が明確に区別され、かつ労基法所定の計算による金額がその額を上回る時はその差額を当該賃金支払い期日に支払うことを合意していなければならず、このような明確な合意がない場合は、使用者による上記主張は許されず、時間外労働手当を全額支払う義務があるとされています(小里機材事件・最判昭和63年7月14日・労判523号)。

 また、各種手当が残業代を含むという主張についても、裁判例においてはほぼ否定されています。

 そのため、もともとの賃金に残業代は含まれているとの使用者の反論は、多くの場合、認められないのが現状です。

(2)固定残業代(残業代の定額払い)制度を導入している場合(Q7-2)

 次に、使用者が、「固定残業代(残業代の定額払い)制度を設けており、実際の労働時間の有無や長短にかかわらず、一定時間分の割増賃金を支給している以上、この他には時間外労働に対する割増賃金を支払う必要はない」と反論をした場合はどうでしょうか?

  裁判例においては、残業代の固定支給制度が有効とされるためには、

  • ①割増賃金部分が通常の労働に対する賃金部分と明確に区別されていること
  • ②当該手当が時間外労働に対する対価としての実質を有すること
  • ③手当の額が労働基準法所定の割増賃金額を上回っていること

が必要であるとされています。そのため、固定残業代制度を導入していれば即座に残業代の支払いを免れるわけではなく、固定残業代制度を採用する場合、あくまで上記3つの要件を満たしていることが必要であることに注意する必要があります。

 現実の時間外労働時間に基づいて算出された割増賃金の額が固定残業給の額を超えた場合、労働者は固定残業給との差額賃金を請求することができますし、仮に、実際の残業時間が固定額分を上回っていた場合には固定額だけしか支払わない合意や規定があったとしても、そのような合意や規定は労働基準法37条に違反し無効と考えられています。 

 (3)年棒制の場合には残業代を支払う必要はないのでしょうか?(Q7-3)

 管理職の従業員の方が未払い残業代を請求した場合、使用者から出される反論として、「管理職は年棒制なので、年棒賃金の中には時間外労働に対する割増賃金分(残業代)も含まれているから、残業代を支払う必要ない」というものがあります。

 しかしながら、このような主張についても、固定残業代の場合と同じ理由から、会社側の反論は認められないことがほとんどです。

 たとえば、創英コンサルタント事件(大阪地裁平成14年5月17日判決・労判828号)では、「年棒制を採用することによって、直ちに時間外割増賃金等を当然支払わなくてもよいということにはならない」と述べたうえで、「被告における賃金の定め方からは、時間外割増賃金分を本来の基本給部分と区別して確定することはできず、そもそもどの程度が時間外割増賃金部分や諸手当部分であり、どの部分が基本給部分であるのか明確に定まってはいないから、被告におけるこのような賃金の定め方は、労基法37条1項に反するものとして、無効となる」と判断し、被告会社に残業代の支払い義務を認めています。

(4)管理職であれば残業代を支払う必要はない?(q7-4)

 なお、管理職の従業員の方が未払いの残業代を請求した場合、使用者から「管理監督者」に該当するため、残業代を支払う必要はないと反論されることがあります。

 この反論は、法律が労働時間に関する一部の規定を管理監督者には適用しないと定めていることを根拠とするものです(労働基準法41条2号)。

 管理監督者とは、事業者に代わって労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業を監督する者をいい、行政解釈では、名称にとらわれずに、実態に即して判断すべきとされ、実務上は、以下の3つの基準から、管理監督者に該当するかが判断されています。

  • ①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
  • ②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
  • ③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇が与えられていること

 実務上、管理職の従業員の方から未払い残業代を請求された場合、多くの事例において、使用者から管理監督者に該当するとの反論が主張されますが、裁判例において管理監督者に該当すると認められた事例は決して多くはありません

 このように、現在の裁判実務を前提とした場合、使用者の反論については、なかなか認められていないのが現状です。


8 未払い残業代請求に関するトラブルを避けるために企業に求められること

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   それでは、残業代に関するトラブルを避けるため企業にはどのようなことが求められているのでしょうか。

 これまでの内容からも明らかなとおり、未払い残業代を請求された場合、これまでの裁判実務では、企業の反論は認められないことが多いのが実情です。

 現在、インターネット上で、未払い残業代の請求について、多くの法律事務所が広告を出し、宣伝費用を投じてまでウェブ集客に力を入れているのは、敗訴の可能性が少なく、ほとんどのケースにおいて、請求した額の全額かどうかは別として、未払い残業代を一定額回収することができることも理由の1つと考えられます。

 未払い残業代を請求された場合、2年間の消滅時効が定められているものの、割増率等の影響もあって、相応の金額になることも多く、また、1人の労働者からの残業代の請求をきっかけとして他の労働者や既に退職をした労働者からの未払い残業代の請求に波及するケースも多く、残業代に関するトラブルは企業経営に大きな影響を与える場合も少なくありません。

 そのため、企業の法務・人事担当者としては、前述の2(Q1)から8(Q7-4)に記載された内容を踏まえ、以下の点に留意する必要があります。

(1)残業(長時間労働)の削減は業績の改善に繋がり得ること

 冒頭述べたとおり、近時、上場会社を中心に残業の削減に精力的に取り組む企業が増加しており、残業の削減が業績の改善に繋がったとの報道もなされています。

 法律が、長時間労働から労働者を保護している趣旨は、労働者の心身の保護はもちろんのこと、長時間労働は必ずしも効率的ではなく、生産性が高くない点をも踏まえてのことと考えられます。

 高齢社会を迎え、労働人口が減少していく中、いかに有意な人材を確保するかは企業にとって死活問題であり、労働者(従業員)にとって魅力的な労務環境を整備し、提供することは現在の企業経営に求められる重要な課題の一つであると指摘できます。

 近時、一昔前では考えられなかった一度退職をした従業員の復職について、全面的に支援する制度を設ける企業が出てきたりしているのも、このような文脈から理解することができるかと思います。

 書店には、使用者向けに「残業代対策」の書籍が多く並んでいますが、企業には、いかに残業代を削減するかではなく、そもそも残業(長時間労働)を削減するためにどのように取り組めばよいか、業務の効率性を上げるためにはどうすればよいか、そういった積極的な姿勢が求められており、それこそが業績改善のヒントでもあることを再認識する必要があるように思います。

(2)労務管理を徹底し、不必要な残業を禁止すること

 そのうえで、企業としては、不必要な残業をさせないため、しっかりとした労務管理を徹底することが肝要です。

 神代学園ミューズ音楽院事件(東京高裁平成17年3月30日判決・労判905号)では、いわゆる36協定が締結されておらず、36協定が締結されるまで残業を禁止する旨の命令を使用者が繰り返し発令しており、かつ残務がある場合には役職者に引き継ぐことを徹底したことが証拠により立証された結果、残業禁止の業務命令に反して行われた時間外または深夜の業務時間について、労働時間性を否定する判断が示されています。

 このように残業を禁止する旨の命令を繰り返し発令し、残務がある場合には引き継ぐことを徹底すること、かつこれらの事実を裏付ける証拠をしっかりと保存しておくことにより、少なくとも残業禁止命令に反して行われた残業を理由とする残業代の請求については、反論をすることが可能となり、労務管理を徹底することが重要です。

 なお、実務的には、残業禁止命令を発令しながら、労働者が残業を行っているのを黙認していたり、そもそも残業しなければできない業務を指示しているような場合には、使用者の指揮命令下の労働として労働時間と判断される事案もあることに注意が必要です。

 (3)どうしても時間外労働が必要な場合には、時間を適切に管理すること

 このように日頃から不必要な残業を防止するため労務管理を徹底したとしても、どうしても従業員に対し時間外労働を指示する必要が生じる場合もあるかと思います。

 そのような場合には、前述した割増率の高い深夜労働や休日労働にはならないように、しっかりと残業を指示する時間を管理したうえで、時間外労働事実を記録し、保管しておくことが大切です。

  (4)給与・賃金規定の見直し

 その他、企業としては、業務の種類や人事政策を踏まえたうえで、給与・賃金規定を再検討したり、変形時間労働制や裁量労働制を適切に活用するなどして、戦略的に給与・賃金体系を再構築することも有用です。

 変形労働時間性や裁量労働制については、社会保険労務士や労務コンサルタント等の助言を受け、既に導入をしている企業も多いですが、これらの制度を適法に運用するためには、法律が定める要件を充足する必要があり、制度としては採用しているものの、いざ従業員から未払い残業代を請求されると、裁判所において無効と判断されている事例も多く見られます。

 新たに導入を検討する場合、さらには既に導入をしている場合でも、今一度、法律上の要件を充足した適法な制度となっているか、実態との間に齟齬はないか、確認をすることが重要と思われます。

 

 当事務所では、残業代の請求を検討している従業員の方、残業代を請求された企業のいずれの立場からもご相談を受けております(なお、従業員の方には、夜間法律相談も実施しております)。

 本コラムに記載した内容に限らず、残業代の請求や労務環境の構築についてお悩みの方は、下記お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

 

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